赤松健議員の政治活動総覧(2015–2025年)

概要

赤松健(あかまつ・けん)議員は、日本を代表する漫画家から政界に転身した異色の政治家である。1968年愛知県名古屋市生まれ。海城高校、中央大学文学部を卒業後、1993年に漫画家デビューを果たし、『ラブひな』『魔法先生ネギま!』など累計5,000万部超のヒット作で知られる。

表現規制への対抗や著作権保護活動に早くから取り組み、日本漫画家協会常務理事や「表現の自由を守る会」最高顧問など業界団体でも活躍した。こうした実績が評価され、2022年夏の第26回参議院議員通常選挙で自由民主党全国比例候補として立候補し、52万8053票という自民党比例候補の個人名得票数トップ(全体では3位)で初当選した。

当選後は党派に属さず"表現の自由"を旗印に活動を開始し、任期中に党青年局顧問や文部科学部会副部会長など党内役職も歴任した。2024年11月、石破内閣の発足に伴い文部科学大臣政務官兼復興大臣政務官に就任し(在任:2024年11月〜現在)¹、政府側からも文化・教育政策や被災地復興に携わっている。

本レポートでは、2015年から2025年6月15日までの10年間を分析期間とし、漫画家出身議員である赤松氏の政策公約・国会活動・党内活動・発信力などを多角的に検証する。有権者が赤松議員の歩みと実績を正しく理解し評価できるよう、その政治活動全体像を浮き彫りにしたい。

1. 選挙公報・マニフェスト分析

赤松健氏の直近の選挙公報(2022年参院選)には、漫画家ならではのユニークなスローガンと具体的な政策ビジョンが凝縮されていた。キャッチフレーズは「表現の自由を守る!コンテンツの力で日本に元気を」であり、自身が培ってきた漫画・アニメ・ゲーム文化への誇りと、創作物規制への強い警戒感が前面に打ち出された。

公約の5つの柱

公約の柱は大きく5本に整理されている。

第一に「表現の自由を守る」

児童ポルノ禁止法改正や有害図書規制などで創作物が過度に規制されることに反対し、政府や国連の動きにも目を光らせる姿勢だ²。実際、赤松氏は過去にコミケ(同人誌即売会)存続の危機となった二次創作物の非親告罪化(著作権法改正)の際、ロビー活動で除外を勝ち取った経験があり、「創作者の表現の場を守る守護者」として知られる。

第二に「コンテンツの発展(文化GDP倍増)」

漫画・アニメ・ゲームといったコンテンツ産業の経済規模を倍増させる「文化GDP」構想を掲げ、日本発の作品を海外展開する「漫画外交」や国内外ファンコミュニティの拡大を図るとした。

第三に「創作環境の改善・整備(UGC活性化)」

フリーランスや新人クリエイターが安心して活動できるよう著作権ルールの整備、収益還元、同人・UGC(ユーザー生成コンテンツ)の促進を掲げる。実際、彼自身2010年に絶版漫画の無料配信サイトを立ち上げクリエイター収益モデルを構築した実績があり、業界内部の問題にも通じている。

第四に「デジタル化の推進(デジタルアーカイブ計画)」

文化資産のデジタル保存・公開を進める「デジタル庁補完計画」を訴え、漫画やアニメの原画・動画・資料を体系的に保全し、次世代へ伝える仕組みづくりを提案した。実際に赤松氏は東大・芸大・早大などで著作権やデジタルアーカイブについて講義した経験もあり、デジタル技術による文化継承に強い関心を寄せている³

第五に「子ども・若者の不安の解消」

自身の長女が不登校経験を持つことも背景に、児童手当拡充や不登校支援、若者の居場所づくりなど教育・福祉政策にも取り組むと約束した。