井上義行議員の政治活動総覧(2015–2025)

概要

井上義行(いのうえ よしゆき)議員は神奈川県小田原市出身、1963年生まれの参議院議員(比例代表)です¹²

国鉄機関士から国家公務員に転じ、内閣官房長官秘書官や第一次安倍内閣での内閣総理大臣首席秘書官など異色の経歴を持ちます³。2013年にみんなの党公認で初当選し、同党解党後は新党「日本を元気にする会」を結党して国会対策委員長を務めました

2015年末に同会を離党して自民党会派入りし、2019年には参院選に自民公認で出馬するも一度落選します。2022年7月の参院選で比例区から返り咲き2期目となりました

在職期間中は拉致問題担当の要職や参院委員会理事を歴任し、安倍晋三元首相の側近としても知られます。本レポートでは2015年から2025年6月までの活動を対象に、井上議員の政策・立法活動を多角的に検証し、有権者がその歩みを立体的に把握できるようまとめます。

1. 選挙公報・マニフェスト分析

井上議員が直近で当選した2022年参院選比例区の選挙公報をひもとくと、そのスローガンは「国と家族を守り抜く。」でした

掲げた政策の柱は大きく3点あり、(1)家庭教育支援の推進、(2)安全保障体制の整備、(3)中小企業・観光・医療の振興でした。すなわち、伝統的な家族観に根ざした教育・子育て支援、国防力の強化、地方経済を支える中小企業や観光業・医療へのテコ入れを約束していたのです。

実際、自民党候補者ページでも「全国の家庭に笑顔を取り戻す!」を合言葉に、家庭支援や観光振興、介護、拉致問題への取り組みを挙げています¹⁰¹¹

また井上議員自身、「6つの国づくり」と称して〈感染症から命と暮らしを守る国〉〈若者が高度な教育を受け家庭を持てる国〉〈安定した年金と医療・介護従事者の充実を実感できる国〉〈全ての国民が住宅を持てる国〉〈自由と民主主義を守り、防衛力を国際水準に整備する国〉〈観光先進国になれる国〉といった将来像を掲げており¹²、公報の公約と軌を一にしています。

政策キーワードの特徴

選挙公報テキストから頻出するキーワード上位を分析すると、「家庭」「教育」「安全保障」「中小企業」「観光」「医療」「年金」「介護」「若者」「防衛」等が目立ちます。これらからは、井上議員が伝統的家族観に基づく少子化対策や教育支援、経済安全保障と地方経済の活性化、そして社会保障の充実に力点を置いている姿勢が浮かび上がります。

実際、「家族を産み出し、子どもたちを多く産み育てる環境を作らねばならない」という出陣式での訴えには、核家族化や同性愛による少子化への懸念すら語られており¹³、家族政策への強いこだわりが伺えます。

その発言は差別的との批判も招きましたが¹⁴、井上議員の基本的な政治姿勢として「家族の価値」と「国家の安全・繁栄」を両輪で守るという信念が一貫しているといえるでしょう。

2. 法案提出履歴と立法活動

野党時代の積極的な議員立法

国会議員としての井上義行氏の立法履歴を振り返ると、まず野党会派時代に精力的な議員立法を試みています。野党議員時代において井上議員は教育分野と財政行政分野でそれぞれ独自法案の提出を検討しました¹⁵

一つは「高等教育に係る家計負担軽減のための税制措置等推進法案」で、大学など高等教育の無償化・奨学金充実を目指す内容です¹⁶¹⁵。井上議員ほか2名の提出により検討されましたが、当時は少数会派からの提案だったこともあり委員会付託もされず審議未了で終わりました¹⁷

もう一つは「歳入庁の設置による税・社会保険料一元徴収の効率化推進法案」で、国税と年金保険料等の徴収を一元化する歳入庁創設を図るものです¹⁸。井上議員が筆頭提出者となり、荒井広幸氏や主浜了氏らと共同提出を検討しましたが、こちらも与党の賛同を得られず実現に至りませんでした¹⁹