加田裕之議員の政治活動総覧(2015–2025)

概要

加田裕之(かだ ひろゆき)は兵庫県選出の参議院議員(自由民主党)で、2019年7月の参院選で初当選した1期目の政治家です¹

1970年神戸市灘区生まれで甲南大学法学部を卒業後、神戸新聞系列の企業に勤務していましたが、1995年の阪神・淡路大震災を契機に「自分も復興に役立ちたい」と政治を志し、当時の国会議員の秘書を経て政界に入ります。

2003年に兵庫県議会議員に初当選し、以後16年間にわたり県議を4期務め、副議長や自民党県議団幹事長など要職を歴任しました。2019年の第25回参院選兵庫選挙区で国政に転じ、3位で初当選(定数3の同選挙区で当選)。

当選後は党内で安倍晋三元首相の派閥(清和政策研究会)に所属し、岸田政権下では法務大臣政務官(2021年11月就任)を拝命しました。参議院では経済産業委員会理事や環境委員会委員、災害対策特別委員会委員などを歴任し、参議院自民党の国会対策副委員長も務めています²

本稿では、2015年から2025年6月までの10年間を分析期間とし、加田議員の政策・立法活動の全体像とその成果を明らかにします。有権者がその歩みを深く理解し評価できるよう、選挙公約から国会での発言、党内活動、政治資金に至るまで事実に基づき詳細に検証します。

1. 選挙公報・マニフェスト分析

加田裕之議員の直近の選挙公約をひも解くと、その政治姿勢が浮かび上がります。2019年の参院選兵庫県選挙区で掲げたスローガンは「兵庫の明日を切り拓く。地域に根差した政治を」であり、自身の愛する地元から日本を良くしていく決意が示されていました。

選挙公報では、阪神・淡路大震災の被災地で育った経験を踏まえた防災・減災対策が大きな柱でした。例えば「防災庁の創設と兵庫への誘致」を掲げ、国の防災中枢機能を地元に置くことで災害対応力を強化すると訴えています(加田氏自身、2025年の再選出馬表明の記者会見でも「防災庁を兵庫に呼びたい」と語っています)。

またもう一つの柱が物価高対策や地域経済の活性化でした。直近では2022年以降の世界的なインフレを受け、2025年の公約でも「物価高に苦しむ国民に寄り添い、できる政策をすべてやっていく」と述べ、食料品の消費税減税や現金給付、中小企業への投資支援など大胆な経済対策を掲げています。

キーワードとしては「物価」「防災」「地域」「支援」「復興」などが公約文中に頻出しており、地域に根差しつつ国全体の安全安心と暮らしを守る姿勢が伺えます。実際、震災を契機に政界に入った経歴から、防災・減災に対する熱意は一貫していますし、物価高や景気対策についても「実質賃金を上げるため中小企業支援と減税を組み合わせねばならない」と具体的に言及するなど、経済政策への積極姿勢が鮮明です。

公約の幅広い政策分野

公約の文面から読み取れる重点分野は他にもあります。例えば子育て支援や教育の充実、地方創生(東京一極集中の是正)なども標榜しており、兵庫県議時代から取り組んできた地域課題の延長線上に国政での政策を位置付けています。

頻出キーワード上位には「教育」「地方」「未来」といった言葉も含まれており、次世代に希望をつなぐ政策を意識していることがうかがえます。総じて加田議員のマニフェストは、防災を軸とした安心安全な社会づくりと、物価高騰に対応する経済・生活支援策の両輪に重点が置かれていました。

スローガン「課題解決力」を自称するだけあり(自身のハッシュタグ「#課題解決かだ裕之」も使用)、地域の声を汲み取って具体策を示す実務型の政治家像が表れていると言えるでしょう。

2. 法案提出履歴と立法活動

国会議員としての加田裕之氏の立法活動を振り返ると、1期目ながら重要法案に深く関与した場面が見受けられます。まず、本人が立法者(提出者)となった議員立法は調査した範囲では確認できません。与党所属の新人議員ということもあり、単独で法案を提出する機会はなかったようです。

ただし政府提出法案の審議や修正には積極的に関わっています。特に成果として挙げられるのが、侮辱罪の厳罰化に尽力したことです。加田氏は岸田内閣で法務大臣政務官を務めた際、深刻化するインターネット上の誹謗中傷問題に対応するため刑法改正に携わりました。この改正法では侮辱罪の法定刑に懲役刑を新設するなど厳罰化が図られ、SNS上での中傷抑止に一定の効果が期待されています。

加田氏自身「SNSは今なお課題がある。再度の改正も考えるべきだ」と述べており、表現の自由とのバランスに配慮しつつも被害者救済の観点からさらなる法整備に意欲を示しました。