舩後靖彦議員の政治活動総覧(2019–2025)

概要

舩後靖彦(ふなご・やすひこ)は1957年岐阜県生まれの参議院議員で、難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を抱えながら政治活動に取り組んできた人物である¹

拓殖大学政経学部を卒業後、商社勤務や介護サービス会社役員を務めたが、41歳でALSを発症し全身麻痺の状態となった²。それでも独自の意思伝達装置を歯で操作し詩歌の創作や講演活動を行うなど社会参加を続け、2019年に山本太郎氏率いるれいわ新選組から参議院比例区特定枠1位で立候補して初当選した。

任期は2019年から2025年までの1期6年で、党副代表も務めた。本稿では2019年から2025年までの彼の政治活動について、掲げた政策公約と実績の関係、国会内外での取り組みを詳述する。

舩後氏は2025年6月17日の引退表明記者会見で「就任してから国会内のハード・ソフト両面でバリアフリー化が進んだ」と振り返っており、重度障害者の国政参加に新たな道を拓いたことに誇りを示した¹。その一方、「超人的に元気な人ばかりが議員を務める現状は健全ではない」とも述べており³、弱者の視点から政治の在り方に一石を投じた6年間であった。

1. 選挙公報・マニフェスト分析

2019年の参議院選挙で初当選を果たした舩後氏は、公約として「障害の有無を問わず誰もが幸せになれる社会をつくる」というビジョンを掲げた。これは自身がALS当事者として感じてきた社会のバリアを取り除く決意を端的に表したスローガンである。

選挙公報や公式サイトにまとめられた重点政策は、福祉・教育分野を中心に多岐にわたった。

第一に教育の包摂化

学校現場で障害児生徒への合理的配慮が提供されず不利益を被る事態をなくすこと、高校入試で定員内不合格(定員割れでも障害等を理由に不合格とする慣行)の解消⁵⁶、障害のある学生の高等教育機会保障、学校施設のバリアフリー化とインクルーシブ教育への制度転換などを掲げた⁷⁸

第二に地域生活の支援

重度障害者でも必要な医療や介助を受けながら地域で自立生活できる社会を目指し、介護制度の拡充や医療的ケア児と家族への支援強化、情報アクセス支援の充実(分身ロボットの活用や筆談・手話などコミュニケーション支援技術への助成)を盛り込んだ。

第三に脱施設・権利擁護

福祉施設や病院内での虐待防止と入所者の権利擁護機構の整備、施設から地域生活へ移行する支援策強化を訴えた。

第四に尊厳ある生の保障

障害や難病があっても本人の尊厳と生きがいを保てるよう支援制度や医療資源を充実させ、「尊厳死」法制化には反対する立場を明確にした。

第五に防災対策

災害時要配慮者(高齢者や障害者、LGBTなど多様なニーズを持つ人々)を取り残さないインクルーシブ防災を推進し、平時からの個別避難計画策定や研修への当事者参加、医療的ケア児や性的マイノリティへの配慮を避難所計画に組み込むことを提案した。

第六に政治参加の保障