田村麻美(1976年4月23日生まれ)は、UAゼンセン(流通・サービス産業の労働組合連合)の組織内候補として政界入りした労働運動出身の政治家です¹²。
2019年7月の第25回参議院通常選挙に国民民主党公認(比例代表)で初当選し、党内では国民運動局長などを歴任しています³⁴。以降1期6年の任期中、一貫して無所属や国民民主党の会派に所属し、労働現場の声を国政に届ける役割を果たしてきました⁴。
東京都板橋区出身で、生後半年で両親の実家がある広島県へ移住。同志社大学神学部卒業後にイオン系列企業へ就職し、労働組合専従を経た異色の経歴を持ち、現場感覚に根ざした政策提言が持ち味です⁵⁶。本レポートでは、2015年から2025年までの田村議員の政治活動を総括し、その公約と実績、政策スタンスを包括的に分析します。
田村議員が初当選を果たした2019年参院選比例区では、スローガンに「働く『仲間』の『笑顔』のために」を掲げ、労働環境の改善と生活向上を前面に訴えました⁴。
選挙公報や政策集には、サービス業で働く自身の経験を踏まえ、「カスタマーハラスメント(悪質クレーム)から働く仲間を守る法律の制定」「パート労働者の年収の壁をなくし、もっと働ける環境づくり」「最低賃金の引き上げと中小企業支援の両立」といった施策が並んでいました。
当時の選挙公約のキーワードを頻出順に見ると、「仲間」「笑顔」「働く」「現場」「ハラスメント」「賃上げ」「子育て」「安心」などが上位に来ており、職場環境の改善や生活者支援に重点を置く姿勢が鮮明です。
これらから、田村議員の政治姿勢は「働く人目線」であり、現場の理不尽を正し笑顔を取り戻す——すなわち労働者の権利擁護と所得向上を軸に据えていることが読み取れます。実際、彼女は当選直後から労働現場の課題を精力的に拾い上げ、後述するように国会論戦や法案提出で公約実現に奔走しました。
田村議員の立法活動は、野党議員ながら提案型の姿勢が光ります。とりわけ注目されるのが、2019年の初質問で取り上げた「カスタマーハラスメント対策法案」です。
田村議員は新人議員として厚生労働委員会でこの問題を提起し、以後も職場から寄せられた悲痛な声を国会で紹介し続けました⁷。その結果、厚生労働省は2022年に企業向けマニュアルを公表し、自治体でも防止条例が制定されるなど社会的認知が進みました⁸。
さらに田村議員は他党議員と協力して議員立法による独自のカスハラ対策法案を国会に提出し⁹、継続的な取り組みを行っています。この間、田村議員の執念ともいえる活動が実を結んだ形で、彼女自身「長年の訴えが実現に向かっている」と大きな成果として位置付けています¹¹。
また、田村議員は2025年4月に再提出された「カスタマーハラスメント対策法案」でも中心的な役割を果たしました¹²。この法案は事業者に対し悪質クレームへの対処方針策定や体制整備、裁判所による差止めも含む措置を義務付ける内容で、与党提出法案より踏み込んだ被害防止策となっています¹³。
提出後の記者会見で田村議員は「現場で起きていることへの具体的対処を盛り込んだ。我々の案では裁判所が関与し公正に判断される」と趣旨を説明し、政府案との差異を強調しました¹⁴。
田村議員は国民民主党の一員として各種法案に関与しました。例えば、2025年には立憲民主党などと共同で選択的夫婦別姓の民法改正案を衆議院に提出し、28年ぶりに国会審議入りさせました(結果的に継続審議)¹⁵。
2023年には同性婚(婚姻平等)を実現する法案の準備にも加わり、超党派での提出に向けた議論に参加しています¹⁶。