伊波洋一議員の政治活動総覧(2015-2025)

概要

伊波洋一(いは・よういち)議員は、沖縄県出身の無所属政治家で、「オール沖縄」勢力の代表的存在です。¹1952年に米国統治下の沖縄・宜野湾村に生まれ、琉球大学理工学部を卒業後、宜野湾市役所に奉職しました。¹

労働組合活動を経て1996年に沖縄県議会議員に初当選(2期)し、2003年には米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市長に就任(2期)しました。¹市長在職中には中学生までの入院費無料化など福祉政策を推進し、また普天間基地問題では米軍ヘリ墜落事故(2004年沖国大ヘリ墜落)を契機に基地の危険性を訴えて三度にわたり渡米要請行動を行うなど、基地撤去に奔走しました。

2010年の沖縄県知事選に革新統一候補として挑むも僅差で敗北。2016年7月の第24回参議院議員選挙では「オール沖縄」から沖縄選挙区候補として出馬し、現職大臣の島尻安伊子氏を破り初当選しました。³

参議院では高良鉄美氏と共に会派「沖縄の風」を結成し、無所属ながら党派並みの発言機会を得て活動を開始します。2022年7月の第26回参議院選挙では、与党が擁立した新人候補との接戦を制し再選(2期目)を果たしました。

在職期間は2016年7月から現在までで、本報告では2015年から2025年6月までの政治活動を対象に、伊波議員の政策・立法活動の全体像を描出します。伊波議員は一貫して無所属を貫きつつ会派代表として活動し、その経歴から沖縄の自治と平和を守る姿勢が際立っています。また学歴は普天間高校、琉球大学卒で、地方議員・市長を歴任した叩き上げの政治家です。

以下では、公約から立法・発言・政治資金・情報発信まで、多角的に伊波議員の活動実績を検証します。

1. 選挙公報・マニフェスト分析

伊波議員の直近の公約は、「沖縄の声を国会へ!」というスローガンに集約されます。2022年の参院選に向けて発表した15ページの政策集では、沖縄の復帰50年を節目に「平和で誇りある豊かな沖縄」を実現する青写真が詳細に描かれていました。

マニフェストの冒頭で伊波氏は2期目への決意を語り、無所属でも会派結成によって「政党と同等の立場で活動できた」ことに触れています。そして「県民の代表」として、この6年間に国会各委員会で多数の質疑を行い、沖縄の声を政策提言してきた実績を強調しました。

また、新型コロナ対応では沖縄選出議員「うりずんの会」を通じて政府にPCR検査拡充や休業補償延長を働きかけ、羽田・関空発の沖縄行き搭乗者への検査実現など成果を挙げたと振り返り、¹⁰「今後もコロナ禍で痛んだ沖縄経済の再生に力を入れる」としています。¹¹そして物価高騰への対策として「当面、消費税を5%に時限減税する」大胆な提案も盛り込みました。¹²

イハ洋一10の政策

マニフェストの柱は「イハ洋一10の政策」として整理されており、その内容から伊波氏の政治姿勢が浮かび上がります。

第1の政策:復帰50年――『建議書』に込められた平和で豊かな沖縄の実現

1971年の屋良朝苗知事の「建議書」から2022年の玉城デニー知事の「新建議書」へと受け継がれた県民の思い(基地のない平和、豊かな自己決定経済)を国政の場で実現する決意を示し、「政府の都合を沖縄に押し付けるのではなく、沖縄の立場で政治に取り組む」と宣言しています。¹³¹⁴¹⁵

第2の政策:新型コロナからの経済社会再生

観光業や飲食業などコロナで打撃を受けた産業への事業復活支援金・雇用助成金の延長、時限的な消費税5%減税、燃料高騰対策、医療・介護・学校現場への支援など、具体的な景気テコ入れ策を掲げました。¹⁶

第3の政策:県民所得向上と産業振興・雇用創出

デジタルトランスフォーメーション(DX)とイノベーションによる"稼ぐ力"強化、中小企業支援、最低賃金1,000円超への引き上げ、官民の非正規雇用の正規化促進、さらに沖縄に鉄軌道(モノレール・鉄道)を整備する公共交通網の充実など、経済自立に向けた施策を掲げています。¹⁷