井上哲士議員の政治活動総覧(2015–2025)

概要

井上哲士(いのうえ さとし)議員は、日本共産党所属の参議院議員(比例区選出)で、当選4回を数えるベテラン政治家です¹。1958年5月5日に山口県徳山市で生まれ、広島市で育ちました。広島県立国泰寺高校、京都大学法学部を卒業し、在学中に日本共産党に入党しました。卒業後、梅田勝衆院議員秘書、「しんぶん赤旗」政治部記者、党京都府委員会常任委員・政策委員長などを経て、2001年の参院選で初当選しました²

以後一貫して参議院議員を務め、党参院国会対策委員長・参院議員団幹事長など要職を歴任しています³。在職中は憲法擁護や平和外交、社会保障拡充を信条に掲げ、野党共闘の要として国会論戦を牽引してきました。

本レポートでは、2015年から2025年までの井上議員の政治活動を振り返り、直近の公約と実績のギャップまでを包括的に分析します。

1. 選挙公報・マニフェスト分析

公約の基本方針

井上議員が直近に当選した参院比例区選挙(2019年)の選挙公報を紐解くと、そのキャッチフレーズは「暮らしに希望を」であり、掲げられた政策は生活重視の姿勢が鮮明でした。

年金制度改革への取り組み

公約の柱の一つは年金制度の立て直しで、「減らない年金」を実現すると強調しています。具体的には、物価スライドによる年金削減(マクロ経済スライド)をやめ、低年金者への給付底上げを訴えました。

消費税増税阻止への姿勢

また消費税増税の中止も大きな争点で、「消費税10%への引き上げを止め、庶民の暮らしを守る」と主張しました。財源は「富裕層と大企業に応分の負担を求めれば、消費税に頼らずとも社会保障の財源は確保できる」とし、中小企業並みの法人税負担や株取引への課税強化で賄うプランを提示しています

雇用・労働政策の改革

加えて、「8時間働けば普通に暮らせる社会」をスローガンに雇用・労働政策の転換を掲げました。最低賃金をただちに全国一律時給1,000円に引き上げ、さらに1,500円を目指すこと、長時間労働の規制強化や正社員が当たり前の雇用ルールへの改革など、労働者の待遇改善が盛り込まれました

教育無償化と平和外交

教育分野では高等教育の無償化や奨学金の拡充、「誰もがお金の心配なく学べる社会」を掲げ、大学授業料の値下げ(公約では大学授業料半額)を約束しています。平和外交と憲法擁護も重要な公約で、「憲法違反の安保法制(戦争法)を廃止し、立憲主義を取り戻す」ことや、原発ゼロ・気候危機打開への取り組み、核兵器禁止条約の批准推進なども明記されました。

これら公約の頻出キーワードを抽出すると、「年金」「消費税」「最低賃金」「暮らし」「教育無償化」「憲法9条」「安保法制廃止」「原発ゼロ」「核兵器禁止条約」などが上位に並びます。

すなわち井上議員の政治姿勢は、家計応援と社会的公正、そして平和と人権擁護に重点を置いていることが読み取れます。実際、彼は選挙戦で「安倍政権のもとで暮らしも民主主義も危機に瀕している。市民と野党の共闘で新しい政治をつくる」と訴え、公約実現への決意を語りました。スローガン通り生活者目線の政策を軸に据えた公約だったと言えます。

2. 法案提出履歴と立法活動

政治とカネの改革法案