杉尾秀哉議員の政治活動総覧(2015–2025)

概要

杉尾秀哉(すぎお ひでや)議員は、元TBSテレビ報道記者・キャスターという異色の経歴を持つ立憲民主党所属の政治家である¹。1957年9月30日、福岡県北九州市生まれ、東京大学卒業後に報道の世界で活躍し、看板ニュース番組のキャスターなどを歴任した²

2016年、第24回参議院議員通常選挙に野党統一候補として長野県選挙区から立候補し、自民党現職候補を破って初当選³。長野県選挙区(定数1)を地盤に、2022年の第26回参院選でも野党統一候補として再選を果たし、現在2期目を務めている

在職中に民主党・民進党から旧立憲民主党を経て新・立憲民主党へと政党再編を経験し、党長野県連代表や参議院国会対策副委員長など要職を歴任してきた。兵庫県出身ながら長野県に軸足を移し、「参議院に杉尾あり」と言われるほど精力的な国会活動を展開している

本レポートでは、2015年から2025年6月までの10年間を分析期間とし、杉尾議員の政策公約とその実績、国会内外での活動の全体像を描き出すことを目的とする

1. 選挙公報・マニフェスト分析

杉尾秀哉議員が直近の選挙(2022年)で掲げた選挙公報・マニフェストをひもとくと、キャッチフレーズは「長野県民のみなさんと、信州から日本を変える!」。そこには「杉尾ひでやの10の約束」と題した10項目の政策公約が並び、幅広い分野にわたる改革ビジョンが示されている

生活・社会保障政策

その内容を詳細に見ると、まず第一に「県民のいのちと暮らしを守る政治」を掲げ、新型コロナウイルス対策の徹底や物価高騰への家計支援策を強調する。具体的には、コロナ禍からの速やかな回復と生活困窮者への支援、そして「アベノミクスからの脱却」による円安・物価高是正を訴え、消費税率を一時的に10%から5%へ引き下げる減税も盛り込んだ

防災・減災の強化や行政サービス維持にも触れ、社会のセーフティネット充実を約束している¹⁰

子育て・教育支援

第二に「チルドレンファースト〜社会全体で子どもを育てる」として、いわゆる「人への投資」への予算倍増を掲げる¹¹。子ども手当の復活・拡充、高等教育の授業料半減と将来的な無償化、高校授業料や学校給食の無償化まで、思い切った教育支援策が並ぶ¹²

保育士の待遇改善や出産費用無償化、不妊治療への保険適用拡大も約束し、少子化克服に向けた総合的な子育て支援ビジョンを提示した¹²

地方創生・産業政策

第三の柱「地域で暮らすことに誇りが持てる社会」では、農林業の再生を目玉に据える。農家への個別所得補償制度の復活・拡充や国産木材利用の推進などの「一次産業ルネサンス」を提唱し¹²、過疎地対策や公共交通の維持、「信州で学び信州で働く(郷学郷就)」ための地方大学誘致など、地方に人が定着するための政策を具体的に示した¹³

税制・社会保障改革

さらに、第四の「公平・公正な税と社会保障」では、税制の直間比率見直し(消費税や金融所得課税の是正)や、支払い能力に応じた負担(応能負担)の徹底を掲げ¹⁴、富の再分配による格差是正と財政健全化の両立を目指すとした¹⁵

第五の「努力が報われる働き方へ」では、実質賃金の底上げや非正規雇用の正規化推進に触れ、30年で倍増した非正規率を是正することが少子化・経済停滞の克服につながると訴えた¹⁵。全国一律の最低賃金引き上げと中小企業支援も明記し、働く人の処遇改善による経済の底上げを図る¹⁶

地方分権・デジタル社会