田村智子議員の政治活動総覧(2015–2025)

概要

田村智子(たむら ともこ)議員は、日本共産党所属の政治家で、2010年に参議院議員に初当選して以来3期連続当選を果たし¹、2024年1月に党史上初の女性委員長(党首)に就任²、同年10月の衆議院議員選挙で鞍替え当選を果たしました³

長野県出身、早稲田大学卒業後に党青年組織で活動し、国会議員秘書などを経て、幾度もの落選を乗り越え2010年の参院比例区で初当選した経歴を持ちます。以降、厚生労働委員会などで政策通として頭角を現し、2016年参院選でも比例区で再選。党副委員長や政策責任者等の要職を歴任し、2022年参院選では比例区で3選されました。

分析対象の2015–2025年は、安保法制やコロナ禍、物価高騰など内政外交の激動期にあたり、本レポートではその期間における田村氏の政策活動の全体像と、公約の達成状況を明らかにします。

1. 選挙公報・マニフェスト分析

田村氏は直近の2022年参院選で党副委員長・比例代表候補として戦い、「平和でも、くらしでも、希望がもてる日本に」というスローガンを掲げました。このキャッチフレーズには、日本共産党として「戦争を起こさない平和外交」と「暮らしを支える優しい経済」の両立を目指す決意が込められていました。

安全保障政策

具体的公約の柱は大きく二つに分かれます。一つは安全保障で、憲法9条を活かした外交で東アジアの緊張緩和を図りつつ、「軍事費のGDP比2倍(5兆円増)」という政府計画に反対する立場です。田村氏はロシアのウクライナ侵略を機に高まる軍拡路線を批判し、専守防衛の堅持と外交努力を強調しました。

暮らし・経済政策

またもう一つは暮らし・経済分野で、急激な物価高への緊急対策として「消費税5%への時限減税とインボイス制度中止」を掲げ、家計を直接支援する考えを示しました。さらに最低賃金を直ちに全国一律1,500円に引き上げ、大企業・富裕層への応分の課税で財源を生み出すこと、年金削減をストップして給付水準を維持すること、そして大学の学費半減や学校給食無償化の実現など、子育て世代への恒久支援も公約に盛り込まれていました。

環境・ジェンダー政策

気候危機への対応では原発即時ゼロと石炭火力からの撤退、2030年までの大胆なCO2削減と再生可能エネルギー拡大を約束し、ジェンダー平等の分野では選択的夫婦別姓制度の導入やLGBT差別禁止法の制定、企業に男女間賃金格差の公表を義務付けることなどを訴えました。

選挙公報から浮かび上がるキーワードは「平和」「物価」「税」「賃金」「暮らし」であり、頻出上位語には「消費税」「年金」「軍事費」「子ども」「ジェンダー」などが並びます。これらから、田村氏が平和主義と社会保障に軸足を置きつつ、当時喫緊の課題であった物価高騰対策や格差是正に力点を置いていたことが読み取れます。スローガンに込めた「希望がもてる日本」とは、戦争の不安なく生活でき、将来への見通しが立つ経済を実現するという彼女の理念そのものでした。

2. 法案提出履歴と立法活動

国会で少数派の日本共産党に属する田村氏ですが、2014年以降は党単独でも法案提出権を持つようになり(参議院で11議席確保)¹⁰、野党共同提案も含め精力的に議員立法に取り組んできました。

主要な立法実績

2015–2025年に田村氏が提出者に名を連ねた法案は十数本にのぼり、その内容は福祉・ジェンダーから政治改革まで多岐にわたります。例えば、2012年には超党派で「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律案」を提出し、骨髄ドナー登録の推進策を定めたこの法案は全会一致で可決・成立しました¹¹

また田村氏がライフワークとする企業・団体献金の禁止法案は、1990年代から共産党が一貫して国会提出を続けてきたものですが、近年になって他野党との共同提出による審議が実現するに至りました¹²。与党の反対で法制化には至らなかったものの、30年越しの主張を国会論戦の場に引き出した意味は大きいと言えます。

選択的夫婦別姓への取り組み