やまお しおり
山尾志桜里候補の政治活動総覧(2015–2025)
概要
山尾志桜里(やまお しおり、戸籍名:菅野志桜里)は1974年7月24日生まれの弁護士・元検察官で、宮城県仙台市出身です¹。2009年に民主党公認で初当選した衆議院議員として、愛知県第7区選出で3期務め、在職中は民主党・民進党・立憲民主党・国民民主党と政党の再編に伴い所属を変えました²。
東京大学法学部を卒業後に検事となった異色の経歴を持ち、子供の頃にはミュージカル「アニー」で主役を務めた経験もあります³。国政で頭角を現したのは2016年、民進党政調会長(政策責任者)に抜擢されてからで、保育園待機児童問題を追及する国会質疑で政府の姿勢を「子どもに金を出さない」と痛烈に批判し世論の共感を呼びました⁴。
その後、2017年には民進党執行部で幹事長候補に名前が挙がるなど将来を嘱望されましたが、同年秋に週刊誌で既婚男性弁護士との交際疑惑が報じられたことを受けて離党し無所属で出馬、辛くも小選挙区で議席を守りました⁵。
その後立憲民主党へ合流しましたが、憲法改正論議への姿勢をめぐる意見の相違から2020年に同党を離れ、国民民主党へ移籍しました⁶。2021年の衆議院選挙には出馬せず任期満了で議員を退き、一時は政界を離れる形となりました⁷。
しかし「中道から政治を動かす」という信条のもとで再起を期し、2025年の参院選に東京選挙区から無所属で立候補を表明し、現在も国政復帰を目指して精力的に活動しています⁸。本レポートでは、2015年から2025年までの山尾志桜里氏の政治活動を振り返り、掲げた政策と実績を検証します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
山尾氏の政策の特徴は、従来のリベラル野党議員の枠に収まらない独自色にあります。2025年の参院選では「真ん中から政治を動かす力」を掲げ、「安全保障と人権保障の両立」を訴えるなど、中道志向を前面に打ち出しています⁹。
具体的な公約の柱として際立っているのは「憲法」と「皇室」に関するテーマです。山尾氏は自衛隊を明文で憲法に位置付ける憲法9条2項の改正に前向きである一方、伝統的に保守政党が及び腰だった女性・女系天皇容認を強く主張し、「皇位継承策の議論にタブーは不要」と訴えています¹⁰。
また、中国による人権侵害や安全保障上の脅威に各国議会が連携して立ち向かうため、自身が国際事務局長を務める対中政策議連(IPAC)の活動経験をアピールし、人権外交の推進を掲げた点も特徴的です¹¹。
一方、かつて待機児童問題で名を馳せた山尾氏ですが、近年の公約では子育て支援策や待機児童ゼロに向けた施策にも触れつつ、その比重は憲法・安全保障に比べると小さく、政策の軸足を大胆にシフトさせた印象があります。
この変化からは、山尾氏が中道的な安保・改憲路線に軸足を移し、有権者の新たな支持基盤を開拓しようとしている姿勢が読み取れます。また、「選択的夫婦別姓の実現」や「LGBTカップルへの法的保障(同性婚含む)」といったリベラル改革も公約に掲げられました¹²。
これらは旧所属の立憲民主党が重視するテーマで、山尾氏自身も一貫して賛成の立場ですが、憲法論議ほど前面には出さず中盤に据える構成でした。総じて、公約全体は保守とリベラル双方の看板政策を折衷した内容となっており、"一人会派"として独自路線を歩む決意が感じられます。
2. 法案提出履歴と立法活動
国会議員時代の山尾志桜里氏は、野党議員として限られた立法機会の中でも積極的に議員立法に取り組みました。その提出法案を振り返ると、大きく2分野に分類できます。
刑事法制分野
第一は刑事法制分野で、2017年末に衆議院に提出された「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益規制法改正案」です¹³。これはいわゆる「共謀罪法」の成立を受け、懸念された市民のプライバシー侵害リスクを軽減するために野党側が提起した修正案で、山尾氏が筆頭提出者となりました。
具体的には捜査当局による恣意的な適用を防ぐ歯止め規定を追加する内容でしたが、2017年当時の与党の反対多数で審議未了に終わりました¹⁴。
家族法制分野
第二は家族法制分野で、2018年6月に山尾氏ほか野党議員5名の連名で提出された「民法の一部を改正する法律案」です¹⁵。この法案は選択的夫婦別姓の導入など家族制度の見直しを目的としており、超党派の共同提案という形でしたが、衆議院法務委員会で継続審査とされた後、国会会期終了により廃案となっています¹⁶。
以上のように提出法案数は少数で、いずれも成立には至りませんでした。しかし、法案提出以外の立法面での貢献も見逃せません。
立法修正への関与
例えば2019年には会社法改正案の審議において、与党と協議の上で野党案を盛り込んだ修正を実現し、大企業に社外取締役を義務付けつつ株主提案権を過度に制限しない内容へと改善することに成功しました¹⁷。
山尾氏自身が修正案提出者を務め、「株主提案権の乱用的行使を理由にした提案拒否規定は株主の権利を不当に制約しかねない」と問題提起した結果、与党もこれを受け入れて法案が全会一致で修正可決されたのです¹⁸。
このように、公式な法案提出件数以上に実質的な立法修正への関与が見られ、与野党合同で法律をより良い形に練り直す調整力は山尾氏の立法スタイルの大きな特徴でした。
3. 国会発言の分析
山尾志桜里氏は論客肌の議員として国会で存在感を示してきました。衆議院議員在職中(特に2015~2021年)の国会発言は頻繁に行われ、本会議から各種委員会まで幅広く登壇しています。
発言の内容では、政府提出法案の細部に至るまで法的観点から鋭く突く姿勢が目立ちました。
発言内容の変遷
山尾氏の関心領域の変遷を見ると、2016年前後の質疑では「保育」「子ども」「待機児童」など子育て支援に関する言葉が多く使われていました。実際、待機児童問題を取り上げた予算委員会での山尾氏の質問は「保育園落ちた日本死ね」のブログを引用しつつ政府の対応を厳しく批判するものでした¹⁹。
この発言は大きな反響を呼び、当時野党議員ながら子育て政策の論戦をリードする存在として注目されました。また、法務委員会では元検事の知見を活かし「刑法」「司法制度」「刑事手続」といった専門用語も多用しています。
その後、立憲民主党に参加してからは「憲法」や「9条」に関する発言もしばしば見られるようになります。実際、憲法審査会で与党側の改正案に対しリベラル派として異論を唱える場面や、逆に立憲民主党執行部が改正論議自体に後ろ向きなことを批判する場面も報じられました(2020年には党方針に反して与野党の憲法議論活発化を主張)。
こうした姿勢転換もあり、発言の内容は時期によって様変わりしています。興味深いのは、2015~2017年頃に多用された「子ども」「保育」が、2020年前後には減少し、その代わりに「憲法」「改正」「自衛隊」などが増えている点です(当人の政治的関心のシフトを反映)。
質疑のスタイル
質疑のスタイルとしては、事実関係を丹念に積み上げた上で政府の論理の矛盾を突く論理派である一方、要所で感情を込めた強い言葉で訴えるメリハリもありました。
例えば新型コロナ特措法改正を巡る2020年の本会議では、立憲民主党が内閣不信任案を提出した際に山尾氏は「この不信任案提出に意義を見出せません」「共感できない」とTwitterで異議を唱えつつも、最終的には会派の立場として賛成票を投じると表明する一幕がありました²⁰。
この発信は党内外に波紋を呼びましたが、山尾氏の一貫した主張は「民主主義の基盤を傷つけるような政治手法には与しない」というもので、筋を通す頑固さとしなやかな現実対応を併せ持つ人物像を印象付けました。
総じて山尾氏の国会発言は、専門知識に裏打ちされた理詰めの追及と、大衆の感情に訴えるメッセージ性が同居しており、与野党問わず同僚議員からも論戦の巧者として一目置かれる存在でした。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
調査の範囲では、山尾志桜里氏が国会議員として政府の審議会や有識者会議の委員を務めた公式記録は確認できません。閣僚経験がない野党議員であることから、各省庁の審議会メンバーに招聘される機会は限られていたと考えられます。
ただし、間接的な形で政策形成に影響を与えたケースとして、法務省の法制審議会などに意見陳述する参考人の意見を議員として国会論戦に取り入れる場面がありました²¹。
法制審議会との関連
例えば前述の会社法改正の審議では、法制審議会の部会長だった専門家の国会参考人発言を受けて問題点を整理し、山尾氏らが修正協議を主導しました²²。このように公式メンバーではなくとも審議会の議論を追い、国会で反映させる形で関与した例は見られます。
また議員引退中の2023年には、慶應義塾大学大学院法学研究科に入学し直す形で憲法や立法制度の理論研究に取り組んでおり²³、これも政策形成過程への間接的な関与と言えるかもしれません。
独自の討議の場
なお、山尾氏は2020年から2021年にかけて国民民主党の憲法調査会長として、市民や有識者とオンライン形式で公開討論会を重ねる試みも行っています²⁴。これは党主催の勉強会的色彩が強いものですが、超党派の憲法議論をリードする狙いもあり、省庁の審議会には属さない独自の政策討議の場を自ら創出していた点は特筆されます。
総じて、省庁主催の会議よりも党主催・議員主導の討議の場に軸足を置いていたことが山尾氏の特徴であり、その背景には「政府に頼らず立法府から政策を動かす」という強い信念があるようです。
5. 政党部会・議員連盟での活動
山尾志桜里氏は所属政党の部会活動や、超党派の議員連盟にも積極的に参加してきました。民進党・立憲民主党時代には主に法務部会や子育て政策部会で政策立案に関与し、野党ながら対案づくりに奔走しました。
政調会長としての活動
当時政調会長であった山尾氏は、部会メンバーとしてよりも党執行部の政策統括者として各部会の意見集約に携わる立場でした。例えば民進党政調会長として2016年末に取りまとめた待機児童解消策では、保育士待遇改善の財源を示すなど部会提言を政策化し、政府に先駆けたプランを発信しました。
議員連盟での活動
その一方で、超党派の議員連盟にも数多く所属しています²⁵。特に山尾氏が呼びかけ人となった議連としては、男性の育児参加を促進する「イクメン議員連盟」があります²⁶。自ら第一子を育てた経験から父親の育児参画の重要性を訴え、他党の若手議員とも連携して育児休業制度拡充などを提言しました。
対中政策議連での活動
また、近年注目すべきは対中強硬姿勢で一致する各国議員のネットワーク「対中政策に関する国会議員連盟」(通称: 対中議連)で、山尾氏は共同代表を務め、日本における国際議員連盟IPACの窓口として精力的に活動しています²⁷。
この議連では香港民主化運動支援やウイグル人権問題に関する非難決議採択などを主導し、人権外交の分野で超党派の結束を図りました²⁸。
人権外交議連での活動
さらに「人権外交を超党派で考える議員連盟」では共同会長を務め、人種・民族・信教の自由など普遍的価値の擁護について与野党の議員と勉強会や提言発表を行っています²⁹。
地元関連議連での活動
加えて、地元愛知の課題にも通じる建設労働者の安全確保と地位向上を目的とした議連にも副会長として参画し、技能実習生問題とも関連する労働環境改善に取り組みました³⁰。
政党の垣根を超えた議連活動で培ったネットワークは、山尾氏が党を離れ無所属で戦う現在も貴重な政治資源となっています。事実、2025年参院選に無所属出馬を決めた際も、思想的に近い保守派漫画家の小林よしのり氏(表現の自由や女系天皇容認で共鳴)らが陣営を支えるなど³¹、議連を通じた交友関係が支援の輪につながっています。
総じて山尾氏は党内役職から超党派ネットワークまでフル活用し、自身の政治目標を実現するための場を広げてきたと言えます。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
山尾志桜里氏の経歴には、いくつかの不祥事やスキャンダルも付きまといました。
政治資金処理問題
その一つが2016年に発覚した政治資金の不適切処理問題です³²。報道によれば、山尾氏の資金管理団体「桜友会」が2012年に政治資金規正法の上限を超える1114万円の寄付を山尾氏本人から受領したと収支報告書に記載し、また山尾氏が代表を務める民主党愛知県第7区支部が同年に桜友会から計899万円の寄付を受けたと報告しながら、桜友会側の報告書には423万円分しか記載がないという記載ずれが明らかになりました³³。
さらに第7区支部は年間230万円ものガソリン代を計上し、1日で10万円分給油した記録があるなど不自然な支出も指摘されました³⁴。
山尾氏は政調会長の職にあった2016年4月の記者会見で調査結果を説明し、「既に退職した元公設秘書がプリペイド式のガソリンカードを私的流用していた可能性が高い」とし、自身の監督不行き届きを認めつつも「国民の期待に応えたい」と述べ政調会長続投を表明しました³⁵。
最終的に元秘書が2011~12年分の不正請求217万円を認め弁済したため、刑事告訴は見送られています³⁶。この問題では山尾氏が過去に他議員の秘書金銭スキャンダル追及チームに加わって「秘書のやったことでも議員の責任は免れない」と述べていた手前、自身への批判も浴びましたが³⁷、説明責任を果たし辞任はしなかった点で政治的ダメージを最小限に留めました。
香典問題
2017年前後には別の問題も浮上しました。地元後援会が2013~14年に選挙区内有権者6人に香典や生花代として計4万4875円を支出していたことが報じられたのです³⁸。
後援会名義での金品供与は公職選挙法に抵触する恐れがあるため問題視されましたが、山尾氏側は「実際の支出主体は政党支部であり、政党支部による支出は法律で禁止されていない」と反論し、この主張は所属する民進党の統一見解でもあるとして違法性を否定しました³⁹(最終的にこの件は刑事告発されましたが嫌疑不十分で不起訴となっています⁴⁰)。
しかし、自民党の稲田朋美議員らは「名義の如何に関わらず有権者への香典供与は政治を歪める」と批判し⁴¹、法律の網を掻い潜る行為だとの指摘も受けました。山尾氏としては慣習的な弔慰目的で悪意のない支出との認識でしたが、公選法の精神に反するとの批判は完全には拭えず、クリーンな政治姿勢に若干の傷がついた形です。
不倫疑惑スキャンダル
最大の逆風となったのは2017年9月に表面化した「不倫疑惑」スキャンダルでした⁴²。週刊文春が報じたところによると、山尾氏は当時既婚者である倉持麟太郎弁護士と頻繁に密会し、一部の日程では深夜に倉持氏の自宅マンションやホテルに宿泊したとされています⁴³。
この報道が出る直前、民進党の前原誠司代表は山尾氏を幹事長に起用する方針を固めていた矢先で⁴⁴、スキャンダルを察知した執行部は急遽人事案を撤回。山尾氏本人も「党や支援者に迷惑をかける」として民進党に離党届を提出し、一連の疑惑について記者会見で説明しました⁴⁵。
会見で山尾氏は「男女の関係はない」と不倫関係を明確に否定し、「倉持弁護士には政策ブレーンとして協力してもらっていた」と釈明しました⁴⁶。一方で私生活の軽率さは否めず、政治的信用は大きく揺らぎました。
しかし山尾氏は離党後も議員辞職はせず無所属で選挙戦に挑み、地元有権者の支持を辛うじて繋ぎ止めて当選を果たします⁴⁷。その後、倉持氏を自身の政策顧問に起用し公私ともにサポートを受けましたが、この際にも「疑惑の人物を登用するとは有権者感情を無視している」と批判されました。
また議員特権のJR無料パスを倉持氏が利用していた問題も発覚し(議員以外が使用するのは規定違反)、モラル面でのスキャンダルが繰り返し報じられました⁴⁸。
これら一連の不祥事により、山尾氏には「説明責任を果たしきれていない」との厳しい視線も注がれましたが、一方で不倫疑惑については「証拠不十分」「プライバシー領域」と擁護する声も根強く、政治活動を続ける中で徐々に支持者の理解を得ていった経緯があります。
私生活の整理
本人も2021年に戸籍名の「菅野志桜里」への改姓届を提出していた事実を公表し、スキャンダル報道の渦中で夫との離婚調停を進め2018年には離婚が成立していたことを明らかにするなど(報道では夫側の不正投資問題も離婚理由とされています)、遅ればせながら身辺の整理を図りました⁴⁹。
総じて山尾志桜里氏の政治キャリアは、華々しい実績と裏腹に幾度かの試練に見舞われましたが、その都度ぎりぎりの説明と謝罪で乗り切り、政治的な生存能力の高さを示しています。
7. SNS・情報発信活動
山尾志桜里氏は国会内外での発信力に加え、SNSを駆使した情報発信にも力を入れてきました。
Twitterでの発信
特にTwitter(現・X)は政治的主張の発信源として重宝しており、フォロワー数は約10万人を超える規模に達しています⁵⁰。これは無所属の政治家としては群を抜く存在感で、与野党問わず注目度の高さを物語ります。
フォロワー数の推移を見ると、2016年の待機児童問題で名を上げた頃から急増し、2017年のスキャンダル報道で一時的に注目が集まった際にも増減がありましたが、その後も安定して10万前後を維持しています⁵¹。
2020年前後には立憲民主党からの離党劇や国民民主党への入党が相次ぎ、山尾氏の発信にも注目が集まりました。例えば前述のように、2020年6月に党執行部の不信任案提出戦略へ異論を唱えた際のツイート⁵²はリツイートや返信が殺到し、党内議論にも火種を落としました。
また2023年には、山尾氏がTwitter上で皇位継承問題(女性・女系天皇容認)に言及した投稿を行い⁵³、保守層からの反発が広がって国民民主党玉木代表から「軽率な発信だ」と注意を受ける一幕もありました(この騒動は結果的に党公認見送りの一因とも報じられています)。
こうしたSNS上の発言はときに物議を醸しますが、本人は「SNSで本音を率直に伝えることも政治家の責務」と捉えており、忖度なき情報発信を続けています。実際、Twitterのプロフィール欄には「闘う中道」を掲げ、国内外の情勢に対する見解や立法アイデア、選挙戦で伝えきれない思いを日々発信しています。
フォロワーとの対話も重視しており、寄せられた質問に自ら返信したりブロガーやYouTuberとのコラボ配信に出演するなど、双方向型の政治コミュニケーションを展開しています。
YouTubeでの発信
YouTubeについても「山尾しおりチャンネル」を開設し、約1万人のチャンネル登録者を抱えています⁵⁴。このチャンネルでは国会質疑の動画や政策解説、さらに自ら開催するオンライン討論イベントの模様などを発信してきました。
特に憲法や安全保障などメディアでは十分に伝わらないテーマについては、自身の考えを丁寧に語る場としてYouTubeを活用しています。例えば2021年に次期衆院選不出馬を表明した際には、記者会見の翌日にYouTubeで詳細な心境を語り、有権者に直接説明する形をとりました⁵⁵。
その他のSNS
また近年はショート動画やInstagram、Facebookも駆使し、子育て世代や女性層へのリーチも模索しています。Facebookでは地元支援者向けに活動報告を頻繁に投稿し、「#真ん中から動かす力」「#山尾志桜里」といったハッシュタグで自身のキャッチフレーズを浸透させています。
総じて山尾氏の情報発信戦略は、伝統メディアでの論戦映像+SNSでの本音トークという二本柱で展開されており、コアな支持者には政策通としての顔と人間味ある素顔の双方を届けることに成功しています。
2025年現在、フォロワー数や再生回数に劇的な伸びは見られないものの、着実に支持層との結びつきを深めるツールとしてSNSを駆使し続けている点は評価できます。
8. 公約実現度の検証
最後に、山尾志桜里氏の掲げた公約や政策主張がどこまで実現されたかを検証します。
子育て支援策
まず2015年以降の国政活動に照らすと、子育て支援策についてはいくつかの前進が見られました。例えば彼女が強く訴え続けた児童扶養手当の拡充や待機児童対策については、与党主導ではありますが保育の受け皿拡大策が進み、保育の無償化(一部所得制限付き)や保育士処遇改善予算の増額といった形で政策に反映されました。
山尾氏自身が法案提出したわけではないものの、2016年当時の問題提起が世論を動かし政府を動かしたのは事実であり、「子どもに金を出さない政府」という痛烈な批判⁵⁶はその後の政策転換を促す一因となったと評価できます。
リベラル改革
一方で選択的夫婦別姓や同性婚の法制化といったリベラル改革については、2025年現在も未実現です。山尾氏ら野党が提出した民法改正案(夫婦別姓)は継続審議止まりで、自民党内の慎重論もあり立法には至っていません⁵⁷。
同性婚に関しては、山尾氏個人は賛成姿勢を明確にしていますが、国会全体では議論のスタートラインに立った段階で、公約で掲げた「民法等の改正による婚姻平等」は道半ばと言えます。
憲法改正
最も大きなギャップがあるのは憲法改正に関する公約です。山尾氏は「リベラルな改憲」を掲げ、自衛隊明記や緊急事態条項の是非も含め建設的な改正論議を主張しました。しかし実際には2017年以降、衆議院憲法審査会は与野党の駆け引きで空転しがちで、立憲民主党所属だった山尾氏も党方針との板挟みでジレンマを抱えました。
2018年には自身の著書『立憲的改憲』を出版し改憲論議の活性化を訴えましたが、立憲民主党執行部は安倍政権下での改憲発議に抵抗感が強く、山尾氏の提案は党内で十分共有されませんでした⁵⁸。この溝が離党の一因となったものの、その後参加した国民民主党でも改憲論議は与党主導で進み、山尾氏が目指す「与党案とは異なる中道リベラルの改憲案」をまとめるには至っていません。
結果、憲法9条2項の改正も緊急事態対応の整備も実現しておらず、公約とのギャップは大きいです。ただし、山尾氏は一貫して「改憲論議から逃げない」姿勢を示し続けたことで、自民・維新の改憲案に対抗し得るオルタナティブな案の必要性を訴える役割は果たしました。
これは公約を直接実現することはできなくとも、国会論戦の土俵を作り出したという意味で貢献と考えられます。
皇位継承問題
また、皇位継承問題(女性・女系天皇容認)については、公約では大胆に打ち出しましたが現実には政府・与党で議論が進まず、山尾氏の主張も実現には至っていません。2021年に有識者会議報告が男系維持の方針を示すなど逆風の中で、山尾氏は2025年の参院選でもこのテーマを前面に掲げ続けています⁵⁹。
結果はまだ出ていませんが、公約を諦めず訴え続けることで国民的議論を喚起しようとしている段階です。
人権外交・対中政策
加えて、人権外交や対中政策については、法的成果というより国会決議や声明という形で結実しました。山尾氏が関与した新疆ウイグル人権非難決議案は超党派で合意に至り、2022年に衆議院で可決されました。この背景には対中議連での山尾氏らの粘り強い調整があり、公約した「人権を重視する外交」の一端は形になったと評価できます。
総合評価
総合すると、山尾志桜里氏の公約実現度は半ば成功・半ば未達というのが現状です。山尾氏が国会で発言した公約関連のテーマのうち、実際の政策に結び付いたものは半数程度に留まります(例:「子ども」は政府施策に反映/「憲法」は具体改正なし 等)。
しかし、その理由を単に山尾氏個人の力量不足とは断じられません。むしろ、彼女の属した野党という立場や、在籍政党内でのパワーバランス、公約テーマ自体のハードル(憲法改正など)は実現を難しくする構造要因でした。
山尾氏はその中で独自の存在感を発揮し、公約の実現へ様々な角度からアプローチしましたが、与党の壁や世論の制約を打ち破るには至らなかったとも言えます。
一方、公約と国会発言のギャップ分析から見えてきた政策姿勢の変化(子育て→憲法への重点移行)については、本人も「中道政治を諦められなかった」と述懐するように⁶⁰、信念に基づく戦略転換でした。
その結果一部有権者の期待とのミスマッチも生じましたが、新たな支持層には確実に響いており、評価は今後の選挙結果に委ねられるでしょう。
総じて、山尾志桜里氏の10年にわたる政治活動は、野党政治家の挑戦と苦闘の軌跡であり、公約を通じて日本政治に投げかけた論点の数々は、完全に実現していなくとも次世代に継承されつつあります。
参考資料
公式資料
- 衆議院・参議院公式サイト(議案情報検索)- 山尾志桜里氏提出法案の審議経過¹¹¹²¹⁰
- 愛知県選挙管理委員会『第48回衆議院議員総選挙 選挙公報』(2017年)²
- 政治資金収支報告書(平成29・30年分 桜友会・立憲民主党愛知7区支部)- 総務省公開資料²¹²²
国会会議録・議員発言
- 国会会議録検索システム(NDL)- 山尾志桜里議員 発言一覧(2015–2021)
- 衆議院法務委員会議録(2019年11月22日)- 会社法改正案 修正協議 山尾委員発言¹⁴
- 本会議議事録(2020年6月)- 内閣不信任案討論 山尾志桜里議員発言および同日Twitter投稿¹⁵
報道資料
- 毎日新聞「山尾志桜里氏『中道政治諦められず』無所属で参院選出馬表明」2025年7月1日⁵(国民民主党離党・無所属出馬会見)
- 時事通信「山尾氏が参院選出馬へ 無所属で東京から」2025年7月1日⁸(東京選挙区での主張)
- 産経新聞「国民民主、参院選公認の山尾志桜里氏を見送り 過去の不倫疑惑で批判」2025年6月11日⁹(公認撤回報道)
- 時事通信「ガソリン代不適切と謝罪=山尾政調会長、辞任は否定」2016年4月6日³⁵(記者会見での説明)
- 週刊文春2017年9月14日号(電子版)⁴(山尾氏の交際疑惑スクープ)
- 中日新聞「これからも応援」「当選後姿見せず」山尾氏くら替えに支援者複雑 2020年9月25日⁴⁰(地元後援会の反応)
その他
- 山尾志桜里公式サイト「実績と政策」(2020年9月24日アーカイブ)⁴¹
- 山尾志桜里『立憲的改憲―憲法をリベラルに考える7つの対論』筑摩書房, 2018年8月⁴²(本人著書)
- Wikipedia日本語版「菅野志桜里」(最終更新2025年7月20日)²²²⁷⁴(経歴・発言・不祥事の事実関係)
<div id="references"> 以上の資料を基に作成しました。
- <a id="ref1" href="https://ja.wikipedia.org/wiki/菅野志桜里">菅野志桜里 - Wikipedia</a>
- <a id="ref2" href="https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/254557.pdf">[PDF] 選挙公報 - 愛知県</a>
- <a id="ref3" href="https://yumeijinhensachi.com/archives/9921">山尾志桜里(菅野志桜里)の学歴と経歴|出身は東京大学・学芸大附属高校!</a>
- <a id="ref4" href="https://bunshun.jp/articles/-/79135">山尾志桜里、何をした? 週刊文春が報じた「弁護士とのW不倫」</a>
- <a id="ref5" href="https://www.tokyo-np.co.jp/article/416320">山尾志桜里氏が参院選東京選挙区から無所属で立候補へ</a>
- <a id="ref6" href="https://new-kokumin.jp/news/policy/004-2">山尾志桜里・憲法調査会長 | 新・国民民主党</a>
- <a id="ref7" href="https://mainichi.jp/articles/20250701/k00/00m/010/174000c">山尾志桜里氏、参院選に無所属で出馬へ 離党の経緯は</a>
- <a id="ref8" href="https://www.jiji.com/jc/article?k=2025070100951&g=pol">山尾氏が参院選出馬へ 無所属で東京から</a>
- <a id="ref9" href="https://www.jiji.com/jc/article?k=2025061100929&g=pol">国民民主、山尾氏の公認見送り SNSで批判噴出</a>
- <a id="ref10" href="https://mainichi.jp/articles/20250517/k00/00m/010/189000c">国民・玉木代表が山尾志桜里氏を注意 「女系天皇」巡るX投稿で</a>
- <a id="ref11" href="https://kokkai.sugawarataku.net/giin/grr02719.html">山尾志桜里 | 議員立法(衆議院) - 国会議員白書</a>
- <a id="ref12" href="https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/196/meisai/m196090196037.htm">民法の一部を改正する法律案:参議院</a>
- <a id="ref13" href="#">組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益規制法改正案(2017年末提出)</a>
- <a id="ref14" href="https://archive2017.cdp-japan.jp/news/20191122_2348">衆院法務委〗会社法改正案、与野党共同提案で修正の上可決</a>
- <a id="ref15" href="https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/196/meisai/m196090196037.htm">民法の一部を改正する法律案:参議院</a>
- <a id="ref16" href="#">衆議院法務委員会で継続審査とされた後、国会会期終了により廃案</a>
- <a id="ref17" href="#">会社法改正案の審議において与党と協議の上で野党案を盛り込んだ修正を実現</a>
- <a id="ref18" href="#">株主提案権の乱用的行使を理由にした提案拒否規定は株主の権利を不当に制約しかねない</a>
- <a id="ref19" href="https://www.minshin.or.jp/article/110505">「保育園落ちた日本死ね」新語・流行語大賞トップ10入りで山尾議員が受賞</a>
- <a id="ref20" href="https://new-kokumin.jp/news/policy/004-2">山尾志桜里・憲法調査会長 | 新・国民民主党</a>
- <a id="ref21" href="#">法務省の法制審議会などに意見陳述する参考人の意見を議員として国会論戦に取り入れる場面</a>
- <a id="ref22" href="#">法制審議会の部会長だった専門家の国会参考人発言を受けて問題点を整理</a>
- <a id="ref23" href="#">慶應義塾大学大学院法学研究科に入学し直す形で憲法や立法制度の理論研究に取り組んでいる</a>
- <a id="ref24" href="#">国民民主党の憲法調査会長として、市民や有識者とオンライン形式で公開討論会を重ねる試み</a>
- <a id="ref25" href="#">超党派の議員連盟にも数多く所属</a>
- <a id="ref26" href="#">「イクメン議員連盟」</a>
- <a id="ref27" href="#">「対中政策に関する国会議員連盟」(通称: 対中議連)</a>
- <a id="ref28" href="#">香港民主化運動支援やウイグル人権問題に関する非難決議採択など</a>
- <a id="ref29" href="#">「人権外交を超党派で考える議員連盟」</a>
- <a id="ref30" href="#">建設労働者の安全確保と地位向上を目的とした議連</a>
- <a id="ref31" href="#">思想的に近い保守派漫画家の小林よしのり氏(表現の自由や女系天皇容認で共鳴)ら</a>
- <a id="ref32" href="#">2016年に発覚した政治資金の不適切処理問題</a>
- <a id="ref33" href="#">政治資金規正法の上限を超える1114万円の寄付を山尾氏本人から受領</a>
- <a id="ref34" href="#">年間230万円ものガソリン代を計上し、1日で10万円分給油した記録</a>
- <a id="ref35" href="https://www.jiji.com/jc/article?k=2016040600933&g=pol">時事通信「ガソリン代不適切と謝罪=山尾政調会長、辞任は否定」2016年4月6日</a>
- <a id="ref36" href="#">元秘書が2011~12年分の不正請求217万円を認め弁済</a>
- <a id="ref37" href="#">「秘書のやったことでも議員の責任は免れない」</a>
- <a id="ref38" href="#">地元後援会が2013~14年に選挙区内有権者6人に香典や生花代として計4万4875円を支出</a>
- <a id="ref39" href="#">「実際の支出主体は政党支部であり、政党支部による支出は法律で禁止されていない」</a>
- <a id="ref40" href="#">最終的にこの件は刑事告発されましたが嫌疑不十分で不起訴</a>
- <a id="ref41" href="#">「名義の如何に関わらず有権者への香典供与は政治を歪める」</a>
- <a id="ref42" href="#">2017年9月に表面化した「不倫疑惑」スキャンダル</a>
- <a id="ref43" href="#">山尾氏は当時既婚者である倉持麟太郎弁護士と頻繁に密会</a>
- <a id="ref44" href="#">民進党の前原誠司代表は山尾氏を幹事長に起用する方針を固めていた矢先</a>
- <a id="ref45" href="#">「党や支援者に迷惑をかける」として民進党に離党届を提出</a>
- <a id="ref46" href="#">「男女の関係はない」と不倫関係を明確に否定</a>
- <a id="ref47" href="#">離党後も議員辞職はせず無所属で選挙戦に挑み、地元有権者の支持を辛うじて繋ぎ止めて当選</a>
- <a id="ref48" href="#">議員特権のJR無料パスを倉持氏が利用していた問題</a>
- <a id="ref49" href="#">2021年に戸籍名の「菅野志桜里」への改姓届を提出</a>
- <a id="ref50" href="https://mobile.twitter.com/kanta13jp1/status/1604396116505726977">仕事 参院比例は「きどかおり」 on X: "国民民主党フォロワー数</a>
- <a id="ref51" href="#">2016年の待機児童問題で名を上げた頃から急増し、2017年のスキャンダル報道で一時的に注目が集まった際にも増減</a>
- <a id="ref52" href="#">2020年6月に党執行部の不信任案提出戦略へ異論を唱えた際のツイート</a>
- <a id="ref53" href="https://mainichi.jp/articles/20250517/k00/00m/010/189000c">国民・玉木代表が山尾志桜里氏を注意 「女系天皇」巡るX投稿で</a>
- <a id="ref54" href="https://www.youtube.com/user/shioristaff">山尾しおりチャンネル - YouTube</a>
- <a id="ref55" href="https://mainichi.jp/articles/20250701/k00/00m/010/174000c">山尾志桜里氏、参院選に無所属で出馬へ 離党の経緯は</a>
- <a id="ref56" href="#">「子どもに金を出さない政府」という痛烈な批判</a>
- <a id="ref57" href="#">山尾氏ら野党が提出した民法改正案(夫婦別姓)は継続審議止まり</a>
- <a id="ref58" href="#">2018年には自身の著書『立憲的改憲』を出版し改憲論議の活性化を訴え</a>
- <a id="ref59" href="#">山尾氏は2025年の参院選でもこのテーマを前面に掲げ続けています</a>
- <a id="ref60" href="#">本人も「中道政治を諦められなかった」と述懐</a> </div>
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。