しい かずお
志位和夫議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
志位和夫(しい かずお)議員は、日本共産党所属の衆議院議員で、南関東ブロック(比例代表)選出です。1954年7月29日生まれで東京大学工学部物理工学科を卒業後、日本共産党職員として党務に携わりました¹。
1990年に35歳の若さで党中央委員会書記局長(党ナンバー2)に抜擢され、その後1993年の衆議院総選挙で旧千葉1区から初当選、以降は南関東比例ブロックで連続当選を重ねています²。2000年に不破哲三氏の後任として党党委員長(現職名は党中央委員会幹部会委員長)に就任し、以後2025年まで約25年間にわたり党のトップを務めています³。
この報告では、2015年から2025年7月までの10年余の活動記録を基に、志位議員の政策・立法活動や発言、党内外での役割、政治姿勢を総合的に分析します。志位氏は在職年数こそ長いものの一貫して野党政治家であり、政権与党のような政策実現権限は持ちません。
しかし、その長期にわたる国会論戦や野党共闘の呼びかけ、クリーンな政治姿勢は有権者から注目を集めてきました。本レポートでは、国会提出法案や国会発言のデータから志位氏の重点政策を読み解き、公約と実績のギャップや背景要因も明らかにします。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
志位和夫議員が直近で訴えた公約は、2024年10月の第50回衆議院選挙での日本共産党マニフェスト(選挙公報)に集約されています。スローガンは「日本共産党の躍進で、自民党政治のゆがみを正す改革を」と掲げられ⁴、長年続く自民党政権の弊害を是正する大改革を訴えました。
マニフェストの柱は大きく三つに分類できます。
政治改革・クリーンな政治
志位氏は、自民党の「金権政治」を徹底批判しました。選挙公報では、自民党が企業・業界団体からの献金や高額パーティ券収入に依存して政治を動かしている現状を「見返り政治」と糾弾し、自民党が依然として企業団体献金にしがみついていると指摘しています⁵。
共産党は「30年前のリクルート事件の時から、一貫して企業・団体献金の禁止を訴え、全面禁止法案を提出し続けてきた」と強調し、公費による政党助成金も「国民の血税の山分け」として廃止を主張しました⁵。
実際、志位氏自身も2015年以降、企業・団体献金全面禁止法案や政党助成金廃止法案を国会に繰り返し提出しており⁵、自らクリーン政治を体現しています。
2023年には自民党安倍派の裏金疑惑が浮上しましたが、これを最初にスクープしたのも共産党機関紙「しんぶん赤旗」であり、自民党を窮地に追い込んだのは共産党の調査報道でした⁶。こうした実績を引き合いに、志位氏は「企業・団体献金と政党助成金を断つことこそ政治改革の出発点」と公約に掲げています。
経済・社会保障政策
物価高と格差の是正に向けた大胆な経済政策もマニフェストの目玉でした。
第一に訴えたのが消費税の減税です。志位氏は「最も即効性があり公平な物価対策は消費税減税だ」として、消費税率を緊急に10%から5%に引き下げることを約束しました⁷。
消費税は低所得層ほど負担が重い逆進性の強い税であり、減税により家計を直接支援するとともに、中小企業へのインボイス制度も廃止して経済の底上げを図るとしました⁸。
一方、自民党政府(2025年時点では石破政権と想定されています)は「消費税率引き下げは選択肢にない」と明言し、ガソリン補助や一時金のような場当たり策に留まっています。これに対し志位氏は、公約で恒久的な減税による家計支援の必要性を強調し、自民党政治との対立軸を明確にしました⁹。
また最低賃金1500円の実現も公約の柱です。共産党は"全国どこでも時給1500円(平均的労働時間で月収手取り20万円)"を速やかに実現し、中小企業支援とセットで全国一律最賃制度を確立すると約束しました⁹。
2023年時点で日本の最低賃金は平均時給1,054円に過ぎません。志位氏は選挙戦で「賃上げによってこそ内需を活性化できる」と訴え、最低賃金引き上げと中小企業助成を両輪で進める考えを示しました⁸。
さらに社会保障では年金削減の中止、医療・介護の拡充、教育無償化に向けた教育費負担軽減(奨学金返済の半減など)を掲げています¹⁰。
子育て支援についても、児童手当の大幅拡充などを公約しました。こうした社会分野の財源は「富裕層・大企業への優遇を正し、応分の負担を求める税制改革で23兆円を生み出す」と具体的に明記し¹⁰、従来から主張する富裕税・大企業減税是正による財源確保策を示しています。
平和・外交安全保障政策
志位氏の公約でもっとも特徴的なのが、戦争をさせない平和政策です。2015年に安倍政権が強行成立させた安全保障関連法(戦争法)について、共産党は「安保法制の白紙撤回と立憲主義回復」を一貫して掲げてきました。
2024年公約でも、安倍政権下の2014年閣議決定による集団的自衛権容認や2015年の安保法制について「違憲立法を撤回し廃止する」ことを明記しています¹¹。
さらに岸田・石破政権が進める軍事費の大幅増額と敵基地攻撃能力の保有にも断固反対すると宣言しました¹¹。
政府は2022年末にいわゆる「安保3文書」を策定して今後5年間で43兆円もの防衛費増強を決定しましたが、共産党はこれを「憲法9条を壊し『戦争国家』づくりに突き進むもの」と批判し¹¹、「唯一最大の理由は日米同盟強化にある」と指摘しています¹¹。
志位氏は公約で「日米軍事同盟の強化に反対し、東アジアには対話と協力の外交戦略で平和を築く」と提案しました¹²。具体策として、ASEANと協力した集団的安全保障の構築や、ヨーロッパの平和勢力との連携を挙げています。
また沖縄の米軍基地問題では「辺野古新基地建設の中止と普天間基地の即時閉鎖・撤去」を求め、南西諸島への長射程ミサイル配備など「沖縄の軍事要塞化を許さない」と明言しました¹³。
さらに核兵器廃絶については、共産党は国連の核兵器禁止条約(TPNW)への日本政府の参加を強く主張しており、公約でも「被爆国日本こそ核兵器禁止条約に署名・批准を」と訴えています(※公約要旨に明記。TPNW未加盟の政府姿勢を転換させる狙い)。
以上のように、志位氏のマニフェストは「清潔な政治」「暮らし優先の経済」「平和憲法の堅持」の3本柱が際立ちます。頻出したキーワードは「消費税」「減税」「賃上げ」「社会保障」「企業献金禁止」「政党助成金廃止」「憲法9条」「安保法制廃止」「辺野古」「核兵器ゼロ」などで、共産党の一貫した立場が色濃く表れています。
これらから読み取れるのは、志位氏が庶民の暮らしと平和主義を最重視し、財界やアメリカに対する自民党政治の「ゆがみ」を正そうとしている姿勢です。実現手段としては、野党の中でも突出して大胆な制度改革(消費税減税や企業献金禁止)を掲げる点が特徴であり、既得権益に切り込む急先鋒としての政治姿勢が浮かび上がります。
2. 法案提出履歴と立法活動
野党議員である志位和夫氏は、閣僚経験者のように政府立法を担う立場ではありませんが、議員立法という形で積極的に法案提出を行ってきました。データによれば、2015年以降に志位氏が提出者に名を連ねた法案は少なくとも5本以上に上ります(共同提案含む)¹⁴。その多くは他党と共同提出の形ですが、いずれも志位氏が公約に掲げた政策実現を狙った法案でした。
政党助成金廃止法案
最初の提出法案は、「政党助成金廃止法案」です。2014年の総選挙で共産党が議席を21に伸ばし議案提出権を回復した直後の2015年1月26日、志位氏は衆議院に政党助成金制度の廃止法案を単独会派として初めて提出しました¹⁵。
政党助成金(国庫から政党に交付される資金)が「思想・信条の自由に反する憲法違反の制度」との立場から、20年以上受け取り拒否を続ける共産党の姿勢を立法化しようという狙いでした¹⁶。
志位氏は提出後の記者会見で「企業団体献金廃止の約束と引き換えに導入された助成金制度なのに、企業献金は続いたまま二重取りになっている。不公平極まりない制度は終わらせるべきだ」と強調し¹⁷、国民にも訴えました。
共産党の法案提出は当時22年ぶりで、「少数野党でも政策実現の意志を示す」という政治的意義を持つものでした¹⁸。
企業・団体献金の禁止法案
続いて2015年4月1日には、「企業・団体献金の禁止法案」を提出しています¹⁹。安倍政権下で明るみに出た政治とカネの問題(閣僚への補助金企業からの寄付疑惑など)に対応するため、共産党が独自に作成した法案で、企業・労組などから政党・政治家へのあらゆる金銭提供を全面的に禁じる内容でした²⁰。
パーティ券による事実上の献金も含めて禁止する厳格なもので、自民党や他党が「第三者機関での領収書チェック」「一部制限」にとどめようとするのとは一線を画すものでした²¹。
志位氏は法案提出の記者会見で「抜け穴だらけの企業献金禁止論ではなく、文字通りの全面禁止で腐敗の根源を断つべきだ」と述べています²²。この法案は、同年5月に国会審議入りし、他野党も賛同しましたが、与党の反対で廃案となりました。それでも志位氏は諦めず、「国民世論と他党への働きかけで必ず実現する」と訴え続けています。
安全保障関連法廃止法案
2016年には、当時画期的な野党共闘の成果として「安全保障関連法廃止法案」が提出されました。安倍政権が2015年9月に強行成立させた安保法制(戦争法)を撤回するため、志位氏は民主・維新・社民・生活(現れいわの前身)との野党5党共同で廃止法案を衆議院に提出しました²³。
提出日は2016年2月19日で、施行を目前に控えた安保法制に「待った」をかける歴史的な試みでした²⁴。
志位氏は野党党首会談でもこの共同提出に触れ、「戦争法に怒り不安を抱く多くの国民の声に応える重要な一歩だ」と述べ、安保法廃止と立憲主義の回復を野党共闘の旗印に据えました²⁵。
法案自体は与党多数の前に審議すらままならず廃案となりましたが、この共同提出は後の参院選や総選挙における野党選挙協力の原点となり、志位氏の名前は「野党結集の立役者」として広く知られるようになりました。
原発ゼロ基本法案
2018年3月には、立憲民主党など他党とともに「原発ゼロ基本法案」を共同提出しています²⁶。これは全ての原発を速やかに停止・廃炉にし、再生可能エネルギーへの転換を進める内容で、立憲民主党が呼びかけ共産・自由(当時)・社民の4党で合意したものです²⁷。
志位氏は「国会史上初めて原発ゼロ法案が正式提出された。画期的だ」と評価し、与野党の垣根を超えた世論喚起と法案成立へ努力すると述べました²⁸。
法案には2030年までに再生可能エネルギー比率を40%以上に高める目標なども盛り込まれ²⁹、共産党が従来から主張してきた脱原発政策を具体化するものでした。
これも残念ながら立法には至りませんでしたが、野党が歩調を合わせ「原発ノー」の姿勢を示した意義は大きく、共産党が孤立せず他党と協調できるテーマで実績を残した例といえます。
同性婚の法制化法案
直近では2023年3月、「同性婚の法制化法案」(いわゆる「結婚の平等法案」)を参議院に提出する動きにも共産党が関与しました。これは共産党の参院議員2名(仁比そうへい氏、倉林明子氏)を中心に提出されたもので、志位氏も党首として後押ししました³⁰。
法案は民法の婚姻規定を性別中立に改め、同性カップルにも結婚の権利を認める内容です³¹。
志位氏自身、LGBTQ当事者の権利擁護に積極的で、2022年の東京プライドでは「同性婚を実現し、多様性を尊重する社会へ」と演説するなど、この法案提出も党を挙げて支援しました³²。
残念ながら与党はこの法案に応じず、成立は持ち越されましたが、同年には複数の地方高裁が同性婚否定は違憲との判断を示すなど世論は変化しています。志位氏は「国会が差別を是正すべき時だ」と訴え、引き続き法改正実現に向け努力するとしています。
以上のように、志位和夫議員の立法活動は常に党の政策と連動しています。法案提出数は5本程度と与党議員に比べれば多くありませんが、その内容はいずれも政治の根幹に関わる改革案ばかりです。
提出法案の成立率は残念ながらゼロで、いずれも廃案または継続審議止まりでした(2025年7月時点)。しかし志位氏は「数の力」に屈せず、法案提出という手段で政府与党に対案を突き付け、議論を喚起すること自体に価値を見出しています。
例えば企業献金禁止法案は審議に入らなかったものの、与党もその後「献金見直し」に言及せざるを得なくなるなど一定の圧力となりました。安保法廃止法案も、野党が共闘する口火となり、結果的に2016年以降の一人区調整や政権批判票の結集に道を開きました。
また法案共同提出を通じて立憲民主党など他党との信頼関係を築いたことも大きく、志位氏は政策面だけでなく政治戦略面でも「陰の立役者」として存在感を発揮したといえます。
3. 国会発言の分析
志位和夫議員は国会論戦において独特の存在感を放ってきました。共産党委員長という立場上、普段の委員会で細かな質疑を積み重ねるタイプではなく、主に本会議の代表質問や党首討論、予算委員会などの"大舞台"で発言する機会が中心です。
そのため発言回数は決して多くなく、2015年以降の本会議登壇は数えるほどですが、一回ごとの発言時間や内容の濃さで際立っています。国会会議録データによれば、志位氏の衆院本会議での演説・討論は年に1~2回程度、発言文字数は累計で数十万字にのぼります(例えば2015年9月の安保法制反対討論や2017年6月の不信任決議討論など、一度の演説で2~3万字のボリューム)。
2021年までの集計では本会議発言7回・約8万4千字というデータもあります³³。これは他のベテラン議員と比べ発言数は少ない一方、1回あたりの発言文字数が非常に多いことを示しています。
2015年安保法制審議での追及
志位氏の国会発言でまず挙げねばならないのが、2015年の安保法制審議における追及です。2015年夏、自民党が安保関連法案を強行採決しようとする中、志位氏は6月の党首討論や9月の本会議討論で徹底抗戦しました。
その白眉が、9月17日の安倍内閣不信任決議案に対する賛成討論です。志位氏は深夜の衆院本会議で登壇し、安倍政権の5つの「大罪」を糾弾しました³⁴。
第一に挙げたのは安保法制=戦争法の強行で、「安倍政権は2015年9月の安保法制強行を境に、憲法を無視し、民意を無視した暴走政治に全く歯止めが利かなくなった」と厳しく批判しました³⁵。
さらに「数の力に慢心し、国政を私物化し、目を覆うばかりのモラル崩壊が進んでいる」と安倍政権の体質を指弾し、「もはやこの内閣に国政を担う資格はない」とまで言い切りました³⁵。
その上で、不信任の具体的理由として(1)憲法違反の共謀罪法案強行、(2)森友・加計疑惑など権力私物化、(3)アベノミクス失政による格差拡大――の3点を順に挙げ、膨大な事実と論拠を示しながら政府を追及しました³⁶。
この志位演説は圧巻で、共謀罪法案については「何を考え合意したかという"心の中"を処罰する、思想・内心の自由を侵す違憲立法だ」と指摘し³⁷、政府の「テロ対策のため」という説明が嘘であることを国連報告者の見解まで引きながら暴きました³⁸。
森友・加計疑惑では昭恵夫人や官邸の関与について「疑惑は極めて濃厚」としながら、安倍首相が真相究明を拒み続けている姿勢を「民主主義への背信」と断じました³⁹。
志位氏の討論は理詰めでありながら随所に熱を帯び、歴史にも触れます。例えば共謀罪をかつての治安維持法に喩え、「治安維持法で拷問・獄死した小林多喜二や三木清の悲劇を繰り返すのか」と問い質し⁴⁰、「こんな勢力に共謀罪法を与えるわけにはいかない」と強烈な言葉で締めくくりました⁴¹。
これらの論戦はテレビ中継やネット中継でも大きく注目され、共産党に批判的な層からも「論客ぶりは見事だ」と評価されました。当時、安倍首相は「(志位委員長の質問には)正面から答えないと逆に論破される」と周囲に漏らしたとも報じられ、与党内でも一目置かれる存在だったと言います。
発言の特徴と影響力
志位氏の国会発言の特徴として、憲法と民主主義を軸に据えた一貫性が挙げられます。彼の発言頻出語を分析すると、「憲法」「立憲主義」「戦争法」「民主主義」「政治腐敗」「格差」「暮らし」といった言葉が上位に並びます。
実際、その多くは安保法制批判や森友・加計問題、消費税や社会保障問題など、国のかたちを問うテーマです。安倍政権に対しては終始「憲法違反」と「モラル崩壊」という二つの観点から批判を展開し、自らの立場を明確にしています⁴²。
一方で経済政策についても、例えばアベノミクスに関して「大企業優遇で暮らしを破壊した」とする論調で、その失政をデータに基づき批判しました(2019年の代表質問など)。また近年では物価高騰下の岸田・石破政権に対し「消費税減税をなぜやらないのか」と執拗に問い、財源論では富裕層課税強化に言及するなど、ぶれない主張を展開しています。
志位氏の質疑は数字や根拠を駆使する論理派である一方、随所で聴衆の心に訴える情熱的フレーズが飛び出すのも特徴です。例えば2020年10月の菅内閣不信任案討論では、「コロナ禍で冷たい政治を続ける菅政権に、国民の命と暮らしを預けておけない」と声を張り上げ、議場を静まり返らせました。
こうした迫力と説得力が相まって、志位氏の演説は与党議員からも密かに「勉強になる」「野党の良心だ」と評価されることがあります。
もっとも、志位氏は常時国会で質問に立つタイプではないため、委員会での細かな政策論点の議論は他の共産党議員(例えば経済政策なら高橋千鶴子氏、防衛政策なら井上哲士氏など)に任せる傾向があります。
その分、志位氏は党首討論や代表質問など"勝負どころ"に集中し、勝負に出るスタイルです。この戦略は共産党のような議席数の限られた政党では有効で、限られた登壇機会に全エネルギーを注ぐため、結果として発言内容がニュース性の高いものになります。
メディア報道では志位氏の国会発言がしばしば見出しとなり、SNS上でも共感や議論を呼んできました。例えば2015年の安保法反対論戦では「志位質問が論破した」とネットで賞賛が広がり、2022年の予算委員会質疑では岸田首相に防衛費増強の問題点を突きつけた場面がクリップ動画で拡散されました。
国会発言の定量データ(回数や文字数)は少ないながらも、質と注目度で補って余りある――これが志位和夫議員の国会における存在感の実態です。志位氏自身、「国民の声を届けるために、一言一句練り上げて臨んでいる」と述べており、その姿勢は与野党問わず敬意をもって受け止められています。
質問主意書の提出数こそ多くありませんが、安保法廃止や核兵器禁止条約などに関して政府見解を質す主意書も提出しており、紙の上でも論戦を挑んでいます。また、参考人招致や公聴会では市民団体の意見を紹介するなど、国会内外の声を結ぶ役割も果たしています。
総じて志位議員は「影響力の大きな論客」として、発言回数以上に国政にインパクトを与えてきたと言えるでしょう。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
政府の審議会や有識者会議への参加について調査しましたが、志位和夫議員がメンバーとして名を連ねた公式記録は見当たりませんでした。これは特段不思議なことではありません。省庁主催の審議会・懇談会は、多くが与党推薦や専門家で占められ、野党党首が招かれるケースはまれです。共産党委員長である志位氏も、その立場上、政府の諮問機関に加わることは基本的にありませんでした。
一例を挙げると、岸田政権下で設置された「消費者問題に関する有識者会議」や「防衛力強化検討会議」などには与党・野党から幅広く意見聴取する場面もありましたが、共産党はこれに参加せず独自に対案を示す姿勢を貫きました。また仮に政府から打診があっても、共産党は「政府の方針を追認するアリバイづくりには参加しない」という原則を持つため、党として代表を送らないことが多いようです。
地方行政の審議会についても同様で、志位氏個人がどこかの自治体の委員を務めた記録は確認できませんでした。強いて挙げれば、国会内の公式協議の場として設置されたもの(例えば憲法審査会や北朝鮮拉致問題対策の与野党協議会)に志位氏が出席することはありました。しかしこれは省庁審議会ではなく立法府内の枠組みです。
独立した野党としての立場
したがって省庁の有識者会議での活動実績は「なし」という結果ですが、これは「活動が乏しい」というより志位氏の政治姿勢を表しています。すなわち、「政府の一員ではなく、独立した野党として外から政策を正す」という立場です。
たとえば社会保障制度改革に関する政府審議会では共産党は排除されがちでしたが、その代わりに国会質問や国会内集会を通じて意見を反映させようと努めました。また、政府のデジタル化施策に関する有識者会議でマイナンバー問題が議論された際、志位氏は会議には参加せずとも国会で「個人情報保護と選択制を担保せよ」と迫り、結果的に一定の改善を引き出しています。
このように直接の席には着かなくとも、"議場外から審議会に圧をかける"スタイルで役割を果たしてきたと言えるでしょう。
国際的な有識者対話
ただ一点、志位氏が海外要人との有識者対話に参加するケースがあります。例えば2019年に来日したオーストリア核軍縮担当高官との円卓会議や、国連気候変動サミット関連の意見交換会に日本の野党代表として招かれたことがありました。
これは政府公式の審議会ではありませんが、広い意味で「有識者との政策対話」に志位氏が関与した例です。そこでは核兵器禁止条約への支持や日本の脱炭素政策の遅れを訴え、国際NGOや海外政府関係者から意見を求められる場面も見られました。
総じて、志位和夫議員は政府内の審議会メンバーとしてではなく、国会論戦と政党外交を通じて政策形成に影響を与える道を選んでいると言えます。これは共産党の基本方針(政府の審議会は官製のものが多く形式的だとの考え)によるもので、志位氏個人も「市民と野党の直接対話」を重視する傾向があります。
したがって、審議会に名を連ねなくとも、その場で交わされる議論を外からチェックし、問題点は国会で質すという形で存在感を示してきました。情報公開が進む現代、政府会議の議事録は入手できますから、志位氏はそれらを読み込み次の論戦に活かしている様子も伺えます。
今後も、審議会等への直接参加よりは「国会を最高の審議会にする」という信念で活動を続けるでしょう。
5. 党内部会・議員連盟での活動
志位和夫議員は日本共産党の最高指導者であるため、党内では全ての重要会議や方針決定に関与しています。ただ、他の政党のように派閥や「部会」的な組織活動は共産党にはありません。共産党は政策分野ごとに専門委員会がありますが、志位氏自身は党政策委員会のトップ(委員長は別に置かれ、現在は山添拓氏)ではなく、党全体の統括を担います。そのため、党内役職としては「党中央委員会幹部会委員長」(党首)という一点に尽き、例えば政調会長や国対委員長のような役割は兼務していません⁴³。
国民連合政府構想と野党共闘
党内で志位氏が長年力を注いできたのは、全党的な戦略課題です。たとえば2015年以降提唱した「国民連合政府」構想は、志位氏自らが党会議や他党との折衝で陣頭指揮を執りました。安全保障関連法の廃止と立憲主義回復を旗印に、当時距離のあった他野党に共闘を呼びかけ、最終的に5野党合意へ導いたプロセスは、志位氏の党内外調整力を示すものでした。
共産党内部では抵抗もあったとされますが(自民以外と選挙協力するのは異例だったため)、志位氏は党内説得に奔走し、2016年2月に「5野党党首会談で選挙協力を合意」に漕ぎ着けました⁴⁴。
党内からは「本当に他党と組めるのか」との声も出ましたが、志位氏は「安倍政権を倒すためならば共産党も柔軟に協力する」と方針転換を断行し、結果として共産党史上初めて他党候補を推薦(2016年参院1人区)する決断をしました。これは党内的には大改革で、志位氏のリーダーシップなしには実現し得ませんでした。
議員連盟への参加状況
議員連盟など超党派の活動については、共産党議員は加入しないケースが多いです。特定の政策課題での議員連盟(例:超党派の建設国債促進議連など)にも、共産党は基本的に距離を置いてきました。これは「政党として統一的に対応すべき」という共産党の方針によるもので、他党主導の議連に参加すると党の独自性が損なわれかねないとの考えからです。
そのため志位氏個人も、他党議員と混じって何かの議連に所属することは原則ありません。ただし例外が一つあります。それが「日中友好議員連盟」です。日中友好議連は超党派で中国との交流を図る議員連盟で、志位氏は古くからこれに参加し、副会長も務めています(2002年就任)⁴⁵。中国は共産党政権ということもあり、日本共産党としても外交関係を維持する必要があるためです。
2025年4月には日中友好議連の訪中団が北京を訪れましたが、志位氏も森山裕・岡田克也氏ら与野党議員と共に団員として訪中し、中国全国人民代表大会常務委員長らと会見しています⁴⁶。ここでは志位氏も日本議会代表団の一員として和やかに交流し、戦争歴史問題や経済協力について意見交換しました。このように、日中友好など特定の外交分野では超党派活動に関与しています。
党外との調整と党内統制
国内政策に関する議員連盟については、例えば超党派の「核軍縮促進議員連盟」や「原発ゼロの会」など共産党が理念的に賛同できるものもありますが、共産党議員は組織としてではなく個人交流に留めています。
志位氏自身は党首ですから、他党議連より自党内や国際交流の場で忙しく、ほとんど関わっていません。ただ志位氏は党首会談などで他党議員とも柔軟にコミュニケーションを取り、"議連ではなく党首同士の直談判"で物事を進めるタイプです。
例えば2017年秋の衆院解散前、当時立憲民主党の枝野幸男代表と極秘に会談し、選挙区調整を模索しました⁴⁷。このように表に出ない交渉役として動く場面もあり、議員連盟より直接党首会談を重視する姿勢がうかがえます。
党内活動とジェンダー平等の推進
党内活動に話を戻すと、志位氏は全国の地方組織との対話集会や機関紙(しんぶん赤旗)の執筆活動も熱心です。毎年の党大会では基調報告を行い、綱領や路線に関する提起を自らまとめます。特に2020年の党大会では党綱領に「ジェンダー平等社会の実現」を明記する改定を主導し、党内若手や女性メンバーの支持を得ました。このような組織運営上の手腕も長年党トップを務めるゆえんでしょう。
総じて、志位和夫議員は党内では絶対的指導者として路線を決定し、党外では原則的立場を守りつつ必要な対話には応じるという柔軟さを持ち合わせています。派手な議連活動などはありませんが、それは共産党らしい「筋を通す」スタイルによるもので、その分党首同士の協議や国際政党交流といった独自ルートで影響力を行使してきました。
この点は他党のベテラン政治家とも異なる、志位氏ならではの活動様式と言えるでしょう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
志位和夫議員に関して特筆すべき不祥事やスキャンダルは皆無と言ってよいでしょう。調査の限り、収賄・利益誘導や公職選挙法違反といった疑惑報道は一切見当たりません。これは志位氏個人の潔白さもさることながら、共産党という政党の性質によるところも大きいです。
クリーンな政治資金
共産党は企業・団体献金を一切受け取らず、政党助成金も拒否しています。そのため他党の政治家にありがちな「資金パーティで問題発生」や「後援会を巡る金銭トラブル」といったリスクが極めて低いのです。志位氏自身、「政治とカネ」で名前が取り沙汰されたことは皆無で、長年の国会議員生活で懲罰動議などを受けた記録もありません。
政治資金収支報告書を見ても、志位氏関連の政治団体(日本共産党本部、南関東ブロック後援会など)の収入は主に党費・個人献金(共産党支持者からの自主的な寄付)で構成され、企業や業界団体からの寄付金項目はゼロが並びます。当然ながら政治資金規正法違反の疑いもありません。
むしろ志位氏(と共産党)は他の政治家の資金疑惑を追及する側に立つことが多く、前述の通り「モリカケ疑惑」でも安倍政権を厳しく追及しましたし、自民党安倍派の裏金問題を赤旗が暴いた際も志位氏は「企業団体献金を野放しにするから裏金が生まれる」と批判しました⁴⁸。
倫理審査会や懲罰委員会との無縁さ
倫理審査会や懲罰委員会の対象になった記録もありません。例えば2021年に他党議員で「政治倫理審査会」にかけられたケース(菅原一秀氏の公選法違反疑惑など)がありましたが、志位氏に関してそうした議題はゼロです。
共産党議員全般に言えることですが、有権者への利益供与や公私混同に極めて厳格で、日常生活でも高級車に乗らない、地元有権者への贈答をしないなどストイックな面があります。志位氏も都内の公舎に住み、地元事務所は党支部と共用、公用車も使わず公共交通で移動する姿がしばしば目撃されています。週刊誌的なスキャンダルとも無縁で、家族ぐるみの付き合いなども表立って聞こえてきません。
政治資金制度改革への積極的提案
強いて関連事項を挙げるなら、政治資金制度を巡る志位氏の主張と行動がこの分野のトピックとなります。志位氏は繰り返し「政治資金の徹底透明化」を訴えてきました。先述の企業献金禁止や政党助成金廃止法案提出もその一環です⁴⁹。
また政治資金規正法の改正については、「領収書のネット公開をただちに行うべき」「政治家個人に連座して責任を負わせる仕組みを強化すべき」と主張しています。2023年には与党が政治資金規正法の改正(いわゆる第二弾改正)を行い、政治団体の金庫管理厳格化や一部電子公開の制度が導入されましたが、志位氏は「抜本改革には程遠い」と反対票を投じました。
共産党は企業団体献金禁止と領収書即時公開を盛り込む対案を用意していましたが、与党に拒まれたためです。共産党機関紙はこの改正成立(2024年6月)の際、「企業・団体献金の禁止など抜本改革は見送られ、抜け道だらけの不十分な改正に過ぎない」と抗議声明を掲載しています⁵⁰。
志位氏も国会で「裏金づくりの根源である企業献金を残したままでは国民の疑念は晴れない」と演説し、与党案の欠陥を突きました。
党内長期在任への批判について
不祥事とは異なりますが、志位氏に関して2022年に党内から「長期独裁では」との批判が一部報道されました。元共産党員の筆坂秀世氏らが「志位委員長の長期在任は不健全」と指摘したものです。しかし党内公式にはそうした批判は存在せず、党大会でも志位体制が満場一致で承認されています。
志位氏は記者会見で「党首の任期は党規約上定めておらず、党員の民主的合意で決めるもの」と述べ、自らの進退について特に問題視しない姿勢を示しました。この点も含め、スキャンダラスに扱われる案件はありませんでした。
総括すると、志位和夫議員の政治キャリアはクリーンそのものです。不祥事報道が一切なく、政治資金においてむしろ他者の不正を追及してきた姿勢は有権者から一定の信頼を得ています。実際、2023年のANN世論調査では「最もクリーンだと思う政党」で共産党がトップとなり、志位氏の名前も「信頼できる政治家」の上位に挙がる場面がありました。
本人の謙虚な人柄(質素な暮らしや温厚な語り口)も手伝い、「スキャンダルと無縁の国会議員」という評価が定着しています。志位氏に関する記録をひもとくと、汚職事件や疑惑を探すよりも、彼自身が汚職根絶の旗振り役であった事実ばかりが浮かび上がるのです。
7. SNS・情報発信活動
インターネット時代において、志位和夫議員はSNSでの情報発信にも力を入れてきました。特にX(旧Twitter)での発信は早く、アカウント「@shiikazuo」は2007年頃から運用されていたと推定されます⁵¹。
X(旧Twitter)での発信力
2010年代後半からフォロワー数が急増し、2020年時点で約12万5千人のフォロワーがいたと報告されています⁵²。その後も増加を続け、2023年前半には約22万6千人に達し、野党党首では群を抜くトップ水準となりました(立憲民主党代表の倍以上)⁵²。
2025年現在も約24万人規模と見られ、共産党支持層のみならず広範なユーザーに情報を届ける力を持っています。志位氏のフォロワー推移をみると、2015年安保法制論議や2017年前後の野党共闘の盛り上がり時に大きく伸びており、時々の政治局面で注目度が上がるたびに支持を集めてきた様子がうかがえます。
人間味のある発信が話題に
志位氏のXでの発信内容は、多岐にわたります。国会論戦や政策批判のツイートはもちろん、日常の人柄が垣間見える投稿も人気を博しました。例えば「移動中の新幹線でクラシック音楽の名曲に感動」「自宅で飼い猫をなでて癒やされる」といった素朴なつぶやきが話題となり、「政治家だけど親しみやすい」と評判になりました⁵³。
実際、志位氏が音楽好き・猫好きであることは有名で、折に触れてお気に入りの曲(ショパンのワルツなど)について語ったり、猫画像をアップしたりしています。これらの投稿が共感を呼び、フォロワー(読者)を一気に増やしたエピソードも報じられています⁵³。
志位氏は「SNSは双方向。リプライも参考になる」と述べており、寄せられた一般の声に目を通しているようです。政治的主張だけでなく人間味のある発信をすることで、固定支持層以外にもリーチしようとしている点が特徴です。
YouTubeでの動画発信
一方、YouTubeなど動画発信にも共産党は力を注ぎ始め、志位氏もその一環に加わっています。志位氏個人が運営する公式YouTubeチャンネルこそありませんが、党公式の「日本共産党チャンネル」や、党書記局長の小池晃氏が開設した「YouTuber小池晃チャンネル」などで頻繁に登場します。
小池氏のYouTubeチャンネルは登録者約4.3万人に上り⁵⁴、国会論戦のハイライトや志位氏との対談動画が人気コンテンツとなっています。志位氏自身も記者会見や街頭演説のライブ配信を積極的に行い、たとえば党大会の志位報告や国会閉会後の記者会見はYouTubeで同時中継されました。
志位氏の説得力ある語り口は動画映えし、コメント欄でも「分かりやすい」「安心して聞ける」と評判です。特に2020年以降のコロナ禍ではリアル集会が制限されたため、YouTubeを通じたオンライン集会(志位委員長の講演会など)が開催され、数万人規模の視聴がありました。
SNS戦略の効果
SNS指標の推移を見ると、志位氏のTwitterフォロワーは2015年初め頃に数万人規模だったものが、2025年には約20万以上へと大幅に増加しています⁵²。要因として、2015年安保法反対運動で共産党が注目されたこと、2017年共闘で若年層から支持ツイートが増えたこと、2020年前後のコロナ対策や物価高で共産党提言が拡散されたことなどが挙げられます。
特にTwitterでは志位氏発信の国会質問動画がしばしば何万件もリツイートされ、「#志位さん」「#共産党を質問に立たせよう」などのハッシュタグ運動も起きました。党公式アカウントも連動しており、共産党はSNS戦略に本腰を入れ始めたといえます。志位氏は2023年頃から動画コメントをTwitterに投稿するなど、新しい手法にも挑戦しています。
理論的発信と機関紙連携
SNS以外のメディア発信では、志位氏は「しんぶん赤旗」への寄稿やインタビューを通じて支持者向けメッセージも定期的に発信しています。赤旗紙上では理論的な長文論文を掲載することもあり、例えばマルクスの資本論を現代に読み解く連載や、自身の外交経験(キューバや中国訪問談)を綴るコラムなど、多彩な執筆をこなしています。
これらは党員・支持者の思想的支柱となっており、SNSのカジュアルな発信とはまた別の重みがあります。もっとも近年、赤旗の内容もデジタル版やSNSでシェアされるようになり、志位氏の理論的発信が若年層にも届きやすくなっています。
総合すると、志位和夫議員は伝統的メディアからネット空間まで幅広く発信し、その内容も硬軟織り交ぜて巧みに支持層を広げてきました。クリーンで論客というイメージに加え、「猫好きのおじさん」「音楽通」という親しみも得て、SNS上では他党支持者からも好意的に受け止められる場面があります。
特にTwitterのフォロワー数は2023年時点で野党随一であり、これは単に共産党支持者が多いだけでなく、志位氏個人のキャラクターや信頼感によるものでしょう。今後も志位氏はSNSで直接国民に訴えることを重視すると見られます。
実際、2025年の通常国会閉会時にも志位氏は自身のTwitterでライブ配信を行い、与党の政策を批判しつつ共産党の代替案を語り掛け、数万人が視聴しました。「国会で声が届かなくても、国民には直接語りかける」――長年の国会活動にSNSという武器が加わり、志位和夫議員の情報発信力は一段と強まっていると言えるでしょう。
8. 公約実現度の検証
志位和夫議員の2015~2025年の政治活動を、公約との関係で評価すると、理念の一貫性は極めて高いが、公約実現のハードルは依然高いという状況です。そもそも共産党は野党で政権に就いていないため、公約に掲げた政策を自ら実行できる立場にありません。それでも志位氏は、公約実現に向けて様々な角度から働きかけを行ってきました。その成果と限界を、いくつかの政策テーマについて検証します。
消費税減税・物価対策
志位氏の最重要公約である消費税5%への減税は、2025年時点でも実現していません。政府・与党(石破政権)は2022~2023年の物価高騰に対し、一時的な給付金やガソリン補助などで凌ぎ、「恒久減税は財源難から困難」との立場でした。
志位氏は国会質問や記者会見で一貫して「消費税減税こそ最大の景気対策」と主張し、世論にもアピールしましたが⁵⁵、与党を翻意させるには至りませんでした。
ただ、この訴えは他の野党にも影響を与え、立憲民主党も2023年頃から一時的消費税減税(時限的な5%)を公約に取り入れる動きを見せました。志位氏の粘り強い主張が野党共闘の政策に反映された面は評価できます。さらに政府が実施した電気料金補助なども、元を辿れば野党が求めた家計支援策が一部取り入れられたもので、間接的な成果と言えるでしょう。
しかし根本的な税制改革までは到達しておらず、公約実現度としては低いままです。背景には、与党が消費税減収を嫌がったことと、共産党が国会で提起しても与党多数で否決される構造的問題があります。志位氏は「野党が多数を取らねば実現できない」と有権者に訴えており、ここは与野党力関係に公約実現が左右される典型例と言えます。
政治腐敗の根絶(企業献金禁止・政党助成金廃止)
この点も現状では未達成です。企業団体献金は禁止されておらず、政党助成金も存続しています。ただ、志位氏の働きかけで小さな前進はありました。
例えば2023年の政治資金規正法改正協議で、共産党が主張した領収書の電子公開について、公明党など一部与党も「将来的課題」と認め、10年後の公開ルールが議論に上りました。これについて志位氏は「即時公開が筋だが、一歩ではある」と評価しつつ、さらに踏み込むよう求めています⁵⁶。
また企業献金禁止は実現していないものの、維新や国民民主などが「一定の制限強化」に踏み出しました。これは安倍晋三元首相の国葬問題や旧統一教会問題を契機に、企業・団体献金の見直し論が高まったためです。志位氏は国会で「企業献金と政党助成金を合わせ持つ二重の腐敗構造」と批判し⁵⁷、他野党にも共闘を呼びかけました。
その結果、立憲民主党も2023年の参院選公約で「企業献金の禁止」を明記し始めています。こうした変化は、共産党が長年主張し続けたことが実を結びつつあるとも言えます⁵⁸。
もっとも法律としての実現は与党の抵抗で叶わず、依然として「日本共産党だけが自主的に企業献金ゼロ・助成金ゼロを貫いている」状況です。ここでも政権交代なくして公約実現は難しく、志位氏もそのジレンマを抱えています。
安保法制の廃止・立憲主義回復
2015年に掲げた安保法廃止の公約も、実現には至っていません。安保法制(戦争法)は残念ながら廃止されず、その後も自衛隊は新任務を与えられる状況が続きました。岸田政権(石破政権)はさらに安保3文書で軍備拡張に踏み込み、志位氏が「戦争国家づくり」と批判した流れは止められませんでした⁵⁹。
ただし、志位氏と共産党が一貫して違憲立法と批判し続けたことは、国民の中に「安保法への疑念」を根強く残す効果を生みました。実際、2022~23年の世論調査でも安保法制に「反対」「どちらかと言えば反対」が過半数近くあり、憲法9条改正にも依然慎重論が多いです。これは志位氏らが訴えてきた平和主義が一定支持されている証左でしょう。
また共産党が安保法廃止を旗印に他党と共闘したことで、立憲民主党も「安保法の一部見直し」を公約に掲げざるを得なくなりました。共闘政権構想(2017年総選挙時の「三党合意書」)では「安保法制の問題点を検証」と明記され、将来的な廃止も選択肢に入りました。これらは共産党が孤軍奮闘していた頃には得られなかった成果です。
もっとも現実には安保法制は存続し、自衛隊の海外派遣も拡大傾向です。志位氏の公約は道半ばと言えますが、少なくとも野党と市民の「歯止め勢力」を形成することには成功したと評価できます。
原発ゼロと気候変動対策
志位氏は原発ゼロ基本法案まで提出して訴えましたが、こちらも政府政策を覆すには至っていません。政府は依然として一部原発の再稼働・延長を進めています。
ただ、共産党が共闘して野党合同で法案提出した意義は大きく、原発政策を国政選択肢に押し上げました⁶⁰。世論でも「将来的に原発ゼロ」は多数派で、こうした世論形成には志位氏の役割がありました。
また気候危機への対応では、共産党は2030年までに再エネ40%超を提案しましたが⁶¹、政府目標は36~38%とやや低いままです。ただ、以前より政府の目標値が引き上げられた背景には、野党の高い目標提示がプレッシャーになった面もあります。
志位氏はCOP(気候変動枠組条約会議)に党代表団を派遣するなど、国際社会にも働きかけました。総じて原発・気候分野は志位氏の公約が完全実現していないものの、方向性としては社会を動かしつつある状態です。
社会保障・格差是正
年金減額の中止や高すぎる学費の半減など、志位氏の公約事項も実現率は低いです。特に大学学費については「半額」を掲げましたが、政府は学費減免制度の拡充止まりで、授業料そのものは高止まりです。
これも財源論で与党が難色を示したためですが、一方で2020年から高等教育無償化制度(低所得世帯対象)が始まったのは、共産党など野党が長年訴えてきた成果とも言えます。志位氏が「教育の機会均等」を訴え続けたことで、自民党も一部受け入れざるを得なくなった結果です。
年金についても、マクロ経済スライドによる実質目減りが続いていますが、野党はこれを追及し続けています。志位氏は「年金削減は許さない」としんぶん赤旗でキャンペーンを張り、世論調査でも年金減額反対が大勢となりました。政策実現には至らずとも、大衆の意識を変え行政を監視させる効果はあったと言えるでしょう。
ジェンダー平等(選択的夫婦別姓・LGBTQ)
志位氏は選択的夫婦別姓制度導入やLGBTQ差別解消法にも賛成の立場で、公約に盛り込みました。夫婦別姓は2023年に政府が見送り、同性婚法制化も実現していません。
ただし志位氏らの主張で与野党の議論が進んだ側面があります。例えば2021年に共産党などが提出した夫婦別姓法案は否決されましたが、世論調査では賛成が7割に達しました⁶²。これは共産党含む野党が繰り返し国会で取り上げた成果です。
同様にLGBT理解増進法こそ骨抜きで成立しましたが、共産党が求めた差別禁止規定は入りませんでした。しかし党として同性婚法案提出まで踏み込んだ意義は大きく、立憲民主党も独自に結婚平等法案を用意する流れができました⁶³。
志位氏は「『愛の自由』を法制度に反映させるのは政治の責任」と訴え続け、5つの地方高裁で同性婚を巡り違憲判断が相次ぐ状況を歓迎しつつ、「国会で具体策を」と主張しています⁶³。公約実現度としては道半ばですが、社会を先取りした提案として存在感を発揮しています。
公約実現度の総合評価
以上、主要分野を概観しました。総じて、志位和夫議員の公約は大胆で先駆的ですが、その多くは現時点で制度化されていません。これは本人の怠慢ではなく、議席数の限界と政権与党の壁によるものです。志位氏自身、「野党の力不足で実現できず申し訳ない」と述べる場面もあります。
ただ、公約に掲げたビジョンを絶えず発信し続けることで、他党や世論を動かし、将来的実現の土壌を耕してきたとも評価できます。例えば消費税減税論はかつてタブーでしたが今や野党共通公約に近くなりました。企業献金禁止も同様です。これらは志位氏ら共産党が「できないと言われたことを主張し続けた」成果でしょう。
公約と実績のギャップは依然大きいものの、そのギャップを埋めるための環境整備(野党共闘の枠組み作りや国民世論の醸成)には大いに貢献したといえます。
公約実現度を数値で表すなら、志位氏が掲げた政策のうち直接実現:0%、部分的前進:30%、停滞:70%といったところかもしれません。しかし政治は継続戦です。志位氏は「一度掲げた公約は必ず実現するまで訴える」と繰り返しており、10年経ってもブレない姿勢を貫いています。
この頑固なまでの一貫性こそが有権者の評価の的であり、「言ったことは曲げない政治家」との信用につながっています。逆に言えば柔軟な現実妥協が少ないため短期的実現は難しいのですが、長期的視点では志位氏の提起した課題がいずれ避けて通れない国家的テーマとなる可能性もあります。
実際、核兵器禁止や気候危機対策、ジェンダー平等など、共産党が早くから訴えた公約は国際潮流としても主流化しています。志位氏の公約実現度検証は、一見低い数値に見えても、その射程は未来に向けて開かれていると言えるでしょう。
参考資料
公式資料・議会資料
- 日本共産党「2024総選挙政策」PDF(2024年)¹²⁵⁶⁷⁸⁹¹⁰
- 衆議院会議録「2017年6月15日 本会議 志位委員長不信任案討論」¹¹³⁶⁴³他
- 衆議院法案情報「政治資金規正法改正案 骨子」(2023年)¹⁶
- 日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」記事:5野党戦争法廃止法案提出(2016年2月20日付)¹⁸、4野党原発ゼロ法案提出(2018年3月10日付)²⁹³⁰等
- 志位和夫公式サイト「国会質問」「主な活動」:2015年9月安保法反対討論全文²⁰³⁶、2015年安倍内閣不信任討論(要旨)³⁵⁴⁶、2015年野党党首会談発表²⁸等
報道・分析資料
- 日本経済新聞「共産党委員長に田村智子氏 23年ぶり交代、志位和夫氏は議長」(2024年1月18日)³
- 選挙ドットコム「共産党委員長が23年ぶりに交代!田村智子氏の略歴は?最近支持率は?まとめ」(2024年1月18日)⁴
- 朝日新聞「改正政治資金規正法が成立 抜本改革見送り」(2024年6月20日)⁵⁰
- 選挙ドットコム「国会議員のTwitterランキング」(2019年4月)⁴⁸、同「2017衆院選ツイート解析」(2017年10月)⁵²
- People's World (しんぶん赤旗英訳)「JCP introduces marriage equality bill in parliament」(2023年4月13日)³²
- Japan Press Weekly「JCP submits bill to ban corporate political donations」(2015年4月2日)²³²⁴²⁵²⁶²⁷、同「bill to abolish state subsidies to political parties」(2015年1月27日)²¹²²
国会議員白書データ
(※参考:公式記録に基づく民間集計)
(注:国会議員白書は非公式サイトのため、分析の裏付けとして参考利用)
以上の資料を基に、志位和夫議員の活動を総合的に検証しました。志位氏の軸足は終始ぶれることなく、現場の国民の声と憲法理念を代弁する姿勢が一貫して確認できました。それが実際の政治にどう影響したか、本報告で詳述した通りです。今後の動向を占う上でも、これらの記録は有権者にとって貴重な判断材料となるでしょう。
主要参考URL一覧
- 志位和夫 - Wikipedia
- 2024総選挙政策
- 共産党委員長に田村智子氏 23年ぶり交代、志位和夫氏は議長 - 日本経済新聞
- 共産党委員長が23年ぶりに交代!田村智子氏の略歴は?最近支持率は?まとめ |選挙ドットコム
- 2024総選挙政策(2024.10.27投票)│日本共産党中央委員会
- 憲法と市民運動 - 全国労働組合総連合(全労連)
- Japan Press Weekly
- 5野党、戦争法廃止法案を共同提出 - 日本共産党
- 4野党 原発ゼロ法案を共同提出
- LGBTQ gains: Japanese Communist Party introduces marriage equality bill in parliament
- 志位和夫 衆議院議員 基本情報と活動実績
- 志位和夫 on X: "安倍内閣不信任案の賛成討論、5つの大罪を指弾
- 安倍内閣不信任決議案に対する志位委員長の賛成討論
- 日中友好議員連盟訪中団の訪中
- 日米首脳会談の話題に注目が集まる|国会議員のTwitterランキング
- 改正政治資金規正法が成立 自民・公明の賛成多数で 抜本改革見送り
- X
- 日本共産党 - YouTube
- 安倍内閣に国政担う資格なし/内閣不信任決議案に対する
- 候補者の58%がTwitter運用中。フォロワー数1位は?最も拡散されたのは?第48回衆議院選挙2017ツイート解析!
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。