自由民主党の伊藤忠彦(いとう ただひこ)議員は、愛知県第8区選出の衆議院議員(通算6期)であり、2005年に初当選して以降、地域密着型の政治家としてキャリアを積んできました。1964年生まれの伊藤氏は早稲田大学卒業後に民間企業(電通)を経て政界入りし、武村正義・小渕恵三両氏の秘書を務めた経験を持ちます¹。
1999年から愛知県議会議員(知多市選出)として地方政治に携わり、2005年の衆院選で国政へ進出しました。2009年には一度議席を失うも、2012年に国政復帰し以降は連続当選を重ねています²。
2021年の衆院選では小選挙区で当選し、2024年総選挙では惜敗ながら比例復活で議席を維持しました³。党内では二階派に属した後に無派閥となり、副幹事長(2019–21年)や国土交通部会長(2019–20年)など要職を歴任しました⁴。
2021年には衆院東日本大震災復興特別委員長に就任し、2024年10月、石破茂政権の下で復興大臣(福島原発事故再生総括担当大臣)に抜擢され現職に至ります⁵。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの10年間に焦点を当て、伊藤議員の政策公約と実績、国会内外での活動を詳述します。伊藤氏の歩みと足跡を丹念に追うことで、有権者が同氏の政治姿勢と成果を立体的に評価できる材料を提供することが目的です。
伊藤議員の直近の選挙公報とマニフェストには、地域インフラの拡充と防災対策の強化を軸とするビジョンが色濃く表れています。スローガンには「活力みなぎる知多へ、確かな一歩を」「災害に強い街へ、人に優しい街へ」といったフレーズが掲げられ、地元愛知・知多半島の発展に対する熱意が伝わってきます。
具体的な政策柱としてまず挙げられるのが、中部国際空港(セントレア)の代替滑走路建設の早期実現です。伊藤氏は「念願の『中部国際空港第2滑走路』を早期実現し、完全24時間化された空港を目指す」と明言しており⁶、知多半島から世界への物流・観光促進の切り札と位置付けています。
また、中部国際空港と名古屋市街を直結する西知多道路の整備も重点公約です。伊藤氏は「地域経済力の向上、そして防災の面からも不可欠な交通ネットワーク」として西知多道路の早期完成を訴え⁷、空港アクセス向上と沿線地域の防災・減災に資するインフラ投資の必要性を強調しました。
地域経済への視点では、「知多半島の農産品・水産品、工業製品を世界へ」との言葉に象徴されるように⁸、農林水産業から航空機部品産業まで幅広い地元産業の振興策が掲げられています。
マニフェスト中で頻出するキーワードを分析すると、「空港」「道路」「防災」「子ども」「地域」「産業」などが上位に並びました。これらから、伊藤氏が交通インフラ整備と地域産業の成長支援を政策の核に据えていることが読み取れます。
同時に、国の喫緊の課題である少子化・高齢化にも目配りし、「子どもは日本の未来です」として教育無償化や子育て支援拡充を約束する一方、「人生100年時代」に向けた医療・社会保障改革にも言及しています⁹。
具体策として児童教育・給食の無償化や修学旅行費の補助など家庭の経済負担軽減策、デジタル技術を活用した医療予防重視の仕組みづくり、そして従来の社会保障の在り方を見直して多様な生き方を支える制度設計などが掲げられました¹⁰。
さらに「安心な暮らし」「災害に強い街」を目標に南海トラフ巨大地震や集中豪雨への備えとして国土強靭化を推進し、知多半島全域の防災・減災対策を一層強化する方針も示しています¹¹。