中谷元議員の政治活動総覧(2015–2025)

概要

中谷元(なかたに げん)氏は、高知県第1区選出の自由民主党衆議院議員であり、陸上自衛隊出身という異色の経歴を持つベテラン政治家です。1957年高知市生まれで防衛大学校を卒業後、1980年に自衛官となり、1990年に32歳で初当選して以来一度も落選せず12期連続当選¹²

防衛庁長官や防衛大臣、安全保障法制担当大臣など安全保障分野の要職を歴任し、党内では安全保障政策のエキスパートとして知られます³⁴

2015年から2025年の分析対象期間中、安倍政権下で防衛大臣を務め(2014~2016年)、岸田政権下では国際人権問題担当の内閣総理大臣補佐官に就任(2021年~)⁶⁷し、2024年10月には石破茂内閣で再び防衛大臣に起用されました

在職期間中は衆議院総務委員長や憲法審査会幹事など議会運営の要職も務め、党高知県連会長も長年務めています。本レポートでは、2015年から2025年6月までの中谷氏の政治活動を網羅的に振り返り、掲げた公約と実績を検証します。

1. 選挙公報・マニフェスト分析

中谷氏が直近の第49回衆院選(2021年10月)で掲げた選挙公報を分析すると、そのメッセージは大きく三つの柱に整理できます。

国家安全保障へのコミットメント

一つ目は「専守防衛・平和外交を軸に、不戦の誓いを守り、日本のみならず世界の平和に貢献する国をつくる」という国家安全保障へのコミットメントです¹⁰。元陸上自衛官という経歴を反映し、平和国家としての誓い(憲法9条の精神)を守りつつ、自衛隊による専守防衛と積極的平和外交で国際平和に寄与する決意を示しました。

地域活性化策

二つ目は「住み続けられる地域を構築する」という地元高知を念頭に置いた地域活性化策です¹⁰。人口減少や過疎化が進む地方において、若者が夢を持ち暮らし続けられる地域社会づくりを目指すと訴え、農林水産業の振興や地方インフラ整備への意欲がうかがえます。

包摂的な社会の創造

三つ目は、公報冒頭のキャッチフレーズでもある「誰もが夢と希望を持って幸せになれる社会を」という理念です¹¹。経済格差の是正や社会保障の充実、教育支援などを通じて、国民一人ひとりの夢と希望を実現する包摂的な社会を創るという、幅広いビジョンが掲げられました。

選挙公報のテキストで頻出したキーワードを見ると、「平和」「防衛」「地域」「国」「世界」「幸せ」「夢」といった語が上位に並びます。「平和」や「防衛」が何度も現れることから、中谷氏が安全保障政策を最重視していることが読み取れます。また「地域」や「暮らし」といった語からは、地方創生や生活支援への関心もうかがえます。

実際、公報では「地方に住み続けられる環境づくり」を具体的公約に掲げており、高知県の山村・漁村で暮らす人々の声を政策に反映したい姿勢がうかがえました。さらに「夢」「希望」「幸せ」といったポジティブな単語が繰り返し使われている点も特徴的です。これは90年代の政治改革期から「政治家は国民の夢を実現するために行動する仕事」と語ってきた中谷氏自身の信条と軌を一にしています¹²

総じて、中谷氏のマニフェストは「強い日本と優しい社会」を両立させることを目指す内容であり、外交・防衛の堅実さと地域・国民への温かい眼差しが融合したものと言えるでしょう。

2. 法案提出履歴と立法活動

2015~2025年の間に、中谷氏が議員立法として提出に関与した法案は数件確認できます。

ギャンブル等依存症対策基本法案