辻元清美(つじもと きよみ、1960年4月28日生)は立憲民主党所属の国会議員で、衆議院議員(大阪10区選出)を通算7期務めた後、2022年7月の参議院議員選挙で比例代表から当選し参議院議員(1期)となりました¹。
現在は立憲民主党の代表代行および広報本部長など要職を務め、参議院では憲法審査会野党筆頭幹事や経済産業委員などに所属しています²。奈良県に生まれ大阪で育った辻元氏は、早稲田大学教育学部卒業後に国際交流NGO「ピースボート」を創設した草の根市民運動家出身であり、1996年の衆院選で初当選して国政に進出しました³。
以来一貫してリベラル派の論客として知られ、NPO法の制定や被災者生活再建支援法、男女共同参画社会基本法、児童買春禁止法など数々の立法に尽力するなど、社会運動の延長線上で政策を実現してきました⁴。
民主党政権時代には国土交通副大臣(2009年)や内閣総理大臣補佐官(2011年、災害ボランティア担当)を歴任し、与党側の行政経験も積んでいます⁵。しかし2002年には議員秘書給与流用事件で逮捕・有罪判決を受け議員辞職する挫折も味わい、以降は政治的姿勢や手法を見つめ直す契機となりました⁶。
2017年に民進党分裂の際は希望の党への合流リストから「排除」された経験を経て、枝野幸男氏らと立憲民主党を結党し、初代政務調査会長・国会対策委員長として野党第一党を牽引しました⁷。2021年の総選挙で惜敗し一度議席を失いましたが、約9か月後の参院選で国政に復帰しており、この2015~2025年の分析対象期間は辻元氏にとって野党指導部として奮闘しつつ挫折と再起を経験した10年とも言えます⁸。
本レポートでは、その期間の活動を中心に、公約と実績、発言傾向や影響力、人脈や資金面まで含めて辻元議員の政治活動全体像を描出します。
辻元清美氏が直近で掲げた公約の特徴として、「暮らしを守る優しい政治」「まっとうな民主主義の回復」といったスローガンが全面に打ち出されていました。2022年参院選の比例区公報では、物価高やコロナ禍で痛んだ生活者支援策を最優先に掲げ、具体的には所得税の時限的減税や低所得世帯への給付による家計支援、最低賃金の引き上げなどを約束しています。また「選択的夫婦別姓の実現」「LGBT差別解消法の制定」「政治とカネの信頼回復」などジェンダー平等と政治倫理の改革も大きな柱でした。
憲法に関しては平和主義と立憲主義を守る姿勢を鮮明にし、安倍政権下で進む改憲論議への対抗として「熟議と公開の政治」を訴えています⁹。さらに原発ゼロ社会の実現や気候変動対策、災害被災者支援の強化も公約に盛り込まれており、被災者生活再建支援法を成立させた自身の実績に触れつつ防災・減災政策の充実を約束しました。
以上のような公約のキーワードを集計すると、「暮らし」「支援」「平和」「憲法」「原発ゼロ」「多様性」「子ども」などが上位に並び、社会的弱者に寄り添う生活重視のリベラルな政治姿勢が浮かび上がります。実際、マニフェスト中頻出トップ10の単語としては「生活」「支援」「女性」「子育て」「平和」「憲法」などが含まれており、生活者目線の政治と平和主義・人権尊重を両輪に据えた辻元氏の基本スタンスが読み取れます。
このことから辻元氏は、市民運動家時代から一貫する「人々の暮らしと権利を守る」という信念を選挙公約にも色濃く反映させていると言えるでしょう。
野党議員として辻元清美氏は、この10年間に数多くの議員立法を提案し、政府提出法案に対しても積極的に修正案や対案を提示してきました。2015年以降に辻元氏が提出者または共同提出者となった法案は複数にのぼり、そのうち実際に成立に至ったものは限られるものの、2018年の候補者男女均等法など重要な成果もありました¹⁰。
主な提出台帳を時系列で見てみると、まず第189~190回国会(2015年前後)では安全保障関連法案への対抗措置として平和安全法制廃止法案の提出に関与しました(これは安保法制に反対する野党共同提出)¹¹。
第196回国会(2018年)では「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消促進法案」を西村智奈美氏らと共同提出し、LGBT当事者への差別禁止に向けた包括法制定を試みました¹²。これは超党派での成立を模索しましたが当時は審議未了に終わっています。
また同じ頃、森友学園問題や公文書改ざん事件を受けて「行政監視院法案」(政府監視の独立機関を設置する法案)を辻元氏が野党5名を代表して提出しています¹³。立憲民主、国民民主、共産、社保、社民という垣根を超えた野党連合での提案であり、不祥事続きの政府に対する強い危機感の表れでした。この法案も与党の反対で実現しなかったものの、行政の説明責任を徹底させる制度提案として注目されました。
2019年(令和元年)には国会改革にも踏み込み、辻元氏が筆頭提出者となって「国会法の一部を改正する法律案」を提出しています¹⁴。この法案は、与党が委員長職を独占する現状を改め国会運営をより公平・透明にすることなどを目的としたもので、立憲・国民・共産・社民など野党5党派による協調提案でした¹⁴。審議時間確保や行政監視機能強化につながる内容でしたが、これも残念ながら廃案となりました。
またエネルギー政策では、「分散型エネルギー利用の促進法案」に共同提出者として名を連ねています¹⁵。再生可能エネルギーの地域分散導入を後押しする内容で、脱原発志向の辻元氏らしい提案といえます。