玉木雄一郎(たまき・ゆういちろう)議員は、国民民主党代表を務める衆議院議員(香川2区選出、6期)であり、元大蔵・財務官僚という異色の経歴を持つ政治家である¹。
東大法学部卒業後に大蔵省へ入省し、在職中には米ハーバード大学への留学も経験したエリート官僚だった²。2005年に故郷の香川2区から国政選挙へ初挑戦するも落選。その後、田園都市で農家の長男として培った現場感覚と財務官僚としての専門知識を武器に2009年の衆院選で初当選を果たした³。
以降、2012年・2014年と民主党・民進党公認で連続当選し、希望の党への合流を経た2017年にも4選⁴。民進党では幹事長代理や政策調査会副会長など党役職を歴任し、野党再編期には新党結成にも関与した⁵。
2018年に結党された国民民主党では共同代表から初代代表に就任し、2020年の分党後に改めて新・国民民主党代表となって現在に至る⁶。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの10年間に焦点を当て、玉木氏の政策公約と国会内外での活動実績を検証する。財政通のエキスパートから一党のリーダーへと歩んだ軌跡を振り返り、有権者がその政治姿勢と成果を立体的に評価できるよう、事実に基づき包括的に分析する。
玉木雄一郎議員の最新の公約を見ると、「給料・年金が上がる経済の実現」というフレーズがひときわ目を引く⁷。2021年・2022年頃の選挙公報や政策資料には、「消費・投資の拡大で持続的な賃上げを実現する」「手取りを増やす夏」といったスローガンとともに、経済再生策が前面に打ち出されている⁷。
具体的には「若者・子育て世代の支援」や「教育予算の倍増」「地域への投資拡大」を通じて家計の可処分所得を引き上げるという公約であり、コロナ禍後の物価高対策として減税や給付による家計支援も掲げられた。実際、「給料」や「年金」「賃上げ」「消費」「投資」といった経済関連ワードが公約文中で頻出しており、玉木氏が最重要課題に経済政策を据えていることが読み取れる⁸。
あわせて、「人づくりこそ国づくり」と銘打った教育・子育て支援策の充実も公約の柱だ。具体例として、所得制限撤廃による児童手当の拡充や、大学・専門学校の無償化、さらには「こども国債」の発行による子育て予算倍増など、未来世代への投資を大胆に提案している⁸。
この「こども国債」構想は2016年の民進党代表選出馬時から玉木氏が主張していた持論で、少子化克服に向けた財源確保策として注目された経緯がある⁸。
他方、「自分の国は自分で守る」という標語に象徴される安全保障政策も公約に含まれる。専守防衛を基調としつつ、防衛費増額に伴う財源の確保策や同盟強化など現実路線の安保政策を示す一方で、憲法改正論議にも前向きな姿勢を見せる(玉木氏自身、「憲法改正や政策について語った」インタビュー記事に応じるなど積極的に持論を発信してきた⁹)。
さらに、公約の随所に「正直な政治」を貫く決意も表明されている。政治とカネの透明化や議員定数・歳費見直しなど改革姿勢をアピールし、「しがらみのない政治」を目指す姿勢を強調した⁹。
以上のように、直近のマニフェストは(1)家計第一の経済再生、(2)人への投資による将来世代支援、(3)現実的な安全保障と憲法論議、(4)クリーンな政治改革の4本柱で構成されている⁷。
キーワード上位には経済・社会保障関連が並び、玉木氏が生活者目線の経済政策と次世代支援に軸足を置きつつ、保守改革派らしく安全保障や統治改革にも踏み込む姿勢が浮かぶ。