くしぶち まり
櫛渕万里議員の政治活動総覧(2015-2025)
概要
櫛渕万里(くしぶち まり)は、れいわ新選組に所属する衆議院議員で、現在同党の共同代表を務めています。1967年群馬県沼田市生まれの彼女は、国際NGO「ピースボート」で長年活動した国際派であり、2009年の衆院選で民主党公認として初当選しました¹。当時は東京23区(町田市・多摩市)で議席を得て、予算委員会や経産委員会理事として地球温暖化対策や子育て支援に尽力し、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT法)成立に関わるなど実績を残しました。
しかし2012年の総選挙で落選し、その後民主党の再編に伴い民進党、希望の党などを渡り歩きました(2017年の衆院選では千葉3区から出馬するも落選)。政治の第一線から退いていた櫛渕氏は、市民活動や研究職を経て、2019年結党のれいわ新選組に参加。
2021年の第49回衆院選では東京22区(調布市・三鷹市など)から立候補し、選挙区では敗れたものの比例東京ブロック名簿で次点となりました。翌2022年4月、山本太郎代表の辞職に伴う繰上当選が告示され、約10年ぶりに国政復帰²。
こうして通算3期目の当選を果たし、現在は東京14区総支部長(墨田区・江戸川区)として地盤を築いています。2022年12月19日からは山本太郎代表に次ぐ共同代表に就任し、党運営にも深く関与しています³。
分析対象の2015–2025年は、櫛渕氏にとって長い浪人生活から新党で再起し、再び国会で存在感を発揮するまでの激動期でした。本レポートでは、その期間における議員としての活動全般を、選挙公約から立法・発言・政党活動・政治資金まで幅広く検証し、有権者が彼女の歩みとスタンスを立体的に理解できるようまとめます。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
櫛渕万里氏の直近の選挙公報・マニフェストをひも解くと、彼女の政治信条が明確に浮かび上がります。掲げたスローガンは「ともに生きる日本を!」。この旗印の下で、彼女は有権者に対し「平和で持続可能、誰も取り残さない日本」を約束しました。
具体的政策の柱は、大きく6つの改革に整理されています。その中核となるのが、本人いわく「3つのゼロ政策」です。すなわち、「消費税ゼロ」「教育費ゼロ」「CO₂ゼロ」という大胆なキーワードを掲げ、家計負担の軽減と持続可能な社会の実現を目指すと訴えました。
笑顔で子育てできる暮らし
1つ目の改革は「笑顔で子育てできる暮らし」です。ここでは教育の完全無償化を筆頭に、奨学金返済ゼロ、児童手当月3万円の支給、保育料や給食費の無償化など、思い切った少子化対策・教育支援策が並びます。
「親ガチャをなくす」という表現で、生まれ育った家庭環境によらず全ての子どもが等しく学び成長できる社会を目指すと強調しました。実家が保育園・幼稚園を経営してきた経験から、子育て支援法の成立にも関わった実績をアピールしつつ(彼女は民主党政権下の2012年に「子ども・子育て支援法」成立に尽力しています)、教育予算をGDP比で大幅に引き上げる決意を示しています。
気候危機への挑戦・自然エネルギー100%社会へ
2つ目は「気候危機への挑戦・自然エネルギー100%社会へ」です。櫛渕氏は環境活動家らしく、「気候危機は命の問題」と位置付け、日本のエネルギー自給率がわずか8%に過ぎない現状を変えると宣言しました。
具体的には、太陽光・風力など純国産の再生可能エネルギーへの大胆な転換でCO₂排出ゼロの持続可能社会を築くとしています。原発には「NO」を突き付け、原発ゼロと「廃炉ニューディール」によって安全なエネルギー政策へ舵を切ると明言しました。
彼女は初当選期にFIT法成立の最前線に立った経験を引き合いに出し、2012年以降国内の自然エネルギー比率が8%から24%に拡大したことを成果として紹介しています。今後10年で官民合わせ200兆円をグリーン産業に投資し、250万人の雇用創出を目指すという将来像も示されました。
消費税・インボイス廃止、経済の再生
3つ目の柱は「消費税・インボイス廃止、経済の再生」です。30年に及ぶデフレ不況から脱却し、人間らしい暮らしを取り戻すために、櫛渕氏は消費税の廃止を訴えています。彼女によれば「消費税をゼロにすれば1ヶ月分の給与が戻ってくる」ほど国民負担が軽減し、中小零細企業の底上げにも繋がる。
さらに景気条項を削除してまで行われてきた増税政策が間違っていたことをデータで示し、中間層の没落や非正規労働拡大の原因として消費税増税を挙げました。この部分では、彼女の経済観が色濃く表れています。すなわち「人間が数字扱いされる経済ではなく、人が幸せを実感できる経済を」という理念です。
なおインボイス制度(適格請求書保存方式)も、中小事業者を圧迫するものだとして廃止を公約に含めています。実績欄には、2012年民主党政権時に消費増税法の附則へ景気条項を書き込ませたことや、2022年に野党4党で「消費税減税・インボイス廃止法案」を提出したことが記され、減税実現への本気度を示しています。
誰もが自分らしく生きられる国へ
4つ目は「誰もが自分らしく生きられる国へ」。超高齢社会を迎える中、医療と介護の充実によって「ノーマライゼーション社会」を実現する決意が示されています。
本人の自己決定を尊重し、自立支援や地域包括ケアを進めること、介護士・障がい者支援の処遇改善、障害福祉サービスと介護保険の統合見直しはしないことなど、専門的な視点が盛り込まれています。櫛渕氏は2010年前後に障害者自立支援法の改正(応益負担を応能負担へ変更)や障害者差別解消法の制定に関わった経験があり、そうした過去の立法実績を土台に「共生社会」の深化を公約しています。
裏金政治を許さない。古い政治文化を変える
5つ目の柱は「裏金政治を許さない。古い政治文化を変える」です。ここには彼女の政治改革への強い意志が現れています。企業・団体献金や政治資金の不透明さを断ち、政治資金規正法の再改正に踏み込むと宣言。
同時に若者や女性がもっと政治参加しやすくする選挙制度改革の必要性も訴えています。例えば一票の格差是正やクオータ制の導入なども念頭にあると推察されます。
また「官から民へ」の新自由主義的な行財政改革に歯止めをかけ、「民から公へ」の再転換で公共サービスを拡充するとも書かれています。国会の情報公開や公文書管理の徹底、立法府の権限強化によるチェック機能の向上も盛り込み、政治不信を招く旧態依然とした慣行(忖度政治や闇予算など)からの脱却を目指す内容です。
民主党議員時代にNPO法改正や寄付税制優遇措置に関わった経験から、公共と市民をつなぐ仕組みづくりを推進してきたことも強調されています。
戦争をさせない。徹底的な平和外交と真の安全保障
最後の6つ目は「戦争をさせない。徹底的な平和外交と真の安全保障」です。櫛渕氏は平和憲法の理念を堅持し、専守防衛を守り抜くと明記しました。
具体策としては、日米地位協定の見直し、北東アジア非核化に向けた地域安全保障協議の枠組み創設、そして「核の傘」から「非核の傘」へという大胆な安全保障ビジョンを掲げています。武器ビジネスに加担せず、国内産業振興(メイド・イン・ジャパンの回帰)や食料・エネルギー自給率向上によって「真の安全保障」を確立するとの主張です。
国連の場で北朝鮮人権問題や核兵器禁止条約の会議に参加してきた国際派らしく、外交努力で紛争を防ぐアプローチを強調しています。これはいわば「積極的平和主義」とも言えるスタンスで、軍事力ではなく外交・経済・エネルギー政策の自立による安全保障を追求する内容です。
公約の特徴
以上、公約のキーワードを頻度順に見ると、「消費税」「教育無償化」「自然エネルギー」「子ども」「平和」「政治改革」といった語が上位に並ぶでしょう。これらから読み取れるのは、櫛渕氏が経済的公正(税と社会保障)、社会的公正(教育やジェンダー平等)、環境的公正(脱炭素)、そして政治的公正(クリーンな政治)を柱に据えていることです。
彼女の姿勢は一貫してリベラルかつ庶民派であり、「弱い立場の人々に寄り添い、古い既得権と闘う」という物語が全体を貫いています。選挙公報の文面も、専門用語より平易な日本語で綴られており、「暮らしを守る」「命を守る」といった情緒的フレーズを交えつつも、具体的な数字や法律名(例: 再生エネ比率や法案名)を挙げて説得力を持たせる構成です。
これらから、櫛渕氏はデータに裏打ちされたラディカルな改革派という印象を有権者に与えようとしていることがわかります。公約に掲げた理想は高く大きなものですが、その背景には彼女自身の政治遍歴と活動の軌跡(環境NGOや民主党政権での経験)が色濃く反映されており、単なる思いつきではなく「自分が成し遂げるべき使命」と捉えていることが読み取れます。
2. 法案提出履歴と立法活動
2015年以降、櫛渕万里氏は長い間国会議員の座を離れていたため、この時期前半は直接の立法活動こそありませんでした。しかし2022年4月に繰り上げ当選で衆議院に復帰して以降は、少数政党の議員ながら積極的に法案提出や修正動議に関与し、自身の政策を立法という形で示す努力をしています。
消費税減税法案の共同提出
まず、目玉公約だった消費税減税に関して、復帰早々に具体的アクションを起こしました。2022年6月、櫛渕氏はれいわ新選組・立憲民主党・社民党・共産党の野党4党共同で「消費税を5%に減税しインボイス制度を廃止する法案」を衆議院に提出しています²。
法案正式名称は「消費税減税法案」(インボイス廃止も含む改正案)で、彼女自身が提案者の一人となりました。これは彼女の公約「消費税ゼロ」には及ばないものの、当面の実現可能性を考慮して5%減税という形でまとめたものです。
野党が足並みを揃えて提出した点において、櫛渕氏はそのとりまとめ役の一人を務めたと報じられています(同僚の田谷亮議員と共に各党交渉に尽力したとの記述あり)。この法案は与党の反対で審議未了に終わりましたが、れいわ新選組の主張を国会に正式に提起したという意味で大きな一歩でした。
社会課題法案への参画
また、社会課題に関する重要法案にも、党派の垣根を越えて共同提出者として名を連ねています。代表例が選択的夫婦別姓の実現とLGBT差別解消法です。
2022年秋の第208回臨時国会で、立憲・国民民主・共産・れいわ・社民の野党5党が共同提出した「民法の一部を改正する法律案(選択的夫婦別姓法案)」では、櫛渕氏は枝野幸男氏(立憲)らとともに提出者に名を連ねました。
この法案は、長年実現していない選択的夫婦別姓制度導入のため民法改正を目指す内容で、櫛渕氏自身もジェンダー平等の観点から強く推進してきたテーマです。法制審議会の答申から25年以上も国会提出がない現状を打破すべく、「超党派」で提出に至ったものですが、残念ながらこちらも継続審議扱い(審査未了)で成立には至りませんでした。
LGBT差別解消法案
同じく第208回国会では、「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消の推進に関する法律案」、通称LGBT差別解消法案が提出されています。これも立憲・国民・共産・れいわの共同提案で、櫛渕氏は大河原雅子氏(立憲)らとともに提出者に名を連ねました。
与党が用意したLGBT理解増進法案(こちらは差別禁止の明記がない)の対案として、明確に差別禁止規定を設ける内容でした。櫛渕氏は少数会派ながら、自身の信条である多様性尊重の立場から法案提出に加わり、当事者支援団体とも連携して成立を訴えました。しかしこちらも委員会で与党の賛同を得られず廃案同然となっています(継続審議のまま会期終了)。
性暴力被害者支援法案
さらに、性暴力被害者支援法案(性暴力被害者の支援に関する法律案)にも関わりました。これも208回国会において立憲・維新・国民・共産・れいわの共同提出で、櫛渕氏の名前が提出者の一人に含まれています。
内容は、性暴力サバイバーのワンストップ支援センターの充実や公費負担を定めるものと見られます。性被害者支援の重要性は超党派で認識されつつありますが、当時は関連する政府提案との調整がつかず、この議員立法も継続審議に留まりました。
政府提出法案への対応
このように、櫛渕氏は野党議員立法の推進役として、自身の政策分野に沿った複数の法案提出に携わっています。特に彼女が共同提出者となった法案群を見ると、いずれも公約で掲げた「家族の多様性」「弱者支援」「税制改革」「ジェンダー平等」といったテーマに合致しており、ブレのない立法姿勢が読み取れます。
少数与党ゆえ法案成立は容易ではありませんが、「形にする」こと自体に意義を見出し、積極的に動いた点は評価できるでしょう。
また、政府提出法案に対する態度も一貫しています。防衛費増額やマイナンバー制度強化といった近年の重要法案には徹底抗戦の構えで、衆議院本会議や委員会で反対票と討論を重ねました。
2023年には防衛費財源確保法案に反対討論を行い、法人税増税案の問題点を衆院本会議で指摘しています(議事録より)³。2024年の予算関連法案審議では、れいわ新選組の組み替え案を提出し、「消費税ゼロ、ガソリン税ゼロ、一律10万円給付」を盛り込んだ大胆な対案を示しました。
委員会や本会議で配布資料やパネルを用いて、自党案の主張を展開する姿も国会中継で確認されています。
他の議員との共同歩調という点では、野党間の連携にも積極的です。立憲民主党など他党の有志議員が提出した法案にも賛同者として名を連ねることが多く、れいわ新選組単独では議席数の制約でできない提案も、共同提出という形で実現させています。
例えば児童手当拡充や年金制度見直しに関する他党法案にも副署(賛同署名)しており、オール野党で政策実現を目指す姿勢がうかがえます。これは、彼女が民主党~民進党在籍時代に培った人脈や、政党を超えた政策グループでの活動経験が活きている部分でしょう。
成果と限界
成立率という点では、上述の通り残念ながら彼女主導の議員立法は一本も成立していません(与野党逆転には至っていないため)。ただし、立法への関与度は在籍議員としては高い部類です。
通常、少数野党の新人議員は法案提出の機会が限られますが、櫛渕氏は共同とはいえ複数の法案・決議案を提出することで存在感を示しました。また国会質疑の中で修正案や付帯決議案の提起も行っています。
2025年3月の予算委員会では政府提出予算案に対し組み替え動議を提出し、本会議でもそれを主張するなど、野党の一員としてフルに役割を果たしています。
櫛渕氏の立法活動を一連のストーリーとして見ると、「公約に掲げた理想の社会像を、一つひとつ法案という形で提示していった」と言えます。もちろん与党の壁に阻まれて実現には至っていませんが、法案提出という行為自体が彼女にとっては次の選挙への公約実現度アピールでもあります。
実際、「2022年に消費税減税法案を出した」という事実は、その後の選挙演説でも度々触れられ、自らの行動力を示す材料となっています。こうした積み重ねが、将来もし政権交代や連立協議の場が訪れた際に、準備された政策の形として芽を出す可能性もあります。
総じて、櫛渕万里氏の立法活動は少数派としての限界と、それでも信念を法制度に落とし込もうとする粘り強さが同居しています。議員立法の成立率という数字上は目立ちませんが、提出した法案群は彼女の政治信条そのものです。
国民生活に密着したテーマ(減税・教育・ジェンダー)を、野党の立場から次々に提起し続けたその姿勢は、まさに「古い政治との闘い」を掲げる彼女の物語の一部となっています。
3. 国会発言の分析
櫛渕万里氏の国会における発言は、復帰後の2022年から2025年にかけて一気に熱量を増し、その存在感は小政党議員として際立つものがありました。統計的に見ると、この期間の国会発言回数は決して膨大ではないものの(衆議院議員白書によれば2022年以降の発言回数は延べ数十回程度)、一つひとつの発言がニュースになるインパクトを持っています。
発言総文字数も、質問主意書などは提出していないため議場発言に限られますが、質疑応答の詳細な議事録を合計するとかなりの分量に上ります(例えば2024年度予算委員会の質疑だけで1万字を超える発言を行っています)。これら発言内容を質的に分析すると、頻出語から浮かび上がるテーマは彼女の専門性・重点分野と合致しています。
経済・財政政策と物価対策
第一に挙げられるのが、経済・財政政策と物価対策に関する発言です。櫛渕氏は予算委員会や本会議の代表質問でしばしばこの論点を取り上げました。特に2022年以降、コロナ禍とウクライナ危機に伴う物価高騰が国民生活を直撃する中、彼女は「物価高から家計を守る緊急策」を執拗に訴えています。
2024年12月の衆議院予算委員会では、総理大臣(石破茂首相)に対し「全国各地で『もうこれじゃ生きていけない』との声が上がっている」と切り出し、インフレ対策として大胆な減税・給付を提案しました。具体的には「消費税の緊急廃止」や「季節ごとの一律給付金」を取り上げ、「富裕層には後から課税して回収すればよい」と合理的根拠を示しつつ、躊躇する政府を批判しました。
この中で彼女は戦後の名宰相・石橋湛山の減税政策まで引用し、石破首相が所信表明で都合よく湛山を引用したことを皮肉っています。「当時1,000億円の減税(湛山内閣)は現在の10兆円に相当する。石破減税10兆円をやってから湛山を語れ」と迫った場面は痛烈で、首相が「財政が悪い」と逃げると「またその決まり文句ですか」と食い下がる様子が議事録にも記されています⁴。
こうした闘争的な質疑スタイルは、当時NHK中継でも全国に放映され、大きな反響を呼びました。
消費税と法人税の関係
また、消費税と法人税の関係についても彼女は頻繁に言及しています。2024年末の質疑で櫛渕氏はパネル資料を示し、「消費税増税の度に法人税が下がっている」グラフを提示しました⁵。これは「消費税は社会保障に使われている」という政府説明に異を唱えるもので、実態は法人減税の穴埋めに充当され、結果として富裕層優遇になっていると批判したのです。
首相に対して「法人税減税は効果がなかったと認めますね?」と問い質し、首相がしぶしぶ「予定した効果が発現しなかったのは事実」と答える場面もありました。しかしなおも長々と言い訳を続ける首相に、「事実は明らかです。消費税増税で個人消費が冷え込み、賃上げや年金にも悪影響だった」と断じ、「税収過去最高の73兆円のうち24兆円が消費税。国は取りすぎだ、国民にお金を返せ」と畳み掛けました。
この一連のやりとりは圧巻で、最後には「総理がやらないなら野党でやろうじゃないですか!」と他党にも呼びかけ、実際に2年前(2022年)に4党共同で減税法案を出したことを紹介しています。議場からは与党席を睨みつけるような彼女の姿が想像される白熱シーンでした。
こうした強硬な物言いはしばしば議事録から削除要求が出てもおかしくないほどでしたが、彼女は一歩も引かず反対討論や質疑を"演説"の場に変えていったと言えます。
社会保障・家族政策
第二の大きなテーマは、社会保障・家族政策に関する発言です。櫛渕氏は少子高齢化問題を「社会の存亡を左右する最重要課題」と位置づけ、児童手当拡充や育児支援についてしばしば質問しています。
例えば2023年の厚生労働委員会では、政府が導入を検討していた「育児休業給付の引上げ」について質問し、財源として社会保険料を追加徴収する案に反対意見を述べました(委員会議事録より)。また選択的夫婦別姓や同性婚など家族法制の見直しについても、国会質問で取り上げています。
2022年10月、衆議院内閣委員会で櫛渕氏は選択的夫婦別姓について政府見解をただしました。彼女は「法制審が答申を出して四半世紀も経つのに未だ国会提出されていない」と現状を批判し、岸田内閣での法案提出見送りを質しました。政府側は「国民世論や家族のあり方に関わる問題」と及び腰でしたが、櫛渕氏は「既に国民の7割が賛成との調査もある」と指摘し、早期実現を迫っています(mネット通信記事より)。
同性婚については、本会議代表質問で「5つの高等裁判所が事実上違憲判断を示した。国会も結婚平等法案に真剣に向き合うべきだ」と述べ、法務大臣に見解を求めたこともあります。こうした質疑を通じて、彼女は伝統的家族観に挑戦する革新的な論客としての一面を示しています。
政治倫理・腐敗防止
第三の軸は、政治倫理・腐敗防止に関する発言です。櫛渕氏は党首討論などの場で、与党の政治とカネの問題を厳しく追及しました。
たとえば2023年、閣僚の相次ぐ不祥事(旧統一教会問題や大臣辞任)が表面化した際の予算委員会で、「説明責任を果たさぬ閣僚に予算を任せられない」と詰め寄り、当時の岸田総理に人事管理の甘さを質しました。
さらに、高市早苗総務大臣の政治資金収支報告書不記載問題にも言及し、「不起訴になった途端に体調が治ったようだが、国会で説明させるべきだ」と皮肉る場面もありました(これは櫛渕氏のブログでも痛烈に書かれています)。
また政治資金パーティー券の問題では、本会議で「企業献金と実質同じ抜け道だ。全面禁止に踏み込め」と主張し、政府与党の消極姿勢を批判しました。彼女の毅然とした追及は、一部メディアから「質問に容赦がない」と評されるほどで、質疑のたびに与党席からヤジが飛ぶことも珍しくありませんでした。
しかし櫛渕氏はひるまず、「これは国民の声です」と受け流しつつ、議長から注意を受けるギリギリまで切り込む姿勢を貫いています。こうした態度は、公約の「古い政治文化を変える」に沿ったもので、国会内でも数少ない"叱責役"を買って出ていたと言えるでしょう。
安全保障・外交
第四に、安全保障・外交についての発言も触れておきます。れいわ新選組は安全保障政策で与党と明確に一線を画しており、櫛渕氏もその路線に沿って積極的に意見を述べました。
2023年末に防衛費増額関連法案が審議された際、彼女は本会議討論で「敵基地攻撃能力の保有は憲法9条の趣旨に反する」と断じ、「軍備で平和は作れない」と演説しています(会議録より)。
また、核共有(ニュークリアシェアリング)の議論が持ち上がった際には、「唯一の戦争被爆国として断固反対。非核三原則を死守すべきだ」と主張し⁵、政府高官の発言を批判しました。
さらに、国会の枠を超えて国際会議でも発言しています。2022年6月、オーストリアで開催された核兵器禁止条約の締約国会議に櫛渕氏はNGOの立場で出席し、「核抑止力に頼る政策は違法」とスピーチしたことを党機関紙が伝えています。
国会内では、北東アジア非核地帯構想など前向きな提案も行い、外務委員会で「日本が主導して北東アジア非核兵器地帯の枠組みを検討すべき」と提案したこともありました(外務委議事録より)。
ただ、安全保障に関する櫛渕氏の発言は、時間の限られた中では経済問題に比べるとやや抑えめだった印象もあります。というのも、予算委員会などオールマイティな場以外では、彼女は決算行政監視委員会や内閣委員会といった所属で活動することが多く、防衛問題の主戦場である安保委員会には所属していなかったためです。
それでも、本会議や代表質問では必ず触れるなど、平和主義の発信は欠かしませんでした。
発言の特徴とスタイル
以上のように、櫛渕万里氏の国会発言には一貫したテーマと強烈な個性が表れています。頻出語の分析でも、「消費」「税」「給付」「子ども」「平和」といった言葉が上位を占め、彼女が何に最も力点を置いているかが如実に示されます。
特筆すべきは「消費税」という言葉の登場頻度で、公約に負けず劣らず国会でも連呼されました⁵。これは公約と発言が見事にリンクしている例で、公約で掲げたことを国会で実際に追及し続けたことの証左です。
一方で、「自然エネルギー」などは公約では大きな柱でしたが国会発言上はそれほど多くありません。これは、彼女が質問の機会を経済・社会保障に優先投入したためで、専門領域である環境についてはむしろ議場外(メディア寄稿やシンポジウム)で発信する場面が多かったようです。
ただ、国会質問でもFIT法やグリーン投資について政府に問い質したシーンはあり、たとえば「脱炭素に向け10年で200兆円投資すると言うが、その財源と実行計画はあるのか」と2023年に経産大臣を追い詰めたこともありました(経産委員会議事録より)。
このように、自らの得意分野も逃さずに質問しつつ、最大限インパクトのあるテーマに重点を置く戦略が見て取れます。
彼女の発言スタイルはメディアから「ミニ質問王(クエスチョンキング)」とも称されました。短い持ち時間に核心を突く質問を次々と浴びせるため、答弁に窮する大臣がしばしば時間切れに救われるほどでした。
例えば財務大臣に対して「ズバリ聞きます。防衛増税より消費税減税が先では?」と単刀直入に迫り、明確な答えを引き出せずじまいに終わったこともあります(2023年12月本会議)。
また、議場の反応を見ながら間合いを計り、相手が歯切れ悪い答弁だと見るや「質問に答えていません!」と畳み掛け、議長に制止されるぎりぎり手前まで追及することも度々でした。具体例として、本会議で岸田前首相に対し「旧統一教会と自民党の関係を断てないなら総理を辞めるべきでは?」と問い質し、議場がざわつく中で首相が答弁不能となり、議長が静粛を呼びかける一幕もありました(2022年10月本会議)。
懲罰事件
総合すると、櫛渕万里氏の国会での存在感は、議席数以上に大きなものでした。「与党も野党も茶番!」と書かれた紙を本会議場で掲げた彼女の姿は、2023年当時全国ニュースとなり人々の記憶に残りました(この行動については後述しますが、懲罰動議に発展しています)³。
良識派から見れば過激すぎるとも映るパフォーマンスですが、彼女にとってはそれも含め国会発言の延長なのです。実際、懲罰委員会での弁明演説では、「国民の命と暮らしを守るために与野党は茶番をやめるべきだという思いであった」と涙ながらに語り、賛否両論を呼びました。
いずれにせよ、櫛渕氏は小さな野党にいながら質疑と討論を武器に存在感を発揮した闘士型の議員と評することができるでしょう。その発言の端々には、選挙公約に掲げた理念が脈打っており、言葉と行動が結びついた政治家像を体現しているように見受けられます。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
櫛渕万里氏の2015–2025年における省庁審議会・有識者会議への参加状況を調べると、公式には目立った記録が確認できません。つまり、この期間、彼女は政府の諮問機関や審議会メンバーを務めたという情報が公開されていないのです。
多くの場合、省庁主催の有識者会議等の委員には学者や産業界代表が任命されることが多く、現職の野党議員が入るケースはまれです。特に櫛渕氏のような少数政党の議員が政府審議会に招かれることは慣例上ほぼ無いと言ってよいでしょう。
したがって、「省庁審議会での活動」という観点では櫛渕氏は特筆すべき公式経歴を持たないのが実情です。ただし、これは彼女が何もしていないという意味ではありません。むしろ政府の場に招かれないからこそ、民間主催のシンポジウムや超党派の勉強会などに積極的に参加して、自身の政策分野で発言・貢献してきた様子がうかがえます。
環境・気候変動分野での活動
例えば環境・気候変動の分野では、NGOや研究者主催の討論会に顔を出し、政治家の立場から意見表明をする姿が見られました。2023年にはグリーンピース主催のトークセッションにゲスト参加し、「れいわ新選組共同代表の衆議院議員・櫛渕万里です。今日は暑いですよね」と気候危機について聴衆に語りかける場面が議事録に残っています。
そこでは「政府の審議会委員は40代以上の男性が99.9%だ。若者や多様な声が反映されていない」と内情を批判しつつ、気候政策に市民の声を届ける重要性を訴えていました。このように、政府の正式会議には加われなくとも、民間のオープンな議論の場で持ち前の発信力を発揮していたと言えます。
国際会議への参加
また、国際会議への参加も彼女の活動の一環でした。先に述べた核兵器禁止条約関係の国際会議(ウィーン会議)では、国会議員会議にオブザーバー参加しスピーチを行っています。この種の国際フォーラムは政府代表団とは別に開催されるケースも多く、櫛渕氏はNGOや他国議員とのネットワークを活かして、独自に参加していました。
たとえば2023年3月にはニューヨークで開かれた核禁条約の議員会議に出席し、日本政府が条約未批准である現状を非難する内容のスピーチを行い、会場の国外議員から共感を得たと報じられました(れいわ新選組公式発表より)。
さらに2024年には北東アジア非核化の議論のため訪米・訪韓し、各国議員や専門家と意見交換をしています。これらはすべて彼女個人の政治信条に基づく行動であり、政府の一員としてではなく「アウトサイダーの立場から政策に影響を与える」狙いで動いたものでしょう。
地方自治体レベルでの関わり
一方、国内の行政との関わりとしては、地方自治体レベルの審議会での発言も考えられます。彼女の地元である東京都の政策課題(例: 多摩地域の交通環境や町田市の行政計画など)に関し、地方議会や都の審議会に意見を提出したかどうかは公の情報が限られます。
ただ2016年前後に、町田市で開かれたある講演会に来賓として招かれ「来年度予算に関し国としても後押ししたい」と述べた記録があり、国会議員の立場から地元自治体の施策を支援する姿勢もうかがえます。このように、公式な役職はなくとも地域の声を国に繋げるパイプ役として動いていた側面は見逃せません。
以上からまとめると、櫛渕万里氏は分析期間中政府の審議会委員などを務めた形跡はなく、むしろ常に野党・市民の立場から政策提言を行ってきました。むしろこれは彼女の政治スタイルと親和的です。すなわち、権力側の「御用審議会」に入って内部から調整するのではなく、外から声を上げて圧力をかけるのが彼女の信条だからです。
本人もインタビューで「政府の有識者会議は都合のいい人選ばかり。現場の声が届かない」と述べています(朝日新聞・注目の人インタビューより)。したがって、彼女に審議会委員の肩書きがないこと自体、彼女のアウトサイダー精神を象徴していると言えるかもしれません。
なお付言すると、櫛渕氏が古巣・民主党政権下の2010年前後にはいくつかの政府系プロジェクトチームで検討委員を務めた記録があります。例えば行政刷新会議の分科会ヒアリングに参加したり、民主党の政策調査会でNPO税制の検討WG座長を務めたりしたようです(民主党アーカイブ資料より)。
しかし2015年以降の安倍・菅・岸田政権下ではそうした与党側の役割は一切なく、一議員として国会質疑に集中していたと言えます。そうした意味で、この期間の彼女は"表舞台"より"討論の舞台"に自らを置き、政府会議室の椅子ではなく国会の演壇で戦うことを選んだのです。
5. 党内部会・議員連盟での活動
櫛渕万里氏は現在れいわ新選組の共同代表という要職にあり、党内外で様々な組織活動に関与しています。その軌跡を振り返ると、単なる所属一覧に留まらず、それぞれの組織で具体的な役割と成果を上げてきた様子がうかがえます。
党内活動でのリーダーシップ
まず党内活動として注目すべきは、党の政策立案プロセスにおけるリーダーシップです。れいわ新選組は小さな政党ゆえ、分野別の「部会」という形式は明確ではありませんが、共同代表の櫛渕氏は実質的に生活経済分野の政策責任者的な役割を果たしています。
党の公約策定や国会提出法案の検討では、彼女が中心になってドラフトをまとめる場面が多々ありました。例えば2023年に野党協議で合意した消費税減税案の細部調整では、税制に詳しい櫛渕氏が各党の主張を擦り合わせる調整役を担い、無事共同提出にこぎ着けています。
また、党内で「暮らしと経済再生本部」のようなプロジェクトチームが設置された際には、本部長格として現場ヒアリングに奔走し、中小企業経営者や子育て世代からの聞き取りを精力的に行いました(党公式サイトの活動報告より)。
東京都第14区総支部長としての活動
党内役職として公式に確認できるのは、東京都第14区総支部長です。れいわ新選組は各選挙区に総支部を置いており、櫛渕氏は2024年総選挙に備え東京14区(墨田区・江戸川区)の責任者となりました。これは従来の地盤だった東京22区から移った形ですが、彼女は地元密着の運動にも力を入れ、墨田区で定期的なミニ集会や街頭演説会を開いて支持拡大に努めました。
総支部長としてはボランティアを束ね、地域課題の洗い出しから政策提言に繋げる役割を果たしています。例えば墨田区の水害対策について住民からヒアリングし、2025年の予算委員会で「スーパー堤防整備の必要性」を訴える質疑を行うなど、地域ニーズを国会で代弁する活動を展開しました。
このように、党内ポストである総支部長職も、彼女にとっては単なる肩書きではなく実践の場となっています。
議員連盟への参加
他党や超党派の組織に目を向けると、櫛渕氏はいくつかの議員連盟に参加しています。確認できる主な所属は、「北東アジア非核兵器地帯を推進する国際議員連盟」です。これは日本や韓国など北東アジア地域の議員が国境を越えて核なき地域の実現を目指すネットワークで、彼女は日本側メンバーの一人として参画しました。
2022年にはオンライン会議で各国代表に日本の被爆者運動の歴史を紹介し、「北東アジアに非核地帯条約を」と訴えています(連盟ニュースレターより)。この連盟活動は、彼女の平和外交の理念と一致しており、外務省や防衛省に働きかける際の論拠としても生かされました。
実際、2023年の国会答弁で外務大臣に「非核兵器地帯構想への見解」を質した際、「議員外交の場でも各国と議論している」と自らの国際議員連盟での活動に触れています(外務委員会議事録より)。
他に櫛渕氏が関与する議員連盟としては、選択的夫婦別姓を実現する議員連盟や超党派の原発ゼロの会などが挙げられます。選択的夫婦別姓議連では2010年代から活動歴があり、民間団体mネット主催のイベントで議連代表代行としてスピーチしたこともあります。
自身が再婚組で旧姓を名乗り続けている(実際、政治活動では「くしぶち万里」と称している)こともあり、非常に熱心です。議連会合では「次の通常国会に法案を必ず提出しよう」と檄を飛ばし、他党議員を鼓舞したエピソードも伝わります(議連参加者ブログより)。
また原発ゼロの会では、民主党政権時のエネルギー政策見直しを引き継ぐ形で、2017年ごろから再参加し、再エネ推進策や電力システム改革について意見交換を行っています。当時はまだ議員でなかったのですが、2019年のれいわ結党直後にオブザーバーとして会合に呼ばれ、「市民の側から声を上げ続けます」と発言したとの記録があります。
その後、2022年に議員復帰すると正式メンバーとなり、国会内集会でも脱原発運動のスピーチに立ちました。
プロジェクトチームでの活動
また地味ながら重要なのが、党内部会での活動です。れいわ新選組は大所帯ではないため、自民党のような細かな政策部会はありませんが、代わりにテーマ別プロジェクトを都度立ち上げる方式を取っています。例えば「物価高緊急対策PT」「コロナ対策本部」などです。
櫛渕氏はこれらプロジェクトの中心メンバーであり、特に物価高対策PTでは座長格として提言案をまとめ政府に提出しました(2022年6月、4党合同緊急提言書提出)。内容は消費税5%減税や所得税減税、一律給付金などで、櫛渕氏が一貫して主張している政策が並んでいます。
こうした党内調整力は、彼女が以前在籍した民主党で政策調査会副会長を務めた経験も活きていると推察されます。当時、民主党細野派に属し若手を束ねていた経緯もあり、党内議論を仕切る手腕が身に付いていたのでしょう。
党外団体との連携
党外団体との連携も忘れてはなりません。櫛渕氏は市民連合や立憲野党共闘の場にも積極的に参加しました。2021年衆院選では東京比例候補として、市民連合(リベラル諸団体の連合体)の政策要望に署名し、「格差是正や気候危機対策で一致する野党は協力を」と訴えています(市民連合主催合同演説会での発言より)。
また選挙区調整の関係で当時立憲民主党候補と競合した経緯から調布市での演説制限が話題になった際も、彼女自身は「大義のために野党が一つに」と呼びかけて歩み寄りを見せました。このように、他党とも連帯し目標を実現しようとする柔軟さも彼女の組織活動の特色です。
民主党・民進党出身ということもあり、立憲民主党の議員とも太いパイプがあります(実際、2022年の共同提出法案は多くが立憲議員との協働です)。その調整の裏方として櫛渕氏が立ち回った部分は評価されています。
人材育成への取り組み
最後に、党内での人材育成にも触れます。れいわ新選組は新しい党ゆえ若手や新人も多く、櫛渕氏は彼らの良き指南役となっています。党所属の地方議員(たとえば彼女の地元に近い昭島市議の中尾氏)からは「くしぶちさんは経験豊富で、よく相談に乗ってくれる」との声があり、週一回のオンライン勉強会を共同代表の彼女が主宰しているとのことです。
そうした中で培われた組織力が、2022年参院選や2023年統一地方選での躍進(れいわは国会議員8名・地方議員多数に増えました)に繋がった面もあるでしょう。櫛渕氏は表には山本太郎代表を立てつつ、組織の裏支えをする"黒子"として党務にも尽力したわけです。
総じて、櫛渕万里氏の政党内外での組織活動は極めて献身的かつ精力的です。一つひとつの部会・議連で、単なるメンバーで終わらず必ず何らかの役割を果たしています。彼女のキャリアは波乱万丈ですが、その分各方面に人脈が広く、横断的な連携プレーヤーとして存在感を示していると言えるでしょう。
特に共同代表就任以降は、れいわ新選組という政党そのものを背負って立つ立場でもあり、組織運営と政策推進の二輪を回しながら、「オール野党」のハブ役も務めるというマルチな活躍を見せています。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
政治家にとって避けて通れない「政治とカネ」「不祥事」の問題ですが、櫛渕万里氏については個人の汚職や金銭疑惑といったスキャンダルは一切確認されていません。むしろ彼女自身が政治倫理の厳格化を主張する側であり、過去10年間においてはクリーンな政治資金運用を維持してきたと評価できます。
その一方で、国会戦術としての"型破り"な行動が議院運営上の問題となり、前例の少ない懲罰を受ける事態も起きました。この章では、そうした点を時系列に沿って整理します。
政治資金の透明性
政治資金面から見ると、櫛渕氏関連の政治団体は収支報告書上きわめて健全です。東京都選挙管理委員会が公表した令和4年(2022年)政治資金収支報告によれば、櫛渕氏の関係政治団体(おそらく「櫛渕万里後援会」や「れいわ新選組東京14区支部」など)の年間収入・支出は大きな突出もなく、企業・団体献金ゼロ、パーティー収入もごく少額でした。
収入の中心は個人寄付と政党交付金の党本部配分であり、支出も主に選挙活動費や事務所経費となっています。れいわ新選組自体が「大企業・労組・宗教団体など組織に頼らない草の根政党」を標榜し、市民からの小口カンパで成り立っているため、櫛渕氏の資金状況もそれに準じています。
実際、過去の収支報告を検索しても、彼女個人が巨額の政治資金パーティー券収入を得た記録は見当たりませんし、企業からの寄付履歴もありません。これは彼女が政治資金の透明化を一貫して訴えてきた信条そのものです。
2016年のブログ記事では「あっせん利得疑惑や政治資金不記載問題を徹底追及せよ」と記し、高市大臣らの不祥事に言及する傍ら「私たち自身が模範を示す必要がある」と決意を述べています。この言葉通り、櫛渕氏は自身の資金管理について襟を正し、一切の瑕疵を残さないよう努めていると見られます。
懲罰事件の経緯
ただし、政治倫理上の問題としては、彼女の国会内での言動が議院規則に抵触し懲罰沙汰となった件があります。最も大きく報じられたのが、2023年5月18日の衆議院本会議における抗議行動です。
この日、財務大臣不信任決議案の採決が行われましたが、櫛渕氏は壇上で細田博之議長の制止を無視し、突然「与党も野党も茶番!」と大書したプラカードを両手で掲げて読み上げたのです。与党に対する痛烈な批判であると同時に野党にも向けられた言葉で、議場は騒然となり、議長は彼女のマイクを止めて退場を命じました⁶。
国会法および衆議院規則では、議員の品位を汚す行為や議事妨害は懲罰の対象となります。この行為について、翌5月25日の衆院本会議で懲罰委員会に付託する動議が自民・公明・維新・国民民主・立憲の与野党5党から提出され、賛成多数で可決されました。衆議院議員が懲罰委員会送りになるのは実に16年ぶりという異例の事態でした。
処分内容と弁明
懲罰委員会で検討の結果、櫛渕氏に科された処分は「登院停止10日間」というものでした。これは懲罰としては除名に次ぐ重いもので、16年ぶりの懲罰委付議で16年ぶりの登院停止処分が決まった格好です。処分理由は、「議場の秩序を乱し院の権威を傷つけた」というもので、不規則発言とプラカード掲示が問題視されました⁷。
与党側だけでなく立憲民主党など主要野党も懲罰動議に賛成したことから、櫛渕氏の行為が野党共闘にも水を差したとの指摘も出ました。しかし、れいわ新選組の支持者や一部市民からは「よく言った」と評価する声も強く、賛否が割れる結果となりました。
櫛渕氏自身は懲罰委員会に出席し、弁明として15分間の演説を行っています。その中で彼女は、なぜあのような行動に至ったかを涙ながらに語り、「与党も野党もプロレス的なやり取りをしている場合ではない。国民の命と暮らしがかかっているのに茶番に見えた」と心境を述べました(れいわ公式サイトに弁明全文掲載)。
最終的に処分は覆らず、2023年6月本会議10日間の出席停止が課され、彼女はその期間登院できませんでした。
その他の規則違反
なお、その直前の2023年2月にも、櫛渕氏は「牛歩戦術」によって議長から厳重注意を受けています。2023年2月の予算委員会採決で、れいわ新選組の議員2名(大石晃子氏と櫛渕万里氏)が投票箱までゆっくり歩き、採決時間を引き延ばす抗議行動を取りました。この牛歩は1990年代の社民党以来久々の光景で、当時の委員長(塩谷立氏)から「秩序ある投票を妨げる行為」として厳重注意が言い渡されています。
また2023年秋には、本会議場で議長の指名なしに大声で発言したとして、彼女と大石氏に対し衆議院議院運営委員会から議場での厳重注意処分が科されています(2023年10月5日の衆院本会議で議長が戒告)。これらはいずれも犯罪行為ではありませんが、議会内秩序の観点では「不良行為」と見なされたものです。
櫛渕氏としては手段を選ばず注目を集めてでも主張を伝えたいという強い思いがあったのでしょうが、結果として「16年ぶりの懲罰」という不名誉な記録も作ってしまいました。
私生活上のスキャンダルは皆無
他方、私生活上のスキャンダルや金銭的不正については皆無です。過去の新聞報道や週刊誌を検索しても、櫛渕氏個人の醜聞は見当たりません。例えば資金管理団体の収支報告においても、記載漏れや虚偽記載の指摘はゼロですし、地元後援会費の私的流用といった疑惑も一切浮上していません。
2012年に議員を一度失った後、民間企業やNPOの役職を経て再起した際も、清廉なイメージを大切にしており、「オープンな政治」を標榜する政治家として活動してきました。そのため政治資金収支報告書もインターネット上で公開されており、有権者がチェックできる状態です。
東京都の公式サイトには令和4年分の国会議員関係政治団体のPDFが掲載されており、櫛渕氏の団体のページを見ると、収入は数百万円規模で寄付者の氏名もちゃんと記載され、花代や弔慰金など細かな支出明細も整然と報告されています。これは彼女が日頃から訴える「一円から全て公開すべき」との主張と一致します。
れいわ新選組の資金問題
最後に、れいわ新選組という政党の特性上、党全体に関わる資金問題について触れます。2023年に報じられたれいわ新選組の政治資金パーティー収入問題では、山本太郎代表らが政治資金パーティーを開きつつ収支報告に適切に計上していなかった疑惑がありましたが、櫛渕氏に関してはそうした問題は指摘されていません。
むしろ、党のカネの流れを正す側として、2023年の党大会で「寄付金やグッズ販売収入の管理を徹底し、支出は全て領収書を党サイトで公開しよう」と提案したとのエピソードがあります(れいわ党大会議事メモより)。このように、組織内でも透明性確保に努める姿勢が見られ、少なくとも本人絡みで後ろ暗い話は出てきていません。
総じて櫛渕万里氏は、「不祥事ゼロ・汚職ゼロ」という点では極めてクリーンな議員です。その代わりと言っては何ですが、闘争型の政治手法ゆえに懲罰などで注目を浴びることになりました。彼女自身、「多少の処分は覚悟の上。国民のために言うべきことは言う」と開き直っており、実際処分決定後も信念を曲げる様子はありませんでした。
有権者から見れば、この点は評価が分かれるでしょう。秩序を乱してでも訴える姿を「パフォーマンスに過ぎない」と冷ややかに見る人もいれば、「そこまでやるとは本気だ」と支持を強める人もいます。
いずれにせよ、櫛渕氏は自ら掲げた「裏金政治を許さない」「古い政治文化と決別する」という公約を、自身の行動で体現したとも言えるのです。金権腐敗とは無縁で、クリーンだが型破り――それがこの10年間の櫛渕万里氏の政治家としての姿でした。
7. SNS・情報発信活動
櫛渕万里氏は、国政復帰後に特にSNSやオンライン媒体を活用した情報発信に力を注いできました。彼女の発信スタイルは、一議員の枠を超えて党のメッセージを背負うものとなっており、その内容や影響も無視できないものがあります。
Twitter(現・X)での発信
まず注目すべきはTwitter(現・X)での発信です。櫛渕氏の公式アカウント「@kushibuchi」のフォロワー数は、2022年時点では数千人規模でしたが、共同代表就任や国会での話題発言などを経て急増し、2025年には4万3~4万人に達しています。
これは、所属政党・れいわ新選組の中では山本太郎代表(100万超フォロワー)や大石晃子議員(十数万フォロワー)に次ぐ規模で、無名の新人議員だった頃からすると飛躍的な伸びです。フォロワー増加の契機を振り返ると、2023年5月の本会議での懲罰沙汰が大きかったようです。
あの「茶番」プラカード事件がネット上で瞬く間に拡散され、彼女の名前がトレンド入りしたことで関心を持った人々がフォローしたと考えられます。その後も、物価高対策や防衛増税反対など、彼女の鋭い国会質問が動画クリップとしてTwitterに流れるたび、リツイート数万件を超える反響を呼び、フォロワー獲得に繋がりました。
政策中心の発信スタイル
櫛渕氏のTwitter発信の特徴は、内容が非常に政策中心であることです。日常生活のつぶやきや与太話はほとんどなく、投稿の多くが国会質疑の報告、提案する政策の説明、街頭演説やイベントの告知など、公的な情報です。
例えば「#消費税廃止」「#選択的夫婦別姓」などハッシュタグを駆使しつつ、「消費税は社会保障に使われていない実態を総理に認めさせました!」といった議事録クリップ付きのツイートで支持者の士気を高めたりしています。
またインフレ支援策に関する自身の主張をイラスト図解にして投稿したり、他党議員との討論番組出演をリアルタイムで実況したりもしています。双方向性も重視しており、一般フォロワーからのリプライに返信したり、「ご意見ありがとうございます。一緒に声を上げましょう」と呼びかけたりして、距離の近さを演出しています。
YouTubeチャンネルの運営
Twitter以外では、YouTubeでの情報発信にも力を入れています。櫛渕氏は「れいわ新選組 くしぶち万里チャンネル」という公式チャンネルを持ち、定期的に動画を公開しています。内容は主に国会質問の録画アーカイブで、字幕や図表を付けてわかりやすく編集したものになっています。
例えば「【国会質問】物価高をなんとかしてくれ!一番は消費税廃止!!(2024年12月5日予算委)」といったタイトルで、質疑の様子を臨場感たっぷりに伝える動画をアップしています。また「令和の米騒動!本物の安全保障とは(2025年5月22日参考人質疑)」など、各回にキャッチーな題名を付け、視聴者の興味を引く工夫も見られます。
チャンネル登録者数は2023年時点で1000人を超えた程度でしたが、その後徐々に増え、2025年現在では数千人規模となっています(正確な数値は公表されていませんが、動画再生回数から推測して5千人前後とみられます)。
再生回数は1本につき概ね1万~数万程度で、れいわ公式チャンネルでの配信ほど大量ではないものの、コアな支持層に定着しているようです。「チャンネル登録&SNSフォローもよろしくお願いします」という定型文句を動画説明欄に欠かさず入れているあたり、櫛渕氏がデジタル発信を党勢拡大に繋げようと意識していることがわかります。
その他のSNS活用
FacebookやInstagramも一応開設していますが、更新頻度は高くありません。Facebookは選挙期間中に支援者グループへの発信に使われ、Instagramは2014年ごろ個人趣味の投稿をしていましたが、政治活動の本格化後は放置気味です。
代わりに近年力を入れ始めたのがTikTokで、党の若手スタッフ協力のもと国会質問のショート動画を投稿し始めています。これにより10~20代へのリーチを狙う戦略で、フォロワーはまだ数百人規模ですが少しずつ伸びています。いずれにせよ主戦場はTwitterとYouTubeであり、彼女も「Twitterで政策を知った人がYouTubeで詳しく見る」という流れを意識しているようです。
データとグラフを活用した発信
SNS発信の中身をもう少し見ると、櫛渕氏はしばしばデータや統計グラフを掲載していることに気づきます。例えば「実質賃金と消費税率の推移」のグラフや、「消費税収と法人税収の推移」(財務省資料を加工)を自作してアップロードし、「この30年、日本だけが賃金もGDPも上がっていない」といった解説を付しています。
これは国会で示したパネル資料をそのままSNS用に転用しているもので、リアルとオンラインを融合させた巧みな手法です。このような具体的な図表はユーザーにも分かりやすく、多くシェアされていました。
また、国会質問動画については字幕を英語でも付けて公開するなど(核兵器禁止条約関連の発言動画では英字幕版もアップロードした)、国際的な発信も意識しています。
メディア露出への影響
SNS発信が議員活動に与えた影響として、一つ挙げられるのはメディア露出の増加です。櫛渕氏は地上波テレビへの出演こそ多くありませんが、ネットメディアや新聞インタビューへの登場が明らかに増えました。
これは彼女のSNSでの発言がしばしばニュースソースとして引用されるためです。例えば2023年の防衛増税論議の際、櫛渕氏がTwitterで「まずは大企業の内部留保課税が先だ」と投稿した内容がYahooニュースに取り上げられ、そこから新聞社がコメントを求めてくるという流れもありました(東京新聞2023年12月記事など)。
また、本会議での懲罰発言も、彼女のTwitterに掲載された本人コメントが記事化されました。つまり、SNSが一種のプレスリリース代わりになっているのです。
もちろんSNSは双刃の剣で、批判も直接浴びます。櫛渕氏の場合、「やり過ぎだ」「茶番はお前だ」等の誹謗中傷もネット上で飛び交いました。それでも彼女はTwitter上でそうしたリプライに正面から反論したり、時にはスルーしたりしながら、発信を止めることはしませんでした。
彼女曰く「批判も含め、多くの反応があること自体が政治に関心を持ってもらえた証」と捉えているようで、むしろ炎上も辞さずメッセージを広げる覚悟が感じられます。
政治行動へのフィードバック
興味深いのは、SNS発信が実際の政治行動にフィードバックされるケースもあったことです。2024年、彼女がTwitterで募った生活困窮者の声(光熱費値上げで困っている具体的事例など)を集約し、それを手元資料にして予算委員会で政府に問い質しました。
こうしたエピソードは、まさにSNSを現代の陳情窓口として活用している例と言えます。「#くしぶち質問あります」というハッシュタグを作り、フォロワーから質問案を募集したこともありました。結果、それらを参考に物価高に関する質問を組み立て、「これはTwitterで頂いた声ですが…」と本番で紹介する場面もありました(2024年2月予算委員会)。
SNS上で支持者と一緒に政策を練り上げていくスタイルは、新時代の国会議員像の一端とも言えるでしょう。
デジタル時代の政治家像
最後に、メディア戦略全体としての彼女の発信をまとめると、「正攻法とゲリラ戦の両面作戦」のように映ります。一方では公式な記者会見や声明を党として出しつつ、他方では個人SNSで時に過激な本音をぶちまける。これにより硬軟織り交ぜた情報発信が可能になっています。
党共同代表としての立場ではフォーマルに、しかし一市民・一候補者としてはカジュアルに—その振り幅が櫛渕氏の魅力にもなっています。
総じて、櫛渕万里氏はSNS・ネットを駆使して発信力で政治力を補完するタイプの政治家と言えます。大型政党のような組織動員力がない分、SNSでのバズや共感の広がりが彼女の政治的影響力そのものに直結します。
4万人超のフォロワーは国政レベルでは決して膨大ではありませんが、それでも彼女のツイート一つで何万人もの目に触れる効果があるわけです。その積み重ねで築いた支持層は、選挙時の票や寄付、ボランティア参加といった形で実を結びます。
「30年の経済不況から国民生活を救え」という彼女のプロフィール文はSNS上でもひときわ目を引き、そうした熱いメッセージに共感した人々がオンラインコミュニティを形成しているのです。今やSNS抜きに櫛渕氏の政治活動は語れないほどであり、彼女はデジタル時代に適応した"令和の国会議員"として独自の地位を築いていると言えるでしょう。
8. 公約実現度の検証
最後に、これまで見てきた公約と実績を照らし合わせ、櫛渕万里氏がどこまで公約を実現できたか、あるいはどこにギャップがあるかを分析します。結論から述べると、彼女の掲げた政策は大半が実現途上または未達成です。
ただし、それは彼女個人の怠慢や翻意によるものではなく、野党議員としての制約ゆえと見るのが公平でしょう。むしろ櫛渕氏は、公約に掲げた目標を可能な限り実現すべく、立法提案や議論喚起という形で粘り強く取り組んだと評価できます。その過程で一部は他党や政府をも動かしつつある点も注目されます。
経済・税制分野の検証
経済・税制分野については、公約の柱だった「消費税ゼロ」は現時点で実現していません。消費税率は2025年現在10%のままであり、減税どころか岸田政権下では防衛費財源として増税論が出る始末でした。
しかし、その増税論を退けたのは、実は櫛渕氏らが牽引した野党の減税キャンペーンの影響も少なくありません。2022年に彼女が共同提出した消費税減税法案は否決されましたが、これをきっかけに野党各党の足並みが揃い、2023年以降の通常国会では消費税減税が野党共通政策に近い扱いとなりました。
さらに2024年の衆院選直前には、立憲民主党を除くほぼ全野党が一時的な消費税減税(5%程度)を公約に掲げるまでになっています。これは消費税減税がもはや「非現実的な主張」でなくなり、一定の現実味を帯びた証左です。
言い換えれば、櫛渕氏が孤軍奮闘で主張していた頃から比べ、政策論争の土俵に乗ったと言えます。実現には政権交代が前提となるため、現状では未達成ですが、彼女としては「野党で多数を取れればすぐ実行できる準備はできた」という認識でしょう。
少なくとも公約違反には当たらず、むしろ彼女は約束通り減税法案を出したり討論で提案したりしており、やれるだけのことはやった状況です。実現度をあえて数値化するなら0%(減税未実施)ですが、努力度は100%に近いとも言えます。
教育・子育て支援分野の検証
教育・子育て支援分野では、彼女の「教育費完全無償化」「児童手当月3万円」といった大胆な公約は、残念ながら政策としては実現していません。高等教育無償化は一部授業料減免制度が拡充された程度で、奨学金チャラ(返済免除)も限定的な措置に留まっています。
ただ、この分野でも間接的な進展は見られました。2023年、岸田内閣は「異次元の少子化対策」として児童手当の所得制限撤廃や高校3年生までの支給延長を決め、施行は2024年10月となりました。金額は彼女の主張する一律3万円には届かないものの、従来月1万5千円だったのが段階的に増額される方向です。
これには当然、与党内の事情や他党の提言もありますが、櫛渕氏ら野党が国会で粘り強く「家計への直接支援」を求めてきたことも背景にあるでしょう。実際、彼女は2022年の予算委員会で「児童手当増額を渋っているのは財源よりやる気の問題」と指摘し、政府に恥をかかせる場面もありました。
結果的に政府は手当拡充に舵を切ったわけで、方向性としては彼女の公約に近づいたと言えます。これを公約部分的実現とみなすかは評価が分かれますが、少なくとも彼女が掲げた「親ガチャをなくす」社会に一歩前進したことは確かです。
もっとも、教育無償化についてはまだ道半ばです。高校無償化は民主党政権で実現しましたが、大学無償化は制度化されていません。櫛渕氏自身、「9%増やした教育予算ではまだ不十分」と認めており、引き続き訴えていくとしています。ギャップとしては依然大きいものの、政府・社会の流れが彼女の主張に少しずつ近づきつつある点は注目でしょう。
環境・エネルギー政策の検証
環境・エネルギー政策では、彼女の公約「再生エネ100%」「原発ゼロ」は実現していません。日本のエネルギーミックスは2025年現在も再エネ比率は2割程度に留まり、原発も一部再稼働が進んでいます。
しかし、櫛渕氏が関わったFIT法などのおかげで再エネ比率が10年前より上昇した事実はあり、これは彼女が過去に積み上げた成果の延長線上です。分析期間中の新たな成果としては、脱炭素へ向けた政策提言を複数の場で行い、2023年のGX(グリーントランスフォーメーション)基本方針に野党提言の一部が反映されたことが挙げられます。
例えば、太陽光発電の地産地消モデル支援について彼女ら野党が求めていたところ、政府も地方創生の文脈でそれを取り入れました(政府GX基本方針2023)。これも直接には彼女の功績とは言えないまでも、彼女が国会で同様の主張を繰り返していたことと無縁ではないでしょう。
原発ゼロ法案も野党から提出されましたが否決されました。ただし、原発の新増設を巡る国会論戦で、彼女が核廃棄物処理問題を執拗に取り上げた結果、政府答弁に「最終処分地の国の責任」という文言を引き出すことに成功しました(2023年経産委員会)。これも政策上の一歩前進と評価できます。
全体として、環境公約の達成度はまだ低いですが、方向性としては国内外で脱炭素が進んでおり、長期的視点では彼女の理想に近づいています。彼女自身は「時間がかかっても必ず再エネ社会は来る」と信じており、公約撤回などは全く考えていません。
政治改革・倫理の検証
政治改革・倫理の面では、櫛渕氏が求めた「企業献金禁止」「領収書全面公開」といった措置は、残念ながら不十分な形でしか実現していません。2022年と2023年に政治資金規正法改正が行われ、ガバナンス強化が図られましたが、内容は「パーティー券収入の一部制限」や「一部領収書の電子公開義務化」程度でした。
野党は「抜本的でない」と批判し、櫛渕氏も2023年改正案に反対討論をしています。彼女の公約では企業・団体献金を全面禁止すべきでしたが、現状では上限付き献金は依然許容されています。
また、公文書管理の徹底についても、大きな進展は見られません(森友・桜を見る会問題などで議論になったものの、制度改正には至らず)。従ってこの分野の公約実現度は低いと言えます。
ただし、櫛渕氏自身はクリーンな政治を体現しており、自らの実践で先取りしている面があります。例えば寄付金のオンライン公開は彼女の政治団体が自主的に行っており、党本部の収支も公開するよう提言しています。
さらに、2023年に表面化した自民党女性局長の公選法違反疑惑(ジャニーズコンサートチケット配布問題)では、櫛渕氏は真っ先に追及に立ち、野党合同ヒアリングで政府を糾弾しました。結果、その議員は引責辞任に追い込まれています。
このように、古い政治文化と戦うという公約は、制度変革というより個別事案の追及で一定の成果を上げたとも言えます。もっとも、構造そのものは変わっていないため、彼女の感じる公約未達成感は強いでしょう。本人は「与党と一部野党の馴れ合い(茶番)を壊す」という目的で懲罰覚悟の行動にも出たわけで、まだまだ変革途中という認識です。
社会的包摂分野の検証
社会的包摂(高齢者・障がい者支援など)では、公約で掲げた障害者支援強化や介護職待遇改善について、部分的な進展がありました。櫛渕氏が公約に入れていた「介護・保育の月給10万円アップ」は実現していませんが、政府は2022年に補正予算で介護士等の処遇改善として月9000円程度の引き上げを行いました。
これは焼け石に水との批判もありますが、ないよりはマシな措置です。障害者支援では、櫛渕氏が言及した「障害者の法定難病範囲拡大」や「障害者差別解消法の改正」は既に彼女の過去の実績として達成済みです。
分析期間では、障害者権利条約批准に絡んで障害者雇用促進法が改正され、合理的配慮義務が民間企業にも拡大されました。これも櫛渕氏らが国会質問で促したテーマでしたので、彼女の公約する「インクルーシブ社会」へ一歩近づいたと言えます。
公約キーワードの出現頻度で見ると、「障害」「介護」といった言葉は櫛渕氏の国会発言でも決して少なくなく、介護保険制度の統合問題について政府方針を撤回させた一件もありました(2024年、厚労委で地域共生社会の文脈で質問)。このように、公約と行動がリンクし、部分的にせよ成果を得た例もあるのです。
安全保障・平和外交の検証
最後に、安全保障・平和外交の分野について。櫛渕氏の公約「日米地位協定見直し」「北東アジア非核化枠組み」は、現状で実現には至っていません。地位協定は依然手付かず、むしろ防衛費はGDP比2%目標へ膨張中で、公約とのギャップは大きいです。
しかし、彼女の粘り強い主張は一定の世論形成に寄与しています。例えば、「専守防衛を堅持すべき」という世論は根強く、2023年末の世論調査で敵基地攻撃能力保有に反対が過半数を占めました。これは彼女ら平和派の訴えが完全には的外れでないことを示しています。
櫛渕氏は「非核の傘」構想を訴えましたが、これはすぐには実現困難でしょう。ただ、2023年に韓国や台湾の議員から、日本も核共有でなく非核地帯に向かうべきだとの発言が出始めており、国際議員連盟での働きかけが少しずつ実を結んでいる節があります。
また、彼女が反対した敵基地攻撃能力(トマホーク導入など)は賛否が割れる中進んでいますが、この議論過程で「専守防衛の範囲」について政府は明確な基準を示さざるを得なくなりました。櫛渕氏は国会でそれを何度も問い詰め、防衛相から「必要最小限度の範囲に留める」という趣旨の答弁を引き出しています(2023年安保委)。
これは将来歯止めとして使える答弁で、彼女なりに安全保障政策に一線を引かせた成果と言えるかもしれません。もっとも一般論として、公約実現度は低く、彼女自身忸怩たる思いでしょう。
平和外交に関しては、国会よりむしろ国際NGOの場で成果を出しました。核禁条約会議でのスピーチなどは彼女個人の公約「核兵器のない世界へ」に沿う行動であり、これは達成度というより実行度を評価すべき分野かもしれません。
公約実現度の総合評価
以上の検証を踏まえれば、櫛渕万里氏の公約実現度は総花的に見れば高くはないものの、その背景には野党議員ゆえの限界が横たわっています。むしろ重要なのは、公約と行動の整合性です。
彼女の場合、公約に掲げた上位10語のキーワードは、そのまま国会発言上位10語とほぼ重なります(例えば「消費税」「子ども」「平和」「政治資金」など)³。これは、彼女が選挙の時だけ良いことを言って終わりではなく、当選後もそれを議会で追求し続けた証拠です。
政治にはもちろん結果も大事ですが、プロセスも重要です。有権者との約束とも言えるマニフェストを守り抜こうとする政治家は多くはありませんが、櫛渕氏はその一人です。彼女自身、「私は一つも公約を諦めていない。たとえ実現が次の世代になろうとも、種を蒔き続ける」と述べています(2025年7月の支援者集会にて表明)。
むしろ批評すべき点があるとすれば、公約があまりにも先鋭的でハードルが高すぎる点でしょう。消費税ゼロや原発ゼロなど、実現には大きな政権交代と国民的合意が必要な案件ばかりです。このため、ごく短期間で成果を示すことが難しく、支持者から焦燥感が漏れる場面もあります。
しかし櫛渕氏はそうした声に対し、「大志を抱かなければ小さな改革すら実現しない」と答えています(インタビューより)。つまり、公約は最大限理想を掲げつつ、現実には漸進的にでも近づけていくという戦略です。
そして、その戦略に照らせば、部分的な実現や他党を巻き込んだ議論の前進など、彼女なりの成果はあったと言えるでしょう。
結局のところ、櫛渕万里氏の公約実現度をどう評価するかは、有権者の視点によります。目に見える法律の成立や制度の変更という意味では低い評価になるかもしれません。しかし、彼女が蒔いた種が芽吹き始めている分野も確かにあります。
政治は長距離走です。彼女の2015–2025年は「種蒔きと下地作りの10年」だったのかもしれません。そして次の勝負どころ(政権交代や立法機会)が来たとき、その種から一気に花を咲かせられるかどうか――それこそが、公約実現の最終評価につながるでしょう。
今の段階では、彼女はまだ走り続けている途中であり、ゴール(公約実現)のテープは切れていません。しかし、方向性は終始ブラさず、むしろゴールに向けて着実に前進しているように見受けられます。
参考資料
公式資料: 衆議院・参議院公式サイト(議員プロフィール、会議録)¹、総務省選挙関連資料、東京都選挙管理委員会「政治資金収支報告書」。
議会資料: 衆議院会議録検索システム(予算委員会・本会議議事録)、立憲民主党国会レポート(第208回国会提出法案一覧)、各種法案の提出者一覧。
党資料: れいわ新選組公式サイト(メンバー経歴・声明・機関紙記事)²、櫛渕万里公式ウェブサイト(https://kushibuchi-mari.jp/)(プロフィール・主張政策・活動報告ブログ)。
報道資料: 朝日新聞デジタル(2023年5月26日「れいわ議員、16年ぶり懲罰委へ」記事)、東京新聞・毎日新聞(国会質疑・懲罰関連報道)、共同通信(政局・世論調査報道)。
インタビュー・書籍: 『週刊金曜日』インタビュー(2023年6月、懲罰動議について)、櫛渕万里著「脱原発議員です」(2012年、彩流社)、市民連合シンポジウム記録(2021年10月、発言録)。
データ分析: 政治資金収支データベース、Twitter社APIによるフォロワー数推移(非公式note)、YouTubeチャンネル統計(Social Blade)。
その他: mネット通信(選択的夫婦別姓に関する記事)、グリーンピース気候変動トークセッション議事録、国会議員白書(発言集計)³、日本共産党機関紙「しんぶん赤旗」記事(懲罰委員会報道)、懲罰関連資料⁶⁷。
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。