日本共産党参議院議員の吉良よし子(きら よしこ)氏は、東京選挙区選出で当選2回(2013年、2019年)を重ねた中堅議員であり、2025年の次期参院選に向けて3期目を目指している¹²。
1982年生まれの吉良氏は高知県高知市出身で、早稲田大学第一文学部を卒業後、都内の印刷会社でCSR(企業の社会的責任)関連の勤務を経て、田村智子参議院議員の秘書などを務めた異色の経歴を持つ³。
幼少期に「憲法9条」や日本共産党の平和主義を母親から教えられた経験から、戦争への恐怖と反戦の思いを強く胸に刻み、それが政治を志す原点になったと語られている⁴。
2009年には都議選に挑戦して落選するも、2013年参院選で初当選。約70万票を獲得し、共産党として東京選挙区で12年ぶりに議席を奪還する快挙を成し遂げた⁵。2019年の再選時も前回を上回る約70.6万票を得て3位当選し、議席を堅持している²。
党内では2017年に中央委員、2020年には常任幹部会委員に昇格し、青年・学生委員会責任者として若者政策を統括するなど役職も歴任している⁶。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの10年間にわたる吉良氏の政治活動を、選挙公約の分析から立法活動、国会論戦、党内外での取り組み、政治資金や情報発信まで包括的に振り返り、有権者がその歩みと実績を正しく評価できる材料を提供することを目的とする。
吉良よし子氏の直近の選挙公報(2019年参院選)をひも解くと、そのスローガンと政策の柱は明快である。掲げたモットーは「ブラックな働かせ方ゼロ。痛みによりそい、声をとどける。」であり、これは「誰もが8時間働けば普通に暮らせる社会」を実現するという決意を端的に表している⁷。
公約の第一の柱は雇用・労働政策で、「あらゆる現場から"ブラック企業"をなくす」「最低賃金を時給1500円に引き上げる」など大胆な働き方改革を訴えた⁸⁹。
第二の柱は教育・子育て支援で、「すべての学生の授業料を速やかに半額にし、段階的に無償化」「奨学金返済の猶予延長や利子免除による『奨学金地獄』からの救済」を掲げ、重い学費負担に苦しむ若者への救済策を前面に出した¹⁰。
第三に消費税増税の中止と年金削減反対を掲げ、大企業や富裕層に「応分の負担を求める」公平な税制を主張した¹¹¹²。
第四に平和と人権の分野で、安倍政権による憲法9条改憲や原発再稼働に明確に反対し、ジェンダー平等やあらゆる差別の根絶を誓っている¹³。
これら公約のキーワードを頻出順に見ると、「学費」「奨学金」「ブラック企業」「賃上げ」「消費税」「憲法9条」「原発ゼロ」「ジェンダー」といった語が上位を占めており、若者の生活保障と労働環境改善、そして平和と人権擁護に軸足を置く政治姿勢が浮かび上がる。
事実、学費半減やブラック企業根絶といったスローガンには吉良氏自身の体験や世代感覚が色濃く反映されており、就職氷河期世代出身の民間企業社員という経歴ゆえに弱者に寄り添う視点が前面に出た公約となっていると言える。その訴えは都内の学生や働く若者から大きな共感を呼び、前述の通り2度にわたる当選に結実した⁵²。
野党議員として吉良よし子氏が国会で果たしてきた立法面での取り組みは、提出法案や議決態度に端的に表れている。2015年以降、吉良氏は参議院議員発議による法案を精力的に提出してきた。調査によれば、この10年間で吉良氏が発議者に名を連ねた法案提出数は少なくとも十数本に上り¹⁴、日本共産党参院議員団の一員として他党に先駆けた先鋭的な政策提案を行っている。