山尾志桜里(やまお しおり、戸籍名:菅野志桜里)は1974年7月24日生まれの弁護士・元検察官で、宮城県仙台市出身です¹。2009年に民主党公認で初当選した衆議院議員として、愛知県第7区選出で3期務め、在職中は民主党・民進党・立憲民主党・国民民主党と政党の再編に伴い所属を変えました²。
東京大学法学部を卒業後に検事となった異色の経歴を持ち、子供の頃にはミュージカル「アニー」で主役を務めた経験もあります³。国政で頭角を現したのは2016年、民進党政調会長(政策責任者)に抜擢されてからで、保育園待機児童問題を追及する国会質疑で政府の姿勢を「子どもに金を出さない」と痛烈に批判し世論の共感を呼びました⁴。
その後、2017年には民進党執行部で幹事長候補に名前が挙がるなど将来を嘱望されましたが、同年秋に週刊誌で既婚男性弁護士との交際疑惑が報じられたことを受けて離党し無所属で出馬、辛くも小選挙区で議席を守りました⁵。
その後立憲民主党へ合流しましたが、憲法改正論議への姿勢をめぐる意見の相違から2020年に同党を離れ、国民民主党へ移籍しました⁶。2021年の衆議院選挙には出馬せず任期満了で議員を退き、一時は政界を離れる形となりました⁷。
しかし「中道から政治を動かす」という信条のもとで再起を期し、2025年の参院選に東京選挙区から無所属で立候補を表明し、現在も国政復帰を目指して精力的に活動しています⁸。本レポートでは、2015年から2025年までの山尾志桜里氏の政治活動を振り返り、掲げた政策と実績を検証します。
山尾氏の政策の特徴は、従来のリベラル野党議員の枠に収まらない独自色にあります。2025年の参院選では「真ん中から政治を動かす力」を掲げ、「安全保障と人権保障の両立」を訴えるなど、中道志向を前面に打ち出しています⁹。
具体的な公約の柱として際立っているのは「憲法」と「皇室」に関するテーマです。山尾氏は自衛隊を明文で憲法に位置付ける憲法9条2項の改正に前向きである一方、伝統的に保守政党が及び腰だった女性・女系天皇容認を強く主張し、「皇位継承策の議論にタブーは不要」と訴えています¹⁰。
また、中国による人権侵害や安全保障上の脅威に各国議会が連携して立ち向かうため、自身が国際事務局長を務める対中政策議連(IPAC)の活動経験をアピールし、人権外交の推進を掲げた点も特徴的です¹¹。
一方、かつて待機児童問題で名を馳せた山尾氏ですが、近年の公約では子育て支援策や待機児童ゼロに向けた施策にも触れつつ、その比重は憲法・安全保障に比べると小さく、政策の軸足を大胆にシフトさせた印象があります。
この変化からは、山尾氏が中道的な安保・改憲路線に軸足を移し、有権者の新たな支持基盤を開拓しようとしている姿勢が読み取れます。また、「選択的夫婦別姓の実現」や「LGBTカップルへの法的保障(同性婚含む)」といったリベラル改革も公約に掲げられました¹²。
これらは旧所属の立憲民主党が重視するテーマで、山尾氏自身も一貫して賛成の立場ですが、憲法論議ほど前面には出さず中盤に据える構成でした。総じて、公約全体は保守とリベラル双方の看板政策を折衷した内容となっており、"一人会派"として独自路線を歩む決意が感じられます。
国会議員時代の山尾志桜里氏は、野党議員として限られた立法機会の中でも積極的に議員立法に取り組みました。その提出法案を振り返ると、大きく2分野に分類できます。
第一は刑事法制分野で、2017年末に衆議院に提出された「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益規制法改正案」です¹³。これはいわゆる「共謀罪法」の成立を受け、懸念された市民のプライバシー侵害リスクを軽減するために野党側が提起した修正案で、山尾氏が筆頭提出者となりました。
具体的には捜査当局による恣意的な適用を防ぐ歯止め規定を追加する内容でしたが、2017年当時の与党の反対多数で審議未了に終わりました¹⁴。