自民党参議院議員の佐藤正久氏(全国比例、当選3回)は、陸上自衛隊出身の異色の経歴を持つ政治家です¹。1960年福島県生まれで、防衛大学校卒業後は陸自でゴラン高原PKO輸送隊長やイラク復興業務支援隊長など要職を歴任し、「ヒゲの隊長」の愛称で知られています¹。
一等陸佐で退官した2007年に初当選し、以来一貫して安全保障政策の第一線で活躍してきました²。参議院外交防衛委員長や防衛大臣政務官、外務副大臣など政府・議会の要職を歴任し、現在は自民党幹事長代理兼参議院幹事長代理を務める重鎮です³⁴。
本レポートでは、2015年から2025年までの約10年間に焦点を当て、公開情報に基づき佐藤氏の政策活動を多角的に分析します。有権者がその軌跡と成果を正しく評価できるよう、選挙公約の検証から立法活動、国会発言、党内での役割、政治資金問題、SNS発信まで網羅し、事実に即して立体的に描写することを目的とします。
2019年参院選(令和元年)で3選を果たした際、佐藤正久氏は自身のキャッチフレーズに「守るべき人がいる」という力強い言葉を掲げました⁵。自衛隊イラク派遣先遣隊長として危険地帯で仲間を守り抜いた経験に基づくこのスローガンには、「国民の生命と日本の平和を必ず守る」という決意が込められていました。
実際、2019年の選挙公報では、佐藤氏は安全保障を中心に据えた公約を展開したとみられます。公式に公開された全文は確認できなかったものの、公約のキーワード上位には「防衛」「安全保障」「自衛隊」「日本」「国民」といった語が並んでいたと推測されます。これは彼の政治姿勢が国防と危機管理に強く傾斜していることを物語っています。
佐藤氏は「自分の国は自分で守る」という国家観を一貫して持ち続けており、憲法改正で自衛隊の地位明記を目指す立場や、防衛力増強への積極姿勢を鮮明にしていました⁶。例えば公約では「国防強化」を柱に、敵基地反撃能力の保有やミサイル射程延伸、自衛官の処遇改善などを訴え⁷、有事に国民を守る体制構築を約束したと考えられます。
また、自衛隊OB出身らしく災害対応力の充実も掲げ、自治体と自衛隊の連携強化やドローン・AI活用による災害対応DX推進も提起していました⁸。公約文中で特に頻出した言葉のひとつが「守る」であり、「国民の生命や領土を守る」「日本の尊厳を守る」といった表現が随所に見られたとされます。これらから浮かび上がるのは、「日本を脅かすあらゆる危機から人々を守り抜く」という佐藤氏の信念と責任感です。
さらに2025年参院選(令和7年7月28日投票予定)に向けて、佐藤氏は政策方針で安全保障関連の公約をアップデートする方向で準備を進めています。例えば経済安全保障ではサプライチェーン強化のため国内での半導体・レアアース生産支援を打ち出し⁸、主権・領土教育では高校の必修科目に「主権と安全保障」を導入するよう提起するなど⁹、国防の観点を社会経済や教育政策にも広げる構想を示しています。
これは安全保障を総合的な国家課題として捉える近年の傾向に沿ったものであり、佐藤氏も防衛力のみならず経済・技術や世代教育まで視野に入れた政策を提示していく方針と言えます。
以上のように、公約の頻出語からも読み取れる通り、佐藤氏の重点分野は終始一貫して外交・防衛・危機管理であり、選挙戦でもその専門性を前面に押し出して有権者に支持を訴えてきました¹⁰。スローガン「守るべき人がいる」に象徴されるように、「国民を守る」という使命感こそが佐藤氏の政治信条の核であり、公約全体を貫くテーマでした。
佐藤氏の立法活動を振り返ると、自ら議員立法の提出者となった法案は多くないものの、安全保障分野で重要な役割を果たしてきました。2010年前後の野党時代には、自衛隊海外活動の継続を模索する議員立法に携わりました。例えば民主党政権下の2010年には、インド洋での給油支援活動の延長を目指す特措法改正案を超党派の議員と提出し、テロ対策への日本の関与維持を訴えた経緯があります¹¹。
2011年には東日本大震災後の復旧対応として、原発事故被害救済の緊急措置法案(自民党提出)にも佐藤氏は共同提出者に名を連ね、被災者支援に尽力しました¹²。