いの としろう
井野俊郎議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
自由民主党所属の衆議院議員、井野俊郎(いの・としろう)氏は群馬県第2区選出で当選5回を数えるベテラン政治家です。1980年に群馬県伊勢崎市で生まれ、明治大学法学部を卒業後に弁護士となり地方議員を経て国政に転身しました。
2010年に伊勢崎市議会議員に初当選し、市議1期を務めたのち、2012年の第46回衆院選で国政初当選。以降、2014年・2017年・2021年・2024年と連続当選を重ねており、在職期間は2012年末から現在まで約13年に及びます。
地盤とする群馬2区は中曽根・福田・小渕といった保守名門がひしめく土地柄ですが、井野氏自身は政治家一族の出身ではなく、公募から叩き上げで選挙区支部長に抜擢された異色の存在です。その背景もあってか「群馬のみにくいアヒルの子」を自称し、無名から這い上がった苦労人のイメージを前面に出しています。
党内では平成研究会(旧茂木派、2024年12月解散)に所属し、法務副大臣・防衛副大臣など要職も歴任しました。分析対象期間は2015年から2025年7月までの約10年で、本レポートはこの間の井野氏の政治活動を網羅的に検証し、有権者がその軌跡と実績を正しく評価できるようまとめたものです。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
井野俊郎氏は直近の選挙戦で、有権者に対し「真面目にコツコツ頑張る人が報われる社会」を実現したいと強く訴えました。自身「エリートでもない私だからこそ、失敗しても挽回できる社会を築ける」と語り、挫折を経験した人々に再挑戦の機会を与える社会像を提示しています。
選挙公報では「誰でも平等にチャンスが与えられ、努力する人が正当に評価される社会」をスローガンに掲げ、「努力すれば報われる、頑張れば報われる社会」の実現を目指すと明記されました。この理念は井野氏自身の人生観に根差したもので、高校生の頃に政治家を志した動機も「一生懸命頑張る人が報われる社会をつくりたい」との思いからだったといいます。
教育の充実と格差是正
公約の柱を見ていくと、まず教育の充実と格差是正が挙げられます。井野氏は「親の所得によって子供の学力が左右され、格差が固定化してしまう現状」を憂い、「地方にいても質の高い教育を受けられるよう、公立学校の充実や人材育成を進める」と約束しました。すべての子供たちに平等な機会を保証することで、「努力する者が正当に評価される社会」の土台を作る考えです。
独自の経済政策理念
また、経済政策では独自の水田の比喩を用い、「税と予算配分は田んぼの水」と説きました。潤沢な分野からは適切に税を徴収し、不足する分野には予算という水を引く。必要とあれば政府は財政出動を行い(いわゆる積極財政)、逆に過度な分野には支出を抑える——そうしたバランス感覚で国全体を豊かにすると訴えています。この比喩からは「全体最適を図りつつ成長と分配の調和を追求する」という井野氏の経済観が読み取れます。
公平公正な社会の実現
次に公平公正な社会の実現も重要な公約でした。井野氏は明治維新の逸話に触れ、「身分に関係なく能力本位で活躍できた歴史」を引き合いに出しつつ、「固定化した格差は人々の努力意欲を奪い社会の活力を損なう」と指摘しています。そこで「全ての人に平等な機会を与える税制や社会保障を構築し、不平等・不公正な制度は見直す」と公約しました。
安全保障への取り組み
また、安全保障分野にも踏み込み、「『日米安保があるから大丈夫』ではなく、与野党問わず具体的な安全保障議論をすべき時だ」と提起しました。ロシアのクリミア侵攻や中国の台湾圧力を念頭に「必要な防衛予算・法整備、さらには憲法問題にも冷静かつ具体的に取り組むべき」と述べ、国防強化と憲法改正論議への前向きな姿勢を明確にしています。実際、公約集には「国の存続に関わる問題に真剣に備える」として、防衛力の強化や抑止力向上策が盛り込まれました。
地元群馬への公約
こうした国家規模の政策と並び、地元群馬のための公約も色濃く打ち出されました。井野氏は生まれ育った群馬への愛着を強調し、「家族と共に地元で暮らす自分だからこそ、群馬の課題も良さも国政に届けられる」と訴えています。
公約には実際に取り組んだ地域課題として、「大雪で倒壊したビニールハウス再建への補助金(9割補助)の確保」や「農産物選果場建設への補助金」、「国道17号・50号バイパス整備予算」、「小学校大規模改修費の確保」など具体的実績が列挙されました。これらは井野氏がこれまで地元にもたらした"お土産"であり、有権者に対し「まだまだできる!もっとできる!!」とさらなる地域振興への意気込みを示すものです。キャッチフレーズの「まだまだできる、もっとできる」は、まさにこれからも地元のために働き続ける決意表明と言えます。
キーワード分析
井野氏の選挙公報や政策集のテキストで頻出したキーワードを分析すると、「社会」「人」「機会」「努力」「教育」「地方」「安全保障」などが上位に並びました。「社会」という言葉の多用は、彼が常に全体のシステムや仕組みとして物事を捉え、理想の社会像を語っていることを表しています。
「努力」「機会」といった単語が目立つのも、先述したように彼の政治理念の根幹に「努力への正当な報い」と「再挑戦のチャンス」があるためでしょう。さらに「教育」「地方」といった言葉からは、人づくりや地域活性化に力点を置く姿勢がうかがえ、「安全保障」の頻出は安全保障政策を正面から論じる意欲を示しています。
総じて、井野氏のマニフェストは自己の原体験に裏打ちされた社会観と、国政から地域まで幅広い政策分野への熱意が感じられる内容でした。
2. 法案提出履歴と立法活動
国会議員としての井野俊郎氏は、与党の一員として政府提出法案の審議に臨むだけでなく、議員立法にも積極的に関与してきました。2015年以降の提出法案を調べると件数自体はそれほど多くありませんが、その中身は重要な政策課題に絡むものが目立ちます。
入管法改正への取り組み
代表的な例が、2018年の入管法改正をめぐる修正案提出です。当時、深刻化する人手不足を背景に外国人労働者の受け入れ拡大を図る入国管理法改正案が国会審議されました。井野氏は与党議員ながら法務委員会理事として現場の議論を主導し、法案に賛成する日本維新の会も巻き込んで修正協議を行いました。
そして「特定技能外国人が都市部に過度集中しないための措置」を盛り込む修正案を自ら起草し、委員会に提出したのです。この修正案は質疑の後に賛成多数で可決され、原案に組み込まれました。さらに井野氏は公明党・維新の委員らと協力し、外国人労働者受け入れに関する附帯決議案も提出しています。附帯決議では人手不足分野への支援策や受け入れ環境整備など政府への注文を付け、こちらも可決されました。
入管法改正は社会的にも賛否が分かれる難題でしたが、井野氏は与野党の溝を埋める調整役となり、現場実情に即した修正を実現した形です。その背景には、法務大臣政務官を務め法制度に通じていた経験が生きたのでしょう。
政治資金規正法改正への関与
もう一つ特筆すべきは、政治とカネの問題に対する立法対応です。2023年、自民党の一部派閥で長年にわたる裏金プール疑惑が発覚し、政界に衝撃が走りました。それを受けて政治資金規正法の改正が急遽議論され、井野氏も与党の立場から法案作成に関わりました。
与野党協議の結果、「政党交付金の使途公開強化」「党支部から議員本人への支出透明化」などを盛り込んだ改正案がまとめられ、2024年6月19日、政治資金規正法改正案が参議院本会議で可決・成立しました。提出者一覧には井野氏の名前も連ねられており、党国会対策副委員長として法案成立に尽力したことがうかがえます。
もっとも、この改正法は付則に「領収書の公開は支出後10年経過後」と定めるなど抜け穴も指摘され、維新を除く野党は「骨抜きだ」と批判しました。井野氏ら与党側は「10年間の保管義務を設けただけでも一歩前進」と説明しましたが、野党は「10年後では不正を見逃す恐れがある」と即時公開を要求し対立が残りました。
結果として改正案は維新・公明も賛成し成立しましたが、企業・団体献金の全面禁止など踏み込んだ策は盛り込まれず、継続審議の余地を残しています。井野氏自身も「政治とカネ」問題には苦言を呈しており、党内の若手議員らと積極財政だけでなく政治倫理改革についても議論を重ねてきました。
その他の立法活動
他にも井野氏が関与した立法としては、旧優生保護法下で不妊手術を強制された被害者への救済法案があります。これは超党派で提出されたもので、被害者への一時金支給と政府の謝罪を定める内容ですが、井野氏も提出議員の一人として名を連ねました(2024年10月7日、衆院本会議で全会一致可決)。
また、防衛副大臣在任中の2023年には防衛費の安定財源確保のための法整備にも間接的に関わりました。直接の提出者ではありませんが、副大臣として与党議員に説明を行い、結果的に防衛財源確保法が成立しています。
これらの立法活動から見えるのは、井野氏が法務・安全保障・政治改革といった幅広い分野で立法にタッチしていることです。提出法案数自体は10年間で数件程度と決して多くはありませんが、その質は高く、いずれも時代の要請に応えた重要テーマばかりでした。
政府提出法案との関係
なお、井野氏は政府提出の主要法案に対して一貫して与党の立場から賛成票を投じてきました。例えば、経済安全保障推進法や防衛費増額関連の予算・法案など、岸田政権下での政策パッケージには与党国対副委員長として成立に汗をかいています。目立った造反や異議表明は記録されておらず、むしろ党内調整役として法案成立に尽くす姿勢が目立ちます。
その反面、自らが筆頭提出者となった法案は少なく、「与えられた役割の中で結果を出す実務型議員」と評する向きもあります。しかし、前述のように要所で修正案や附帯決議を駆使している点に、井野氏の堅実ながら芯の通った立法姿勢が表れていると言えるでしょう。
3. 国会発言の分析
発言統計と特徴
国会での発言回数や内容から、井野俊郎氏の議員としての存在感を探ってみます。国会議員白書によれば、井野氏の国会発言は10年間で相当数に上るとされています。この数字自体は5期議員の平均から見て際立って多いとは言えませんが、発言の質と文脈に注目すると井野氏の役割が浮かび上がってきます。
議事運営上の発言
まず、井野氏の発言には議事運営上の発言が少なからず含まれています。彼は衆議院議院運営委員会の理事を長く務め、2023年からは党国対副委員長として本会議での動議提出などを担当しました。実際、衆議院本会議ではしばしば「井野俊郎君、議案上程に関する緊急動議を提出いたします」といった議事進行発言を行っています。
例えば2023年11月の本会議では、北朝鮮のミサイル発射への抗議決議を委員会審査省略で緊急上程する動議を提出し可決させるなど、裏方ながら重要な役割を果たしました。このような国会運営のテクニカルな発言が積み重なっているため、発言数の割に文字数が抑えめになっている側面があります。
言い換えれば、井野氏は演説で雄弁を振るうタイプというより、要所要所で手短に要点を述べる実務派という印象です。
政策論争での発言
しかしもちろん、政策論争の場で発言する機会も多くありました。特に委員会質疑では、井野氏は持ち前の法曹的な論理思考と勉強熱心さを発揮しています。予算委員会では経済政策に関して積極的に発言し、2021年には当時話題となっていた「現代貨幣理論(MMT)」について政府見解をただしました。
自民党内でも異色のこの質問は、「財政赤字を気にせず積極財政を」と訴える若手議員の一人として井野氏が名乗りを上げた形で、財政金融政策への高い関心がうかがえます。その真剣な議論ぶりは地元紙のインタビューでも触れられ、「MMTを勉強してきた」と語るほどでした。
法務分野での活動
また井野氏は法務委員会での質疑・答弁にも深く関わりました。2016–2017年に法務大臣政務官を務めた際には、委員会審議で政府側答弁に立ち、刑法改正などの法案成立に汗をかきました。特に注目されたのが性犯罪厳罰化に向けた刑法改正です。
強姦罪の要件見直しや法定刑引き上げを盛り込んだこの改正について、井野氏は政務官として与党答弁の一翼を担い、成立に尽力しました。さらに議員の立場に戻ってからも、性犯罪の被害実態に即した法整備を求めて発言を続けています。
彼は2019年、自ら発起人となって「性犯罪の刑法改正を考える勉強会」を超党派で立ち上げ、議論をリードしました。その狙いの一つが現行13歳だった性交同意年齢の引き上げで、勉強会で専門家ヒアリングを重ね法改正の機運を醸成していきました。
こうした地道な活動が実を結び、2023年には性交同意年齢を16歳に引き上げる改正刑法が成立します。井野氏本人は法案提出者ではなかったものの、陰の立役者として改革を後押ししたと評価されています。国会答弁の場でも井野氏は「性被害から若者を守る法整備の重要性」を繰り返し訴えており、その理念は一貫しています。
安全保障分野での発言
井野氏の発言傾向を語る上で忘れてならないのは安全保障分野です。防衛副大臣として政府側答弁にも立ったほか、議員としてもしばしば安保関連の発言を行いました。2022年以降、衆議院安全保障委員会や予算委員会分科会で、防衛装備品の整備計画や自衛隊の任務に関する質疑に答えています。
防衛副大臣就任後の2023年7月には、英国メディアのインタビューを受け「中国が台湾へ武力行使した場合、日本は防衛装備品や後方支援など何らかの支援を台湾に提供する可能性が高い」と発言しました。この発言は中国側の強い反発を招き、外交部報道官から「中日関係の政治的基礎を損ない、断固反対する。日本は台湾問題で軽率な言動を慎むべきだ」との抗議を受けています。
物議を醸したものの、井野氏の発言は日本政府内の一部にある対台湾支援論を率直に示したもので、彼自身の安全保障観とも合致するものです。国会の場でも井野氏は「台湾有事を想定した議論は避けて通れない」と主張しており、与野党の一部に慎重論がある中で踏み込んだ議論を促す姿勢が見られました。
発言の特徴と評価
総じて、井野俊郎氏の国会発言は実務派らしく要領を得たものが多い印象です。長広舌を振るうタイプではなく、限られた時間でポイントを突く質疑が目立ちます。その背景には弁護士出身ならではの論理的思考と準備の周到さがあるのでしょう。
実際、委員会で質問に立つ際には豊富なエビデンスを用意し、政府答弁を引き出すテクニックに優れていたと同僚議員は証言します。また与党議員としての分を弁える態度も感じられます。前述のように与党の質疑時間は少なく、政府批判より提案や確認に重きが置かれますが、井野氏はその枠内で最大限に政策提言を盛り込もうとしてきました。
その一例が憲法審査会での発言です。2023年、衆院憲法審査会で首相の衆議院解散権制約の是非が議題となった際、井野氏は「解散権に法律上の歯止めをかけても、与党が内閣不信任案を提出し可決させる手段が残る以上、実質的な制約にはならない」と法技術的観点から慎重論を述べました。与党の立場として現行憲法の解散規定を擁護する見解でしたが、そこにも彼らしいロジカルなアプローチが表れています。
井野俊郎氏の国会発言は堅実かつ専門性の高い議論に彩られていました。質疑応答を通じて浮かび上がるのは、財政・法務・安全保障といった国政の根幹テーマに精通し、自らの信念(例えば「積極財政」「司法制度改革」「抑止力強化」)に沿って的確に発言する姿です。
一方で、与党の一員としてバランスを取り、不要な対立を煽らない節度も感じられます。決して目立ちたがりではないものの、要所で存在感を示す——井野氏の国会での立ち居振る舞いを一言で評すれば、「職人肌の論客」という表現が適切かもしれません。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
参加した審議会・会議
国会内で精力的に活動する一方、井野俊郎氏の名前は省庁の審議会や政府の有識者会議にもいくつか見られます。ただし、その多くは彼が副大臣や政務官など行政側の立場で出席したものであり、委員として継続参加したケースは限定的です。
法制審議会での活動
井野氏が参加した代表的な会議体として挙げられるのが、法務省の法制審議会です。2016年8月から法務大臣政務官を務めていた際、井野氏は大臣代理として法制審議会の会合に臨席しました。例えば2017年2月に開かれた法制審議会第178回会議では、冒頭で「井野俊郎でございます。大臣に代わりまして御挨拶を申し上げます」と述べ、委員である法曹有識者らに謝意と期待を伝えています。
法制審議会は刑法や民法改正の方向性を議論する重要な審議会で、この時期はまさに性犯罪規定の見直しが議題でした。井野氏は政務官として議論の経緯をフォローし、審議会からの答申内容を国会提出の法案に反映させる役割を担いました。審議会そのものでは議決権を持たないオブザーバー的立場でしたが、会議の空気を肌で感じることで立法作業に活かしたといいます。
井野氏自身、「専門家から直接ヒアリングできる貴重な場だった」と後に述懐しており、省庁審議会を立法と行政の橋渡しの機会と捉えていたようです。
安全保障・経済安保関連会議
また、防衛副大臣に就任した2022年以降は、安全保障分野の会議に出席しています。国家安全保障会議(NSC)は極めて機密性の高い場で詳細は不明ですが、副大臣として一部会合に陪席した可能性があります。公開情報として確認できるのは、経済安全保障推進法関連の有識者会議に政府代表として出席した記録です。
2023年4月、経済産業省主催の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」において、防衛副大臣の井野氏が関係府省の一員として意見を述べています。エネルギー・軍事両面の戦略を統合的に検討する場で、防衛省を代表してサプライチェーン安全保障などについてコメントしたとのことです。
このように、省庁横断のプロジェクトや特命会議に参加し、各分野の専門家と議論を交わした経験も持っています。
審議会活動の特徴
もっとも、井野氏個人が座長や委員長を務めた審議会があったわけではありません。官僚機構の専門家会議においては、政務三役として与えられた役割をこなす立場が中心でした。逆に言えば、「官」の領域に過度に踏み込みすぎず、あくまで立法府の人間として必要最低限の関与に留めていたとも言えます。
多くの与党議員がそうであるように、井野氏の政策形成の主戦場は国会内の委員会や党内プロジェクトであり、霞が関の審議会は補助的な位置づけでした。実際、2015年以降に井野氏がメンバーとなった政府の懇談会・検討会はほとんど記録がなく、情報公開された会議資料にも氏名が載るケースはごく少数です。
このように、省庁審議会等での活動量は決して多くありませんが、井野氏がそこで得た知見は国会質疑や法案作成に確実に活かされています。法制審議会での専門家議論の感触は前述の刑法改正に、経済安保の議論は翌年の政策立案に反映されました。井野氏自身、「議員は現場の声と専門知をつなぐ役割がある」と語っており(2023年地元紙インタビュー)、与えられた場では丁寧に耳を傾け、自らのフィルターを通して政策に繋げる姿勢が伺えます。
総括すれば、井野俊郎氏の有識者会議での活動は表舞台では目立たないものの、裏で政策を支える縁の下の力持ち的な貢献だったと言えるでしょう。
5. 党内部会・議員連盟での活動
党内での役職と活動
井野俊郎氏は党内活動にも熱心で、複数の部会や議員連盟(議連)に所属してきました。単に名を連ねるだけでなく、それぞれの場で専門性を発揮したりリーダーシップを取ったりしています。
政調部会での活動
まず、自民党の政策立案の最前線である党政務調査会の各部会において、井野氏は重要な役職を歴任しました。法務、副大臣経験を買われて法務部会長代理に就任し、法務行政に関する党内議論を取り仕切ったことがあります。また文部科学部会長代理や国防部会長代理も務め、教育政策や防衛政策の議論にも深く関わりました。
部会長代理というポストは各部会での議論をまとめ上げ本部に報告する役割で、部会長を支えつつ実質的に議論の方向性に影響力を持つポジションです。井野氏は法務・文科・国防と幅広い分野で部会長代理を兼任し、党内の政策キーパーソンの一人となっていました。例えば文科部会では地方大学の活性化策について発言し、法務部会では司法試験制度改革を提言、防衛部会では防衛費の中期見通しに関する論点整理に携わるなど、多岐にわたるテーマで貢献しました。
畜産・酪農分野での活動
加えて、井野氏は党畜産・酪農対策委員会委員長代理も務めました。群馬県は畜産業が盛んな地域を抱えるため、このポストは地元の農業票固めにも直結します。井野氏は地元酪農家からの要望を党本部に持ち帰り、酪農支援策を政府に働きかけました。たとえば生乳価格の安定対策や飼料高騰時の補助制度拡充など、地方の「小さな声」を政策化する潤滑油の役割を果たしています。
このように党内の専門委員会で実務に精通した姿勢は評価が高く、農林族のベテラン議員からも「井野君は若いが勉強している」と一目置かれる存在でした。
青年局での活動
党組織での役職以外に、自民党青年局でも活動しています。2020年秋、菅義偉政権発足に合わせて青年局部長に就任しました。青年局は党内若手の登竜門的組織で、全国の青年部・青年局メンバーとの交流や研修を行います。井野氏は小倉將信青年局長(当時)らと共に各地での街頭演説や意見交換会に参加し、若手議員らのまとめ役を務めました。
2022年には福井や沖縄、山梨、新潟など全国を飛び回り、地域の青年団体・学生との対話や政策勉強会を主催しています。自民党青年局のスローガン「日本を前に進める若い力」に共鳴し、自らも40代前半のエネルギーをもって奔走する姿は、党内外から好感を持って受け止められました。その経験もあってか、後述するSNS発信などでも若い世代へのアピールを意識している様子が伺えます。
議員連盟での活動
さらに、議員連盟での活動も井野氏の政治履歴の中で重要な位置を占めます。所属団体・議連をみると、彼の政策的関心領域が浮かび上がってきます。まず「自民党たばこ議員連盟」に参加しており、たばこ産業や喫煙者の権利に関する政策調整に関与しました。愛煙家ではないものの、地元にたばこ耕作農家が存在する関係から、増税や規制強化の際には業界側の声を代弁しています(2020年のたばこ税増税時などに発言記録あり)。
次に「ボーイスカウト振興国会議員連盟」では青少年の健全育成に取り組み、地元群馬のスカウト活動にも後援者として参加しています。井野氏自身、小中学生の子を持つ父親として、子どもたちの成長を支える活動に強い関心を持っています。
経済・外交分野の議連
また、経済・外交分野では「TPP交渉における国益を守り抜く会」のメンバーでした。TPP(環太平洋経済連携協定)交渉時、農林畜産分野への影響を懸念する保守系議員が集ったグループで、井野氏も地方農業を守る立場から参加しました。群馬2区はコメ農家や養豚農家も多く、「聖域なき関税撤廃」に反対する決議に名を連ねています。
結果的にTPP協定は大筋合意しましたが、彼らの主張が功を奏しコメ・牛肉など重要5品目の関税は一定程度守られました。井野氏としても地元農家に「最大限の譲歩を勝ち取った」と報告できる内容で、国益と地元利益の双方を意識した活動だったと言えます。
保守系勉強会での活動
さらに興味深いのが、「日本の未来を考える勉強会」への所属です。これは若手・中堅の保守系議員が集まり、積極的な財政出動や国家観に基づく政策提言を行うグループで、「保守団結の会」とも通称されます。井野氏はここで主に経済政策について議論し、PB(プライマリーバランス)黒字化目標の凍結や消費減税など大胆な政策を提言する一翼を担いました。
実際、2021年に発表された勉強会提言では「コロナ禍からの再生のため、財政規律を一時棚上げし大胆な財政出動を」と明記され、井野氏も賛同者に名を連ねました。こうした動きは後述の積極財政派議連にも繋がっていきます。
積極財政議連での活動
そして井野氏は「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の副代表も務めています。この議連は「積極財政(プライマリーバランスにとらわれず必要な財政支出を行うこと)」を掲げる超党派有志の集まりで、コロナ禍以降、経済再生のため財政拡大を主張してきました。井野氏は副代表として会の取りまとめ役を担い、提言書のとりまとめや講師招聘などに奔走しました。
政府が財政健全化目標に固執しすぎることに危機感を抱き、「将来世代への責任ある投資」を訴えるこの議連の活動は、まさに井野氏の経済観と一致します。2022年12月には同議連が岸田首相に対し「防衛費増額と一体で大規模な経済財政出動を」との提言を行い、井野氏も同席して積極財政への理解を求めました(首相官邸での提言手交式の写真に井野氏の姿が確認できます)。
このように、党派の枠を超えて志を同じくする議員と連携し、自らの信念である積極財政路線を政策化しようとした点は注目に値します。
党内・議連活動の評価
以上のように、井野俊郎氏の党内・議連活動は多岐にわたりますが、一貫して感じられるのは「現場主義」と「政策通」というキーワードです。畜産部会で酪農家の声を届け、青年局で全国行脚し、議連で国家財政の大局を論じる——いずれも地に足の着いた課題意識と専門知識に裏打ちされています。
本人も「与えられた場それぞれで役割を果たすのが党人としての務め」と語っており、派手さはないものの確実に成果を積み上げてきた印象です。党内からの信頼も厚く、法務・防衛といった難しいテーマを任されてきたことがそれを物語っています。
議連での活動も自己アピールではなく政策実現が目的で、例えば積極財政議連の会合では財務官僚を相手に理詰めで議論を重ねています。井野氏のこうした地道な努力は表舞台で大きく報じられることは少ないものの、政策立案の屋台骨として政権運営を支えていると言えるでしょう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
全体的な評価
井野俊郎氏のこの10年間の歩みを見ると、深刻な不祥事やスキャンダルに直接見舞われたことはありません。ただし、政治倫理や資金管理に絡んでいくつか注意すべき出来事がありました。ここでは事実関係を確認し、公平な視点で整理します。
旧統一教会との関係
まず取り上げるべきは、近年大きな社会問題となった旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係です。2022年、安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに多くの政治家と統一教会の接点が明るみに出ましたが、井野氏も例外ではありませんでした。
報道によれば、2012年に初当選した直後から井野氏の後援会周辺に統一教会関係者が接近していたといいます。具体的には2014年3月、井野氏の所属派閥(平成研究会)の政治資金パーティー券を統一教会関係者が購入していたことが判明しました。井野事務所は選挙区内のパソコン教室経営者を窓口に立てて計8枚のパーティー券を販売しており、結果的に教団関係者からの資金提供を受けた形になっていました。
また2014年6月には、井野氏の事務所が統一教会関係者を国会議事堂や首相官邸の見学に招待しています。さらに2014年7月には、統一教会の信者5人が自民党に入党する際、井野事務所がその党費を肩代わりして支払っていたことも明らかになりました。
極めつけは2015年2月、井野氏の支援団体「俊世会(しゅんせいかい)」が設立された際に、統一教会関係者が深く関与していた件です。「俊世会」は井野氏の名前「俊郎」と教団の旧称「統一教会」の一文字ずつを取って名付けられたとされ、群馬県議(当時は県議ではなかった人物、のち2019年初当選の斉藤優氏)が代表を務めました。教団側が政治家支援組織を作り井野氏を支えようとしていた構図で、地元有力者の証言からこの事実が浮上しました。
対応と釈明
こうした一連の統一教会との関係は2022年に相次いで報じられ、井野氏も釈明を迫られることになりました。共同通信のアンケートに対し、岸田首相はじめ多くの自民党議員が接点の有無を回答する中、井野氏は回答を拒否しました。教団との関係精査を党として呼びかけていた矢先の沈黙に、「なぜ説明しないのか」と批判の声も上がりました。
井野氏側は後日、教団との関係を「指摘されるまで認識していなかった」と釈明し、パーティー券代は適正に収支報告書に計上しているとして違法性を否定しました。確かに、現時点で井野氏と統一教会の関係に法的な問題が認められたわけではありません。しかし、「後援会組織に教団関係者が入り込んでいた」という事実は重く、井野氏も「結果的にご心配をおかけした」と陳謝しています(2022年10月の記者会見)。
党内からは井野氏の国会対策副委員長職辞任を求める声も一部にありましたが、最終的に処分などは行われませんでした。この問題は、井野氏個人だけでなく自民党と統一教会との長年の癒着構造の一端として語られることになり、彼にとっても政治倫理上の大きな教訓となったはずです。
委員会審議中の不適切行為
次に、国会内での不適切行為として報じられた件を挙げます。2020年、毎日新聞が与野党議員の委員会審議中の所作を調査したところ、井野俊郎氏が審議と無関係な書籍を読んでいたことが確認されました。同年5〜6月にかけて複数の委員会を傍聴した調査記事で、井野氏は2020年6月18日の衆院沖縄北方特別委員会において、内容と関係のない本(当時話題になっていたノンフィクション小説『女帝 小池百合子』)を約2時間にわたり読み耽っていたと報じられました。
記事には「井野議員は委員会中ずっと下を向いて小説を読んでいた」と具体的に描写されており、他の与党議員6人と野党議員1人のスマホ閲覧行為などと合わせて問題視されました。この報道に対し、井野氏は「深く反省している」とコメントし、党から口頭で注意を受けたとされています。
実際の審議では野党議員が質問を行い、与党側の井野氏に質問機会はなかった場面でしたが、野党からは「与党の質問時間が少ないからといって真剣に審議に向き合わないのは職務放棄ではないか」と批判されました。井野氏個人に対する懲罰動議などは提出されませんでしたが、この一件は「与党議員の緊張感の欠如」としてメディアに取り上げられ、井野氏も面目を失う形となりました。
ただ、以降井野氏が委員会中に不真面目な姿を晒したとの報告はなく、本人も「二度とこのようなことがないよう襟を正す」と述べています。
政治資金の管理
政治資金の面では、井野氏自身に重大な不正や疑惑は指摘されていません。毎年公開される政治資金収支報告書や資産公開でも、大きな問題は見当たりません。ただ、資産等報告書の記載漏れを訂正した事例が一度ありました。
2020年、井野氏は前年度に公開された2018年分の資産補充報告書について訂正届を提出しています。具体的には「土地の固定資産税評価額」を本来記載すべきところを漏らしており、後日評価額875万円を追記する訂正を行いました。これも違法ではなく修正で済んだものですが、野党からは「資産公開への緊張感が足りない」と批判されました。井野氏側は「事務的なミスで悪意はなかった」と釈明しています。
党内倫理規則への関与
その他、井野氏は幹部として党内倫理規則の整備にも関与しています。2023年、自民党は度重なる議員の不祥事(買収事件や暴言問題など)を受け、党独自の倫理綱領を強化しましたが、井野氏も国対副委員長として倫理審査の在り方について議論に参加しました。懲罰委員会にも理事として名を連ねていますが、実際に井野氏自身が懲罰動議を受けたことはなく、委員として淡々と職務をこなしたようです。
総合的な評価
全体として、井野俊郎氏の政治生活における「不祥事」は、致命的なスキャンダルというよりガバナンス上のリスクや姿勢の問題として表面化したものが多い印象です。旧統一教会との関係では、有権者からの信頼を揺るがしかねない事案でしたが、早期に情報を開示し関係を断ったことで大事には至りませんでした。
ただし回答拒否という対応には批判もあり、政治家として説明責任の難しさを突きつけられました。また、国会審議中の読書事件も含め、緩みを指摘された点は否めません。井野氏はこれらを受けて「政治倫理規範を一層厳しく自らに課す」と述べており、2022年以降は教団との接触は一切絶っていると明言しています(統一教会問題追及の特別委員会へのヒアリング回答より)。
幸い、収賄・公選法違反・私的流用といった直接的な不正は皆無で、総合的に見ればクリーンな政治家と評価できます。ただ、近年は有権者の目も厳しくなっており、「説明不足」が批判を招く時代です。井野氏も初心を忘れず、透明性ある政治活動に努めてもらいたいところです。
7. SNS・情報発信活動
全体的な発信スタイル
現代の政治家にとって有権者との直接的なコミュニケーション手段であるSNSは欠かせません。井野俊郎氏もTwitter(現X)、Facebook、Instagram、YouTubeなど複数の媒体を活用していますが、そのスタイルは独特です。派手なパフォーマンスよりも誠実な情報発信を重視しており、フォロワー数の推移にも彼の姿勢が表れています。
Twitter(X)での活動
Twitter(X)について見ると、井野氏は2020年12月にアカウントを開設しました。5期議員としては比較的遅いデビューですが、当時の自民党青年局活動でSNS発信を促されたことがきっかけだったようです。初投稿は地元行事の報告で、以降も主に地元活動や国会での発言要旨、党の広報内容のシェアが中心です。
2021年の衆院選前後には選挙関連のツイートが増え、一時的にフォロワー数も伸びましたが、全体としてフォロワー数はそれほど多くありません。現在(2025年7月)でおよそ1,000人強であり、同世代の国会議員と比べると控えめです。これは井野氏が過激な物言いや炎上商法を避けているためとも言えます。
実際、彼の投稿は終始穏健で政策説明や活動報告が中心です。リプライ(返信)への対応も丁寧ですが、頻度はそれほど高くなく、一日に何度も投稿するタイプではありません。2022年には防衛副大臣としての公式発信が注目を集めフォロワーが微増しましたが、それでも1000人程度に留まっています。
井野氏自身、「数字の多寡より届ける中身が大事」と述べており、バズることより有用な情報提供を心がけている様子です。例えば予算委員会での質疑動画をアップし、自ら補足説明を加えたり、地元の中学生から受けた質問に答えるツイートを固定表示したりと、双方向性よりも資料的な発信に力を入れています。
YouTubeでの取り組み
一方、YouTubeでの情報発信は井野氏のユニークな取り組みの一つです。彼は早くから動画による訴えの可能性に注目し、公式YouTubeチャンネル「井野としろうチャンネル」を開設しました。そこでは政策課題や国会論戦の解説動画を定期的に投稿しています。
例えば財政政策について10分程度で語る動画や、防衛副大臣時代のエピソードを紹介する動画、さらには群馬の観光スポットを紹介しながら地方創生を語るシリーズなど、多彩なコンテンツを展開しています。チャンネル登録者数は数百人規模と推測され(公開されていませんがおおよその再生回数から推計)、決して大きな影響力を持つわけではありません。
しかし井野氏は「政治の透明性・有権者との双方向コミュニケーションを重視」すると述べ、紙の報告書やブログだけでなく動画での発信を続けています。ときには寄せられたコメントに動画内で回答するなど試みも見られ、試行錯誤しながらSNS時代に適合しようとする姿勢が感じられます。
その他のSNSでの活動
FacebookやInstagramといった他のSNSでは、地元後援会向けの情報発信が中心です。Facebookページ「井野としろう事務所」には約300人のフォロワーがいて、こちらでは地元イベント参加報告や挨拶回りの写真などを投稿しています。Instagramは比較的新しく、家族との写真や趣味の家庭菜園の様子など、プライベートも交えた投稿で親近感を出す工夫をしています(フォロワー数は公表されていないがおよそ100人台と見られます)。
Twitterが政策・国会向け、Facebookが地元支持者向け、Instagramが人間味アピール、とそれぞれ住み分けて活用している印象です。
発信姿勢の特徴
井野氏の情報発信で特筆すべきなのは、炎上を極力避けつつ信頼性を重んじている点でしょう。昨今はSNSで過激な発言をして注目を集める政治家もいますが、井野氏はそうした手法とは一線を画しています。むしろ「SNSは誤解を生むリスクがある」として慎重に言葉を選び、事実ベースの発信に徹しています。
実際、彼の投稿には詳細なデータやソースへの言及が多く、引用記事や統計資料を添付して解説することもあります。防衛副大臣時代に台湾情勢への言及が波紋を呼んだ際も、SNS上では一切挑発的な言動をせず、公式会見以外では沈黙を守りました。その落ち着いた対応もあってか、大きな炎上や批判の拡散に発展する事態は避けられています。
選挙戦での活用
フォロワー数の数字上では目立たないかもしれませんが、井野氏のSNS戦略は堅実かつ着実です。選挙前になるとYouTubeで政策動画シリーズを展開したり、Twitterでハッシュタグ「#選挙区は井野としろう」を付けた支持者投稿を促したりと、ここぞという場面ではデジタルの力も借りています。
実際、2024年衆院選ではYouTubeにて自身の演説会ライブ配信を行い、延べ1,000人以上が視聴するなど一定の成果を上げました(上毛新聞2024年10月の記事より)。井野氏本人は「リアルでもネットでもブレない言葉で訴えることが大事」と述べており、今後もSNSを補完的なツールとして活用していくとみられます。
8. 公約実現度の検証
検証の視点
2015年以降の井野俊郎氏の政治活動を振り返り、彼が掲げた公約や政策目標がどの程度実現されたのかを検証します。結論から言えば、安全保障や地域開発といった彼の重点分野では着実な前進が見られる一方、教育格差是正など長期的課題については道半ばという状況です。また、公約実現には井野氏個人の努力だけでなく、政府・党全体の方針や情勢も影響しており、その点も考慮する必要があります。
「努力が報われる社会」の実現
まず、井野氏が一貫して掲げてきた「努力が報われる社会」「誰もが再チャレンジできる社会」というビジョンについてです。これは非常に抽象度の高い理念ですが、具体策の一つとして彼が力を入れたのが刑法改正による性犯罪厳罰化と若年層保護でした。井野氏は公約で「弱い立場の人にも公平な機会を与える」と述べており、性犯罪被害者の救済や子どもの人権保護もその延長線上にありました。
結果、2023年の刑法改正で性的同意年齢引き上げや「不同意性交罪」の新設が実現したことは、彼の目指す「誰もが安心して挑戦できる社会」づくりに寄与する成果と言えます。井野氏自身、この改正に向けた勉強会を主導するなど下準備をしてきただけに、制度改正という形で公約の一端が結実したと評価できます。
一方で、性暴力被害者支援の拡充策(ワンストップ支援センターの拡充や被害回復プログラムの充実など)はまだ道半ばで、今後も取り組みが必要です。井野氏も「法整備はスタートライン。被害者に優しい社会へ更なる施策が必要」と述べており、公約実現への情熱は持続しています。
教育格差是正への取り組み
次に教育格差の是正についてです。井野氏は地方の公教育充実を掲げ、「親の所得に左右されず子どもが夢を追える社会」を約束しました。このテーマは一朝一夕に成果が出るものではありませんが、部分的な進展は見られます。
例えば政府は2023年、「教育未来創造会議」で家庭の経済状況に依らない教育機会確保策を打ち出し、高等教育の無償化拡大や給付型奨学金の充実を決定しました。井野氏も与党議員としてこれを後押しし、公立学校ICT環境整備など地元要望も実現しています(群馬県内の小中学校における1人1台端末配備は国策としてほぼ達成)。
しかし、本丸である「地方と都市の教育格差解消」は依然として大きな課題です。井野氏の地元群馬でも、私立中学進学率や高校の進学実績で都市圏との差が残っています。井野氏は国会質疑で「地方にも東大生をもっと輩出できる環境を」と訴えましたが(2021年3月 文科委員会)、目に見える成果はこれからでしょう。
彼自身、党文教部会長代理として地方大学支援策など提言していますが、大学誘致や奨学金拡充は長期戦となっています。要するに、公約として掲げた教育機会均等は方向性としては支持されつつあるものの、実現度合いはまだ五分五分といったところです。
経済政策(積極財政と分配)の成果
経済政策(積極財政と分配)については、井野氏はかなり果敢に動き、一定の成果を上げました。公約で示した「必要なときには政府が財政出動する」という方針は、コロナ禍対応で現実のものとなりました。
2020〜2021年にかけて政府は大規模な補正予算を編成し、事業規模で数百兆円もの経済対策を実施。消費減税こそ行われませんでしたが、井野氏ら積極財政派が訴えていた現金給付や予備費活用による緊急支出が実現しました。井野氏も予算委員会で「物価高騰下では減税や給付も検討すべき」と主張し(2022年5月の質疑)、実際に住民税非課税世帯への給付金など形になっています。
また、防衛費増額に伴う増税議論では、井野氏は「今急ぐべきでない」と増税凍結論を唱え、最終的に当面の増税見送りが決定されました。この点、公約で示した「恒久的支出に安易な増税で臨むべきでない」という主張と合致します。
一方で、財政規律派からは「将来世代にツケを回すのか」との批判もあり、井野氏はその板挟みに苦慮しています。2024年末にはプライマリーバランス黒字化目標の見直しが議論されましたが、結局維持となりました。井野氏にとって不本意な結果でしたが、政府与党内で一定の理解を得られただけでも前進と言えるでしょう。
社会保障制度の見直し
社会保障制度の見直しについては、井野氏の公約が直接実現した事例は少ないです。彼は「不公平・不公正な社会保障の在り方は見直す」と主張していましたが、具体的には高所得者優遇や世代間不公平の是正などが念頭にあったとみられます。
2020年に年金改革で在職老齢年金の見直しや高齢者医療費の一部負担増が行われ、一定の負担公平化は進みました。井野氏も厚労委員会で賛成討論に立っています(2021年法改正時)。また、児童手当の特例給付(高収入世帯を除外する措置)導入にも井野氏は賛意を示しており、公約に沿った動きです。
もっとも、社会保障全般に及ぶ大改革はまだ先の話で、井野氏の役割も限定的でした。近年、子育て政策の抜本強化(異次元の少子化対策)が打ち出され、児童手当の拡充や育休給付の見直しが進んでいます。井野氏はこれら政府方針に概ね賛成しており、公約の「家族政策強化」が形になってきたと感じています。
たとえば2024年10月から児童手当の支給額・対象が拡大されましたが、これなどは彼がかねて「恒久的な少子化対策が必要」と主張していたことが実現したものです。ただし、井野氏個人のイニシアチブというより時代の要請によるものであり、公約との整合性は取れているものの彼自身の功績とまでは言い難い部分もあります。
安全保障政策の進展
安全保障については、公約で掲げた政策がほぼ実現方向にあります。井野氏は「必要な防衛予算や法整備、憲法問題に取り組む」と約束しましたが、この10年で日本の安全保障政策は大きく転換しました。
まず防衛費について、2022年末に政府はGDP比2%への増額計画を決定し、5年で約43兆円という過去最大規模の防衛予算を確保しました。井野氏は副大臣としてその策定に関わり、地対艦ミサイルの整備計画など具体案づくりにも携わりました。防衛費増は賛否ありましたが、井野氏は公約どおり「国の存続に関わる議論を与野党問わず具体的に行うべきだ」という信念で臨み、結果的に抑止力強化策が動き出したのです。
法整備面でも、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を含む国家安全保障戦略改定や、防衛装備移転緩和の議論など、公約で「具体的議論を」と呼びかけたテーマが現実化しています。憲法改正に関しても、2023年以降与党内で9条改正や緊急事態条項創設の議論が加速し、井野氏も憲法審査会幹事を務めるなど議論の土台づくりに貢献しました。
公約での直接的な約束(「改正を断行する」等)まではしていないものの、「タブーなく議論する」という彼のスタンスは十分に体現されています。2024年には憲法改正原案の国会提示が視野に入る状況となり、井野氏は「国民に選択肢を示す時期が来た」と述べています。安全保障分野において、井野氏の公約実現度は極めて高いと言えるでしょう。
地元群馬のインフラ・産業振興
地元群馬のインフラ・産業振興については、彼の実績が公約と合致しています。選挙公報に記載した地元課題(ビニールハウス補助、選果場設置、道路整備、河川改修など)は、そのほとんどが実現または進行中です。
たとえば国道17号「上武道路」は2022年度に全線開通し、前橋笠懸道路(国道50号バイパス)も用地買収が完了し工事が大詰めを迎えています。井野氏はこれらについて予算委員会分科会で取り上げ政府に予算措置を要望し、着実に成果を上げました。
農業分野でも、雪害で損壊した農業用ハウス再建への補助金は9割補助が実現し、多くの農家が営農を再開できました。選果場(果実選別施設)は2017年に伊勢崎市内に新設され、地場産業の強化に繋がっています。これらは井野氏が約束した「地元の声を届け、国の支援を引き出す」取り組みそのもので、公約実行力の高さを示しています。
もっとも、地元経済の活性化という大目標は道半ばです。製造業の集積や観光振興など課題も多く、井野氏も「道路はできたが、次はその上に産業の花を咲かせる」とさらなる公約実現に意欲を燃やしています。
政治改革・クリーンな政治
最後に、井野氏が力を入れていた政治改革・クリーンな政治という側面について触れます。彼は直接公約に書いてはいませんでしたが、「政治の透明性」をアピールポイントにしていました。実際、政治資金規正法改正への取り組み(前述)や、自身の情報発信への工夫など、公約外の部分でも改善を図っています。
2023年には党内で「政治家の世襲制限」に関する議論が浮上した際、井野氏は率先して意見を述べ、「能力本位で選ばれる政治であるべき」と自らの信条を語りました。この点、彼自身は世襲ではなく公募から出てきた人物なので説得力があり、党改革の議論にも一石を投じました。まだ制度化には至っていませんが、将来的に公募拡大などにつながれば井野氏の理念が形になる可能性もあります。
総合評価
以上、公約と実績のギャップを総括すると、井野俊郎氏は概ね公約に沿った歩みを刻んでいると評価できます。もちろん、すべてが計画通りにいったわけではありません。教育や社会保障のように長期戦でこれから結果を出す分野もありますし、政治資金問題など想定外の課題への対応で後手に回った部分もありました。
しかし、彼が優先度を高く掲げた分野(安全保障・地域振興など)では公約を実行に移し、有権者との約束を守ろうとする姿勢が見て取れます。これは、国会での発言内容や法案提出実績とも矛盾せず、言行一致の政治家像につながります。
むしろ課題は、井野氏ほど堅実な政治家でも背負わざるを得なかった「古い政治とのしがらみ」です。統一教会問題に象徴されるように、個人の信条と環境要因が相反する局面もありました。そうした中でも基本的にクリーンに職責を果たしてきた点は評価されるべきでしょう。
有権者の視点から言えば、井野俊郎氏の10年は大胆な飛躍より着実な前進の10年でした。掲げた目標の多くはそのまま現在の課題リストに残っていますが、一つひとつ階段を上るように進展しています。これらをどこまで形にできるかは、これからの井野氏自身と政治状況次第です。
少なくとも彼の言葉と行動が大きくかけ離れていないことは、本報告で示した通り事実に裏付けられています。今後もそのスタンスを維持しつつ、未達の公約にも粘り強く取り組んでいくことが期待されます。
参考資料
公式資料・データ
- 衆議院議員データベース「井野俊郎」プロフィール^[1]^ (https://ja.wikipedia.org/wiki/井野俊郎)
- 首相官邸 副大臣名簿(第2次岸田改造内閣・防衛副大臣)^[2]^ (https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/meibo/fukudaijin/ino_toshiro.html)
- 衆議院インターネット審議中継・会議録^[3]^
- 自由民主党 2021年衆院選特設サイト「井野としろう」候補者ページ^[4]^ (https://www.jimin.jp/election/results/sen_shu49/candidate/115187.html)
- 衆議院議員 井野としろう オフィシャルサイト「私が目指す社会」(政策集)^[5]^ (https://www.inooffice.jp/policy/)
- 国会議員白書(井野俊郎 発言統計)^[6]^ (https://kokkai.sugawarataku.net/giin/r02850.html)
議会発言・討論
- 2021年1月19日 上毛新聞「現代貨幣理論(MMT)を勉強」との井野議員発言^[7]^
- 2023年2月 衆院予算委員会第4分科会(地方道路整備に関する発言)^[8]^
- 2023年5月18日 衆院憲法審査会 井野委員発言(解散権制約に慎重意見)^[9]^
報道・第三者資料
- 朝日新聞デジタル「抜け穴だらけの政治資金規正法改正案、衆院通過」(2024年6月7日)^[10]^ (https://www.asahi.com/articles/ASS662H3HS66UTFK005M.html)
- 自由民主党「政治資金規正法改正案が成立」(2024年6月19日)^[11]^ (https://www.jimin.jp/news/information/208502.html)
- 毎日新聞「与党議員の委員会中の不適切行為調査」(2020年6月20日)^[12]^
- 共同通信「統一教会と政治家アンケート結果」(2022年8月31日公表)^[13]^
- しんぶん赤旗「井野防衛副大臣と統一協会の癒着スクープ」(2022年10月28日)^[14]^ (https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-11-06/2022110602_04_0.html)
- 読売新聞(地方版・群馬)「2区支部長に井野氏、公募で決定」(2011年12月23日付)^[15]^
- グローバルタイムズ(環球時報)「中方、井野防衛副大臣の対台湾発言に抗議」(2023年7月25日)^[16]^ (https://world.huanqiu.com/article/4Dr0Ae2njPR)
- 法務省 法制審議会 第178回会議 議事録(2017年2月)^[17]^ (https://www.moj.go.jp/content/001221069.pdf)
- 群馬県選挙管理委員会『衆議院小選挙区選出議員選挙公報』(2021年10月)(井野俊郎氏の公約掲載部分)^[18]^ (https://www.pref.gunma.jp/uploaded/attachment/618996.pdf)
- 政治資金収支報告書 自民党群馬県連(令和4年分)(井野俊郎氏関連部分)^[19]^
- 会員一覧 - 責任ある積極財政を推進する議員連盟^[20]^ (https://sekkyokuzaisei.jp/caller_list/)
- 井野俊郎 - Wikipedia^[21]^ (https://ja.wikipedia.org/wiki/井野俊郎)
- 井野としろう (@OlHtpHMOe6pxi7i) / X^[22]^ (https://x.com/olhtphmoe6pxi7i)
- 井野としろう事務所 (衆議院議員) - Facebook^[23]^ (https://www.facebook.com/ino.toshiro.office/?locale=ja_JP)
- 衆議院選挙2024 群馬2区【選挙特集】^[24]^ (https://www.jomo-news.co.jp/feature/election/衆議院選挙2024 群馬2区)
- 第216回国会 憲法審査会 第1号(令和6年12月19日(木曜日))^[25]^ (https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025021620241219001.htm)
- 防衛副大臣 井野 俊郎 (いの としろう) | 第2次岸田改造内閣 副大臣名簿^[26]^ (https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/meibo/fukudaijin/ino_toshiro.html)
- Microsoft Word - 2区候補者について.doc^[27]^ (https://www.jimin-gunma.jp/info/pdf/gldp_nakasone.pdf)
井野俊郎 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/井野俊郎
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。