日本維新の会所属の参議院議員、石井苗子(いしい みつこ)氏は、異色の経歴を持つ政治家だ。1954年東京都生まれの石井氏は、上智大学卒業後に日米漁業交渉の同時通訳やテレビキャスターとして活躍し、その後女優・作家として名を馳せた²²²³。
40代で看護師・保健師の資格を取得し東京大学大学院で保健学博士号を修めるという異例の転身を遂げ、東日本大震災では被災者医療支援NPO「きぼうときずな」を設立して被災地に尽力した²³。
こうした社会貢献の延長線上で政治を志し、2016年(平成28年)7月の第24回参院選におおさか維新の会(当時)公認で比例区から立候補し初当選²⁴。2022年(令和4年)7月の第26回参院選でも日本維新の会公認で再選し、現在当選2回・在職約9年となる²⁵。
東京維新の会代表代行や党副幹事長²⁶など党内で要職を歴任し、参議院では国土交通委員会理事や決算委員会委員を務めるなど政策立案に積極的に関与してきた²⁷。
本レポートは、2015年から2025年6月までの石井苗子議員の政治活動を包括的に分析し、有権者がその歩みとスタンスを理解する一助とするものである。女優や医療人としての経験を生かし「現場目線の政治」を掲げて政界に飛び込んだ石井氏の、公約の実行度や国会での存在感、政策的主張の特徴を検証する。
石井苗子氏が直近の選挙で掲げた公約には、彼女の個性と専門性が色濃く反映されている。2022年参院選の選挙公報では、「命を守る政治改革」をスローガンに、医療福祉の充実と行政の無駄削減を両立させる政策ビジョンを提示した。
具体的には、看護師・博士として培った知見から地域医療体制の強化や感染症対策の拡充を訴え²³、被災地支援の経験を踏まえた防災・減災政策(災害医療ネットワーク構築など)も公約の柱に据えた。
また、日本維新の会の基本路線に沿い「身を切る改革」として議員定数・歳費の削減や行政コストカットを掲げ²⁸²⁹、浮いた財源を子育て支援や教育無償化に回すと約束した。
さらに「女性の力を政治に」とのキャッチコピーを掲げ、選択的夫婦別姓の実現や女性の健康支援(不妊治療助成拡大など)にも言及した。
石井氏のマニフェスト頻出語には「改革」「医療」「福祉」「防災」「女性」「教育」などが並び、公約全体から〈生活者目線の改革派〉という姿勢が読み取れる。女優時代から培った発信力も相まって、公約文面は平易で具体性があり、有権者に政策の全体像を物語る構成となっていた。
頻出キーワード上位を見ると、「改革」が突出して多く、公約内で行政改革・政治改革に触れるくだりが目立つ(例:「議員定数の大幅削減」「既得権と闘う改革」)。次いで「医療・福祉」関連の単語が多く、石井氏が専門とする保健医療分野への強いコミットメントを示している。
「防災・復興」も上位に入り、被災地支援の経験を政治に活かす決意が感じられる。また「女性活躍」「子育て支援」などジェンダー・少子化対策の言葉も散見され、従来の維新の会候補にはない石井氏ならではの重点分野と言える。
これらから、石井苗子氏は〈行財政改革による財源捻出で社会保障を充実させる〉ことを信条とし、加えて自身の経験領域である医療・災害・女性政策に注力する政治姿勢が浮き彫りとなる。公約は理想論に留まらず、具体策(例:オンライン診療普及、備蓄薬品の計画管理、議員歳費2割カットなど)を示しており、有権者に対し現実的なプランを提示していた点も特筆されよう。
石井苗子議員の立法活動を見ると、与党議員とは一線を画す「議員立法」に積極的な姿勢がうかがえる。2016年の初当選以降、野党会派の一員として複数の法案を提出・共同提出しており、その多くは日本維新の会が掲げる政治改革や行財政改革に関するものだった。