百田尚樹代表(69)はベストセラー作家から政界に転じた異色の政治活動家であり、現在は新党「日本保守党」の代表を務める¹。大阪市出身の百田代表は同志社大学法学部を中退後、テレビ番組『探偵!ナイトスクープ』の放送作家として長年活躍し、50歳を過ぎて小説家デビューすると『永遠の0』や『海賊と呼ばれた男』が空前のベストセラーとなった²。
2013年、安倍晋三首相に任命されNHK経営委員に就任した際には、その歯に衣着せぬ言動が国内外で物議を醸し、ついには中国外交部報道官や韓国メディアから名指しで批判される存在となった³。
実際、百田代表の歴史観・発言は国内でも賛否を呼び、不買運動や講演会での殺害予告にまで発展したこともある⁴。当時は「作家やジャーナリストが政治家になるべきではない」と公言し、「政治家になりたがる作家はすべてイカサマ野郎だ」とまで断言していた百田代表だが⁴、皮肉にもその8年後に自ら新党を結成し、政界進出への道を歩むことになった。
本稿では2015年から2025年までの百田代表の政治活動を網羅し、その公約と現実、言動と影響力を詳述する。分析期間中に百田代表は国政選挙での当選経験こそないものの、2023年10月17日に旗揚げした日本保守党を通じて政治改革を唱え、2024年の総選挙後にはついに初の国会議員(共同代表の河村たかし氏)を誕生させた⁵。
本レポートでは、有権者が百田代表の軌跡と現状を立体的に理解できるよう、その経歴、政策、公約の達成度、発言の特徴、政治資金やSNS発信まで事実に即してまとめる。
百田代表が掲げる政策の特徴は、「減税」と「保守」に集約される。直近の2025年参議院選挙に向け日本保守党が公表した選挙公約を見ると、まず経済政策では徹底した減税・物価対策を打ち出した⁶。
具体的には「酒類を含む食料品の消費税率を恒久的にゼロにする」との大胆な案を掲げ、ガソリン税の引き下げや所得税減税による働き控え防止など、家計負担を直接軽減する策を強調した⁶。物価高騰に苦しむ国民への即効性ある支援として、消費税の食料品非課税は百田代表の看板スローガンであり、実際選挙公報でも「食料品の消費税ゼロ」を前面に打ち出している(例えば比例区用のビラには「消費税減税から始めよう!!」との大書が見られる)。
一方で恒久的な歳出増に対しては「法人税・たばこ税・所得税の増税パッケージ」に頼る現政権を批判し、歳出削減や他の財源確保策の検討を主張した(防衛費増額に伴う増税案についても疑問を呈したとみられる)⁶。
国家安全保障・外交分野では、百田代表は保守派らしく憲法改正と防諜体制の強化を掲げる⁶。たとえば公約には「日本国憲法9条を改正し、自衛のための実力組織の保持を明記する」と明記され、日米同盟下でも自国の軍事力保持を憲法上はっきりさせるべきだという主張をしている⁶。
「スパイ防止法」の制定も最重要項目の一つだ。百田代表は諜報機関の新設と関連法整備により、日本に巣食う諜報活動を取り締まる必要性を説いており、これは冷戦期から保守層が悲願としてきた政策でもある⁶。
移民政策については、公約に「移民政策の是正は最重要政策の一つ」とうたわれている⁶。具体的には、近年問題視される海外投資家(とりわけ超富裕層の中国人)が都心の不動産を買い漁る動きや、低賃金労働力として来日する外国人労働者の扱いについて、日本の国益を守る観点から見直すと主張する。
百田代表は「これは実質的な移民受け入れではないか」と政府の外国人労働受け入れ拡大策に反対しており、「人手不足対策」と称して拙速に門戸を開けば社会の混乱を招くと警鐘を鳴らす⁶。
実際、政府は2023年に特定技能2号の受け入れ対象分野を大幅拡大し、建設・造船以外の分野にも熟練外国人労働者が永住可能となる道を開いた(計11分野、さらに翌年には16分野へ拡大)⁷。これに対し百田代表は「移民政策の現状を見直すべきだ」と訴え、日本の労働市場と治安への影響を懸念している⁶。