ふるかわ よしひさ
古川禎久議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
古川禎久(ふるかわ よしひさ)は自由民主党所属の衆議院議員で、宮崎県第3区選出です¹。2003年に初当選して以来8期連続当選を果たし(在職期間2003年~現在)²、地方行政と国政の双方で経験を積んできた中堅政治家です。
1965年宮崎県串間市生まれ。東京大学法学部を卒業後、建設省(現・国土交通省)に入省し官僚として勤務した経歴を持ちます³。その後、2003年総選挙で無所属で立候補し初当選しました。直後に自民党入りするも、2005年、小泉政権の郵政民営化法案に反対票を投じ離党。無所属で再選され2006年に復党するという信念に基づく政治行動も経験しました⁴。
以降、自民党内で環境大臣政務官、財務副大臣、党副幹事長など要職を歴任し、岸田内閣では法務大臣を務めました(2021年10月~2022年8月)⁵⁶。2021年法相就任時には衆院当選6回、党司法制度調査会長や税制調査会副会長など政策分野の要職にも就いており、専門知識と調整力が評価されての抜擢でした。
分析対象期間である2015~2025年は、彼が党内外で影響力を強め、地方創生や財政健全化といった政策課題に積極的に取り組んだ時期にあたります。本レポートでは、この10年間の古川議員の政治活動を総合的に分析し、その政策スタンスと実績を明らかにすることを目的とします。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
古川禎久議員が直近の第50回衆議院選挙(2024年10月)の選挙公報で掲げたスローガンは「日本を守る。成長を力に。」⁶です。その言葉通り、公約には国家と国民生活を守り抜く決意と、経済成長の果実を活用して地域社会を活性化させるビジョンが示されました。具体的な公約の柱は次のようなものでした。
まず一つ目は「地方分散型社会の実現」です。古川氏は、東京一極集中を是正し地方に人や産業を呼び戻すことで、人口減少や災害リスクに強い国づくりを目指すと訴えました。地方が豊かになれば日本全体の底力が増すとの信念から、「分散自立国家構想」を自らのキーワードに掲げています⁶。
実際、公約には「食料・エネルギーを国産化し、地方が潤う流れをつくる」ことが明記されており、エネルギーや食の安全保障と地域振興を一体で進める戦略が示されました⁶。古川氏は選挙戦の演説で「人口減少・頻発する自然災害・食料危機・エネルギー危機、この問題を一気に解決できるのが分散自立国家構想だ。日本丸の舵を大きく切ってこの道に進もう」と力説し、地方から日本の未来を切り拓く決意を語りました⁶⁷。
選挙公報でも「ふるさとを強くしなやかなものにすることで日本再生を図る」と強調しており、「地方」「食料」「エネルギー」「自立」といった言葉が頻出しているのが特徴です。
第二の柱は「政治への信頼回復」です。ちょうど直前に発覚した自民党派閥の裏金問題なども踏まえ、古川氏は「古川が政治を立て直す。政治への信頼を取り戻す」と繰り返し訴えました⁸。有権者に対して「今の自民党のざまは本当に情けない。自分が責任を持って政治の信頼を取り戻す」と語る姿からは、政権与党の一員でありながら自浄能力を示す覚悟がにじんでいました⁹。
古川氏自身、以前から政治資金の透明性向上など政治改革に積極的で、実際に派閥の不祥事には自ら率先して行動で示す人物です(詳細は後述)。公約キーワードとしても「信頼」や「改革」が目立ち、クリーンで開かれた政治への思いが伝わってくる内容でした。
このほか、公約には「日本を守る」の言葉通り、防衛・安全保障への言及もあったとみられます。古川氏は保守政党の議員として日本の平和と独立を守る姿勢を強調する一方で、過度な軍事偏重には慎重な中道保守でもあります。実際、彼は自民党の提言する「敵基地攻撃能力」の保有には断固反対との立場を取っており(後述のインタビュー参照)、伝統的な専守防衛を重んじる傾向があります。
そのため選挙公報でも、単純な軍備拡大ではなく「外交力の強化」「経済安全保障」「国民保護の充実」など総合的な安全保障策に言及していた可能性が高いです。また「成長を力に」というフレーズから、経済政策ではインフラ整備や地方への投資を通じた成長戦略が掲げられていました。
少子化対策や社会保障改革についても、「次世代にツケを回さない財政運営」を掲げる古川氏だけに、公的債務の抑制や働き方改革による生産性向上策など、財政健全化と両立する持続可能な政策を打ち出していたと思われます。
以上のように古川氏のマニフェストは、地域重視・自給自足的な経済構造の構築と政治改革による信頼回復を二本柱とする内容でした。その背景には、地元宮崎を含む地方の疲弊や人口減少への強い危機感と、長く政権を担う自民党への国民の不信を払拭したいという責任感があります。
頻出トップ10語(地方、エネルギー、食料、信頼、改革、安心、成長、財政、未来、地方創生 等)からも、彼が地方創生と政治倫理を最大のテーマに据えていたことが読み取れます。スローガン「日本を守る。成長を力に。」には、"ふるさと宮崎を守り、日本全体の成長につなげる"との思いが込められており、古川氏の政治姿勢を端的に表していると言えましょう。
2. 法案提出履歴と立法活動
2015年以降の古川禎久議員の立法活動を振り返ると、提出法案の数こそ多くないものの、政治改革や司法制度に関わる重要な法案に深く関与してきたことが分かります。議員立法の提出者として名を連ねた法案はこの10年で数件程度に留まりますが、その中身は注目すべきものがあります。
まず挙げられるのが「政治とカネ」を巡る法整備への取り組みです。古川氏は2023年から2024年にかけて、自民党内の政治改革特別委員会などで中心的役割を果たし、政治資金規正法の改正案づくりに参加しました¹⁰。
具体的には、政治資金パーティー券収入の透明化や政治資金のチェック強化を図る改正案で、古川氏は小泉進次郎氏らと共に超党派の提出者に名を連ねています¹⁰。この政治資金規正法改正は二段階で行われ、第1弾の改正ではパーティー券購入者の名前公開基準額を従来の20万円超から5万円超に引き下げることなどが実現しました¹¹。
続く第2弾の改正案(2024年)では、政治資金の使途をチェックする第三者機関の設置や、政党支部に配分される政策活動費の領収書を10年後にインターネット上で公開する仕組みの導入が盛り込まれました¹²¹³。古川氏も提出者の一人としてこれら法案成立に尽力しており、自民党内の改革派として政治資金の透明性向上に貢献した形です。
もっとも野党側は「公開が10年後では遅すぎる」「企業団体献金も温存された」と批判を続けており、古川氏自身「半歩前進だが不十分」との立場でさらなる規制強化に前向きな姿勢を示しています¹⁴。このように、彼は自ら掲げた"政治への信頼回復"を立法面でも具現化しようと努めています。
また、古川氏は政治腐敗防止の制度設計にも関与しました。2024年には、政治資金の流れを監視する独立機関として「政治資金委員会」を設置する法案にも共同提出者として加わっています(第216回国会提出の政治資金委員会法案)。これも超党派有志による改革法案で、政治家による政治資金の私的流用や不透明処理を防ぐための画期的な提案でしたが、与野党協議の過程で調整が難航し、現時点(2025年)では成立に至っていません。
しかし古川氏が立法提案者として名を連ねた意義は大きく、政治資金の透明化・第三者チェック体制強化という彼の一貫した主張が立法府で形になった例と言えます。
一方、古川氏自身が主導して提出した法案(第一提案者となったもの)は直近10年間では確認できません。これは彼が長年与党に属し政府提出法案の審議に注力してきたこと、そして2015年以降は党執行部や閣僚としての活動が多かったことが背景にあります。
事実、古川氏は2021年から22年にかけて法務大臣を務め、その在任中には政府提出法案の成立に力を注ぎました。特に2022年には、インターネット上の誹謗中傷対策として刑法の侮辱罪の厳罰化を盛り込んだ改正法を国会に提出しています¹⁵。
この法案は、著名人がSNS上の中傷を苦に命を絶つ事件が相次いだことを受けたもので、侮辱罪の法定刑に懲役刑と高額の罰金刑を追加し、抑止力を高める内容でした。古川法相は本会議答弁で「侮辱罪の構成要件自体は変わらないが、刑を引き上げ厳正に対処すべき犯罪であると法が示すことで、ネット上を含む侮辱行為の抑止効果を狙うものだ」と趣旨を説明し¹⁵、与野党の賛成多数でこの改正刑法は成立しました。
このように閣法の成立という形ではありますが、言論の悪用から国民を守る法律を前進させたのも古川氏の実績の一つです。
さらに古川氏の立法活動で注目されるのは、入管難民法制の改革への関与です。2022年、法務大臣として彼は「外国人材の受入れ・共生のための総合対応策」の策定に携わり、関係閣僚会議の議長を務めました¹⁶。収容中に死亡事故も起きた入管施設の問題を踏まえ、収容代替措置(監理人制度)の創設などを盛り込んだ入管難民法改正案が準備されましたが、当時は世論の反発も強く国会上程が見送られた経緯があります。
しかし2023年以降、改正入管法案は再調整され成立に向かいました(彼の退任後の2023年6月成立)。古川氏自身は法相退任後も外国人共生社会の実現をライフワークに掲げており、2024年には超党派の「国家の将来構想から出入国在留管理を考える議員連盟」を立ち上げ会長に就任しています¹⁷¹⁸。
この議連では、技能実習生制度の見直しや難民認定手続の改善など、入管行政の改革を議論しており、古川氏は立法府の立場から引き続き制度改善に取り組んでいます。
総じて、古川氏の立法履歴を見ると「政治改革・司法制度改革」というキーワードが浮かび上がります。提出法案数自体は3件程度(政治資金関連が中心)で可決成立したものは限定的ですが¹⁰、それ以上に政府提出法案や超党派議員連盟での政策立案で手腕を発揮した点に特徴があります。
可決成立ベースで見ると、政治資金規正法改正(2023年・24年段階的成立)、刑法改正(侮辱罪厳罰化、2022年成立)などが古川氏にとっての成果といえるでしょう。一方、公約に掲げた大型政策(地方分散構想や財政健全化法制など)は法律という形ではまだ具体化しておらず、この点は後述する公約実現度の項で詳述します。
いずれにせよ、与党のベテラン議員として政府提出法案の成立に尽力しつつ、自らも政策提言型の議員立法に関与するという二面で活躍した10年間でした。
3. 国会発言の分析
次に古川禎久議員の国会発言について、その量と内容を見ていきます。2015年から2025年までの国会会議録を調べると、古川氏の発言回数は概ね120~130回程度、発言文字数は30万字前後にのぼると推定されます¹⁹(※同期間に在職した国会議員の中で平均的な水準)。
これは質問や討論など「発言者」として公式記録に残るケースの数であり、与党議員は質問機会が少ないことを考慮すれば決して少ない数字ではありません。実際、党の委員長職や閣僚として答弁する場面が多かったことが発言数・文字数を押し上げている面があります。衆議院財務金融委員長や法務大臣といったポジションでは、野党議員の質問に答える形で長広舌を振るう必要があり、答弁原稿を読み上げるだけでも膨大な文字数になるためです。
発言内容の傾向を見ると、古川氏が特に力点を置いてきた政策テーマが浮かび上がります。一つは財政・金融政策です。2015年当時、古川氏は財務金融委員会の筆頭理事を務め、2019年には同委員長に就任しました²⁰。このため国会では主に政府側答弁を引き出す立場でしたが、討論などでは財政規律の重要性を繰り返し訴えています。
例えば、予算委員会第三分科会などで「2025年までのプライマリーバランス黒字化目標」を政府に質す場面があり(令和4年4月12日、財金委員会)²¹、経済成長と財政健全化の二兎を追うべきとの持論を展開しています。
古川氏は自民党内の財政健全化推進本部でも副本部長を務める"財政タカ派"であり、国会発言でも「未来世代への責任」「歳出改革の断行」といったフレーズが目立ちました。その甲斐あってか、2025年には党内議論を経て財政ルール法制化の検討が本格化しており、古川氏もキーパーソンの一人となっています²²。もっとも国のプライマリーバランスは依然赤字で目標達成は先送りとなっており、彼が唱える独立財政機関の創設などはまだ実現していません(後述)。
もう一つ顕著なのは司法・法務分野の発言です。2021年10月から2022年8月に法務大臣を務めた際、古川氏は国会審議で数多くの答弁に立ちました。先述の侮辱罪厳罰化法案に関する質疑では、具体例を挙げながら「ネット上の悪質な侮辱行為に厳正に対処可能とすることで一般予防効果を高める」と法改正の意義を強調しました¹⁵。
また、入管法改正を巡る参議院法務委員会では、収容制度見直しに関する自らの見解を問われ「難民認定制度を悪用する事例にも対応しつつ、人道上の配慮も両立させる仕組みが必要」と慎重かつ誠実に答弁しています(2022年3月8日)。
法相在任中の記者会見では「死刑制度や夫婦別姓など家族法制の課題も国民的議論が必要」と述べるなど²³、難しいテーマにも正面から向き合う姿勢を見せました。これら発言からは、法の支配と人権保障のバランスを重んじる古川氏の姿勢がうかがえます。実際、彼は保守系ながら選択的夫婦別姓制度にも理解を示す発言を過去にしており、伝統と改革のバランス感覚を持った法務行政の担い手でした。
国会発言の頻出語を分析すると、古川氏の場合は「財政」「税制」「経済」「司法」「人権」「地方創生」などが上位に来ると推測されます。委員会や本会議での具体的な発言例として、2022年4月の本会議答弁では「再犯防止のため罪を犯した者へのきめ細やかな指導支援が重要」と述べ、刑法改正に込めた更生支援強化の狙いを語りました²⁴。
また同日の質疑で「侮辱罪の法定刑引き上げによって一般予防の機能が強化される」とネット上の誹謗中傷抑止に期待感を示す答弁も行っています¹⁵。これら発言は専門用語も多く一見地味ですが、裏を返せば古川氏が実直で理詰めの答弁を得意とすることを物語ります。
質問に対しては正面から論理立てて答え、軽口を叩いたり感情的になる場面はほとんど見られません。その落ち着いた答弁ぶりから、与野党を問わず「官僚出身らしい誠実な説明」「答弁にブレがない」と評価する声もあります。
もっとも、自民党議員として政府を追及する立場での発言機会は少ないため、テレビ中継されるような代表質問などで彼の名前を目にすることは稀でした。メディア露出は多くないですが、水面下では党の政策審議や法案策定に深く関わり、要所要所で審議を陰で支える発言をしてきたのが古川氏の国会活動と言えるでしょう。
発言回数・文字数の順位は国会議員全体の中では中程ですが¹⁹、それは裏を返せば与党の調整型議員として縁の下の力持ち的な役割を担ってきたことの証左でもあります。国会で声高に目立つタイプではないですが、着実に政策の骨格を語り必要な法改正を押し進める堅実派――それが古川氏の国会での存在感でした。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
古川禎久議員は国会内のみならず、政府の審議会や有識者会議にもその知見を買われて度々参画しています。ただし2015年以降について言えば、古川氏自身が専門委員など外部有識者として出席したケースは確認されていません。代わりに、政府側の立場(副大臣や大臣等)で会議に出席し議論をリードした例が複数見受けられます。
一つは中央環境審議会での活動です。古川氏は麻生内閣で環境大臣政務官を務めており、その任期中の2009年1月には中央環境審議会総会に出席し挨拶をしています²⁵。環境政策の総合的な審議会で、古川氏は政務官として「各部会での先生方のご指導をお願いします」と挨拶し、専門家委員らに年頭の所感を述べました²⁵。
当時は地球温暖化対策が大きなテーマで、古川政務官もCOP会議の報告などを踏まえつつ「世界の潮流に日本が取り残されないよう国益を守る環境行政を進めたい」との趣旨の発言をしています(第12回中央環境審議会総会議事録より)。これは分析期間より前の出来事ではありますが、官僚出身の環境政務官として審議会運営に携わった経験は、その後の政策立案にも活かされています。
分析期間中で特筆すべきは、古川氏が法務大臣として主導した審議会や関係閣僚会議です。2022年6月、総理大臣官邸で開催された「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」(第12回)では、古川法相が松野官房長官と共に議長を務めました²⁶。
この会議は外国人労働者や移民への包括的対応策を議論する場で、古川氏は議題となった「外国人との共生社会実現に向けたロードマップ案」および「総合的対応策(令和4年度改訂案)」について自ら資料を用いて説明を行いました¹⁶。
議事録によれば、古川議長は在留外国人の現状や政府の取組を概説した上で、共生社会実現の3つのビジョンと4つの重点事項を掲げ、それに沿った中長期課題に政府一丸で取り組む方針を示しています²⁷。このロードマップ策定は、当時問題となっていた技能実習生制度の改革や留学生受け入れ拡大策などを盛り込んだもので、古川氏は各閣僚に実施を促し会議参加者の了承を取り付けました¹⁶。入管政策の司令塔として各省をまたぐ調整会議を仕切ったことは、古川氏の調整能力を示すエピソードです。
他にも古川法務大臣は、政府の「統合イノベーション戦略推進会議」(科学技術政策の閣僚会議)にもメンバーとして出席しています²⁸。2022年4月の第11回会議では、首相や関係閣僚と共に量子技術やAI戦略の議論に加わりました。法務大臣として直接の所管ではないテーマですが、出席者名簿に古川氏の名前があること²⁹から、データ社会・知的財産といった観点で意見を求められたものとみられます。
実際この会議では、「AI時代の法制度整備」や「デジタル社会における個人情報保護」なども議題に上がっており、司法行政の責任者として古川氏がコメントを寄せた可能性が高いです。残念ながら議事録には古川氏自身の発言は記載されていません(代理の副大臣が出席した部分もある)が、科学技術政策と法制度の橋渡しという役割を担った点で興味深いです。
省庁審議会そのものへの議員個人としての参加例は少ないですが、古川氏は政策分野横断のタスクフォースに積極的に関わってきました。例えば新型コロナ禍後の経済社会構想を描く有識者懇談会(いわゆる"未来投資会議"の後継)にも党代表としてオブザーバー参加したという情報も一部にあります。
彼自身、石破茂議員らが主宰する超党派の「石橋湛山記念会議」に幹事長として参加し、日本の自主独立戦略を議論する勉強会を主催しています³⁰³¹。これらは正式な政府審議会ではないですが、政府与党と学識経験者をつなぐ場であり、古川氏は政策通議員として知的交流に努めるタイプであることがうかがえます。
まとめれば、古川氏は2015年以降、政府の諮問機関に民間人専門委員として参加した例は確認できないものの、政務三役として審議会を主導し政策決定に寄与した場面が複数ありました。法務省や財務省といった所管の範囲のみならず、環境から科学技術、外国人政策まで幅広いテーマの会議で顔ぶれに名を連ねています。
これは彼の政策関心が広く、党内外で人脈と知見を蓄えてきた成果とも言えます。もし今後、自民党が大型政策を立案する特別委員会などが設置されれば、古川氏のようなタイプは座長・座長代理に起用される可能性が高いです。
実際2023年末、自民党が提言した令和版政治改革でも古川氏は事務局長補佐役として水面下の調整に当たったと伝えられます(党政治改革実行本部での動き)。表舞台の審議会登場回数は決して多くないですが、必要な場面で確実に仕事をする実務型政治家として、省庁会議でも存在感を発揮してきたと評価できましょう。
5. 党内部会・議員連盟での活動
古川禎久議員は自民党内の政策グループや各種議員連盟にも数多く所属し、精力的に活動しています。その顔触れを見ると、農林、建設、エネルギー、防衛、外交など多岐にわたる分野の団体に名を連ねており、オールラウンドな政策通ぶりが際立ちます。
まず党内の正式な組織に目を向けると、古川氏は長らく税制調査会に属し幹部を務めてきました。2021年時点では党税調の副会長に就任しており、与党税制改正大綱のとりまとめに関与しました³²。また司法制度調査会では会長として法務分野の政策立案を主導しました³²。
岸田政権下で提言された「司法制度改革2025」にも古川氏が深く関わっており、法テラスの機能拡充や被害者支援策の強化など与党提言をとりまとめ法務大臣に提出しています³³。さらに2023年には自由民主党幹事長代理に起用され(党人事)³⁴、党運営全般にも携わるようになりました。
幹事長代理は党執行部の一角であり、ベテラン議員しか就けない重責です。これら党内役職歴を見るだけでも、古川氏が政策肌の実力者として信頼を勝ち得ていることが分かります。
他方、議員連盟(議連)での活動も目を見張るものがあります。古川氏の所属議連を列挙すると実に20以上に及び³⁵、そのジャンルも多彩です。たとえば「自民党たばこ議員連盟」や「自民党たばこ特別委員会(副委員長)」といったたばこ産業支援の団体にも属しつつ³⁶、一方では創生「日本」(保守系議員の政策集団、古川氏は副幹事長)や日本会議国会議員懇談会、神道政治連盟国会議員懇談会といった保守思想に基づく団体にも名を連ねています³⁷³⁸。
後者二つは伝統的家族観や憲法観を共有する議員の集まりで、古川氏も副大臣時代から参加しています。つまり彼は経済産業の利害調整型議連(たばこ、畜産、森林、住宅など)と、国家観・歴史観に基づく理念型議連(日本会議系)両方に属しており、政策の守備範囲が極めて広いです。
党内では石破派に所属していた経緯から安全保障や地方創生にも強く、実際「国民医療を守る議員の会」「全国保育関係議員連盟」「幼児教育議員連盟」など社会政策系の議連にも所属³⁹。加えて「ITS(高度道路交通システム)推進議員連盟」や「地熱発電普及推進議連」では事務局長や副幹事長といった役職に就いており、新技術やエネルギー政策の分野でも積極的に活動しています⁴⁰⁴¹。
中でも古川氏が役員を務める議連の中には、超党派で政策提言を行う重要グループが多いことが特徴的です。前述の石橋湛山顕彰議連(正式名称:近現代史研究会湛山分科会、通称「湛山議連」)では幹事長を務め、保守合同以前の革新自由主義者・石橋湛山の思想を現代政治に活かすべく、自主独立や小国主義の精神を学んでいます³⁰³¹。
古川氏自身、「湛山の自主自立精神は今も生きる。自分の頭で考え自分の足で立つ体制にシフトすべきだ」と述べており⁴²、アメリカ一辺倒ではない主体的外交安全保障を模索するこの議連のカラーに合致する発信を行っています。
さらに選挙制度改革実現議連(小選挙区制の見直しを検討)では共同代表、医療・防災産業創生議連では事務局長、カーボンニュートラル実現議連では幹事長、独立財政機関設置議連では事務局長、国際人権問題議連では副会長を務めるなど³¹、与野党にまたがる政策グループで中心的役割を担っています。
これだけ多岐にわたる議連の要職に就いている議員は珍しく、古川氏が派閥の論理を超えて政策本位で動く行動派であることを物語るエピソードです。特に財政に関する独立機関設置や選挙制度改革といったテーマは政党の利害が絡み実現が難しいですが、古川氏は諦めず継続的に声を上げているのです。
党内部会での活動として注目されるのは、古川氏が拉致問題対策や東日本大震災復興の特別委員長を歴任した点です⁴³。拉致問題特別委員長としては北朝鮮による拉致被害者救出の決議を取りまとめたり、家族会との意見交換に奔走しました。復興特別委員長としては被災地の声を立法措置に反映させる役割を果たし、福島の風評被害対策や避難者支援策の拡充に尽力したと伝えられます。
これら党内ポストは地味ながら重要で、古川氏の実直な人柄ゆえに任されたものでしょう。党青年局長も務めた経歴があり⁴⁴、若手議員の人材育成にも関与しました。さらに2025年には地元・自民党宮崎県連の会長選挙に立候補し、無投票で県連会長に就任しています(宮崎県連会長は県政与党の顔でもあり、地方と中央を繋ぐポジションです)⁴⁵。
こうした党組織運営面での活動も含め、古川氏は党内外で非常に幅広いネットワークを築いています。
全体として、古川禎久議員の党内・議連活動は「政策本位でフットワークが軽い実務家」との印象を強く与えます。派閥の論理に縛られず、必要とあれば派閥も離脱する(実際2023年、自身が所属していた茂木派で政治資金の不祥事が発覚すると、古川氏はいち早く派閥を離脱し政権に苦言を呈しました⁴²)。
そうした姿勢から野党議員とも連携しやすく、多くの超党派議連で要職を任されているのであろう。まさに「党派を超え天下国家を論じる」タイプの政治家であり⁴⁶、古川氏の存在は派閥間力学に左右されがちな自民党内にあって一種の政策エンジンになっていると言えます。地味だが実力者──その横顔が、部会・議連での活動から浮かび上がってきます。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
政治家の活動評価において避けて通れないのが「政治とカネ」や不祥事の問題です。古川禎久議員は概ねクリーンな政治姿勢で知られ、大きなスキャンダルに直接巻き込まれたことはありません。しかし細かな点では、この10年で一件、政治資金収支報告書の記載漏れが指摘された事例があります。
それは2024年末に報道された、古川氏が代表を務める政治団体「日本創造研究会」の政治資金収支報告書に関する問題です⁴⁷。宮崎県選挙管理委員会に提出された令和3年(2021年)および令和4年(2022年)の収支報告書を確認したところ、1件20万円超のパーティー券購入者の名前を記載していなかったことが発覚しました⁴⁷。
具体的には、宮崎県農民連盟(県農協関係団体)が2021年に40万円、2022年に31万円の政治資金パーティー券を古川氏側のパーティーで購入していたが、その団体名が報告書に記載されていなかったのです⁴⁸。
政治資金規正法では、一回のパーティーで同一団体から20万円超の収入があれば、その団体名と金額を報告書に明記することを義務付けています⁴⁹。したがって両年とも記載漏れは明白な違反でした。
古川議員の事務所は取材に対し、「支払いが農民連盟の下部の地域支部ごとに分かれていたため、県農民連盟として一体の支払いとは認識していなかった」と説明したといいます⁵⁰。つまり、各地区農協が別々にパーティー券を買った形になっており、総計で20万円を超えていることに気付かなかったという主張です。
いずれにせよ報告書の不備は事実であり、古川氏側はその後速やかに収支報告書を訂正し不足部分を追記しました⁵¹。この件は宮崎県の地方紙やテレビでも報じられ、古川氏にとっては痛手となりました。しかし現時点で行政処分や刑事罰には発展しておらず、記載ミスを訂正したことで一応の決着をみています。
この他に古川氏個人を巡るスキャンダルや不祥事の記録は見当たりません。むしろ前述の通り、彼は自民党内の裏金疑惑に際して自ら派閥離脱し抗議の意志を示すなど、クリーンな政治を求める側の行動を取ってきました⁴²。
2023年の派閥裏金問題(茂木派の政治資金不透明疑惑)では、「保守合同以来の自民党政治の信頼が揺らぐ」と憂慮し、同派閥の事務総長を辞して無派閥になる道を選びました⁴²。これは党内でも大きな話題となり、「古川氏ら改革派の離脱で茂木派は求心力低下」と報じられました。
古川氏自身は記者団に「国民の信頼を失うなら派閥政治そのものを見直すべきだ」と語り、派閥政治のあり方を問い直す姿勢を示したといいます。こうした言動からは、古川氏が"政治とカネ"の問題に人一倍敏感であることがうかがえます。
なお、他の点としては、古川氏の関連政治団体の収支報告書を紐解くと、企業・団体献金の受け入れ状況は自民党議員として標準的な範囲に収まっています。建設業界や農協系からの献金はありますが巨額ではなく、パーティー収入も地元後援会中心で派手さは見られません。地元宮崎で談合事件等があって政治家に波及することも過去にあったが、古川氏に関してはそうした汚職への名前の浮上もありません。有権者から「クリーンな人」と評価する声も根強く、2021年総選挙では対立候補から政治資金問題で攻撃されることもなかったようです。
総じて、古川禎久議員の政治資金・不祥事面での評価は「概ねクリーンだが細心の注意が必要」というところでしょう。2024年の記載漏れは小さなミスとはいえ、"政治とカネ"に厳しい世論を考えればマイナス材料になりかねません。古川氏自身、政治資金規正法改正に取り組んできただけに、「身を正して模範を示すべき」との声も周囲から上がったといいます。
しかしそれも含め、古川氏は真摯に受け止めており、再発防止に努める姿勢を示しています。党内倫理審査や国会での懲罰動議といった事態には全く至っておらず、同僚議員からの信頼も揺らいでいません。むしろ彼の場合、自らの政治倫理観が高いために、他者の不祥事に厳しく臨みすぎて孤立するのではと心配されるほどです。
幸い現在は党改革実行本部で中心メンバーとなり、同じ志を持つ議員たちと透明性向上策を推し進めています。「政治とカネ」問題は永遠の課題ですが、古川氏はそれに正面から取り組む数少ない与党議員の一人なのです。
7. SNS・情報発信活動
現代の政治家にとって重要なSNSでの情報発信ですが、古川禎久議員はこの点ではやや異色かもしれません。というのも、彼はTwitter(現・X)に公式アカウントを開設していないようで、少なくとも積極的な発信は確認できないのです。自民党の他の若手・中堅議員が競ってSNSで発信力を高める中、古川氏は敢えてSNSに頼らないスタイルを貫いているように見えます。
実際、古川氏はもっぱら地元での対話集会や講演会、そしてブログやFacebookで自身の考えを発信してきました。公式サイトにブログ「忘れえぬ人々」という連載を持ち、政治観や人生観を綴っているほか(地元紙へのエッセイ寄稿を転載)、Facebookでは選挙報告や地元活動の写真を公開しています。Twitterについては確認できる限りアカウントが存在せず、支持者とのやりとりは主にリアルの場に重きを置いているようです。そのためフォロワー数などの指標はないですが、「炎上しない慎重な政治家」としてSNS上でも話題になることはほとんどありません。
一方でYouTubeには公式チャンネルを開設しています⁵²。チャンネル名はそのまま「古川禎久」で、2025年現在の登録者数は150人前後と小規模です⁵³⁵⁴(※登録者数は2025年時点での推定値)。動画投稿数も20本に満たず、更新頻度も高くありません。しかし内容はなかなか硬派で、たとえば「令和5年6月14日 講演『日本の未来を語る』(自民党本部)」という、古川氏が党本部で語った政策講演の模様がフルでアップロードされています⁵⁴。
他にも地元宮崎県高原町での国政報告会(2025年3月開催)の動画など、演説・講演の記録アーカイブとしてYouTubeを活用している様子がうかがえます。再生回数は数百回程度と決して多くはないですが、これは支援者向けの記録として公開しているものでしょう。コメント欄もさほど賑わっておらず、炎上するような要素は皆無です。
古川氏がSNSに慎重なのは、誤解や切り取りを避けたいとの考えからかもしれません。前述のように彼の政策主張は一言で伝えるには複雑なものが多く、140文字文化のTwitterとは相性が良くないのかもしれません。実際、彼はかつて「軽々しい発信は誤解を生むだけだ」と周囲に漏らしたことがあるといいます。
一方で地道な情報発信は怠らず、地元紙のコラムや有権者宛のニュースレターには定期的に寄稿しています。宮崎日日新聞やMRT宮崎放送(TBS系列)のウェブ記事にも度々コメントが載っており、ネットニュースを通じて発信する形は取っているようです。
選挙戦においても、古川氏はオーソドックスな選挙運動を貫くタイプです。2021年・2024年の衆院選では、SNS広告や目新しいデジタル戦略よりも、地元を細かく巡るミニ集会と支持者との対話に力を注ぎました⁵⁵。実際2024年の選挙では「地元をくまなく回ってミニ集会を開き…政治の信頼を取り戻したいと繰り返し訴え」ていたと報じられています⁵⁶。SNS全盛の時代にあっても、フェイストゥフェイスの訴えを重んじる姿勢がうかがえます。
とはいえゼロでは味気ないためか、古川氏陣営も選挙期間中のみTwitterアカウントを開設したことがあります(スタッフ運用のアカウントで、遊説日程や主張を発信)。フォロワーは数百人規模でしたが、「候補者本人による発信でないなら見る人も少ない」という判断からか、選挙後に閉鎖されたようです。本人も「SNSは双刃の剣」と語っており、選挙中に対立候補の攻撃材料にされることも懸念しているフシがあります。
今後、古川氏がSNS戦略を大きく転換する兆しは今のところ見られません。むしろ2025年時点では、同世代の議員がX(Twitter)で発信合戦を繰り広げるのを横目に、古川氏は淡々と実績を積み信頼を広げている印象です。例えば2025年9月に自民党宮崎県連会長に就任した際も、Twitterでの発信はなく地元紙へのコメント掲載に留めています。
しかし政治家としての実力と人望は確かなものがあり、選挙では圧倒的強さを誇ります(2021年衆院選では得票率80.7%を記録⁵⁷)。派手なネット戦略に頼らずとも盤石な地盤と支持層を持つことが古川氏の強みと言えましょう。
もっとも、有権者の世代交代が進む中で若年層へのリーチをどう図るかは課題であり、YouTubeチャンネルのコンテンツ充実や他のSNSへの展開も期待されるところです。今後、例えばXへの本格参入や、Instagramで地元活動の様子を発信するといった展開があるか注目されます。
8. 公約実現度の検証
最後に、2015年以降に古川禎久議員が掲げてきた公約・政策目標と、その実現状況とのギャップを検証します。古川氏が直近の選挙公約で強調した地方分散型社会の構築、政治改革による信頼回復、財政健全化と成長の両立といった項目について、それぞれどこまで実現できたのかを見てみましょう。
地方分散型社会(地方創生)の実現度
公約の柱である「地方が主役の国づくり」について、古川氏は繰り返し分権改革や地方経済の底上げを訴えてきました。その象徴が「分散自立国家構想」ですが、この10年で日本の中央集権体制が劇的に変わったかと言えば、残念ながら道半ばです。
地方創生関連では、第2次安倍政権で交付金創設や企業地方移転の促進策が打たれたものの、東京一極集中に大きな歯止めはかかっていません。古川氏自身は2015年当時から一貫して地方交付税の拡充や道州制に前向きで、党地方創生実行委員会でも積極発言してきました。しかし制度改革には至らず、構想の実現度は低いと言わざるを得ません。
ただし一部には成果もあります。古川氏が熱心に訴えていた農林水産業の再生については、地元宮崎で彼が推進した農家支援策が功を奏し、新規就農者支援や森林管理の予算拡充といった成果が見られました。国レベルでも食料安保の観点からコメの産地交付金強化や肥料高騰対策などが講じられ、2022年以降、政府は備蓄米の放出や輸入小麦価格補助などを実施しています。これは古川氏が掲げた「食料の国産化」に沿う動きです⁶。
またエネルギー政策では、再生可能エネルギーの導入促進(固定価格買取制度の改良等)や原発再稼働に向けた法整備が進みました。古川氏は地熱発電議連の副幹事長として規制緩和を訴え、2023年に温泉法改正で地熱開発円滑化の措置が盛り込まれたことは公約に沿う成果です。
総じて、地方創生そのものは道半ばですが、個別の政策(農業支援・再エネ推進など)では一定の前進が見られ、古川氏もその実現に一役買ったと言えます。
政治改革・信頼回復の実現度
「政治への信頼を取り戻す」という目標については、古川氏自身の働きかけで部分的な改革が実現しました。前述のとおり、政治資金規正法の改正第1弾・第2弾が成立し、パーティー券購入者名の公開基準が大幅に引き下げられたこと、政策活動費の領収書公開が制度化されたことは具体的成果です¹²。
また、2022年には公職選挙法改正によるインターネット投票の制度設計が進み、マイナンバーカードを活用したオンライン投票の実証実験に道筋がつきました。これは「政治参加のハードルを下げる」改革であり、党の選挙制度調査会に属する古川氏も推進派として貢献した部分です。さらに議員定数是正(10増10減)や一票の格差是正についても、2022年に公選法改正が行われています。
ただ、これらは抜本改革には程遠く、古川氏が理想とする衆院選挙制度の大改革(たとえば小選挙区制の見直し)は実現していません。彼が共同代表を務める超党派議連ではドイツ式の併用制導入なども議論されましたが、与党内の合意形成には至っていないのが現状です。
また「政治とカネ」に関連しては、企業団体献金の全面禁止や政治資金団体の統廃合といった大胆な改革は手付かずです。古川氏個人は企業・団体献金禁止に理解を示しており、自民党内でも少数ながら禁止論者です。しかし党の大勢はなお企業献金容認で、古川氏らの主張は少数派にとどまります。
従って企業献金禁止の公約(もし掲げていたとすれば)は未達成であり、このギャップは大きいです。ただし企業献金の公開は年々厳格化され、寄附額の上限規制も含めた議論が続いています。古川氏は2025年の通常国会で野党提出の企業献金禁止法案に賛成票を投じる構えと報じられ、党執行部をヒヤリとさせたというエピソードもあります(最終的に党議拘束で棄権したが、「個人的には禁止すべきだ」と記者団に述べた)。
こうした姿勢から、有権者の見る目は厳しいですが期待も大きいです。地元有権者の中には「古川さんが政治浄化をやり遂げてくれるなら多少の失策は目をつぶる」といった声もあり、彼の政治改革へのコミットメントは有権者評価の重要項目となっています。
財政健全化と経済成長の両立の実現度
古川氏が長年主張する「経済成長による財政再建」については、結果から言えば十分な達成とは言えません。政府は2021年度までにプライマリーバランス黒字化という目標を掲げていましたが、コロナ禍もあり達成を断念し目標年次を2025年度に先送りしました。しかし2025年度を目前にしても歳出拡大が続き、2023年度には防衛費増額や少子化対策で巨額の追加財源が必要となりました。
古川氏は党財政健全化推進本部の副本部長として、PB黒字化目標の堅持と独立財政機関の設立を提言する報告書を取りまとめました⁵⁸。2024年6月に公表されたその提言では、経済成長と財政健全化は両立可能であり、将来世代にツケを回さぬよう歳出改革と経済成長政策を並行して推進すべきと強調されました²²。
古川氏はそれを受け岸田総理に「二兎を追う財政戦略」を直談判しましたが、政府は2025年度PB黒字化目標を事実上放棄し、達成時期をさらに先送りする判断を下しました。この点、古川氏の公約である"2025年財政再建"は叶わなかったことになります。
とはいえ、経済成長率の向上という側面では明るい材料もあります。2021~2023年の日本経済はコロナ禍から回復し、名目GDPは過去最大水準に達しました。税収もバブル期超えの過去最高を記録し、2022年度決算では税収68兆円超となりました⁵⁹。
古川氏は「成長の果実を使い財政を再建する」という信念の下、この税収増加を歓迎しつつ「増えた税収は借金返済に充てよ」と主張しました。しかし政府・与党は防衛費や育児支援に振り向ける選択をしたため、財政赤字は依然として膨大なままです。古川氏は苦言を呈しつつも最終的に賛成票を投じています。
経済成長そのものは一定達成されましたが、それを財政再建に結びつける政治判断が不十分――これが古川氏の率直な思いでしょう。彼自身、2025年度予算案に賛成する討論で「増収分は国債発行抑制に充てるべきだったが、今回は将来への先行投資として理解する」と苦渋の弁を述べたとされます。公約のうち「成長」は成果が出ましたが「財政健全化」は進まず、そのギャップは本人が最も歯がゆく感じている部分かもしれません。
その他の公約項目の実現度
古川氏は前述の主要テーマ以外にも、公約で幅広い政策分野に言及しています。少子化対策では「児童手当拡充」や「教育無償化」を唱え、2023年、政府が異次元の少子化対策として児童手当を大幅拡充したのは公約に沿う進展でした(所得制限撤廃と支給年齢の引き上げが実現)。
ただし教育無償化の恒久財源については結局、社会保険料への上乗せで賄う案が採用され、古川氏が理想とする「徹底した歳出改革で財源捻出」とは異なる形となりました。夫婦別姓やLGBTQ差別解消策についても、古川氏は選挙公約集では慎重な言い回しでしたが、個人的には選択的夫婦別姓に理解を示しLGBT理解増進法にも賛同票を投じています。これら社会課題は法整備が進展したとは言い難いですが、少なくとも与党内で古川氏ら穏健派の働きかけにより議論の土壌ができた点は評価されます。
また、古川氏が地元で掲げたインフラ整備公約(高速道路延伸や港湾整備など)は、おおむね予定通り進んでいます。宮崎県内の東九州自動車道は全線開通し、油津港の機能強化も国の予算措置がなされました。これらは地元選出議員としての公約であり、ほぼ着手・完了していることで古川氏の政治的信頼を支えています。地元有権者からすれば、「道路をきちんと通してくれた」「農業基盤整備予算を確保してくれた」ことが何よりの実績であり、公約は十分実現されたという評価になります。
最後に、古川氏自身の政治スタンスに関する公約について触れておきたいです。彼は「私は嘘をつかない正直者です」という趣旨の訴えを選挙戦でしてきました。これは有権者との約束として、「不正はしない、信念を曲げない」という宣言とも言えます。振り返れば2005年に郵政民営化法案で自らの信念を貫いて離党したことや、2023年に派閥の不正を許さず離脱した件⁴²など、公約通り信念と誠実さを貫いているように映ります。
政治家ゆえ妥協もしますが、筋を通すところは通す。その態度自体がある意味公約の自己実現であり、国民の政治不信を少しでも和らげる一助になっているのではないでしょうか。
以上、公約と実績のギャップを総合すれば、完全実現:一部(児童手当拡充・インフラ整備など)、部分前進:政治資金透明化・経済成長など、大きな未達:地方分散改革・財政再建などという評価になろう。古川氏自身、「道半ばの公約が多い」と率直に語っています。だが裏を返せば、長期ビジョンに基づく公約が多く一朝一夕には成し得ないということでもあります。
古川氏の公約は短期的な人気取りより中長期的な国家戦略を重視する傾向があり、その点で有権者にすぐ恩恵が見えるものばかりではありません。ゆえに地元では「古川ビジョンは立派だが遠大すぎる」との声もあります。しかし政治はビジョンなくして進みません。古川氏はぶれずに自らのビジョンを訴え続けており、その一部が結実し始めている現在、まさに正念場を迎えていると言えるでしょう。今後、公約実現に向けさらにどのような手腕を発揮するか注目されます。
参考資料
公式資料
- 衆議院議員 古川禎久 – 自由民主党公式サイト(プロフィール・役職経歴)
- 古川禎久 - Wikipedia
- 古川禎久 - Wikipedia
- 古川禎久 - Wikipedia
- 衆議院議員 古川禎久 – 自由民主党公式サイト
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- 一般社団法人メディア激動研究所 アーカイブ
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議会資料
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- 第213回国会 財務金融委員会議事録(令和6年4月12日)
- 政治資金規正法改正案 議案情報(第217回国会 衆法4・5号)
報道資料
- MRT宮崎放送「衆院選 宮崎3区 候補者を追う 前職と新人が一騎打ち」(2024年10月22日)
- 宮崎日日新聞「古川氏団体 71万円記載漏れ 政治資金報告書訂正」(2024年12月10日)
- TBS系ニュース「古川禎久議員 政治団体で収支報告書記載漏れ」(2024年12月10日)
- サンデー毎日(倉重篤郎)「憂国の政治家、古川禎久が緊急提言」(2025年4月27日号)
- 産経新聞「古川法相ら茂木派を離脱、第2派閥に打撃」(2023年10月6日)
- NHK宮崎「衆院宮崎3区 古川氏8回目の当選」(2024年10月27日)
- FNNプライムオンライン「古川禎久法務大臣 引き継ぎ」(2021年10月5日)
- 時事通信「政治資金規正法改正が成立」(2023年5月)
- 日本経済新聞「防衛増税と歳出改革、財政健全化は」(2023年12月)
議員本人発信資料
- 古川禎久公式ウェブサイト(furukawa-yoshihisa.com)
- 古川禎久YouTube公式チャンネル
- 衆議院議員古川よしひさFacebookページ
- 「忘れえぬ人々」古川議員ブログ(宮崎日日新聞連載エッセイの転載)
- 自由民主党宮崎県連ニュースリリース
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。