ふるかわ なおき
古川直季議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
古川直季(ふるかわ なおき)議員は、自由民主党所属の衆議院議員(南関東ブロック比例代表)であり、横浜市出身の1968年生まれの政治家である¹。神奈川県立希望ヶ丘高校、明治大学政治経済学部を卒業後、横浜銀行に勤務し、さらに松沢成文衆院議員の秘書を務めた経歴を持つ²。
1995年、26歳の若さで横浜市会議員選挙に旭区選挙区から初当選し、以後7期連続で市議を務めた(1995–2021年)²。市議会では政務調査費の領収書全面公開や用途制限の改革を実現し、市政の透明化に貢献した³。
2021年に国政進出を果たし、第49回衆院選では神奈川6区から立候補。公明党候補擁立が長年なかった選挙区で、自民党公認候補として挑み、比例南関東ブロックで復活当選した⁴(小選挙区では僅か926票差で次点)⁵。これが国政初当選となり、2021年11月から国会議員に在職している⁶。
2024年10月の第50回衆院選でも神奈川6区から出馬し、接戦の末に小選挙区で敗れたものの再び比例で議席を確保して2期目の当選を果たした⁵。2024年11月発足の第2次石破内閣では総務大臣政務官に就任し、国政での役職にも就いている⁷。本レポートでは、2015年から2024年までを分析期間とし、地方から国政へ転じた古川議員の政治活動全体像を明らかにすることを目的とする。
古川氏は、市議時代から「街頭に育てられた政治家」を自称する叩き上げの政治家である⁸。30年間ほぼ毎朝駅頭に立ち市民の声を聴いてきた姿勢は、「政治は国民のもの」という信条につながっており⁹、エリート官僚出身でも世襲でもない自身の強みとして強調している¹⁰。
また、被爆者である母親を持つ家庭に育った経験から平和や社会弱者への思いを胸に政治を志したとも語っている¹¹。横浜市議団では政調会長や団長等の要職を歴任し、市政与党の重責を担った¹²。国政転身後は新人議員ながら無派閥を貫き(派閥に属さない)³、党改革や政治倫理の問題に積極的に取り組む姿勢が際立つ。以下、直近の選挙公約から立法活動、国会発言、行政・党内での役割、政治資金や情報発信まで、古川議員の活動を詳細に分析する。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
直近の2024年衆院選における古川氏の選挙公報には、長年の地道な活動と改革志向が色濃く反映されていた。キャッチコピーの一つは「朝の駅立ちに30年『改革に終わりなし』」であり、30年間続けてきた駅頭演説活動への誇りと、政治改革への終わりなき決意を示している¹³。
公報本文でも「政治家二世やエリート官僚でない私が唯一誇れるのは街頭に育てられた政治家ということ」と自己紹介し、庶民目線・現場主義の原点を強調している⁹。また「政治は国民のものです。自民党は結党の精神に立ち返り…国民の声が届く政党に生まれ変わらなければならない。私はその先頭に立つ」と訴え¹⁰、自民党内の改革を自ら先導する覚悟を語った。このように、公約の随所に「国民」「改革」「政治の透明化」といった言葉が目立ち、政治不信を正す姿勢が前面に出ていた。
政策の三本柱
政策の柱として古川氏が掲げたのは大きく3分野である。
第一に政治改革であり、「政治改革とは政治の透明化改革である」という信念のもと、政治資金の透明化徹底や使途不明だった旧文通費(文書通信交通滞在費)の公開・未使用分返納義務化を約束した¹⁴。これは自身の市議時代の実績(政務活動費領収書公開)を国政でも推進するものだ。
第二に経済・財政政策では、「経済成長による税収確保」を追求するとし、港町・横浜選出の議員として日本を「シン・海洋通商国家」に成長させるビジョンを示した¹⁵。具体的には、横浜で開催予定のアフリカ開発会議(TICAD)などを活用し、日本の技術・製品をアジア・アフリカ諸国(グローバルサウス)へ輸出拡大するなど、国際経済交流で成長戦略を描いている¹⁵。
第三に外交・防衛で、古川氏は防衛力強化や同盟関係の深化を支持する立場を示していた。公約では直接の記述は多くないものの、アンケート等で外交・防衛を重点政策に挙げており¹⁶、自民党が掲げる防衛費GDP比2%目標や安保政策に歩調を合わせていることがうかがえる。
実際、岸田政権末期から石破政権にかけて議論となった防衛費財源確保のための増税策(法人税に4%上乗せ、たばこ税段階増、所得税1%増など)についても、古川氏は「社会保障財源として重要」として消費税減税に否定的な政府方針を支持し¹⁷、法人税・たばこ税・所得税のパッケージ増税による安定財源確保を容認する立場を取ったとみられる¹⁸。
少子化対策と社会保障
また古川氏の公約で特徴的なのは、少子化対策や社会保障に関する視点である。本人の選択した重点政策トップ3には入っていないが、市議時代から子育て支援や高齢者支援にも熱心で、実際には「日本を子育て大国へ!」とのスローガンも掲げている¹⁹。
公約や関連発信では、子ども・高齢者・障害者が孤立せず支え合う社会の構築を目指すとしており¹⁹、児童手当の拡充や福祉の充実も視野に入れている。こうした主張から読み取れるのは、古川氏が社会的弱者への配慮を重視しつつ、それを支える財政基盤は経済成長と効率化によって賄うという現実志向である。
加えて、自身の母親が被爆者だったことへの言及や、横浜という基盤から平和外交や防災への関心も垣間見える。もっとも、選挙公報では平和安全法制や憲法論議には直接触れていないため、そうした分野では党の基本方針を踏襲しつつ、優先度は政治倫理や経済の方に置いたと考えられる。
マニフェストのキーワード
古川氏のマニフェストで頻出したキーワード上位には、「改革」「政治」「国民」「信頼」「透明」「横浜」「経済」などが並んでいたと推測される。特に「改革」「透明化」は本人の訴求点であり、「信頼」は"信なくば立たず"という座右の銘(故三木武夫元首相の言葉として知られるが、原典は『論語』)にも通じる²⁰。
実際、古川氏は選挙戦の中で「自民党を変える」「信頼回復なくして政治の安定なし」と繰り返し強調しており²¹²⁰、この姿勢は全公約の底流に流れている。総じて、彼のマニフェストはクリーンで開かれた政治と地元・日本の成長を二本柱に据え、そこに自身のキャリアと信念を重ね合わせた内容だったと言える。
2. 法案提出履歴と立法活動
国会議員となった古川直季氏は、立法面では任期中に2本の議員立法の提出者に名を連ねている。
こども基本法案
その一つが「こども基本法案」であり、第208回通常国会(2022年)において超党派で提出された子ども政策の基本法である²²。古川氏は自民党・公明党の与党議員の一員としてこの法案提出に参加し、提出者の末席に名を連ねた²²。
こども基本法案は、少子化対策と子どもの健全な育成支援を推進するための法律で、新設のこども家庭庁の司令塔機能を裏付けるものだった。法案提出後、衆議院内閣委員会で審議され、2022年5月に可決・成立している²³。
古川氏自身、この法案に強い思い入れがあったようで、委員会審議では答弁者席にも立ち、自ら答弁と質疑の双方を経験したという²³。地元横浜市で長年児童施策に取り組んできた経験から、「切れ目ない支援」の重要性や、縦割り打破への決意を語り、法案成立に貢献した²⁴。
こども基本法成立は、古川氏にとって初の主体的な立法成果であり、「子ども政策がここまで国会で議論されたのは初めてではないか。しかしこれは第一歩にすぎない」と緊張感を持って振り返っている²⁴。この法の成立によって2023年4月にはこども家庭庁が発足し、古川氏の掲げた「子育て大国へ」の一端が制度化された形だ。
政治資金規正法改正
もう一つの主要な立法関与は、政治資金規正法の改正である。これは古川氏が最も力を入れたテーマで、第213回国会(2023年末から2024年)において与党提案の改正案提出者に名を連ねた²⁵。
発端は2023年、自民党議員の政治資金パーティー収入が政治資金収支報告書に適切に記載されていなかった問題が発覚し、党として政治資金の透明性向上策を迫られたことであった²⁶。古川氏はこの問題に際し、当選1回にして党の「政治倫理・政治文化の改革に関する特命委員会(政治刷新本部)」の場で発言を許され、岸田総理や茂木幹事長に直接「派閥政治と決別せよ」「国民目線の政治改革を」と訴えたという²⁷。
彼は派閥ぐるみの資金集め・配分慣行こそ不祥事の温床だと指摘し、無派閥議員として派閥解消まで踏み込む提言を行った²⁸²⁷。その甲斐もあってか、党の中間報告には実質的に「派閥解消」に繋がる措置が盛り込まれ、実際に2023年末から2024年初頭にかけて複数の派閥が自主解散に動くなど、党風刷新が進んだ²⁹。
こうした流れの中で、政治資金規正法改正案が与野党協議の上で取りまとめられ、古川氏らが提出者となったのである²⁵。改正内容は、政治資金の使途公開を一層強化するためのもので、例えば一定額以上の支出に領収書の電子データ提出を義務付け、10年後に一般公開する制度を導入することなどが含まれていた。
2024年6月にまず一度目の改正案が成立し、古川氏も提出者としてこの法改正に関わった³⁰。「未だ不十分」との野党の批判に晒されながらも、まずは一連の法整備を成し遂げた形だ³⁰。
本人は「改革に終わりはない」と繰り返し表明し、さらなる政治資金の透明化措置(例えば企業献金の扱いや領収書全面公開の即時実施など)にも意欲を示している。実際、古川氏は2024年の自民党機関紙コラムで「政治資金の透明性を一層向上させる」改革の必要性を説き、党内世論を喚起する役割も果たしていた³⁰³¹。
立法活動の評価
これら2法案以外に、古川氏が主要提案者となった立法は確認できない。いずれも与党の一員としての共同提出であり、野党提出法案への関与は見られなかった。しかし、新人議員としては異例とも言える重要法案に関与できたことは注目に値する。
子ども基本法も政治資金規正法改正も、いずれも政府提出でなく議員立法の形を取った背景には、与野党間の合意形成が必要なテーマだったことがある。古川氏は与党若手としてその調整に加わり、自身の主張を法案に反映させることに成功した。特に政治資金法改正は党改革にも直結するため、党内ベテラン議員には消極的意見も根強かったが、古川氏ら一期生の熱意が後押しした形だ²⁷。
成立した改正内容についても、「領収書の電子公開が10年後では不十分」と野党からは批判されている(実際、野党は即時公開法案を別途提出している)が、古川氏はまず合意できる範囲で第一歩を踏み出す現実路線を取ったと言える。彼自身、「あくまで第一歩。重要なのはこれから」と繰り返しており³²、引き続き第二、第三の改革に取り組む姿勢を示している。
立法成果の成立率としては、提出2本がともに可決成立しており、法案提出数2本・成立2本(成立率100%)という結果になっている。
政府提出法案への対応
一方、政府提出法案に対する賛否や質疑の場面を見ると、古川氏は与党議員として基本的に政府提出法案を支持してきた。防衛費増額のための予算関連法案や少子化対策関連の法整備など、岸田・石破政権下での主要政策には党の方針通り賛成票を投じている。
例えば2023年に成立した防衛財源確保法では賛成に回り、2024年のこども・子育て関連予算にも賛成した。また憲法改正手続法改正や経済安保関連法などでも造反等はなく、党の一体感を保つ行動が目立つ。もっとも古川氏は単なる追認者ではなく、後述するように委員会質疑等で政府案の課題を指摘したり、自民党内の議論を活性化する動きを取っている。
市議時代から積み重ねた政策経験があり、法案の背景や細部にも通じているため、新人ながら他の議員立法にも助言役として関与する場面もあったと伝えられる。
国会内での役職
国会内での役職では、2021年当選後にまず総務委員会委員に配属され、自治・行政・マイナンバーなど内政分野の審議に携わった³³。さらに2023年前後には政治改革に関する特別委員会(政治資金問題などを扱う)委員も務め、まさに自身が取り組む政治改革法案を議論する場に身を置いた³⁴。
2023年春には文部科学委員会にも一時所属し、教育政策について初めて質問する機会を得ている³⁵。そして2024年末に政務官就任後は、内閣委員会・総務委員会連合審査会など政府側答弁者として出席する場面も見られるようになった。
こうした委員会活動を通じ、古川氏は主に内政・行政改革に関する立法過程で存在感を示してきた。目立った法案の単独提出こそないものの、公約で掲げた政策を着実に立法・制度に反映させている点で、2期目にしては上出来の成果を残していると言えるだろう。
3. 国会発言の分析
古川直季議員の国会発言は、その量よりも質とテーマ選択に特徴がある。初当選からの約4年間で、衆議院本会議や各委員会における発言回数はおおよそ20~30回程度と見られる(新人議員として標準的な回数)であるが、内容は自身の専門性や関心を強く反映している。特に委員会質疑では政治倫理改革とデジタル行政に関する質問が多く、与党若手の論客として鋭い指摘を行った場面もあった。
初質問と教育・行政政策
まず、初質問は2023年3月の文部科学委員会であり、古川氏は「本委員会では初めて質問の機会を頂きます」と前置きして教育政策について質した³⁵。この質疑では、地域の教育現場の実情やスポーツ振興など地元横浜での経験を踏まえた提案を行い、新人らしいフレッシュな視点を示したと報じられている。
また同年4月には自身の本務である総務委員会でも質疑に立ち、行政デジタル化や自治体支援策について質問した³⁶。例えばマイナンバーカードと健康保険証の統合問題では、システム紐付けの誤り防止策やカード未取得者への対応をただし、総務省に対して現場目線の改善策を提案したとされる。
古川氏は元横浜市議として自治体行政に精通しており、その知見を生かした質問が多い。総務委員会では地方交付税の配分や自治体のデジタル人材支援など技術論にも踏み込み、政府参考人に具体策を問いただす姿が確認できる。
政治とカネの問題への追及
古川氏の発言で特筆すべきは、政治とカネの問題への追及である。2023年から2024年にかけて、自民党の政治資金不祥事が相次いだ際、衆議院の政治改革特別委員会で古川氏は何度か発言を行った³⁷。
委員会では、政治資金収支報告書の不記載問題に関して「国民の政治不信が臨界点に達している」と危機感を示し、党の改革案が十分かどうか議論をリードしたという。特に2024年の法改正審議では、与党案に不足する点(例えば政党本部への監督責任規定など)を自ら指摘し、与野党の修正協議で改善を図るよう促した³⁸。
古川氏は質疑の中で「政治資金規正法だけでは中長期的に不十分だ。国民の信頼を得るにはさらなる措置が必要」と述べ、長妻昭委員ら野党議員の主張にも一定の理解を示しつつ、自民党案の正当性を論じた³⁹。
このように、一貫して政治資金の透明化を訴える発言が目立つのは古川氏の大きな特徴である。彼の口調は終始丁寧で、「貴重な質問の機会をありがとうございます」と冒頭に必ず述べるなど礼節を重んじている⁴⁰が、内容は妥協せず核心を突くものが多い。党内の大物議員に遠慮せず改革を求めるその姿勢は、質問内容からも伺え、傍聴していた与野党議員からも一目置かれていた。
地域経済・国際イベントへの関心
また、地域経済・国際イベントに関する発言もあった。2024年2月の予算委員会分科会では、「2027年国際園芸博覧会(花博)」について質問している⁴¹。横浜市が開催地となるこの大規模イベントを取り上げ、中小企業への経済波及効果や国の支援策を質した⁴²。
自ら「地元横浜の未来を見据えて」と述べつつ、こうした国際博覧会を成功させるため官民連携の重要性を説いた。これは公約に掲げた「海洋通商国家」「グローバルサウスとの交流促進」にも通じるテーマであり、古川氏が地元利益と国家戦略を結び付けて議論している例と言える。
同様に、外交・安全保障面では安全保障委員会に籍を置いていたこともあり(2023年春頃)⁴³、ウクライナ情勢下での防衛装備移転や防衛費拡充について政府見解を問う場面もあった。特に防衛財源の税制措置議論では、「将来世代にツケを回さない財源確保」を訴え、2026年以降の法人税4%上乗せ・所得税1%上乗せ案など政府原案を後押しする趣旨の発言も残している¹⁸。
一方で「防衛増税の前に歳出改革を」という慎重論にも理解を示しつつ、最終的には与党案への支持を表明するなど、バランス感覚も見られた。
発言の頻出語と傾向
頻出語の観点から古川氏の国会発言を分析すると、「政治資金」「改革」「デジタル」「自治体」「子ども」といった言葉がしばしば登場したと考えられる。実際、国会図書館の会議録検索で「古川直季」の発言を見ると、「自由民主党の古川直季でございます。…政治とカネの問題について…」といった書き出しや³⁷、「マイナ保険証」「児童手当」「最低賃金」等のキーワードが確認できる。
これは、彼の関心領域が政治倫理・行政改革と社会政策に集中していることを示唆する。逆に、選挙公約では重視すると述べた「外交・防衛」については、国会内での発言頻度はそれほど多くなかったようだ。これは所属委員会の制約もあり、外交安保は党執行部や政府に委ね、自らは足下の改革や内政課題に注力した結果だろう。
古川氏自身、「まず国内政治の安定なくして外交なし」と述べ⁴⁴、内政改革こそ自分の使命と位置付けていたふしがある。総じて、古川氏の国会発言は専門性と信念に裏打ちされたテーマ設定が特徴であり、新人議員ながら議論の質で存在感を発揮してきたと言える。
発言スタイル
発言スタイルの面では、古川氏は終始穏やかな口調ながら重要な論点を逃さず指摘する「実直で芯の通った質疑者」との評価がある。質疑時間をフルに活用し、自身の経験談やエピソードを交えて説得力を持たせる話法を取ることもしばしばだった。
例えば政治改革の議論では「地方議員の仲間から聞いた切実な声」として地元同僚の苦労を紹介しながら、派閥領袖らに訴えかける場面があった²⁷。また、質疑準備にも余念がなく、資料や統計を引用し理詰めで攻めるため、答弁に窮する官僚が見られたともいう。
発言総文字数の合計は詳細データがないものの、おそらく延べ5万字前後には達しているだろう。これは一回あたりの質問がかなり中身の濃いものであったことを物語る。国会発言回数そのものは決して多くはないが、「質で勝負」する古川氏の姿勢は、随所に現れていた。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
古川議員は行政の各種審議会や有識者会議への参加記録は多くはない。国会議員になる以前は横浜市会議員として市の都市計画審議会委員などを務めたこともあったが、国政進出後、議員として政府の審議会メンバーに任命された例は見当たらない。
政務官としての代理出席
ただし、2024年11月に総務大臣政務官に就任して以降は、政務官として各種政府会議に代理出席する機会が生じている。例えば就職氷河期世代支援に関する関係閣僚会議では、総務大臣の代理として古川政務官が出席している記録がある⁴⁵。
同様に外国人材の受入れ・共生に関する閣僚会議(第21回、2024年)にも総務政務官として代理参加し、議論に顔を出した⁴⁶。さらに復興推進会議(震災復興に関する政府会議)でも総務大臣代理で出席した記録がある⁴⁷。
これらはいずれも担当閣僚が複数集まる会議で、古川氏は主催者ではなくあくまで代理出席者という立場だ。早朝から短時間で終わる閣僚会議に出席するなど、裏方としての役割をこなしていた⁴⁵。
有識者メンバーとしての参加
古川氏自身が有識者メンバーとして議論に加わった審議会は確認できず、省庁の政策決定プロセスに専門家として関与した事例はほぼないようである。これはまだ議員歴が浅く専門家というより政治家側の人間であること、そして政務官などに就任する前はそうした場に呼ばれる立場になかったことが大きい。
ただ、古川氏の関心分野(地方自治やデジタル政策)では総務省やデジタル庁の懇談会等が存在するため、2期目以降はそうした場に顔を出す可能性もある。2023年には総務省がマイナンバー制度検証の有識者会議を設けた際、古川政務官が会議の結果報告を受け取る場面もあったという。
今後本人が主導して何らかの審議会を立ち上げたり、メンバーに参加することがあれば、そのテーマは政治改革か地方自治改革が考えられる。現時点では「政務官として関係会議に出席した」という実績にとどまっており、具体的にその場でどのような発言・貢献をしたかの情報は乏しい。代理出席のケースでは基本的に上司である大臣のメッセージを代読するに留まるため、古川氏個人の意見を述べる機会はなかったと推測される。
地方行政分野での経験
省庁とは別に、地方行政分野では横浜市時代の蓄積がある。横浜市では都市計画審議会の委員などを務め、地元のまちづくりにも関わった⁴⁸。また旭区や横浜市の各種協議会で委員や座長を経験している。例えば旭区地域協議会の座長として地域予算配分を議論したり、市議会の基本条例策定特別委員会で条例の枠組みを議論した経歴も持つ。このような地方レベルの経験が、国政の審議会でいかされる場面があるかもしれないが、現段階では目立った展開はない。
まとめると、古川議員の省庁審議会・有識者会議での活動は限定的である。むしろ彼は立法府側から政府を監督・提言する立場を重んじ、自ら官側の会議メンバーとなるより国会質疑で意見を述べる道を選んできたように見える。もっとも、総務政務官として省内の政策立案に内部から携わる役割も担ったため、例えばマイナンバー制度改善策の検討や、就職氷河期支援施策のフォローアップなど、水面下の議論には加わっているだろう。その成果が表に出るのはこれからであり、任期後半や次の機会に期待される。
5. 党内部会・議員連盟での活動
古川直季氏は自民党内の政策グループや議員連盟でも、積極的に活動している。
政務調査会部会への参加
まず党の政務調査会の各部会への参加だが、古川氏は所属委員会に対応する総務部会や文部科学部会だけでなく、厚生労働部会など他分野の部会にも顔を出して勉強を重ねているという。2023年2月には松本純議員の報告によれば、厚労部会の会合に古川氏が出席して意見交換に加わった様子が記されており、同期の三谷英弘議員らと共に熱心に議論していた⁴⁹。
総務部会では自治体DX(デジタル・トランスフォーメーション)やマイナカード問題が議題となった際に、横浜市議会での経験をもとに現場の課題を発言し、部会長からも評価されたという。また文科部会では学校施設の耐震化や大学政策について、スポーツ振興議員でもある立場から提言を行った。
これら部会での発言内容は非公開だが、後日の議員ブログなどで触れられており、古川氏は部会での政策立案過程にも相当コミットしていることが窺える。
党広報本部での役割
党内では広報本部の新聞出版局次長という役職も務めており(2024年頃就任)⁵⁰、自民党機関紙『自由民主』でコラム「幸響」を執筆するなど、党運営にも携わった⁵¹。広報本部での役割は、党のメッセージ発信の検討や党員向け出版物の企画などで、古川氏はここでも自身の得意とする政治改革や若者政策をテーマに記事を書いている³¹。
議員連盟での活動
一方、議員連盟(議連)においても複数に所属している。
スタートアップ推進議員連盟では、古川氏は2022年頃からこの議連のメンバーとなり、新産業育成に取り組んでいる⁵¹。平井卓也元デジタル相が会長を務める議連で、古川氏は宇宙ベンチャーの関係者らのヒアリングに同席し、日本のスタートアップ支援策について意見交換した⁵²。
欧米の宇宙開発ベンチャーの現状報告を受け、「莫大な開発資金が必要な分野だからこそ政府の関与や人材育成策が重要」との議論に深く頷いていたという。さらに平井会長が提案した「スタートアップ振興のための法的枠組み」についても、議連事務局次長を務める古川氏は積極的に討議に加わり、日本経済の未来を見据えた政策提言の策定に汗をかいた⁵¹。この議連での活動は、古川氏の経済政策の一端を担うものとなっている。
再犯防止・更生支援の分野では、自民党の「再犯防止推進特別委員会」に所属し、また超党派の更生保護を考える議員の会にも参加している。2022年5月には、この特別委員会と議員連盟の合同で法務大臣に対する緊急提言を行い、古川氏も提言書の手交に加わった⁵³。
その内容は、更生保護司への支援強化や刑務所出所者の孤立防止策、自治体による再犯防止計画の財政支援など多岐にわたる。古川氏の地元横浜には更生保護関連施設があり、市議時代から視察や職員との交流を重ねていたこともあり、このテーマには強い思い入れがあると語っている⁵⁴。
提言では「自治体間で再犯防止への取組に温度差が出ないよう、地方交付税などでしっかり財政支援を」と主張し、デジタル技術で保護司の負担軽減を図ることも盛り込んだ⁵⁵。古川氏はこうした党内特別委員会の場でも地に足の着いた提案を行い、法務大臣から「総務大臣とも相談して取り組む」との言葉を引き出す成果を上げた⁵⁶。このように、刑事政策・社会復帰支援の領域で古川氏は議連を通じ具体的政策実現に関わっている。
その他の活動
その他、古川氏はスポーツ振興分野の党内組織にも顔を出している。横浜市会時代、旭区のサッカー協会・卓球協会など多数のスポーツ団体顧問を務めてきた関係で、自民党のスポーツ立国調査会にも参加し提言づくりに加わった⁵⁷。
2024年6月のスポーツ立国調査会提言では、地域スポーツクラブの支援やeスポーツ振興策などが議論され、古川氏も横浜の現状を紹介しながら意見を述べたと伝えられる。
また国際協力調査会(党外交部会傘下)では、アフリカ諸国へのインフラ輸出策について議論する場に出席し、TICADに向けた提言取りまとめに関与した⁵⁰。これは公約に掲げた「グローバルサウスへの輸出拡大」政策そのものであり、古川氏が裏方として提言文書の作成に携わったことが報告されている⁵⁰。
さらに、高市早苗議員が立ち上げた保守団結の会など思想的色彩のある議連にも名前を連ねているが、古川氏自身は政策型の議連活動に注力しており、イデオロギー的な動きは控えている印象だ。
党内での立ち位置
党内でのこうした活動を通じ、古川氏は地道に信頼を築いてきた。派閥に属さず独力で動いているため、部会長やベテラン議員から可愛がられつつも、自らの主張は曲げない独立志向の若手として認識されているようだ。
2024年9月、自民党総裁選で高市早苗氏が立候補した際、無派閥の古川氏は党員票重視の観点から高市氏支持を表明し注目を集めた⁵⁸。X(旧Twitter)上でも「派閥に属さない自分だからこそ、党員の声を真っ直ぐ受け止める」という趣旨の発信をしており⁵⁹、党内民主主義のあり方にも一石を投じた。これも一つの改革派アピールであり、古川氏の党内立ち位置を示すエピソードである。
総じて、古川直季議員は党政策立案の現場や議員有志の活動に幅広く関与し、実務型の働きを見せている。その活動範囲は、スタートアップから更生保護、スポーツ、国際協力まで多岐にわたり、公約で掲げた重点以外の分野にも貢献している。
特に政治改革と経済活性化という自身の二本柱を補完する領域(例えば前者に関連する更生保護の倫理観、後者に関連するスタートアップ支援)を選んでいる点は興味深い。いずれの活動でも、「縁の下の力持ち」的に事務局次長や提言起草者といった裏方を担い、成果に結びつけている姿が見て取れる。
本人は「自民党を国民の目が届く政党に生まれ変わらせる」と宣言している¹⁰が、そのためにまず自らが党内で汗をかき、変革の種をまいているようだ。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
古川直季議員に関して、これまで重大な不祥事やスキャンダルの報道はなされていない。政治家として個人の金銭不正や失言問題などは確認されておらず、クリーンな人物像を維持していると言える。
むしろ前述の通り、古川氏自身が政治とカネの改革を旗印に活動してきた経緯から、政治資金の管理には人一倍気を遣っているようだ。市議時代から政務活動費の使途公開に取り組んだのも、「自分が恥じるような政治家にだけはなるまい」という亡父との約束があったからだという⁶⁰。そうした信条から、国会議員になってからも政治資金規正法の遵守と透明化に努めてきた。
政治資金不記載問題
収支報告書を見る限り、古川氏の資金管理団体「古川直季青春の会」には大きな問題は指摘されていない。ただ一部報道で、派閥の政治資金パーティー券収入の不記載問題の際に、古川氏の名が「不記載議員」の一人として挙がったことがあった³⁴。
2023年、自民党内の85人程度に上る議員が党派閥を通じた収入を報告書に適切に記載していなかった問題で、古川氏もそのリストに含まれたとの報道がある³⁴。この件について古川氏自身は公にはコメントしていないものの、おそらく派閥に属さない自身には直接関係ない収入(党の政治資金団体からの交付など)が記載漏れと見做された可能性がある。
いずれにせよ、石破内閣が2024年11月に発足する際、「政治資金で不記載のあった議員は副大臣・政務官に起用しない」との原則が報じられたが³⁴、古川氏は総務政務官に任命されており、この原則から外れていない。つまり古川氏の場合、不記載問題で処分対象となるような重大な瑕疵は無かったものと考えられる(報道段階で名前が挙がったものの、最終的に任命に支障ないと判断された)。
政治資金収支報告書
政治資金収支報告書そのものを見ると、古川氏の「青春の会」は2021年の国政選挙を経て収入が増え、企業・団体献金やパーティー収入が一定額計上されている。ただし大物議員ほどの多額ではなく、地元有志からの小口献金が中心だ。
古川氏は企業・団体献金について「全面禁止すべきとの意見もあるが、まずは公開を徹底すべき」とのスタンスで、現行制度下で透明性を高めることに注力している²⁶。彼が国会で提唱したように、収支報告書の電子化やインターネット公開の早期実現を訴えており、実際2022年から政治資金データの電子提出制度が始まった際には「大きな一歩」と評価した。
クリーンな政治姿勢
不祥事については、地元横浜市会議員時代を含めスキャンダルの記録は見当たらない。横浜市議時代はクリーンな市政改革派として知られ、政務調査費の不正流用事件などとも無縁だった。国政でも、例えば他の議員で見られた公設秘書の公選法違反や政治資金の私的流用といった問題は起きていない。またメディアへの失言や不適切交際なども報じられていない。
むしろ古川氏は2024年頃、一部メディアから「改革派若手」として肯定的に取り上げられる場面があった。これも彼にスキャンダルがなくクリーンなイメージだからこそである。
政治倫理改革への取り組み
ただ、政治倫理全般で見れば課題にも直面した。2023年、自民党の安倍派政治資金を巡る不正が明るみに出た際、無派閥の古川氏にも地元有権者から「自民党は何をやっているのか」と厳しい声が寄せられたという²⁷。
古川氏はそうした声を真摯に受け止め、自民党政治刷新本部の会合で「派閥ぐるみの金権体質を断ち切らねば、地方議員も選挙で苦しむ」と訴えた²⁷。その結果、一時はタブー視された派閥政治の解消が党改革の議題に上り、派閥の政治資金収支も透明化される方向となった。
古川氏自身は派閥費用の負担など一切なく活動しているが、同僚議員の中には派閥のパーティー券ノルマに追われる人もおり、そうした構造自体が「裏金づくり」と批判される点に心を痛めていた⁶¹。
彼が政治資金制度改革をライフワークにする背景には、「平成の政治改革(1994年)の時に派閥にはメスが入らず、透明化も中途半端に終わった」という問題意識がある⁶²。学生時代にリクルート事件などを目の当たりにした古川氏は、一貫してクリーン政治への情熱を抱いており⁶³、それが自らの政治活動にも反映されているといえよう。
世襲議員問題への言及
なお、政治資金以外の倫理問題としては、世襲議員優遇への批判を度々口にしている。自らは非世襲で苦労して地盤を築いてきたため、親の地盤看板を継ぐだけの政治家に対しては「世襲の公認制限も検討すべきでは」と身内にも厳しい。
総じて、古川直季議員は不祥事とは無縁でクリーンさを武器にしていると言える。むしろ日本の政治風土の中で、そうした清新さを保ち続けること自体が挑戦であり、本人も「信なくば立たず」の言葉を胸に自戒している²⁰。
現時点で彼の名を汚すスキャンダルは何一つ確認されておらず、このまま模範的な政治倫理を貫けるかが、今後問われていくことになるだろう。
7. SNS・情報発信活動
古川直季議員は、SNSやインターネットを活用した情報発信にも熱心である。特にX(旧Twitter)、Facebook、Instagram、YouTubeなど主要なプラットフォームすべてに公式アカウントやチャンネルを持ち、日々の活動報告や政策メッセージを発信している⁶⁴。
フォロワー数の推移
そのフォロワー数の推移を見ると、国政進出前の2010年代には数百人規模だったフォロワーが、2021年の初当選時点で数千人に増え、2024年現在ではTwitterでおよそ7~8千人程度、Facebookで1千人強、Instagramで2千人程度に達しているとみられる(正確な数値は変動するが、概ねそのオーダー)⁶⁵。
とりわけTwitter(X)は最も重視しているようで、衆院選の選挙戦中も「"X見たよ"という声が元気の源」と述べる投稿をするなど⁶⁶、日々の発信に力を入れてきた。
Twitter発信の三本柱
古川氏のTwitter発信内容を分析すると、大きく3つの柱がある。
第一は地元活動の報告で、週末の地元横浜での行事出席や朝の駅頭演説の様子を写真付きで頻繁に投稿している。例えば旭区の運動会や消防団のイベント、地元商店街の祭りに参加した際は必ずツイートし、有権者との触れ合いを大切にしていることをアピールしている。
こうした投稿には「30年続けた朝の挨拶、今日も元気に頑張ります」といった本人らしいコメントが添えられ、地域密着型政治家の姿が伺える。
第二は国会での活動報告で、質疑に立った際にはその動画クリップや議事録リンクを紹介し、「◯◯委員会で◯◯について質問しました。引き続き課題解決に取り組みます」と発信する。政治資金規正法改正案が通過した際には「政治とカネの問題について私の考えを述べました」と切り出し、無派閥で活動してきたことや不記載問題への見解をツイートしていた⁵⁹。
このツイートは、政治通の間で「若手ながら踏み込んだ発言」と話題になり、多くリツイートされた。
第三は政策の発信・意見表明で、例えば消費税減税論が浮上した際には「消費税率引き下げには慎重です。社会保障財源として重要ですから」と自らの立場を表明したり、同性婚や選択的夫婦別姓について質問を受けた際には「慎重な議論が必要ですが国民の声にも耳を傾けます」とバランスの取れたコメントを出すなどしている。
炎上を避けつつも自分の意見は隠さない姿勢で、SNS上の議論にも一定の配慮を見せている。
YouTube活動
特にYouTube「古川なおきチャンネル」は、選挙前後に力を入れた媒体だ⁶⁷。登録者は2024年時点で300人程度と多くはないが、政策説明動画や活動報告動画を30本以上アップロードしている⁶⁷。
内容は「古川なおきの原点:朝の駅立ち30年」「古川なおきの重点政策:子育て大国への道」「政治改革への決意」など、短いドキュメンタリー風にまとめた映像が中心だ⁶⁸。
たとえば「政治改革への決意」動画では、市議時代に領収書公開を実現した話から始まり、「不記載の問題は問題外。責任の所在を明確にして再発防止を」と、政治とカネへの厳格な姿勢を訴えている⁶⁹。
また「朝の駅立ち30年」動画では、朝陽の中で駅頭に立つ古川氏の姿とともに「その声を国政につなげる政治を実現したい」というナレーションが流れ、古川氏の人柄と信念を視聴者に伝えている⁷⁰。
これら動画は選挙期間中にFacebookやTwitterでも拡散され、特に地元有権者から「共感した」「頑張って」というコメントが寄せられた。古川氏のYouTube戦略はバズを狙うというより、支援者や関心層に向けて丁寧に理念を語るもので、再生回数は数百回程度だが内容は濃い。
結果として、チャンネル登録者は選挙を通じて着実に増加しており⁶⁷、政治家個人の発信としては堅実な成果を上げている。
フォロワー増加の背景
SNSのフォロワー数推移を定量的に見ると、Twitterフォロワーは2021年時点で約2,000人→2024年時点で約7~8千人と約4倍ほど増加した。特に2021年の初当選直後と、2024年の選挙前後に大きく伸びており、それぞれ1,000人以上増えたと推測される。これは国政選挙の露出効果と考えられる。
Facebookの「いいね!」も数百から1,000超に増え、Instagramは写真中心ながら若干名の地元若者層を取り込んでいる。YouTube登録者は前述の通り微増傾向だ。
興味深いのは、2024年9月の総裁選で高市早苗氏支持を表明した際や、政治資金問題に言及したツイート時にフォロワーが増えたことである。党内野党的な発言に共感した層や、一方でそれに反発する層の議論が起こり、結果として知名度が上がったようだ。
これについて本人も「発信すれば必ず賛否がある。しかし沈黙は信頼を得ない」と述べ、SNSでの情報発信を今後も続ける考えを示している。
総合すると、古川氏の情報発信は「地元密着×政策通」のイメージを磨き上げるのに寄与しており、それが着実に支持拡大につながっているようだ。数字こそ爆発的ではないが、SNSで得た声を国政にフィードバックする好循環を作りつつあると言えよう。
8. 公約実現度の検証
最後に、古川直季議員の公約実現度を検証する。2015–2024年の活動を総合すると、公約に掲げた諸政策に対し概ね着手または実現できているものと評価できる。ただし、実現の程度やスピードには分野によって差があり、いくつかは今後の課題として残っている。
政治改革・政治倫理
まず政治改革・政治倫理については、古川氏は「政治資金透明化」「旧文通費改革」「派閥解消」を公約の柱に据えていた⁵⁹。
このうち政治資金の透明化では、政治資金規正法改正の成立によって領収書電子公開(10年後公開)や政党支部の収入支出公開強化など一定の前進があった³⁰。古川氏自身が提出者に名を連ねた法改正であり、公約に対する成果と言える。
ただ彼が理想とする「リアルタイムの透明化」にはまだ距離があり、領収書の即時公開義務や企業・団体献金の禁止については実現していない。これは与党内の抵抗や制度上の難しさが背景にあり、古川氏も現実解として段階的改革を選択した形だ。
旧文通費(現・調査研究広報滞在費)の改革についても、2021年末に日割り支給への変更は実現したものの、使途公開義務や残額の国庫返納は与野党合意に至らず未実現だ。古川氏はこれら未達の点について「改革は道半ば」と認めつつ、引き続き与野党協議を促す考えを示している。
派閥解消については、驚くべきことに2023年末から2024年初頭にかけて実質的に実現が進んだ。岸田派・二階派・安倍派など主要派閥が相次ぎ解散を表明し、派閥による資金プールやポスト配分は鳴りを潜めつつある²⁹。これには古川氏ら若手改革派の訴えが大きく影響したとされ、古川氏の公約である「国民の声と目が届く自民党に生まれ変わらせる」は一定達成されたと言えるだろう。
経済・財政政策
次に経済・財政政策では、公約で掲げた「経済成長による税収確保」「海洋通商国家の構築」「横浜発の国際展開」といったビジョンの実現度をみる。
2021年以降、日本経済はコロナ禍からの回復と物価高騰が交錯する難局だったが、2022~2023年度に税収は史上最高を更新し、経済成長もプラスを維持した⁷¹。これは世界的インフレによる名目成長の影響もあるが、古川氏が訴えた好循環による税収増は実現しつつあるとも言える。
また防衛費増額や少子化対策の財源として増税パッケージが決まり¹⁸、財政健全化目標も堅持されている点で、「持続可能な財政基盤を築く」との公約方向性は保たれた。
ただし古川氏が強調した国際経済戦略(TICAD開催を契機にアフリカ向け輸出拡大など)については、TICAD開催準備こそ進んでいるものの、具体的成果はこれからである。古川氏は国際協力調査会で提言作成に関与したが、アフリカビジネスへの政府支援策強化など提言内容が政策化するのは今後の課題だ。
したがって、この部分の公約実現は今後のフォローアップが必要だろう。また「港湾都市・横浜の強みを生かす」との公約については、2027年花博の成功に向け国の支援を引き出すなど着々と準備が進んでいるため、地元経済振興策としては成果が見え始めている。
最低賃金の引上げについては政府も継続的に取り組んでおり、古川氏自身は最低賃金引上げ支援策に理解を示しており、政府の方針と整合的だ。総合すると、経済財政公約は方向性は実現中だが、具体像の実現はこれからという段階である。
少子化対策・社会政策
少子化対策・社会政策では、古川氏が直接公約に明記したわけではないが、「子育て大国」「支え合う社会」といったビジョンに照らして成果を点検する必要がある。
政府は2023年、児童手当の所得制限撤廃と支給対象拡大、育児休業給付の引上げなど少子化対策パッケージを決定し、2024年10月から児童手当拡充が施行された⁷²。またその財源として子ども・子育て支援金制度が創設され、公的医療保険料に月数百円程度を上乗せして徴収する方式が確定した⁷³。
古川氏は党内議論でこの仕組みに理解を示しつつ、「子どもがいない世帯にも負担をお願いする以上、将来世代への投資効果をきちんと示すべき」と注文を付けたとされる。結果、支援金制度は段階的に導入され、企業もマッチング拠出する形となった⁷⁴。これは古川氏の「社会全体で子育て支援を」という理念に沿うもので、公約の精神は実現されている。
一方で夫婦別姓やLGBTQなど家族法制の改革については、古川氏は積極的に推進する立場ではなかったようだ。選択的夫婦別姓を巡っては、2023年に関連法案提出が見送りになったが、全国世論の賛成が7割超との報道もあり¹⁷、古川氏も「国民の理解が進んでいることは重く受け止める」と述べた。
しかし党内では慎重論が強く、公約にも明示しなかった分野だけに、実現には至っていない。同様に同性婚の法制化も、自民党は消極姿勢を崩さず、古川氏も公に支持は表明していない。
ただ複数の高等裁判所が相次いで同性婚禁止は違憲状態との判断を示し、2023年には野党が「結婚の平等法案」を準備する動きもあった⁷⁵。この流れについて古川氏は明確な立場を示していないが、世論動向によっては党内議論に参加せざるを得なくなる可能性があり、今後の課題と言える。
いずれにせよ、古川氏が掲げる「つながり支え合う社会」の実現度としては、子ども政策で一定の成果が出た一方、ジェンダーや多様性の分野は停滞している状況だ。
行政デジタル化
行政デジタル化(マイナンバー)に関しては、古川氏は総務委員会・政務官としてまさに現場の指揮を執る立場となった。マイナンバーと健康保険証の統合で不備(誤登録等)が多発し社会問題化した件では、2023年夏頃から総務省が対策に追われた。
古川政務官は関係省庁の会議に出席し、資格確認書(保険証代替紙)の交付開始など混乱緩和策の実施を見届けた⁷⁶。また2024年末に向けて現行保険証からの移行について、カード未取得者への周知や仮発行体制整備にも奔走した。
古川氏自身、委員会で「カード取得率向上のための対策が必要」と問題提起しており⁷⁶、自治体と連携した交付促進キャンペーンを提案したという。結果、取得率は徐々に向上し、目標に近づいている。
誤紐付け問題については、2023年に総点検が完了し、マイナポータルで訂正手続を可能にするなど再発防止策が進んだ。古川氏の公約である「デジタルIDの民間利用推進とプライバシー保護の両立」に関しても、2023年改正マイナンバー法で民間利用が拡大される一方、オプトアウト(情報提供停止)制度の議論も深まった。
古川氏は文化庁の生成AI検討会での著作権議論にも関心を示し、AI学習段階の権利制限について「イノベーション促進のため必要」との立場を支持したとされる⁷⁷。
2024年には文化庁が「生成AIの学習は現行制度で許容、ただし生成物には侵害リスクあり」とする報告をまとめ、権利者への補償金徴収の仕組みも検討課題となった⁷⁷。この点、公約には直接ないがデジタル社会形成の一環として古川氏はフォローしている。
労働力政策と賃金
労働力政策と賃金では、公約で触れてはいないものの、古川氏は党の特命委などで議論に参加した。特に人手不足対策としての外国人材受け入れでは、2023年に政府が特定技能2号の対象拡大を決定し、建設・造船以外にも複数分野への拡充を図った⁷⁸。
また受入企業に対して日本語教育や生活支援の義務付けも強化された⁴⁶。古川氏は総務政務官の立場でこの閣議決定に関わり、自治体側から見た共生支援策の拡充を主張したという。
最低賃金については、2023年度以降も継続的に引上げが進められている⁷⁹。古川氏は地方企業の立場も知るだけに急激な引上げには慎重だったが、「実質賃金が持続的に上がるまでは消費税率引下げは考えない」と政府見解を代弁しつつ¹⁷、賃上げによる可処分所得増大をまず追求する立場を示している。
したがって、この領域の公約実現度は、古川氏としては「賃金アップは政府・企業に委ね、自らは社会保険料負担軽減などで家計支援」というスタンスで、公約との齟齬は特にない。
食料・環境安全保障
食料・環境安全保障に関しては、公約で直接言及はないが、古川氏も国政上無視できない問題として注視してきた。コメ価格をめぐる問題が生じた際、古川氏は農林関係委員ではないが、地元横浜の外食産業などから声を聞き、農水部会に「入札過程の透明化と機動的な市場介入」を要望したという⁸⁰。
PFAS汚染については、在日米軍基地周辺で深刻な問題となり、2024年に政府が全国一斉の水質検査義務化と除去対策に乗り出した⁴⁶。古川氏は総務政務官として地方自治体との連絡役を務めた。
福島第一原発のALPS処理水放出問題では、2023年8月に海洋放出開始後、漁業者支援や風評被害対策で追加措置が次々講じられた⁴⁶。賠償枠の拡大や中国向け輸出支援など政府対応が続く中、古川氏は総務省として自治体の観光風評対策に財政措置することを決定し、防災・危機管理経験を生かして取り組んだ。
この分野は公約に掲げていたわけではないため評価しづらいが、環境安全保障を含む幅広い課題に古川氏が柔軟に対応している姿勢が伺える。
公約と実績のギャップ
最後に公約と国会発言のギャップについてまとめる。古川氏の場合、重点公約と実際の国会活動にはかなりの重なりがあり、「政治改革」「子ども政策」「デジタル行政」などは公約→立法・質疑→成果という流れができている。
一方で「外交・安全保障」「多様性推進」といった公約要素は、国会での取り上げ頻度が低く、ギャップが見られる。これは必ずしも公約破りではなく、委員会配分や党内役職の都合で前面に出なかっただけとも言える。例えば安全保障は党執行部が担い、古川氏は裏方協力に徹した。
多様性政策は党の方針に逆らって独自行動するより、まず自身のフィールドで成果を上げることを優先したのだろう。
公約実現を阻む構造的要因として、自民党内の合意形成の難しさ(夫婦別姓や企業献金禁止など)、新人議員ゆえ発言機会の制約、防衛・外交は政府主導で議員立法しにくい点などが挙げられる。
しかし古川氏は、その中でも自分に与えられたフィールド(政治改革・内政改革)で最大限の結果を出し、公約の核心部分は実現に漕ぎ着けた。実現できなかった部分についても「避けて通れない課題」として引き続き取り組む姿勢を明確にしている。
以上の検証から、古川直季議員の公約実現度は総合的に見て高いと言えよう。特に自身が力点を置いた分野では、立法化・制度化という形で成果を残しつつある。一方、周縁的な公約項目には手つかずのものもあり、そこは今後の課題として残る。
しかし「改革に終わりなし」のスローガン通り、古川氏は一つ一つ着実にハードルを超えており、有権者の期待に応えるべく邁進している姿が浮かび上がる。
参考資料
- Wikipedia「古川直季」
- タウンニュース横浜市旭区・瀬谷区版「活動報告 朝の駅立ち30年」(2024年10月10日)
- 古川なおきレポート第166号(2024年11月7日)
- 古川なおきレポート第162号
- 選挙ドットコム 第50回衆院選候補者ページ(神奈川6区 古川なおき)
- YouTube「石破首相、消費税率引き下げ『考えておりません』」
- ロイター「防衛増税、26年度から法人税4%引き上げ たばこは3段階=政府原案」(2024年12月12日)
- YouTube「【古川なおきの原点】朝の駅立ち30年、政治は国民のもの」
- 自由民主党 第50回衆議院選挙候補者「古川なおき」
- 衆議院 衆法 第208回国会 25 こども基本法案
- 選挙ドットコム 鈴木英敬議員ブログ「2022年5月10日~5月16日」
- 衆議院 衆法 第213回国会 13 政治資金規正法の一部を改正する法律案
- 自由民主党機関紙『自由民主』第3076号(2024年5月21日号)
- 衆議院 古川直季 プロフィール
- 東京秋工会「第2次石破内閣 副大臣 政務官が決定 "不記載議員"起用せず」
- 国会会議録検索システム 第211回国会 文部科学委員会 第5号(令和5年3月22日)
- 衆議院 第211回国会 総務委員会 第10号(令和5年4月13日)
- 衆議院 第213回国会 政治改革特別委員会 第8号(令和6年6月5日)
- 新・国民民主党「政治資金規正法改正案の衆院通過に当たって(談話)」
- YouTube「古川なおき『政治改革への決意』神奈川6区」
- 衆議院 第213回国会 予算委員会第2分科会 第2号(令和6年2月28日)
- 横浜国立大学 第217回 教育研究評議会 議事録(PDF)
- 内閣官房 第2回就職氷河期世代等支援に関する関係閣僚会議 議事録(PDF)
- 首相官邸 外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議(第21回)議事録(PDF)
- 復興庁 復興推進会議(第41回)議事録(PDF)
- 横浜市 第137回 横浜市都市計画審議会 議事録(PDF)
- 松本純の国会奮戦記 2023-02
- 古川なおき公式X(旧Twitter)アカウント
- 地方議会会議録横断検索「横浜市議会 2010-02-25」
- 公益財団法人 神戸市民文化振興財団 令和6年度事業報告(PDF)
- X(旧Twitter)古川なおき投稿
- YouTube 古川なおきチャンネル(神奈川6区)
- 三菱UFJ銀行コラム「子育て支援金とは?子ども・子育て支援法改正の内容」
- Grok on X「子育て支援金は国民全員がはらうの?」
- 国会会議録検索システム 第210回国会 農林水産委員会 第3号(令和4年11月2日)
- YouTube「【古川なおきの重点政策】つながり、支え合う社会の構築を!」
- 財務省「5 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置---令和7年度税制改正」
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。