川裕一郎(かわ ゆういちろう、1971年10月27日生まれ)は石川県金沢市出身の政治家であり、現在は参政党副代表を務める。金沢市議(1期)から石川県議(通算5期)へと地方政治で経験を積み、2025年には第27回参議院議員通常選挙の全国比例区に挑戦予定である¹ 。
川氏は北陸コンピュータ専門学校で情報工学を学び、地元IT企業の役員となったが、「人生を懸ける仕事ではない」と感じて退職。その後福祉分野で会社経営に乗り出し、現場で弱者が光を当てられていない実情を知ったことが政治を志す原点となった。
2007年、民主党公認で金沢市議選に初当選(4,984票)しトップ当選を飾る² 。以後、「弱い立場の人に光を当てる」との信念を掲げて活動し、2011年には石川県議選に民主党公認で当選して県政に進出した³ 。
しかし2014年、民主党県連が長期政権の現職知事・谷本正憲氏を推薦すると、これに反発して離党し、自ら知事選に無所属出馬する道を選んだ⁴ 。知事選(2014年3月投票)では善戦するも3人中2位で落選(得票94,212票、22.4%)⁵ 。告示日に県議を自動失職するリスクを伴う挑戦だったが、川氏の「長いものに巻かれない」という信条を示すエピソードとなった⁶ 。
落選後の同年10月、石川県議補選(欠員3)に立候補してトップ当選し、県議に返り咲く⁷ 。以降2015年、2019年、そして参政党公認で臨んだ2023年の県議選でも当選を重ね、地方議員としてのキャリアを築いた⁸ 。
参政党には結党直後の2021年末に参加し石川支部長に就任、2022年3月から副事務局長、2023年8月から副代表を務めている⁹ 。本レポートでは、2015年から2025年までの川氏の政治活動を分析対象とし、地方から国政への挑戦まで一貫した軌跡と政策の全貌を描き出す。地方議員時代の実績から参政党での役割、さらには公約の実現度まで、川裕一郎という政治家の像を多角的に捉えることを目的とする。
川裕一郎氏が直近の選挙で掲げた公約には、地方政治での経験が色濃く反映されている。2022年の第26回参院選(全国比例)に際して公表された選挙公報では、キャッチコピーに「未来への責任――次世代に責任が持てる政治を!」と謳い¹⁰ 、具体的に3つの提言を掲げた¹¹ 。
第一に「情報公開の推進」。行政の予算編成過程を透明化し、税金の無駄遣いを厳しくチェックするというものだ¹² 。第二に「真の二元代表制の確立」。首長と議会が緊張感を持ち、県民の声が届く開かれた県政を目指すとし¹³ 、いわば執行部と議会の健全なチェックアンドバランスを強調した。第三に「動物愛護の推進」。動物の命と尊厳を守り、心豊かな共生社会を確立することを約束している¹⁴ 。
これら3本柱から、川氏の政治姿勢が浮かび上がる。すなわち「行政のガラス張り」と「議会改革」による統治機構の健全化、そして「弱い命に寄り添う」優しい社会づくりである。実際、公報には川氏の行動原則として「常に公平な視点で考える」「長いものには巻かれない」「人として正しいことを貫く」との宣言も記されており¹⁴ 、権力迎合を良しとせず正論を貫く信条を明確に示している。
公約に頻出するキーワードを見ても、川氏の関心領域がうかがえる。「情報」や「公開」といった言葉が繰り返し登場し透明性への強い意欲が感じられるほか、「動物」や「命」という語も目立つ。実際、スローガンの裏には川氏自身の体験がある。彼は「小さな命を大切にできない政治は、人にも優しくできない」と常々語っており¹⁵ 、動物愛護の訴えは単に愛玩動物の問題に留まらず、政治の基本姿勢として弱者や命を大切にすることの象徴だと位置付けている。
こうした理念は参政党の政策にも反映された。参政党は当初、教育や食育などを重視する保守系の政策方針で発足したが、川氏の長年の思いが実を結び動物愛護政策が参院選追加公約として正式採用された¹⁶ 。その中には「殺処分ゼロの全国展開」「悪質なブリーダー規制強化」「動物虐待の厳罰化」といった具体策が盛り込まれ、党の公約に新たな一頁を加えている¹⁷ 。これは川氏が地方で培ったテーマを国政公約に昇華させた例と言えよう。
総じて、川裕一郎氏のマニフェストは行政改革の硬派なテーマと、人間味ある優しさの双方を掲げており、地方政治家としての実直さと市民目線を両立させた内容になっている。
川氏は2025年時点で国会議員の経歴がないため、国会での法案提出実績はゼロである(提出法案数0本、可決0本)。しかしその代わり、約15年にわたる地方議員としての立法・政策活動が豊富に記録されている。石川県議会では所属会派の規模上、議員立法で条例を単独提出するといった場面は多くないが、議会質疑や委員会での提案を通じて政策形成に影響を与えてきた。