木村英子(きむら えいこ)氏はれいわ新選組所属の参議院議員(比例区)で、副代表を務める政治家です¹。1965年横浜市生まれで、生後8か月のときの事故により重度の障害を負い、幼少期を施設や養護学校で過ごしました²。
1984年に養護学校高等部を卒業後、「地域で暮らしたい」という強い思いから19歳で施設入所を拒み、自立生活を開始³。以後35年以上にわたり障害者の自立支援運動に携わり、1994年には東京都多摩市で自立生活支援団体「自立ステーションつばさ」を設立しています⁴。長年、全国公的介護保障要求者組合の組合員として重度障害者の介護制度拡充を訴えてきました⁵。
政界には2019年の第25回参議院選挙でれいわ新選組から特定枠(比例代表)で初当選し、国政に新風を吹き込みました⁶。当選後、国会では参議院国土交通委員会や国家基本政策委員会などに所属し(2025年現在、国土交通委員会・国家基本政策委員会・国民生活・経済及び地方に関する調査会に所属)⁷、車いすでの登院や委員会出席にあたり国会施設のバリアフリー化を促すなど、現職議員として初の重度障害当事者として注目されました。
任期中、国会では自身の介助者を伴って活動する必要性から「議員活動に介護制度が使えない」制度上の壁を直撃し、この問題を社会に提起したことでも広く知られています⁸。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの10年間にわたる木村議員の政治活動を、多角的な調査に基づき包括的に分析します。木村議員の基本経歴から公約・立法活動の実績、国会での発言傾向、政党内での役割、政策実現度までを明らかにし、有権者がその歩みを正確に評価できる情報を提供します。
木村英子議員の掲げる政治信条は一貫して「しょうがいしゃがあたりまえに生きられる社会の実現」です⁹。2019年参院選の選挙公報やその後の政策集には、障害当事者としての経験に根差した具体的な公約が並びました。
スローガンには平易なひらがな表記で「しょうがいしゃ(障害者)」という言葉が何度も使われており、障害の有無にかかわらず「当たり前の生活」を送れる社会を目指すメッセージが伝わります。実際、木村氏の政策ページを見ると、一面に「しょうがいしゃが あたりまえに 生きられる社会の実現」と大書されており¹⁰、これが彼女の政治活動の原点であることがわかります。
マニフェストの柱はまず介護保障の充実でした。木村氏自身、「重度障害者が地域で当たり前に生活するには、運動しなければ命すら保障されないほど深刻な状況」にあると述べ、国政進出の決意を語っています¹¹。
選挙公報では、重度訪問介護などの介助サービスを拡充し、障害者が施設ではなく地域で自立して暮らせる制度の実現を最優先課題に掲げました。具体的には「介助者を付けて社会参加できる制度の実現」をうたい¹²¹³、現行制度では通学や就労等の社会参加目的では公的介護が使えない不備を正すと約束しました。
これは、当選直後に直面した自身の「議員活動中は公的介護が使えない」という問題意識そのものです¹⁴。また、公的介護制度を高齢者向けの介護保険と安易に統合しないことも明記され¹⁵、障害者の自立生活を保障する制度理念を守る決意が示されています。
次に安心して暮らせる地域社会の構築も掲げました。例えば住宅政策では「住まいは地域で生きるための基本的権利」として、障害者が部屋を借りる際の差別解消や支援策に取り組むとしました¹⁶。
さらに、障害者権利条約の完全実施を見据え、「合理的配慮の推進」などバリアフリーで住みよい街づくりを進める方針も示しました¹⁷。
教育面ではインクルーシブ教育への強い意欲がうかがえます。マニフェストには「子どもの頃から分けない教育」を掲げ、障害児も原則地元の普通学校で学べるようにすると約束しています¹⁸。具体的には就学前の「判別相談」の廃止や、必要な支援員の配置、学校設備のバリアフリー化など、共生社会づくりに向けた具体策が盛り込まれました¹⁹。