松田学(まつだ・まなぶ、1957年11月11日生まれ、67歳)は、元財務官僚であり元衆議院議員という異色の経歴を持つ政治家である。京都府出身で東京大学経済学部を卒業後、大蔵省(現・財務省)に入り、財政金融畑を歩んだ¹。
2010年に国政進出を志して財務省を退官し、保守系の新党・たちあがれ日本から政界入りを目指すも2010年参院選では神奈川県選挙区で落選²。その後、石原慎太郎氏らの新党結成に参加し、2012年衆院選では日本維新の会から比例南関東ブロックで初当選を果たした³。
しかし所属政党の変遷はめまぐるしく、維新の分党に伴って次世代の党に参加し、2014年衆院選では神奈川7区から出馬するも落選⁴。政界を離れた後は「松田政策研究所」を立ち上げ、大学客員教授やシンクタンク研究員として活動しながら、日本の将来像について発信を続けた⁵。
2022年に新興の保守系政党参政党と出会い、同年夏の第26回参議院議員通常選挙に比例区から立候補。個人得票73,672票を獲得したが議席獲得には届かず落選した⁶。
しかし選挙直後の7月15日、参政党の初代代表に就任し党運営の舵取り役となった⁷。以降、国政復帰を目指し活動を続け、分析対象期間の2015–2025年は、政界の外にいながら政策提言や情報発信で存在感を示し、2023年8月には参政党代表を神谷宗幣氏に譲っている⁸(松田氏のSNS上での発信内容を巡る党内調整の結果と報じられる⁹)。
本レポートでは、この10年間の松田氏の政治活動を多面的に振り返り、有権者が同氏を評価する材料を提供することを目的とする。
松田学氏の直近の主要選挙となった2022年参院選(比例区)の選挙公報とマニフェストには、新興政党・参政党のスローガンや政策が色濃く反映されていた。「あなたの気づきが日本を救う!」というキャッチコピーのもと、松田氏・参政党は三本柱の重点政策を掲げた。
その第一は「教育・人づくり」である。具体的には教育無償化の推進や児童手当の所得制限撤廃といった少子化対策を打ち出し、未来を担う子どもへの投資を最優先すると訴えた。
たとえば教育国債の発行によって必要財源を確保し、学校ではなく子ども一人ひとりに直接支援が届く仕組みを作ると約束している¹⁰。これは従来型の制度を超えた大胆な人材投資策であり、「経済的困難を抱える日本国籍の子どもを優先し支給する」といった具体的方針も示された¹¹。
これらの公約からは、松田氏が「人への投資こそが国の未来を開く」と考えていることが読み取れる。
第二の柱は「食と健康・環境保全」で、現代日本の医療や食生活を見直し自然回帰的な政策を提唱した点が特徴的だ。
具体策としては、薬やワクチンに過度に頼らない予防医療への転換や、人間本来の自己免疫力を高めるヘルスケアを推進することが挙げられる¹²。
松田氏自身、新型コロナ下でのワクチン政策に疑問を呈し、ワクチンに頼りすぎない社会を志向してきた経緯があり(後述)、公約でも「薬漬け医療からの脱却」を訴えた。
また食の安全保障として国産・自然食材の奨励を掲げ、「『食』の字は人を良くすると書く」と強調しつつ、伝統的な食養生(身土不二、一物全体)の考え方を取り入れた食育も提案している¹³。