いのうえ しんじ
井上信治議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
井上信治(いのうえ しんじ)は東京都出身の自民党衆議院議員で、東京25区(青梅市・昭島市・福生市・羽村市・あきる野市・西多摩郡)選出のベテラン政治家です。1969年生まれの井上氏は東大法学部を卒業後、建設省(のち国土交通省)に官僚として勤務し、2003年の第43回衆院選で初当選しました¹。以来8期連続当選を重ね、2024年10月の第50回衆院選でも8選を果たしています³⁴。
党内では麻生派(志公会)に所属し、党青年局長、総務部会長、幹事長代理、東京都連会長など要職を歴任してきました⁵。菅義偉内閣では初入閣を果たし、国際博覧会担当大臣兼内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全・クールジャパン戦略・知的財産戦略・科学技術政策・宇宙政策)を務めた経歴も持ちます⁷。
また第2次・第3次安倍政権期には環境副大臣や内閣府副大臣として東日本大震災からの復興や原発事故対応に尽力し、「被災地復興は政治家としてのライフワーク」と語るほど被災地に足繁く通ったことで知られます⁸⁹。
本レポートでは、2015年から2025年までの井上氏の政治活動を網羅的に分析し、有権者がその軌跡とスタンスを立体的に理解できるようまとめます。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
井上信治氏が直近の選挙で掲げた公約からは、政治姿勢と重点分野が鮮明に表れています。2024年10月の第50回衆院選では、自身のスローガンとして「信頼できる政治」を掲げ、政策の柱に「経済・財政」「社会保障」「政治改革」を挙げました¹⁰。
政治改革への取り組み
選挙公報の記述を詳しく見ると、まず政治改革については「政治資金に関する問題を猛省し、不断の政治改革・党改革を進めます。法制度を厳格化するとともに、お金の流れを見える化し、政治への信頼を必ず取り戻します」と宣言し、近年浮上した政治とカネの問題への厳しい姿勢を示しました¹¹。
経済政策の展開
経済政策では「30余年続いたデフレから脱却し、未来に夢と希望を持てる強靭な成長型経済を実現します」として、物価高騰への対策を充実させつつ賃上げや人手不足解消、中小企業競争力強化による国民所得向上を目指すとしています¹²。
社会保障の充実
社会保障分野では「少子高齢化の中で年金・医療・介護・子育て支援を充実させ、安心して子育てできる社会を創る。デジタル技術活用等で持続可能な社会保障制度を実現する」と述べ、高齢者も障害者も子育て世代も暮らしやすい社会づくりに言及しました¹³。
これら公約文から頻出するキーワードを抽出すると、「経済成長」「物価対策」「所得向上」「子育て支援」「政治改革」「透明化」といった語が目立ちます。すなわち井上氏は、経済再生への強い意欲と物価高から暮らしを守る決意、少子高齢化への危機感、そして何より政治家自身の襟を正す改革姿勢を前面に押し出していたと言えます。
それは同氏の掲げる「信頼できる政治」という看板に象徴されるように、有権者の信頼回復を軸に据えた政策展開でした。例えば政治資金の透明化やクリーンな党運営への言及は、自らが2024年に就任した自民党東京都連会長として直面した都連の資金問題も背景にあると考えられます¹⁴。
また経済・社会保障で「夢と希望」「安心して暮らせる社会」といった前向きな言葉を用いている点から、明るい未来像を示すことで長期政権下での閉塞感を打破しようとする姿勢もうかがえます。総じて、公約からは生活者目線の経済再生と政治倫理の立て直しが井上氏の重点テーマであることが読み取れました。
2. 法案提出履歴と立法活動
議員としての井上氏の立法活動を振り返ると、自ら法案を提出する「議員立法」は決して多くありませんが、要所で存在感を示しています。野党時代の2009年11月、井上氏は超党派の議員らとともに「地域住民等による安全で安心して暮らせるまちづくりの推進に関する法律案」を提出し、地域防犯・安全対策の推進に取り組みました¹⁵。
翌2010年の通常国会でも、井上氏が筆頭提出者に名を連ねた国家公務員法改正案が提出されています¹⁶。しかし、これら法案はいずれも当時与党だった民主党政権下で審議未了に終わり、成立には至りませんでした。
与党復帰後の活動
2012年末に自民党が政権復帰して以降、与党議員となった井上氏は政府提出法案の審議に注力する立場となり、自身が主導する議員立法の提出は目立たなくなります。その代わりに、委員会での法案審査や与党内の法案調整を通じて立法プロセスに貢献してきました。
例えば井上氏は2014~15年に衆議院内閣委員長を務め、国会では内閣提出法案の審査結果を本会議で報告する役割も果たしています¹⁷。2015年当時、首相官邸にドローンが落下する事件を受けて提出された小型無人機飛行禁止法案など安全保障上の法整備でも、内閣委員長として採決を取りまとめました。
また菅内閣では消費者担当相として、契約書面のデジタル化を含む特定商取引法改正案など消費者保護とデジタル改革を両立させる法案に関わり¹⁸、これらは与党多数の下で成立を見ています。井上氏本人が筆頭提出者となった法案こそ少ないものの、政務三役や委員長といった立場で政府提出法案の立法過程に深く関与し、実務型の立法者としての役割を担ってきたと言えます。
井上氏の通算の法案提出数は、公的データから確認できる範囲では数件程度であり、その成立法案数はゼロと見られます¹⁸。これは与党議員としては典型的な傾向で、内閣提出の政策実現を優先するため議員立法は控えめになる事情があります。
その一方で、井上氏は2019年に衆院議長特命で成立した「こども家庭庁」設置法の委員会審議で与党筆頭理事として質疑をリードするなど、重要法案に対する影響力も発揮しています¹⁹。総じて、井上氏の立法活動は「自ら法案を書いて通す」タイプではなく、政府・与党内で法案を支える縁の下の力持ちとしての色彩が強いと言えるでしょう。
3. 国会発言の分析
国会での発言状況を見ると、井上信治氏は質疑に立つ回数自体は多くなく、むしろ委員長報告や政府答弁といった形で発言機会を得ることが多かったようです。実際、統計によれば2013~2014年(第46期国会)における井上氏の発言回数は3回、発言文字数は約1,735字にとどまりました²⁰。
これは同時期の他議員と比べても質問回数・量ともに多くはなく、井上氏が野党時代も含め前面に立って質問攻めにするタイプではないことを示しています。背景には、井上氏が長く与党側に属し、2012年以降は副大臣・大臣職や与党理事など答弁側・調整役に回る立場が多かったことが挙げられます。このため、国会では追及よりも答弁説明や委員会運営に関わる発言が中心でした。
重要な発言機会
それでも存在感を示す場面もあります。たとえば2006年には若手議員の登竜門とされる代表質問で本会議の壇上に立ち、与党を代表して質疑した経験があり、本人も「初めて本会議場で自民党を代表して質問に立った時の感激は忘れられません」と振り返っています²¹。
また環境副大臣在任中の2013年には、震災がれき処理や除染に関する特別委員会で政府答弁に立ち、福島第一原発事故対応の最前線で説明責任を果たしました。菅内閣で大臣として国会に出席した際には、科学技術政策や消費者政策に関する質疑で答弁に立ち、「社会のデジタル化が進み消費者のニーズがある」として契約書面の電子化の必要性を訴えるなど、政策の意義を丁寧に説明しています²²。
発言内容の特徴
井上氏の国会発言で頻出したテーマをみると、やはり自身の所管や専門分野に絡む環境・エネルギー政策や科学技術政策、さらには地元東京のインフラ・防災に関する事項が中心でした。実際、井上氏は「地球温暖化対策などの環境問題は待ったなしの世界的課題です」と述べ、自身のライフワークの一つに環境問題を挙げています²³。
国会でも気候変動対策やエネルギー政策についてしばしば言及し、環境副大臣・内閣府副大臣時代には政府の取り組みを積極的に代弁しました。また予算委員会理事としては、野党の質疑応答を円滑に進める調整役に徹しつつ、必要に応じて与党側の立場から補足説明を加えるなど"縁の下の発言"も見られました。
井上氏の話しぶりは終始穏やかで、数字や事実関係を踏まえつつ論点を整理する官僚出身らしい実直なスタイルが特徴です。そのため大きなヤジや派手なやりとりで注目を浴びるタイプではありませんが、逆に言えば専門知識を駆使した堅実な議論展開で信頼感を与える存在とも評されます。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
井上氏は国会以外でも、政府の審議会や有識者会議に度々顔を出し、政策形成に関与してきました。特に副大臣・大臣として出席した会議では、その分野の専門知見や政治的リーダーシップを発揮しています。
たとえば環境副大臣時代の2014年、福島第一原発事故に伴う除染に関する有識者との意見交換会に参加し、被災自治体の首長らと除染方針を議論しました²³。この場では副大臣として現場の声を汲み上げ、政府方針に反映させる調整役を務めています。
科学技術・イノベーション政策への関与
菅内閣で科学技術政策担当大臣に就任すると、総理を議長とする総合科学技術・イノベーション会議にも閣僚メンバーとして出席しました。同会議では人工知能(AI)戦略や研究開発予算の配分など国家戦略級の議題が扱われ、井上氏も大臣として出席者名簿に名を連ねています²⁴。
2021年1月の統合イノベーション戦略推進会議では、菅総理や加藤官房長官らとともに顔を揃え、コロナ下での科学技術イノベーション政策について短時間で議論を交わしました²⁵。限られた時間でも井上氏は大臣としてポイントを述べ、研究現場の困難や国民の期待に応える施策の方向性を示しています。
消費者政策での積極参加
また井上氏は消費者及び食品安全担当相として、特定商取引法等の契約書面電子化に関する検討会に自ら出席し、冒頭で「消費者保護とデジタル化の両立」に向けた所信を述べています²⁶。この検討会では学識者らに直接語りかけ、電子化によるトラブル防止策や事業者側の課題などについて意見を聞き取りました。
さらに原子力政策分野でも、2020年末の原子力委員会定例会議に井上氏(科学技術政策担当相)自身が出席し、原子力利用の今後に関する議論に耳を傾けています²⁷。
このように井上氏は、自ら関与する政策テーマの会議には可能な限り足を運び、議論の場に積極参加する姿勢を見せてきました。その目的は単に顔を出すことに留まらず、「現場の声と政策をつなぐ架け橋」となることにあります。自身も「政府の一員として直接政策を実現できることに大きなやりがいを感じた」と述懐しており²⁸、官僚や有識者との議論を政策立案に活かす充実感を味わっていたようです。
5. 党内部会・議員連盟での活動
党内活動においても、井上氏は多岐にわたる分野の部会や議員連盟に所属・主導してきました。現在は自民党政務調査会長代理として党政策全般を束ねる立場ですが、それ以前から環境、科学技術、地方創生、社会福祉など幅広い政策グループで役職を務めています²⁹。
環境・エネルギー分野での主導的役割
特筆すべきは環境・エネルギー分野での党内活動です。井上氏は自民党の環境部会長や温暖化対策調査会長などを歴任し、党の提言策定を主導しました³⁰。2025年6月には自ら会長を務める「環境・温暖化対策調査会」として政府に対し「2050年カーボンニュートラル実現に向けた明確な道筋」を求める提言を提出し、脱炭素社会へのロードマップ強化を訴えています³¹。
また宇宙・海洋開発特別委員長として、日本の宇宙政策の推進にも関与しました。2025年5月には宇宙開発戦略小委員会と合同で第9次提言をまとめ、石破首相に対して宇宙基本計画の充実を申し入れるなど、最先端分野でも政策提言をリードしました³²。
地域・インフラ系議員連盟での活動
一方、地域やインフラ系の議員連盟では地元の課題解決に奔走しています。東京都西部を地盤とする井上氏は、「中央線複々線化促進議員の会」(鉄道輸送力強化)や「モノレール等公共交通促進議連」に参加し、東京郊外の交通インフラ整備を働きかけました³³。
さらに「都市農業研究会」会長として都市近郊農業の振興策を提言し、生産緑地問題などに取り組んでいます³³。地元・西多摩地域の活性化にも熱心で、「青梅市で60人の国会議員が田植えから稲刈りまで米作り体験をする」という前代未聞のプロジェクトを企画し、自ら笑顔で田んぼに入り込む姿も話題となりました³⁴。
この取り組みは農業支援とチームワーク醸成を狙った井上氏ならではの発想で、「この笑顔が成功の証しです」と語る姿からは人望の厚さもうかがえます³⁴。
社会・福祉系議員連盟での取り組み
また社会・福祉系の議員連盟では、「熱中症対策推進議連」会長や「こどもホスピスを応援する議連」会長、「国民医療を守る議員の会」副会長などを歴任し³³、高齢者・子ども・患者支援の施策にも取り組んできました。
例えば熱中症対策では、毎年夏前に政府への提言や啓発キャンペーンを展開し、高温多湿の東京西部を抱える地元の実情を訴えています。消防議員連盟の幹事も務め、消防団や救急体制の強化策についても精力的に活動しました³⁵。
現場主義に基づく政策提言
党内の政策グループにおける井上氏の姿勢は、一貫して「現場主義」です。各議連・部会で積み上げた議論は提言書にまとめられ、官邸や関係省庁に提出されています。井上氏自身、「全国各地を行脚して多くの同志と知り合えたことは政治家として貴重な財産」と述懐しており³⁵、部会活動を通じて培った人脈と知見を政策に反映させることに喜びを感じているようです。
その地道な努力は、党内での評価にも繋がり、2022年には党幹事長代理という重責に抜擢されました³⁶。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
クリーンな政治を標榜する井上氏ですが、自身の周辺でもいくつか政治資金や選挙を巡る問題が報じられています。
初期の選挙違反事件
まず遡れば2005年、第44回衆院選の際に井上陣営の支援者20数人が他人に票の取りまとめを依頼したとして公職選挙法違反容疑で逮捕される事件が起きました³⁷。井上氏本人に直接の刑事責任は及びませんでしたが、初期の選挙戦でこうした買収まがいの行為が発覚したことは事実であり、陣営管理の難しさを浮き彫りにしました。
政治資金の透明性問題
政治資金面では、「信政会」という資金管理団体を通じた収支報告の透明性が問われています。2011年には、自民党東京都第25選挙区支部から井上氏の資金管理団体に対し多額の寄付金が迂回提供されていたと共産党機関紙が指摘しており、企業献金の間接還流ではないかとの批判もありました³⁸。井上氏側は適法な手続きを踏んだと説明しましたが、政治とカネの問題として一部で取り上げられました。
旧統一教会との関係
さらに井上氏は旧統一教会との関係も指摘されています。2019年、井上氏が代表を務める「信政会」が統一教会関連団体に会費15,000円を支出していたことが政治資金収支報告書で判明し³⁹、2021年に教団との接点が問題視され始めるとメディアに取り沙汰されました。
また2020年10月には統一教会系の日刊紙『世界日報』のインタビューに応じており³⁹、教団側との接触があったことを認めています。井上氏は「地域の要請で出席したもので、以後関係は絶っている」と説明していますが、こうした過去の行動は国会でも追及を受け、以降は距離を置く姿勢を表明しました。
派閥裏金問題での窮地
決定的だったのは「派閥裏金問題」です。2023年末から2024年初めにかけ、自民党麻生派(志公会)で慣例化していた政治資金の還流(派閥役職者へのキックバック)が発覚し、井上氏にも疑惑が及びました。共産党機関紙『しんぶん赤旗』のスクープによれば、井上氏は2018年に麻生派から受け取った約458万円の資金を自身の収支報告書に記載しておらず、裏金化していたことが判明しました⁴⁰。
自民党は所属全議員に過去5年分の収支報告チェックを行いましたが、井上氏は当初「不記載はない」と回答していたにもかかわらず実際には記載漏れがあり、党調査に虚偽回答した形になっていたのです⁴⁰。この問題は2024年3月の予算委員会でも追及され、井上氏側は「事務処理ミスで個人献金として計上していた」と釈明しました⁴¹が、党内外に大きな衝撃を与えました。
最終的に麻生派は派閥天引きによる還付金制度を廃止し、自民党執行部も井上氏ら関与議員を厳重注意とする処分を下しています。井上氏自身は都連会長という要職にあることから「説明責任を果たし信頼回復に努める」と陳謝しました。
政治的イメージへの影響
総じて、井上氏の不祥事・資金問題は本人の刑事責任に直結するスキャンダルこそないものの、政治的イメージに影を落とす事案が散見されます。井上氏が公約に掲げた「政治とカネの透明化」を自ら実践できるかどうかが、今後の信用回復のカギとなるでしょう¹¹。本人も「二度とこうしたことを起こさないよう猛省する」と語っており、政治倫理の再生に向けた行動が求められています。
7. SNS・情報発信活動
井上信治氏はSNS全盛の時代にあって、発信ツールとの向き合い方に独特のスタンスが見られます。同氏はTwitter(現X)の公式アカウントを持っておらず、主な情報発信はFacebookやブログ、そして地元向けのメールマガジンなどを中心に行ってきました⁴²。
菅内閣でデジタル担当の平井卓也氏らがSNSを駆使する様子が注目された際にも、井上氏自身はTwitterを開設しないまま閣僚の任期を終えています。J-CASTニュースの調査によれば、2020年9月時点で井上氏はInstagramを開設していましたがフォロワー数はわずか621人程度に留まり、デジタル活用は消極的だったと報じられました⁴³。
YouTubeチャンネルも一応開設はしており、自身の国会質疑動画や党のインターネット番組「CafeSta」に出演した際の映像を投稿していますが、登録者数は数百人規模と推測されます(河野太郎氏の14万超に比べると桁違いに少ない)⁴⁴。
リアルな場での直接対話を重視
では井上氏は有権者とのコミュニケーションをどのように図っているのでしょうか。実は、リアルな場で直接訴えかけることを何より重視しているのが井上氏の特徴です。本人曰く「街頭演説は得意。聴衆が多いほど気合いが入る」という"昭和的"な選挙戦術を好み、選挙期間中も「なるべく選挙カーに乗らず自転車で回り、有権者との距離感を近くする」スタイルにこだわっています⁴⁵。
この人力による地道な遊説は有権者との信頼関係を築くのに効果的で、井上氏自身「もうやみつきです」と語るほどです⁴⁵。Facebookでは地元行事に参加した写真や議会報告を頻繁に投稿し、コメント欄で支持者と交流しています。またブログ(ライブドアで運営)では政策解説や活動日誌を綴り、文章でしっかり思いを伝える工夫をしています⁴²。
従来型メディアとの連携
一方で、国政の重要情報発信については党公式サイトや記者会見を活用するオーソドックスな手法をとっています。幹事長代理として党の提言発表会や都連会長として会見する際には、自ら先頭に立ってメディアに語りかけました。テレビや新聞などマスメディアへの露出も多く、本人も「TVやネット、新聞などにも多く出演し政策を訴えることも大切な仕事です」と述べています⁴⁶。
2023年都議補選では都連会長として候補者応援のため連日街頭に立ち、その様子がニュースで報じられるなど、従来型メディアと現場主義のハイブリッドで情報発信していると言えるでしょう。
デジタル発信の課題
フォロワー数の推移を見ると、2015年時点ではTwitterは未開設、YouTube登録者も皆無に等しかったものが、2025年までにTwitterは事実上ゼロから変わらず、YouTubeもわずかに増えただけという状態です(例えばInstagramは2020年時点621人→2023年時点で3,000人強⁴⁷)。
これは井上氏がSNSを支持獲得の主戦場と見なしていないことの証左でしょう。むしろ地道な対面活動や紙媒体での訴えを大切にし、高齢層の多い選挙区事情にも即した戦略をとっていると考えられます。今後、若年層へのアプローチとしてどこまでデジタル発信を強化するかは課題ですが、少なくとも現時点まで井上氏は「ネット人気」より「地元密着」を選んできたようです。
8. 公約実現度の検証
最後に、公約と実績のギャップを検証します。井上氏が掲げた公約の多くは長期的な課題であり、その実現度合いは一朝一夕には測れませんが、いくつか主要項目について進捗を見てみましょう。
政治資金の透明化と政治改革
まず政治資金の透明化と政治改革について。井上氏は「企業・団体献金の透明化」「お金の流れの見える化」を誓いましたが¹¹、2020年代前半はむしろ自民党内で政治資金スキャンダルが相次ぎ、改革の道半ばと言わざるを得ません。井上氏自身も前述のように派閥資金の不記載問題で批判を浴び、公約とのギャップが生じてしまいました。
この点、本人は2024年の総選挙後「野党とも協議を重ね、政治改革の断行など重要政策を必ず実行する」と述べており⁴⁸、信頼回復に向けた法制度見直し(例えば寄附の即時開示や虚偽記載への罰則強化)に取り組む決意を新たにしています。
実際、岸田政権下で政治資金規正法の改正論議が進み、2023年には領収書のインターネット公開を10年後に義務づける改正案が成立しましたが、井上氏も与党議員としてこれを支持しつつ「更なる即時公開が必要」との声にも耳を傾けている状況です。
経済政策と物価対策
経済政策と物価対策では、公約に掲げた「所得向上」「賃上げ」について一定の成果が見られます。井上氏が政調会長代理として関与した骨太の方針では、中小企業支援策を拡充して賃上げを促す施策が盛り込まれ、最低賃金もこの10年で毎年引き上げが行われました。ただ肝心の実質所得は物価高騰もあり伸び悩み、井上氏が目指す「国民が実感できる所得向上」には道半ばです⁴⁹。
物価高対策では、2022~23年にかけてガソリン補助金や電気料金抑制策が実施され、一定の家計支援効果はありました。井上氏は物価高について国会で「一過性でなく中長期の構造対応を」と主張し、輸入小麦の価格据え置きや飼料価格安定策など幅広い対策を後押ししました。
消費税減税については石破茂政権(2024年発足)が「選択肢にない」と明言したため¹³、井上氏も与党の一員としてこれを支持し、他の減税(所得税・たばこ税)や給付金措置で物価高に対応する立場を取っています。その意味で、「物価高に負けない所得向上」という公約は完全実現には至っていないものの、現実的な政策対応でフォローしている段階と評価できます。
少子化対策と社会保障充実
少子化対策と社会保障充実については、公約で掲げた児童手当拡充が実現しました。岸田政権下の少子化対策強化策として、2024年10月から児童手当の所得制限撤廃と高校生年代までの支給延長が実施されます(井上氏も党内調整に関与)⁴⁸。育児休業給付の引き上げや不妊治療の保険適用拡大なども実現しつつあり、「安心して子育てできる社会」の土台づくりは前進しています¹³。
一方、年金・医療・介護の持続可能性という課題では、社会保障費の増大が続く中で給付と負担の見直しは避けられず、井上氏も所属する自民党内で給付抑制策やマイナンバー活用による効率化を議論中です。公約のキーワードである「健康寿命延伸」「デジタル活用による効率化」については、具体策として高齢者のフレイル予防事業推進やオンライン診療の拡充といった政策が動き出していますが、いずれも成果が出るのはこれからでしょう。
公約と国会発言の乖離
最後に公約と国会発言の乖離も指摘します。井上氏の公約上位ワードには「政治改革」「経済」「社会保障」が並びましたが、国会発言では環境・科学技術など別分野が多かったため、公約との直接的なリンクが見えにくい面があります。これは井上氏が党内役職や政府ポストを歴任し、公約とは別の職責テーマで発言する機会が多かったためです。
例えば公約で強調した政治改革について、井上氏自身の国会での直接発言はほとんど確認できません。しかし2023年以降、政治資金問題がクローズアップされると、都連会長として「自民党東京都連の信頼回復」を掲げて寄付禁止ルールの検討を始めるなど、公約実現へ舞台を国会外にも広げています。
経済政策についても、井上氏は直接質疑に立つより政策立案側に回ることが多く、公約とのギャップは表面的には大きく見えますが、党内で骨太方針や予算編成に関与する形で裏方として公約実現に寄与していると言えます。
総合的な評価
総じて、井上信治氏の2015~2025年の歩みは、表舞台で雄弁を振るうタイプではなくとも、実務と調整に徹し確実に成果を積み上げる「縁の下の力持ち」型政治家の姿を浮かび上がらせます。公約に掲げた「信頼できる政治」を体現すべく、自らの課題である資金透明化に挑む覚悟が問われる一方、環境・科学技術・地域振興といった分野では確かな足跡を残しました。
有権者にとって、井上氏の10年は地味ながらも確実な前進と、一部に残る課題の両面が見える期間だったと言えるでしょう。今後もその動向を注意深く見守りたいところです。
参考資料
- 公式サイト・経歴: 井上信治公式ウェブサイト「プロフィール」⁵⁰³⁰; 自由民主党 議員紹介ページ⁵¹⁵²; 首相官邸ホームページ(菅内閣 閣僚名簿)⁵
- 選挙公約: 選挙ドットコム「第50回衆議院議員総選挙 東京25区候補者ページ」公約・重点政策¹²¹³; 自民党公式サイト「衆院選2024候補者情報」¹⁰
- 国会活動: 国会議員白書(発言統計)²⁰; 衆議院会議録(内閣委員長報告)¹⁷; 衆議院会議録(消費者問題特別委 答弁)¹⁸; 井上信治公式サイト「フォトアルバム」(代表質問の写真解説)²¹
- 政府審議会: 内閣府・総合科学技術会議 議事録²⁴; 消費者庁 検討会議事録²⁶; 原子力委員会 議事録²⁷; 環境省 除染情報サイト(有識者会議資料)²³
- 党活動: 井上信治公式サイト「主な役職・所属団体」⁵³; 自民党ニュースリリース⁵⁴; 自民党政務調査会提言発表(宇宙開発等)³²
- 不祥事報道: 朝日新聞デジタル「衆院選2024 東京25区 開票結果」⁴; Wikipedia「井上信治」(統一教会との関係・選挙違反)³⁹³⁷; しんぶん赤旗 2024年3月1日号「裏金議員スクープ」⁴⁰; 共産党国会質問より(麻生派裏金問題)⁵⁵
- SNS関連: J-CASTニュース「菅内閣とSNS発信力」⁴³⁴⁴; 井上信治公式サイト「フォトアルバム」(街頭演説・自転車遊説の写真解説)⁴⁵⁴⁷; Instagram公式アカウント(フォロワー数); 自民党ネット番組CafeSta出演動画(自民党公式YouTubeチャンネル)など。
参照リンク
井上信治 - Wikipedia <a id="ref1"></a>¹ <a id="ref2"></a>² <a id="ref3"></a>³ <a id="ref5"></a>⁵ <a id="ref7"></a>⁷ <a id="ref36"></a>³⁶ <a id="ref37"></a>³⁷ <a id="ref39"></a>³⁹
東京都(小選挙区)〖2024年 衆院選〗候補者一覧・開票速報・結果 | 朝日新聞 | 衆議院議員総選挙 特設サイト <a id="ref4"></a>⁴
衆議院議員 井上 信治(いのうえ しんじ) | 議員 | 自由民主党 <a id="ref6"></a>⁶ <a id="ref29"></a>²⁹ <a id="ref31"></a>³¹ <a id="ref32"></a>³² <a id="ref42"></a>⁴² <a id="ref51"></a>⁵¹ <a id="ref52"></a>⁵² <a id="ref54"></a>⁵⁴
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<a id="ref55"></a>⁵⁵
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。