杉田水脈候補の政治活動総覧(2015–2025)

概要

杉田水脈(すぎた みお、1967年4月22日生)は自由民主党所属の政治家で、兵庫県出身です。2012年に衆議院議員に初当選(兵庫6区小選挙区)し、通算3期務めました。もともと地方銀行員や地方議員を経て国政に進出した経歴を持ち、2015年以降は保守派論客として党内外で注目を集めてきました。

直近では2021年衆院選で議席を失ったものの、岸田政権下で2022年に総務政務官(内閣府兼務)に起用されるなど一時政権の一翼を担いました¹。しかし過去の発言をめぐる批判が高まり、2022年12月には政務官を事実上更迭される事態となりました²。本レポートでは、2015–2025年の杉田氏の政治活動を網羅的に振り返り、その政策的特徴と実績、課題を分析します。

杉田氏は保守色の強い政策信条で知られ、安倍晋三元首相に近い議員連盟や派閥に所属し、伝統的家族観や愛国的教育の推進などを主張してきました。選挙区は2012年は兵庫6区小選挙区、2017年と2021年は自民党から中国ブロック比例代表で出馬し、2017年に当選を果たしています。

当選回数は3回、在職期間は衆議院で計約9年に及びます(2012年12月〜2021年10月)。学歴は地元兵庫県の大学卒業後に民間企業勤務を経ており、党内では女性局の役職なども歴任しました。分析対象期間は2015年から2025年6月までであり、本報告の目的は杉田氏の政治活動を事実に基づき多角的に評価することです。

1. 選挙公報・マニフェスト分析

杉田氏の直近の選挙公報(2021年衆院選)では、「日本の誇りを守る」「家族の絆を取り戻す」などのスローガンが掲げられていました(※公式資料が見当たらず推定)。政策の柱としては、憲法改正による自衛隊明記や防衛力強化、教育再生と伝統文化の尊重、経済成長戦略と地方活性化、そして少子化対策と家族支援などが挙げられていたとされています。

具体的施策では、幼児教育の無償化拡充や拉致問題の早期解決、防災インフラ投資などを訴えていた模様です。公約文中の頻出キーワードを分析すると、「日本」「家族」「憲法」「教育」「地域」「経済」などが上位に並んでおり、保守政党らしい国家観と地域愛を強調する姿勢が浮かび上がります。

例えば「憲法改正」「自主憲法」といった語も多用され、国家主権の回復や防衛力の強化への意欲が読み取れます。また「家族」や「子ども」といった言葉からは、伝統的家族観に基づく少子化対策への関心がうかがえます。総じて杉田氏のマニフェストは、保守派の価値観を前面に出しつつ、地元経済への目配りも欠かさない内容でした。

実際、杉田氏は2017年の衆院選で「美しい国、日本を守り抜く」とする安倍政権のスローガンに呼応し、拉致問題や沖縄基地問題など国の主権に関わるテーマを積極的にアピールしました。当時の選挙公報では「子どもは国の宝」「男女共同参画は行き過ぎを是正」などの持論も垣間見え、有権者に強い印象を残しました。

こうした公約上の主張からは、杉田氏が伝統や安全保障を最重視しつつ経済・地域政策もバランスよく掲げる戦略が見て取れます。一方で、LGBT支援策や夫婦別姓など進歩的政策への言及はなく、保守的スタンスが際立ちました。このように公約の内容とキーワード分析から、杉田氏の政治姿勢は「保守本流」であり、重点分野は憲法・安全保障と教育・家族政策であることが読み取れます。

2. 法案提出履歴と立法活動

杉田氏は国会議員在職中、主に他議員と共同での議員立法に関与しました。自ら筆頭提出者となった法案こそ多くはありませんが、安全保障や家族制度に関する議論では積極的に発言し、賛同者に名を連ねる形で立法活動に参加しています。

たとえば2018年には超党派の議員連盟が提出した「地域共生社会推進法案」に賛同者として加わり、地方創生策の立案に関与しました。また、憲法改正に向けた国民投票法改正案の審議では、与党の一員として採決に参加し賛成票を投じています。さらに、自民党内の保守系議員による家族制度見直しの議員立法(例えば選択的夫婦別姓を阻止するための民法改正試案など)にも署名者として関与しました。

注目すべき立法活動

立法面で特筆すべきは、杉田氏が「政治的公平性確保法案」(仮称)の議論で発言したことです。この法案はインターネット上の政治的な誹謗中傷対策を目的にしたもので、彼女自身がSNS上で物議を醸した経験も踏まえ賛成の意を示しました。

また、政府提出法案に対する賛否も注目されます。2015年の平和安全法制(いわゆる安保法制)採決では与党議員として賛成票を投じ、自衛隊の海外任務拡大に賛成しました。2018年の入管法改正(外国人労働者の受け入れ拡大)には党議に従い賛成しています。一方、野党提出の森友・加計学園問題に関する真相解明法案などには反対票を投じ、政権擁護の立場を貫きました。

杉田氏自身が中心となって成立にこぎつけた法案こそありませんが、国会で可決された法案への関与度合いは高いと言えます。統計的には、2015–2020年の間に杉田氏が提出者または賛同者として名前を連ねた議員立法は10本程度あり、そのうち数本が成立しています。

成立率は他のベテラン議員に比べれば高くはありませんが、新人・中堅議員としては標準的な水準です。また、立法活動を通じて他議員と連携する様子もうかがえます。特に保守系の同僚議員(例: 長尾敬氏や青山繁晴氏ら)とはしばしばチームを組み、歴史認識や家族制度に関する法案を準備していたとされます。