大津綾香代表の政治活動総覧(2015–2025)

概要

大津綾香(おおつ あやか、1992年11月18日生まれ)は、元子役タレントという異色の経歴を持つ政治活動家です。神奈川県横須賀市生まれで、高校時代まで横須賀市や逗子市で育ちました。幼い頃にはNHKのニュース番組『週刊こどもニュース』で池上彰さんの娘役を演じるなど活躍し、中学生で芸能界を引退しています¹³

その後アメリカ留学を経て日本大学芸術学部で建築を学びましたが中退し、一級建築士を目指して建築デザイナーとして働いていました¹⁴

政治の世界に飛び込んだのは比較的最近のことです。2015年から2025年までを分析期間とすると、大津氏が表舞台に登場するのは主に2023年以降になります。きっかけは、NHK受信料問題で知られるNHK党(現・政治家女子48党)の動きでした。2023年1月、大津氏はYouTubeでNHK党系政治団体「政治家女子48党」の候補者募集広告を目にし、「政治を身近にする」同党の理念に共感して応募しました¹⁵

当時NHK党を率いていた立花孝志氏が斬新な戦略として若手女性を前面に立てることを画策し、大津氏は党公認候補に抜擢されます。同年4月の統一地方選に向け、目黒区議会議員選挙に政治家女子48党公認で立候補する運びとなり、一躍注目を集めました¹⁵

その直後、2023年3月にNHK党では前代未聞の政変が起こります。ガーシー参院議員(東谷義和氏)の除名騒動を受けて党首の立花孝志氏が責任をとる形で辞任を表明し、党名を「NHK党」から政治家女子48党へ変更。同時に後任党首に当時30歳の大津綾香氏を据えると発表しました¹⁶

突然の党首交代劇で、大津氏は国会議員経験がないまま政治家女子48党の第2代党首に就任します¹⁶。所属政党はこの党から、後に彼女の主導で「みんなでつくる党」へ改称されました。これは事実上、NHK党の流れを汲む政治団体を刷新し、党員や支持者の協働を掲げる新党への衣替えでした。

在職期間としては国会議員ではありませんが、政治団体の党首として2023年3月から活動しており、政治キャリアはまだ浅いものの激動の展開が続きました。本レポートは2015年から2025年までの約10年間における大津氏の政治活動を追い、その全体像を明らかにすることを目的としています。特に2023年以降の党首就任からの動きを中心に、公約の分析、議会活動(国会ではなく主に選挙戦での言動)、党運営や政治資金にまつわる出来事、さらにはSNS発信までを包括的に検証します。

1. 選挙公報・マニフェスト分析

大津綾香氏が有権者に初めて示した具体的な政策ビジョンは、2023年の統一地方選挙や神奈川県知事選挙の公約でした。直近の例として、2023年4月の神奈川県知事選挙に立候補した際の選挙公報・政見放送があります。

当時31歳の大津氏は、「政治家女子48党」の新人候補として登場し、「NHKの被害者を救う活動を続けるために政治家女子が生まれた」「女性議員を増やし、若い方にも政治参加のハードルを下げる」といったスローガンを掲げました¹¹。これは、NHK党の原点であるNHK受信料問題への取り組みを継承しつつ、同党の理念である政治参加の裾野拡大(特に若者と女性の政治進出)を前面に出したものでした。

公約の全体像としては、NHK受信料のスクランブル放送実現やNHK被害者救済といったテーマが柱でした。また「政治家女子」という党名が示す通り、女性の政治参画を促進する姿勢が強調されました。選挙公報には大津氏自身の経歴(建築デザイナー、子育て中の女性でもあることなど)が紹介され、「政治をみんなで作り変える」という意気込みがにじんでいました。

具体的施策として地方行政の中でどのような政策を行うかは詳細に触れられていなかったものの、NHK問題と政治改革の二本柱が読み取れます。

頻出キーワードを分析すると、彼女の政見には「NHK」「政治家女子」「若者」「女性」などが目立ちました。これらの言葉から、大津氏の政治姿勢は一貫して「古い政治を変える」「情報発信力を活かして政治に新風を」というメッセージに集約されます。当時党の実質的な後ろ盾だった立花孝志氏も「話題づくり」として大津氏を擁立した側面があり¹⁶、公約も従来の政策論争よりは改革の象徴としてのスローガン色が強かったと言えます。

上位のキーワード10語を仮に抽出すると、「NHK」「被害者」「救う」「政治家」「女子」「若い」「政治参加」「党首」「女性」「政治」といった語が並ぶでしょう。そこから見えてくるのは、大津氏が重視する分野が経済政策や社会保障ではなく、あくまで政治そのものの改革とNHK改革であるということです。いわば既存政治へのアンチテーゼを掲げ、具体的な政策分野の細部よりも、「新しい政治文化を創る」というマニフェストだったと総括できます。

2. 法案提出履歴と立法活動

大津綾香氏は国会議員ではないため、通常の国会における法案提出や立法活動の履歴はありません。彼女が直接関与した法案というのは存在せず、国会に議席を持たない「政治活動家・党首」としての立場でした。そのため、本来であれば議員として行うべき立法上の取り組みは、大津氏の場合は選挙を通じた主張発信と党運営を通じた働きかけという形で現れてきます。

2023年に党首に就任した際、NHK党(当時)のガーシー議員除名問題や派閥的な資金問題がクローズアップされていました¹⁷¹⁸。大津氏はこれに対して、「少数派がいじめを受ける国会はおかしい」と発言し、ガーシー氏除名への異議を唱えました。この発言は国会内の出来事に対する大津氏なりのスタンス表明で、国会法の運用や懲罰手続きへの問題提起と言えます。法案提出ではありませんが、国会改革に関する態度表明として注目されました。

一方で、彼女が関与した実質的な「立法」に相当する行為としては、党首として公約や政策を立案したことが挙げられます。政治家女子48党および後継の「みんなでつくる党」では、NHK受信料の徴収問題やマイナンバー制度の是正、政治家の汚職追及などを掲げていました。ただし、それらは法案という形ではなく、主に選挙時の訴えやネット上での発信に留まっています。