神谷政幸(かみや まさゆき)議員は、自由民主党に所属する参議院議員(比例代表、当選1回)であり、薬剤師出身という異色の経歴を持つ政治家である。
1979年1月6日生まれの神谷議員は愛知県豊橋市出身で、福山大学薬学部を卒業後、製薬会社エーザイに入社し医薬事業部で勤務した経歴を持つ。その後、地元のドラッグストア経営に携わりながら、豊橋市薬剤師会や愛知県薬剤師会の役職を歴任して地域医療に貢献してきた[^23]。
2020年3月には日本薬剤師連盟副会長にも就任し、医薬業界団体で要職を務めた[^24]。こうした専門的なバックグラウンドを評価され、2022年7月の第26回参議院議員通常選挙において、自民党の組織内候補(日本薬剤師連盟推薦)として比例代表から立候補し初当選した[^25][^26]。
現在までの在職期間(分析対象期間2015–2025年)は約3年だが、神谷議員は早くも党内外で存在感を示し始めている。当選直後から参議院厚生労働委員会理事や議院運営委員会委員に就任し[^27]、医療や社会保障政策を扱う場で積極的に活動している。
党内では厚生労働部会の副部会長に抜擢され[^28]、薬剤師の専門知識を政策立案に反映する役割を担うほか、青年局長代理や女性局次長といったポストも歴任し[^29]、幅広い政策分野に関与しているのが特徴だ。学歴・職歴を通じて一貫して「医療・薬剤」に携わってきたことから、国民の健康と安心を守るという志を掲げて政治活動に取り組んでいる[^30]。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの神谷政幸議員の政治活動をインターネット上で確認できる情報にもとづき総合的に分析する。有権者が神谷議員の軌跡と現在の政策スタンスを深く理解できるよう、選挙公約と実績の比較、国会内外での発言や行動、データから見える傾向などを網羅的に整理した。薬剤師から国政に転じたこの新人議員が、どのように専門性を発揮し、また課題に直面しているのか、その全体像を明らかにすることが本レポートの目的である。
2022年7月の参議院選挙で初当選を果たした際、神谷政幸議員は「国民が健康で安心して生活できる社会を創る」とのスローガンを前面に掲げた[^30]。実際、選挙公報や公式サイト「神谷の約束」に掲載された政策を見ると、医療・福祉分野を中心に据えた公約が並んでいる。
第一に、国民皆保険制度の堅持と社会保障制度の充実・強化である[^31]。神谷議員は薬剤師として現場を知る立場から、日本の皆保険体制を将来にわたり守り抜き、高齢化社会に対応した社会保障の安定化を図ることを訴えた。
第二に、「かかりつけ薬局・薬剤師」の推進による医薬分業の定着[^32]である。地域の薬局が身近な健康拠点として機能するよう、制度面・運用面の改革に取り組む決意を示した。
第三に、セルフケア・セルフメディケーションの推進[^33]、すなわち国民の健康寿命を延ばすため、市販薬や健康管理を活用して自己管理能力を高める政策である。これも薬剤師としての知見に根ざした公約と言えよう。
さらに女性・高齢者・障がい者が安心して活躍できる社会の構築[^34]も掲げ、誰もが社会参加できる包摂的社会を目指す姿勢を示した。加えて子育て支援の充実・少子化対策の強化[^35]にも触れており、児童手当の拡充や育児支援策を訴えている。最後に、ドーピングや薬物乱用対策の強化[^36]を挙げ、薬剤師の視点から社会の健全化に貢献する決意を示した。
以上のように、公約には医療・薬学分野の専門性を活かしたものが多く、「薬と医療を通じて国民の健康と未来に希望をもたらす」という神谷議員の信念が色濃く表れている[^37]。選挙公報に頻出したキーワード上位も、「薬剤師」「薬局」「医薬分業」「健康」「社会保障」などが占めていたと分析される(実際、当選時公約テキストから抽出した頻出単語では「薬剤師」「医薬品」「健康」等が上位に来た)。これらから読み取れるのは、神谷政幸議員が医療提供体制の整備と公衆衛生の向上を政治使命に据えているということである。
一方で、公約に含まれていた「女性活躍」「少子化対策」などのテーマについては、具体的施策の記載が簡潔であり、専門分野以外では党の政策集を踏襲した内容が多かったとも言える。例えば夫婦別姓や同性婚といった家族制度改革については公約で触れられず、この分野では保守政党の公認候補らしく慎重姿勢がうかがえた。総じて、神谷議員のマニフェストは薬剤師の強みを前面に、社会保障充実と地域医療の強化を図るという明確なメッセージを有権者に伝えるものだった。
神谷政幸議員の立法活動を振り返ると、2022年の初当選以降、議員立法の提出者に名を連ねたケースはごく限られている。参議院議員1期目の新人ということもあり、現時点まで本人が提案者となった法案は確認できないのが実情だ。これは与党の新人議員としてまず委員会審議や党内議論で経験を積む段階であることに起因する。