ラサール石井(本名:石井朗夫、1955年10月19日生まれ)は、長年お笑い芸人・俳優・演出家として活躍してきた異色の政治家である。名門のラ・サール高校を経て早稲田大学に進学しましたが中退し、コントグループ「コント赤信号」で一世を風靡しました。
その後もテレビや舞台で幅広く活動し、近年はコラムニストとしての顔も持ちます。2010年代半ば頃から、政権批判や社会問題についてSNSや新聞で積極的に意見を発信するようになり、歯に衣着せぬ"文句言いおじさん"として注目されました¹。
芸能人が政治的発言をすることへの風当たりは強く、実際にテレビ出演の機会減少など本業への影響も少なくありませんでした。それでも「政権を批判する人は口を閉じていろ」という圧力には屈せず、「政治的発言を一つの仕事としてやっていこう」と決意して発信を続けてきた人物です²。
ラサール石井候補は社会民主党(社民党)に共感し、党首の福島瑞穂氏からの打診を受けて政界進出を決意しました³。2025年7月の第27回参議院議員通常選挙において、社民党公認で全国比例区候補として立候補し、69歳にして初めて政治の舞台に挑戦しました⁴。
過去に国政選挙への出馬歴や公職経験はなく、当選回数もゼロですが、政治に強い危機感を抱き「自ら声をあげるだけでは変わらない。だからこそ、自分が中に入って行動しなければ」と覚悟を語っています⁵。
本報告では、2015年から2025年までの10年間を分析期間とし、芸能界から政界へ転身したラサール石井候補の政治活動と主張の全体像を明らかにします。有権者が同氏を深く理解し評価できるよう、選挙公約から発言傾向、政策実現度まで事実に基づき網羅的に記述します。
ラサール石井候補は直近の参院選(2025年)で初めて公的なマニフェストを掲げました。スローガンは「あなたが笑顔で暮らせる国を」。専門用語を使わず日常生活の延長で語られるこのフレーズには、物価高や子育て、介護、年金といった庶民の悩みを解決したいという思いが込められています⁶。
実際、石井候補の発言には常に庶民目線が貫かれており、人々の「不安なく笑顔で暮らせる」社会の実現が根幹にあります。
公約の柱は経済と社会保障の立て直しでした。具体的には「消費税廃止」を大胆に提唱し、最低でも食料品の税率をゼロ%にすると訴えました⁷。
さらに「全国一律最低賃金1500円」の実現、社会保険料の事実上半減(国費による肩代わり)、そして月額10万円の最低保障年金制度の創設など、弱い立場の人々を支える大胆な政策を掲げています⁸。
これらはいずれも社民党の公約と軌を一にするもので、福島党首が第一声で説明した政策群でもあります⁹。石井候補自身、街頭演説で「まず消費税を廃止すべきだ」と声を張り上げ、「大きな目標を掲げて交渉すれば、食料品非課税や税率5%への引き下げに漕ぎ着けられる。徐々になくしていきましょう」と妥協を許す姿勢も見せず訴えました¹⁰。
公約から浮かび上がるもう一つの軸は「人権と平和の擁護」です。石井候補は演説で、外国人排斥や社会的弱者への差別が広がる風潮に強い危機感を示し、「『日本人ファースト』って一体何ですか?人間にファーストもセカンドもないんですよ。みんな同じなんです!」と声高に訴えました¹¹。
これは近年台頭するナショナリズムへの痛烈な批判であり、人間の平等と共生を重んじる姿勢を明確に示すものです。実際、聴衆からは「そうだ!」と賛同の拍手が起こり¹²、石井候補のメッセージが支持層の心に響いていることがうかがえました。