福山守(ふくやま・まもる)は自由民主党所属の政治家で、徳島県出身。1952年生まれの73歳で、麻布獣医科大学卒業の獣医師資格を持つ異色の経歴だ¹。
地方政界で経験を積み、徳島市議1期を経て徳島県議を6期務め、県議会議長も歴任した古参の地方政治家である。2012年の第46回衆院選で満を持して国政進出し、徳島1区で当時官房長官だった仙谷由人氏を破って初当選²。
その後、小選挙区の区割り変更に伴い比例四国ブロックに回り、2014年・2017年と連続当選し衆議院議員を通算3期務めた³。在任中は党副幹事長や党環境部会長代理など要職を歴任し、第2次安倍改造内閣では内閣府・環境大臣政務官として政府の一員にも加わった⁴。
額賀派から石破派(水月会)へ所属派閥を移し、保守本流の一角として存在感を示した⁵。しかし2021年の第49回衆院選では比例単独候補の優遇枠から漏れて惜敗し、国政の座をいったん失った⁶。
その後は地元徳島に軸足を移し、2024年4月の徳島市長選に無所属で挑戦。国民民主党県連の推薦も受け「混乱する市政の立て直し」を訴えたものの、元職の遠藤彰良氏に敗れた⁷。
2025年現在は参院選比例区の特定枠候補として政界復帰を目指しており、連盟組織の推薦も取り付けている⁸。
本レポートでは、2015年から2025年までの福山氏の政治活動をインターネット上で確認できる情報に基づき、多角的に分析する。地方から国政まで長年にわたるキャリアを通じ、福山氏が何を掲げ、何を成し遂げ、どのような課題に直面してきたのかを描き出すことを目的とする。
福山氏の直近の選挙公約をひもとくと、その掲げるスローガンや政策から人物像が浮かび上がる。2021年衆院選時(比例四国単独)の公約では、まず地方創生と経済活性化が大きな柱だったと見られる。
地元徳島を含む地方圏の疲弊に歯止めをかけるため、交通インフラ整備や企業誘致策、農林水産業の振興など地域経済を底上げする具体策に力点を置いたと推測される。実際、福山氏はTPP交渉に慎重な「TPP交渉における国益を守り抜く会」に所属しており⁹、農業など地元産業を守る姿勢を一貫して示してきた。
また「徳島を日本一子育てしやすい街に」というモットーを掲げて2024年の市長選に臨んだ経緯からも、少子化対策や子育て支援への関心が高いことが窺える¹⁰。児童手当拡充や学校給食無償化、高校生までの医療費無料化など、地方発の子育て支援策を国政レベルでも推進する意欲を持っていたと考えられる。
一方、環境・エネルギー政策も福山氏の公約の重要な柱だった。環境政務官の経験から、2050年カーボンニュートラル実現への強いコミットメントを示し、温室効果ガス削減や再生可能エネルギー推進を訴えた¹¹。
実際、党の環境部会長代理として2021年には政府の「地球温暖化対策計画」見直しに向けた提言取りまとめに携わり¹²、衆議院本会議でも気候非常事態宣言や温暖化対策法改正に際して代表質問に立っている¹³。
このことから、公約段階でも気候変動対策を前面に出し、「次世代に豊かな地球を引き継ぐ」というスローガンを掲げていた可能性が高い。加えてエネルギー政策では、地方の実情も踏まえ原子力発電の活用にも前向きだった。毎日新聞の候補者アンケートで福山氏は「原発は日本に必要」と明言しており¹⁴、エネルギー安全保障と環境技術の両立を図る現実路線を公約に織り込んでいたと見られる。
福山氏の公約のもう一つの特徴は、憲法改正や安全保障への積極姿勢である。自民党の一員らしく、「憲法改正に賛成」と明確に立場を示し¹⁵、緊急事態条項の創設などを公約集会でも訴えていた。