斉藤鉄夫(さいとう・てつお)は、公明党所属の衆議院議員で広島県第3区選出、当選11回のベテラン国会議員です¹。1952年島根県生まれで東京工業大学大学院修了の工学博士という異色の経歴を持ち、清水建設の研究員として宇宙開発にも携わった技術者出身の政治家でもあります²。
1993年に旧広島1区から初当選して以降、新進党や公明党の再結成を経て国政で活躍し続け、現在まで在職約31年に及びます³。公明党政務調査会長、幹事長代行、税制調査会長、選挙対策委員長、幹事長など党内要職を歴任し、2008年には福田康夫改造内閣で環境大臣として初入閣、続く麻生内閣でも再任されました⁴。
さらに2021年の第2次岸田内閣で国土交通大臣に就任し、水循環政策や万博担当も兼務してインフラ政策を担い⁵、2022年の内閣改造でも留任しました⁶。2021年には、それまで比例中国ブロックで当選を重ねてきた斉藤氏が、自民党現職だった河井克行氏の辞職で空白となった広島3区に与党統一候補として鞍替え出馬し、同区で初めて小選挙区当選を果たしています⁶。
そして2024年10月の衆院選(第50回総選挙)後、長年党勢を牽引した山口那津男代表の退任に伴い斉藤氏が公明党第5代代表に選出されました⁷。党代表就任にあたっては石破内閣発足と同時に国土交通大臣を退任し、党運営に専念しています⁸。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの直近約10年間を中心に、斉藤氏の政策活動全体像を多角的に分析します。有権者が評価しやすいよう、選挙公約から立法活動、国会発言、党内活動、政治資金、情報発信に至るまで事実に基づき網羅的に記述します。
斉藤氏の直近の選挙公約をひも解くと、掲げる政策の柱から彼の政治姿勢が見えてきます。2021年10月の第49回衆院選(広島3区へ鞍替え出馬)および2024年10月の第50回衆院選(公明党代表として臨んだ選挙)において、斉藤氏は一貫して「暮らしを守り抜く現実的政策」を前面に打ち出しました。そのスローガンは、自身の公式サイトに示された4本柱に集約されています。
まず「命と暮らしを守る防災」を掲げ、国土強靱化による防災・減災を最優先課題に位置付けました。土砂災害防止法の改正や砂防ダム建設など、自身の実績も引き合いに出しながら、インフラ老朽化対策や線状降水帯への対応強化などを通じて災害に強い地域づくりを加速すると約束しています⁹。
広島は豪雨災害の多い土地柄であり、斉藤氏自身も国交相就任直後の所信で「防災・減災のさらなる加速」を誓っています。そのため、公約でも地元を念頭に治水や砂防対策の強化を強調し、有権者に地域密着型の安全保障を訴えました。
次に「物価高の克服・経済の再生」です¹⁰。コロナ禍後の景気回復と昨今の物価高騰への対応として、公明党が主張する手厚い家計支援策を公約に据えました。具体的には電気・ガス料金の高騰緩和や地域観光振興策、公共工事労務単価11年連続引上げなどの実績を示しつつ、「物価上昇を上回る賃上げの実現」や「児童手当の拡充」「18歳までの医療費無償化」など子育て支援の恒久化に総力を挙げると明言しています¹¹。
これは公明党が掲げる「小さな声を聴く力」を体現する政策群で、暮らし優先・弱者支援の姿勢が色濃く表れています。
三つ目の柱は「脱炭素化と経済成長の両立」です¹²。元環境大臣として、斉藤氏は気候変動対策にも強い関心を持ち、公約では再生可能エネルギーの導入拡大や森林整備によるカーボンニュートラル(温室効果ガス実質ゼロ)実現を掲げました¹³。
太陽光・風力発電の推進やグリーン成長戦略(GX)によって脱炭素化を新たな成長機会にするという構想で、環境と経済の両立を図るビジョンを示しています。この点は広島サミットで気候問題が議題となったことや、斉藤氏自身が環境行政の経験者であることから、公約の中でも専門性を感じさせる部分でした。
そして「戦争・核兵器のない世界を」という平和外交の訴えも重要な柱でした¹⁴。被爆地・広島を選挙区とする斉藤氏は、公明党の平和主義の伝統を背景に核軍縮と被爆者支援を公約の大きなテーマに据えています。2023年のG7広島サミットで各国首脳が被爆地を訪れたことにも触れ、「核兵器は人類と共存できない絶対悪」との信念のもと核兵器禁止条約の推進や被爆者援護の拡充、被爆建物(旧陸軍被服支廠)の保存などを訴えました¹⁵。公明党らしい平和主張と地元広島の思いを重ね、恒久平和実現への決意を示した形です。