秋野公造議員の政治活動総覧(2015–2025)

概要

秋野公造(あきの・こうぞう)議員は公明党所属、福岡県選挙区選出の参議院議員である。2010年に初当選して以来3期連続当選し(2010年・2016年・2022年)¹、在職期間は2010年7月から現在に至るまで15年に及ぶ。1967年7月11日、兵庫県神戸市生まれの57歳(2025年7月11日以降は58歳)²

異色の経歴として、長崎大学医学部を卒業後、1996年に同大大学院医学研究科博士課程を修了して医学博士号を取得し、厚生労働省の医系技官(医師資格を持つ官僚)を務めた医師出身の政治家である¹。幼少時の喘息やアトピーの闘病経験から「病める人を救いたい」と医師を志し、厚労省勤務では2009年に東京空港検疫所支所長を務めるなど感染症対策にも従事した経歴を持つ。

そうした専門知識を活かそうと政界に転じ、2010年の参院選で初当選した。以降、公明党の政策通として頭角を現し、2012年には環境大臣政務官兼内閣府大臣政務官、2018年には参院総務委員長を歴任するなど要職を経験。2022年8月には第2次岸田第1次改造内閣で財務副大臣にも就任した²

現在、公明党参議院政策審議会長(党参院会派の政策責任者)や党九州方面本部長などを務め、党内で政策立案を牽引する立場にある。また参院では厚生労働委員会理事、情報監視審査会委員などとして議事運営にも関わる。

分析対象期間を2015–2025年とする本報告では、秋野議員の政治活動全般について、選挙公約の内容と実績、立法・国会活動、党内外での役割、資金・倫理面、情報発信など多角的に検証する。医師議員として「命を守る政治」を掲げる秋野氏が、この10年間でどのような成果を上げ、課題に取り組んできたかを明らかにすることが本レポートの目的である。

1. 選挙公報・マニフェスト分析

直近の2022年7月参院選における秋野議員の選挙公報を紐解くと、そのスローガンと政策は彼のキャリアを色濃く反映したものだった。冒頭に掲げたのは「政治でなければ、救えない命がある。」という力強い言葉である。医師として患者を救ってきた秋野氏が、政治という手段でさらに命を守る決意を示したもので、有権者へのメッセージ性は明確だ。公約の柱は大きく三つに整理されていた。

コロナ克服・命を守る

第一に「コロナ克服・命を守る」である。新型コロナウイルス対策のエキスパートを自任し、国産の飲み薬やワクチンの開発・確保、いわゆる「日本版CDC」の創設、そして最高レベルの病原体を扱えるBSL-4(バイオセーフティーレベル4)施設の拡充など、感染症対策の強化が網羅された³

具体策として、治療薬・ワクチンの研究開発促進、コロナ後遺症ケアの充実、次なるパンデミックに備えた研究体制づくりなどが列挙されており、厚労省出身者ならではの専門知識が光る内容となっていた。これらは単なる当面のコロナ対策に留まらず、日本の公衆衛生インフラ全体を底上げする恒久策になっている点に注目できる。

現場の声から経済再建

第二に「現場の声から経済再建」。コロナ禍で疲弊した地域経済を立て直すため、人への投資・デジタル化・脱炭素化の3本柱で成長を図るとしている。具体的には、中小企業への下請けいじめ防止策による賃上げ環境整備、非正規雇用の待遇改善、看護・介護・保育職の処遇アップ、最低賃金引き上げ支援など「人への投資」に重点を置きつつ、5Gやデータセンター整備、スマート農業推進、さらには2050年カーボンニュートラル実現に向けた再生可能エネルギー推進などを掲げた。

これらは経済政策であると同時に社会政策でもあり、「成長の果実を現場の人々へ還元する」という秋野氏の信条がうかがえる。医療福祉のみならず経済産業分野にも通じ、幅広い政策を扱える点を示す公約と言える。

平和創出・安全保障

第三に「平和創出・安全保障」。ロシアのウクライナ侵略を念頭に、国際社会と連携した経済制裁や人道支援の推進、専守防衛の堅持と日米同盟による抑止力向上、新領域(宇宙・サイバー・電磁波)や経済安全保障への対応強化など、安全保障政策も網羅した。

加えて、非核三原則の堅持と核兵器禁止条約批准に向けた環境整備、国連改革の推進、感染症パンデミック条約の制定、国際保健分野のODA倍増といった国際平和・協力策も盛り込まれた。公明党議員らしく平和外交に軸足を置きつつ、防衛費増額や経済安保にも理解を示すバランスの取れた内容で、現実的な安全保障観がうかがえる。

健康立国を福岡から

さらに秋野氏の選挙公報の特徴として、「健康立国を福岡から」というユニークな視点が挙げられる。彼は福岡を拠点に、日本を健康長寿社会に転換することを訴え、農業×健康(地産地消の促進や健康食品ブランド化による地域活性化)、住宅×健康(高齢者向けバリアフリー住宅整備や省エネ住宅普及)、福祉機器×健康(介助ロボットの普及支援)など、あらゆる分野に「健康」の観点を取り入れる政策群を提示した。