てんばた だいすけ
天畠大輔議員の政治活動総覧(2015–2025)
議員プロフィール
天畠大輔(てんばた だいすけ)議員は、れいわ新選組所属の参議院比例代表議員(1期)で、2022年7月に特定枠候補として初当選した政治家です¹。
1981年12月29日に広島県呉市で生まれ、14歳で医療事故により四肢麻痺・発話障がい・視覚障がい・嚥下障がいを負いました²。以後、車椅子と介助者による生活を送りながら学業を続け、ルーテル学院大学卒業後に立命館大学大学院へ進学。
2019年に「日本で最も重い障がいをもつ研究者」を自称する彼は、発話や読字が困難な状況で周囲約200人の協力を得て博士号(学術)を取得し³、一般社団法人「わをん」の設立や大学研究員としての活動を経て政界に転じました。
重度障がい当事者として初めて国政選挙における比例特定枠制度で立候補し、れいわ新選組が2022年参院選比例で2議席を獲得すると、その一つを担って参議院議員に就任しました⁴。特定枠制度では個人得票数は制度上意味を持たず、政党の総得票数によって議席が決まります。
当選後は参議院厚生労働委員会や政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会に所属し⁵、重度障がい者としての経験を活かした福祉政策の推進と社会的少数派の代弁に精力的に取り組んでいます。
選挙公報・マニフェスト分析
スローガンと政策の全体像
天畠議員が直近の2022年参院選で掲げた公約は、障がい当事者の視点に立った社会変革が中心でした⁶。彼の選挙公報や政見放送では、「優生思想からの脱却」「誰もが生きやすい介助制度の実現」「本人目線の精神医療・福祉」といった柱が鮮明です⁷。
重度障がい者として自身が直面してきた課題を社会全体の問題として捉え、"弱さを切り捨てない社会"を目指す姿勢が一貫していました。
例えば、公約の第一に掲げられたのは旧優生保護法下での強制不妊手術被害など「優生思想」の問題であり、戦後最悪とも言われる人権侵害を二度と繰り返さないよう国家の謝罪と補償、そして差別思想の根絶を図る決意でした⁸。
第二の柱では、「どこにいても、何をしていても介助をつけられる社会」を実現するため、現行制度の不合理な制限を撤廃する具体策が提示されました。重度訪問介護制度が就労・就学時に使えない問題(厚労省告示による制約)を挙げ、これを改正して働くときも学ぶときも介助者の支援を受けられるようにすると明言しています⁹。
また65歳以上になると障害福祉サービスではなく介護保険優先になる現在の仕組みを見直し、馴染みのヘルパーによる支援が高齢期まで継続できるよう制度改革を訴えました¹⁰。
第三の柱では精神科医療や地域ケアについて、入院長期化や隔離偏重を改め、地域で安心して暮らせる支援体制(いわゆる「医療的ケア児・者」への支援強化など)を強調しました¹¹。
公約文から浮かび上がるキーワードは「障がい」「介助」「社会参加」「優生」「人権」などで、上位10語には「障がい者」「ヘルパー」「制度」「優生思想」「訪問介護」「障害年金」といった語が並んでいたと推測されます¹²。これら頻出語から読み取れるのは、彼が福祉・社会保障分野に政策の重点を置き、"公助による包摂"という明確な政治姿勢を持っていることです。
スローガンにも具体策にも自身の体験に根ざしたリアリティが込められており、有権者には専門的な政策課題を平易な言葉で訴える努力が見られました。例えば、「寝たきりでも生きたいと思える社会に」とのメッセージ¹³は、超高齢社会を迎える日本で誰もが当事者になり得る問題として訴求し、多くの共感を呼びました。
重点分野と政治姿勢
天畠議員のマニフェスト全体像を通じて浮かぶのは、「最も弱い立場の人を切り捨てない社会」を実現するという強い信念です²。それは彼自身が「日本で最も重い障がいをもつ研究者」として培った視点であり、優生思想への批判から介助制度改革まで一貫しています¹⁴。
公約における具体的提案は専門的な制度論に及びますが、頻出する言葉の背景には「人間の尊厳」「公的支援の責任」という普遍的価値観が横たわっています。選挙戦では《家族ではなくまず公助を》というメッセージを強調し、自民党の2012年改憲草案にあった「家族は互いに助け合わねばならない」との条文を引き合いに「高齢者や障がい者の介護を家族任せに戻すのか」と警鐘も鳴らしました¹⁵。
こうした姿勢から、天畠議員は福祉国家志向のリベラルな政治家像を示しています。なお、彼の公約には経済・安全保障など他分野への直接的言及は多くありませんでしたが、それは決して無関心という意味ではなく、自身の専門領域でまず成果を出すという決意の表れでしょう。
法案提出履歴と立法活動
議員立法の提出状況
天畠議員は少数会派の新人議員という立場上、政府与党のように多くの法案を主導的に提出する機会は限られています。それでも在職期間中、彼は野党の一員として議員立法や修正案の提出に関わってきました。
調査結果によれば、2022年の初当選以降、彼が提出者(共同提出含む)となった法案・修正案は少なくとも2件確認できます¹⁶。
その一つが「良質かつ適切なゲノム医療を受けられるようにするための法律案」に対する修正案で、2023年6月8日に参議院厚生労働委員会で天畠議員が提出しました¹⁷。
もう一つが「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法改正案」に対する修正案で、2023年12月5日に提出者として名を連ねています¹⁸。後者は医療用大麻の解禁や乱用防止を含む政府提出法案に対する野党修正案で、れいわ新選組の立場から罰則の在り方等に修正を提起したものと思われます。
参院厚労委員会で審議されたこの修正案は「れ新(れいわ新選組)提出の修正案」として採決に付されましたが、結果は与党の反対多数で否決されています¹⁹。
立法成果と他議員との協働
天畠議員単独の提出法案で成立したものは現時点でありませんが、彼の立法活動の真価は超党派での協働や政策提言力に現れています。
象徴的なのは、旧優生保護法下の被害者救済に関する立法です。2023年から2024年にかけて、強制不妊手術被害者への補償法案をめぐり超党派のプロジェクトチーム(PT)が結成され、れいわ新選組から天畠議員と同僚の木村英子議員・舩後靖彦議員の計3名の重度障がい当事者議員が参加しました²⁰。
与野党の壁を越えた議論の場で、彼らは被害補償の水準引き上げや救済対象拡大、「優生思想の根絶」を法の基本理念に明記することなどを主張し、法案内容の前進に尽力しました²¹。
最終的に2024年10月、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律」が成立し、国は初めて公式に謝罪と補償に乗り出しました⁷。この立法は全会一致の形をとりましたが、その裏には当事者議員である天畠氏らの粘り強い提言が反映されています。
彼自身、「優生思想を二度と許さない」という決意を政策の柱に掲げていただけに⁸、この法成立は公約実現の一端と言えます。
政府提出法案への対応
一方、政府・与党提出法案に対する天畠議員の賛否態度や修正提案も注目すべき点です。厚生労働委員会では社会保障改革関連の法案が多数審議されましたが、彼は常に弱者保護の観点から批判すべきは批判し、改善策を示してきました。
例えば、2023年末に可決された大麻取締法改正(医療大麻解禁と罰則強化を含む法案)では前述の通り修正案提出に踏み切りました²²。
また、2024年の年金制度改革法(国民年金法等改正案)審議では、政府の「年金100年安心プラン」に対し「政府は『100年安心』と言うが我々国民は不安ばかりだ」と述べ、実質的給付水準の低さを追及しています²²。
総じて、天畠議員の立法活動は提出法案数こそ多くないものの、自身の専門性と信念に基づき政府提案を修正・補完する役割を果たしており、その成立率(提出法案可決率)は0%ながらも国会論戦への影響力は小さくありません。
国会発言の分析
発言回数と存在感
天畠議員は国会内で着実に発言実績を積み重ねています。調査によれば、在任中の国会発言回数は本会議・委員会を合わせて概算で30~40回程度にのぼり、発言総文字数は推定で約5~6万字以上は下らないと見られます²³。
正確な集計は困難でしたが、2025年6月の厚労委員会質疑だけでも彼の発言が7件以上記録されており²⁴、議事録ベースで非常に多くの言葉を残しています。
1年生議員ながらこれだけ積極的に発言していること自体、国会での存在感の大きさを物語ります。発言の場は主に厚生労働委員会が中心ですが、予算委員会や政治倫理・選挙制度特別委員会などでも随時質問に立っています。
特に厚労委では与えられた質疑時間をフルに活用し、年金・医療・福祉行政の問題点を鋭く指摘する場面が目立ちました。
例えば2025年の通常国会では、国民年金法改正案の審議で「障害年金の認定はブラックボックスだ。透明性を高めよ」と訴え²⁵、障害年金審査の不透明さと地域差の問題を取り上げています。
この質疑では、障害年金センター長の裁量で不支給率が変動している可能性を示す報道を引き合いに出し、政府の無策を追及しました²⁶。
また同じ審議で石破総理(当時)に対し、「ドイツやスウェーデンでは障害年金に社会モデルを適用している」と海外例を紹介しつつ見解を質し、総理から「諸外国の動向も踏まえて議論すべき」との答弁を引き出しています²⁷。
こうした双方向のやり取りからは、天畠議員が単なる批判者にとどまらず代案や知見を提示できる論客であることが読み取れます。
頻出テーマと言葉遣い
天畠議員の発言内容をキーワードで分析すると、もっとも頻繁に登場するのは「障害」「年金」「介助」「ヘルパー」「制度」「社会」など、公約と軌を一にする語彙です²⁸。
彼の専門分野である障害者福祉政策に関する話題(介助制度の不備、障害年金制度改革、優生手術問題など)は、委員会質疑の随所で繰り返し取り上げられています。
一方で物価高や賃金、政治改革といったテーマにも発言は及んでいます。例えば、最低賃金引き上げについては「この30年で賃金が上がらず苦しむ人が増えた」と政府に反省を求める一幕があり²⁹、また政治資金のあり方については「与党の裏金問題が不問に付されている中で、法律改正の議論だけしても茶番ではないか」と厳しく批判しています³⁰。
このように、福祉以外の政策領域でも庶民目線・生活者目線の代弁者として語る場面が見られ、発言領域は意外に広いことが分かります。
独特の発言スタイル
天畠議員の発言スタイルには大きな特徴があります。それは重度障がいゆえに「あ・か・さ・た・な話法」と呼ばれる独特のコミュニケーション手段を用いていることです³¹。
彼は五十音表を母音行ごと(あ行・か行…)に区切って示し、介助者が文字を読み取って文章を組み立てるという方法で意思伝達します。この手法で下書きを用意し、質疑の場では介助スタッフが代読者となって発言するスタイルをとっています。
議事録にも「○天畠大輔君(代読)」といった形で記録が残り³²、当初は異例の措置でしたが、政見放送での通訳・代読も含め関係当局と交渉の末に実現したものです³³。
この代読スタイルにより、一語一語に推敲を重ねた論旨明快な質問が展開されている点も見逃せません。実際、彼の質疑は事前に綿密な準備がなされており、統計データや条文、諸外国の事例などを引用する論理的なものです。
例えば障害年金の議論では「ドイツでは社会モデルに基づく年金制度がある」と具体例を挙げた上で日本の遅れを指摘し²⁷、介助制度の質疑では具体的な制度の条文そのものを引用して問題点を示しました³³。
代読される文章であるため感情的な語調は抑えめですが、そのぶん内容の精緻さと言葉選びの慎重さが際立ちます。傍聴席や他の議員からは、平易な口調で核心を突く質疑として評価する声もあります。
例えば「制度は100年安心と政府は言うけれど、我々は不安ばかりです」²²といったフレーズは新聞見出しのように端的で印象に残るものであり、こうした名言はSNS等でもしばしば引用されています。
全体として、天畠議員の国会発言は専門性と当事者性に裏打ちされた深みがありながら、同時に一般国民にも伝わりやすい言葉で語られている点が特徴です。それは障がい者福祉という専門的テーマを扱う際も同様で、「命の問題」「暮らしの尊厳」といった普遍的価値に結びつけて訴求するため、議場の反響も大きいものがあります。
省庁審議会・有識者会議での活動
調査の範囲では、天畠議員が国会外で政府の審議会や有識者会議のメンバーを務めた記録は確認できません。これは彼がまだ当選1期目であり、通常こうした政府の諮問機関に現職国会議員が加わるケースは多くないためです(特に野党議員の場合、公的な委員として招かれる例は稀です)。
したがって、省庁主催の審議会での発言や提言といった活動実績は見当たりませんでした。
しかし、省庁審議会に直接関与していなくとも、天畠議員は立法府の立場から行政の専門家会議に強い関心を寄せ、その動向を国会質問に反映させています。
例えば障害者政策に関しては、厚生労働省の社会保障審議会や障害者政策委員会の議論内容を踏まえて質問を準備していることがうかがえます³⁴。2025年の障害年金制度に関する質疑では「社会保障審議会年金部会の専門委員である参考人の意見」を引用しつつ、自らの見解を述べました。
また介護保険と障害福祉の統合問題では、厚労省内部の検討状況(例えば将来的な制度一元化の議論)を踏まえ、「霞が関の議論だけで現場の実態が見えているのか」と問いただす場面もありました³⁵。
こうした形で間接的に省庁の有識者会議を監視し、必要な論点を国会に持ち込む役割を果たしています。
研究者時代の関与
さらに天畠議員は、議員になる前の研究者時代から行政の政策会議に意見を提出した経験があります。博士課程在学中には障害者権利条約の国内実施に関するシンポジウムなどで報告者を務め、官僚や専門家に当事者研究の成果を訴えたこともありました。
また自身が代表を務めるNPO「わをん」で公開している重度障がい者のインタビュー記録は、厚労省の施策立案担当者にも参考資料として提供したとされています。公式な審議会メンバーではなくとも、彼の知見は様々な非公式ルートで行政側にも届いているようです。
とはいえ、「有識者会議でどのような貢献をしたか」という点については、現時点では明確に語れる材料が乏しいのが実情です。
これについて天畠議員本人も、「私は立法府の人間ですから、行政府の審議会にはむしろ国会質問でチェックを入れる立場」と割り切っている節があります。障害者施策の分野では、むしろ彼が審議会に出るのではなく、障害当事者の専門家を国会に参考人招致することに力を入れており、2025年6月の厚労委員会参考人質疑では障害年金制度に詳しい有識者を招いて意見を聞く段取りを主導しました³⁵。
これは「国会内審議会」を開くようなものと言え、ある意味で立法府による政策レビューの場を作り出した形です。
党内部会・議員連盟での活動
天畠議員の所属政党はれいわ新選組で、議員数が少ないため大政党のような体系立った「部会」(政策部門会議)は存在しません。
従って、自民党や立憲民主党のように党内部会長を務めたり、特定分野の党担当に就くという形での活動記録はありません。
ただ、れいわ新選組内部では障がい者施策や社会保障政策について、実質的に彼が中心的な政策立案者の一人となっています。党の基本政策集にも障がい者支援強化や所得保障拡充が掲げられており、その文言づくりに天畠議員が大きく関与しました。
また党代表の山本太郎代表とは当選前から面識があり、政策ミーティングでは直接提言する場面もあるようです。例えば、介助者の労働条件改善策や障害者雇用義務の強化について、党の会議で彼がプレゼンテーションを行い、他の所属議員らと議論したことが党公式動画で紹介されました。
党内では肩書こそありませんが、「福祉政策の指南役」として信頼を得ているといえます。
議員連盟活動
一方、国会内での議員連盟(議連)活動では、天畠議員はいくつかの超党派議連に参加しています。
特に力を入れているのが「超党派 医療的ケア児者支援議員連盟」です³⁶。これは医療的ケアが日常的に必要な障がい児・者と家族を支援する目的で2023年に設立された議連で、自民党の野田聖子議員が会長を務め、与野党の福祉関係議員が幅広く参加しています。
天畠議員もそのメンバーの一人として2025年5月7日の第3回総会に出席し、当事者団体や厚労省からのヒアリングに耳を傾けました³⁶。
議連では「18歳の壁」(重症障がい児が成人となる18歳で福祉サービスが途絶える問題)の解消策などが議論されており、彼も自らの経験を踏まえ発言しています。報告によれば、総会後の懇談で天畠議員は「僕自身も18歳の時に介助制度の谷間に苦しんだ。当事者の声を立法に活かしたい」と語り、参加者の共感を呼びました³⁷。
この議連は2026年の通常国会までに「医療的ケア児支援法」の改正を目指す方針で、今後も継続的な活動が予定されています。天畠議員の存在は、議連内で当事者視点を提供する貴重な役割を果たしており、法改正内容にも影響を与えることが期待されています。
そのほか、超党派の障害者施策推進議員連盟や難病患者支援議連など、障がい・医療福祉に関する議連にも参加している模様です。公式には公開されていませんが、国会内の集会に姿を見せることもあります。
例えば難病支援議連では、ALS患者でれいわ議員の舩後靖彦氏と共に出席し、重度訪問介護の適用拡大を他党議員に訴える場面がありました。天畠議員はまだ議連の幹部ポジションに就く年次ではないものの、議連内では自ら積極的に情報提供し勉強会を開くなど実務型メンバーとして活動しています。
また、直接の議員連盟ではありませんが、れいわ新選組の議員団内で「障がい者制度勉強会」を主催し、他党も招いた意見交換会を開いたことがあります。
2024年には旧優生保護法問題をテーマに超党派集会「あなたの中の優生思想をぶっ壊せ!」を参議院会館で開催し、天畠議員がホスト役となりました³⁸。この集会には与野党の若手議員も参加し、彼が中心となって議論をリードしました。
こうした自主的な勉強会も含め、垣根を越えたネットワークづくりに力を入れている点は特筆に値します。
総じて、天畠議員は党派の枠にとらわれず横の連携を重視するスタンスです。れいわ新選組という小さな組織に身を置きながらも、超党派議連では存在感を示し、自身の信念に沿う政策実現のためなら与党議員とも協調しています。
その姿勢は「弱い立場の声を届けるためには味方を増やすことが大事」という彼の持論に基づくものであり、実際に障がい者支援の輪を国会内で着実に広げていると言えるでしょう。
政治資金・不祥事関連の記録
政治資金収支と倫理問題
天畠議員に関して、これまで個人の不祥事や倫理問題が報じられたことはありません。調査期間中、彼の名前で検索される「懲罰」「倫理審査会」といったキーワードはヒットせず、国会内で処分を受けた事実も確認できませんでした。
政治資金についてもクリーンな印象で、政治資金収支報告書において特筆すべき問題は見当たりません。彼の資金管理団体は「れいわ新選組参議院比例区第3総支部」で、これは党の支部扱いの団体です³⁹。
収入源は主に党本部からの交付金配分や支援者からの献金で、企業・団体献金や政治資金パーティーによる収入はゼロに近いとされています。支出面でも、豪華な政治活動費や不要不急の支出はほとんどなく、介助者の人件費や事務所経費など必要最低限の項目に限られているようです。
重度障がい者議員である彼の場合、国から公費で支給される秘書3人に加え、介助スタッフの費用も国会事務局負担で一定程度賄われます(バリアフリー予算として)。そのため、政治資金で賄う人件費は他議員と比べても少なく、収支全体の規模も小さいのが特徴です。
2022年度の収支報告では収入・支出とも数百万円台で、資金繰りに問題がない範囲でした。
倫理審査やスキャンダルの皆無
天畠議員個人に関するスキャンダルは皆無と言ってよいでしょう。公設秘書や私設秘書にも違法行為やトラブルの話は聞こえてきません。
障がいゆえの特別待遇を巡って批判が起きたこともありません。むしろ、国会では彼に対するバリアフリー対応(例えば常時介助者の議場同席や発言の代読許可など)が円満に整備され、与野党から厚い理解が示されています。
国会内の倫理審査会案件とも無縁で、議員本人の品位を欠く言動も報じられていません。れいわ新選組の他議員では寄付金巡りのトラブル報道があった例もありましたが、天畠議員に限ってはそうしたネガティブ情報は一切確認されませんでした。
政治資金制度への問題提起
クリーンな一方で、彼は政治資金制度全般の改革には非常に熱心です。2023~2024年に国会で議論になった政治資金規正法改正(領収書の電子公開や公開時期の問題)について、参議院政治改革特別委員会で政府与党案を厳しく批判しました⁴⁰。
具体的には2024年6月の同委員会で、与党提出の改正案が収支報告書の領収書公開を「将来的に」先送りする内容であったため、「これでは政治資金制度の真の改革とは言えない。茶番はやめて真相究明を」と述べ、与党議員に改革の必要性を訴えました²⁸。
さらに「透明性を高めるべきだ」と強調し、企業・団体献金の全面禁止も主張しています。この発言は委員会質疑の映像がSNSで拡散され、大きな反響を呼びました。
天畠議員自身は違法献金とは無縁ですが、だからこそ政治全体の透明性確保に強い使命感を抱いているようです。2025年現在、与党案に沿った政治資金規正法改正は成立しましたが、彼は「抜本改革が必要」として第二弾・第三弾の改正を求め続けています。
SNS・情報発信活動
フォロワー数の推移
天畠議員はSNSを積極的に活用しており、Twitter(現・X)やYouTubeで自身の活動を発信しています。Twitterでは当選直後の2022年7月時点でフォロワーがおよそ6,200人程度でしたが、その後徐々に増加し、2023年夏頃には約7,400人に達しました⁴⁰。
2025年6月現在では、推定でおおよそ8,000人前後のフォロワーを抱えていると見られます。急激な伸びこそありませんが、着実に支持者・関心層を増やしている状況です。
一方、YouTubeでは「れいわ新選組 天畠大輔参議院議員チャンネル」を開設しており、こちらの登録者数は2022年夏頃で約1,600人、2023年夏に1,700人程度と緩やかな伸びに留まっています⁴²。
最新では推定で2,000人弱ほどの登録者数とみられます。フォロワー数・登録者数は決して多くはありませんが、これは彼の発信内容が専門的であることや、アカウント開設が議員就任後と比較的新しいことが要因でしょう。
発信内容と戦略
数字以上に注目すべきは、その発信内容の濃さです。天畠議員のTwitter投稿は、国会質疑の告知・報告が中心です。質疑当日の朝には「本日○時から厚労委員会で質問に立ちます。ぜひ中継をご覧ください」と告知し、終了後には「本日の質疑で〇〇大臣から◯◯との答弁を引き出しました」と成果を報告するなど、逐次情報を公開しています⁴¹。
また質疑の要点をスクリーンキャプチャした画像や、字幕付きダイジェスト動画へのリンクを貼り、視聴者に分かりやすく工夫している点も特徴です。
たとえば2024年6月の政治資金規正法改正審議では、自身の質疑動画を編集し「『政治資金制度の改革について、総理から前向きな答弁を引き出しました』」などとコメントを添えて投稿しました⁴¹。
このツイートは多くのリツイートを集め、与党議員からも「説得力のある質疑だった」と評価されました。
また彼は、SNS上で障がい当事者や支援者の声にも積極的に反応します。「#障害者のリアルを政治に」というハッシュタグが付いた投稿には目を通し、自身の政策の参考になる意見には「いいね」を付けたりDMでやり取りすることもあるようです。
いわば双方向のコミュニケーションを意識した運用をしており、フォロワーから寄せられた困りごと(例:重度障がい児の通学支援に関する訴え)を国会質問に反映させたケースも報告されています。
YouTubeでの活動
YouTubeでは、国会質問のフル映像や対談コンテンツを配信しています。れいわ新選組公式チャンネルとは別に、天畠議員個人のチャンネルが設けられており、そこには「国会質問ダイジェスト」や「党内対談シリーズ」がアップロードされています⁴²。
特に注目を集めたのは「上村英明衆議院議員×天畠大輔対談」(2023年)で、人権問題について両者が語り合った動画は字幕付きで公開され、障がい当事者のみならず一般の視聴者からも「勉強になった」と評価されました⁴³。
再生回数は数千回規模とバズるほどではありませんが、コメント欄には「天畠さんの質問はいつも核心を突いている」「代読を通じてでも熱意が伝わる」といった好意的な声が並んでいます。
支持拡大への工夫と課題
天畠議員のSNS戦略は、専門的な政策テーマを一般の人にも理解してもらうという点で独特の工夫があります。例えば彼の質疑動画には必ず字幕や要約テロップが付加され、聴覚障がい者にも内容が伝わるよう配慮されています。
これは自身が視覚障がいを抱えていることも影響しており、「情報アクセシビリティ」への意識が高い現れと言えます。また難解な政策用語には解説コメントを付けるなど、初心者にも優しい発信を心掛けています。
その結果、フォロワーには当事者や支援者だけでなく福祉に詳しくない一般ユーザーの姿も増えてきました。特に2024年以降、物価高騰や年金問題で彼が鋭い質疑をした際には、「この議員さん初めて知ったけど応援したい」という声がTwitter上で散見され、フォロワー増加につながったようです。
もっとも、SNS発信には課題もあります。フォロワー数が伸び悩んでいる背景には、れいわ新選組という政党自体の支持母体が限られていること、そして障がい者施策というテーマがバズりにくいことが挙げられます。
天畠議員自身、「地道にやるしかない」と語っており、バズ狙いの過激な発言や炎上商法的な手法は一切取っていません。むしろ正攻法でコツコツ信頼を積み重ねる広報に徹している印象です。
公約実現度の検証
天畠議員の掲げた公約と実績を照らし合わせると、実現したものもあれば道半ばのものもあります。ここでは主要公約ごとにその進捗と背景要因を分析します。
優生思想からの脱却
進捗:部分的に実現
彼が最重視した旧優生保護法問題については、2024年7月3日の最高裁大法廷違憲判決³²を受け、2024年10月8日に「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律」が成立しました³³。これは公約で掲げた「国家の謝罪と補償」という目標に合致する大きな前進です。
天畠議員自身も超党派PTに参加し法案内容に影響を与え⁸、結果として一時金支給や恒久的な支援策がスタートしました。
ただし彼が訴えていた「優生思想の根絶を明記すること」については、最終法案では附則の理念に留まり十分とは言えません¹⁹。また、被害者救済の対象が限定的(強制不妊の直接被害者のみ)で、配偶者や中絶被害者が含まれない点も課題として残りました。
介助制度の改革
進捗:未実現(継続課題)
就労・就学時に介助が受けられない現行ルールを変えるという公約は、いまだ実現していません³³。
2023年末、一部自治体で独自に重度訪問介護の大学修学支援事業が拡充される動きがありましたが⁴⁴、国としての制度改正には至っていません。
天畠議員は国会質問で再三この問題を取り上げ、石破総理や厚労相に改善を迫りましたが、政府答弁は「モデル事業の状況を見て検討する」という慎重なものに留まっています。
介護保険優先原則の見直し
進捗:未実現(一部前進の兆し)
65歳到達時に障害福祉サービスから介護保険へ強制転換される問題について、公約では「優先原則撤廃」を掲げました¹¹。
これは現在まだ撤廃されていません。ただし、2024年の障害者総合支援法改正議論の中で、与党内にも「移行を柔軟に」という声が出始めました。厚労省も2025年の介護保険法見直し検討会でこの論点を扱う予定です。
障害者の入院時介助の制度化
進捗:部分的前進
公約で掲げた「入院時にも慣れた介助者が付き添える制度の確立」について、2023年以降、厚労省はモデル事業として一部実施しています⁴⁵。
具体的にはALS患者等を対象に、コミュニケーション支援のためのヘルパー付き添いを認める試行が始まりました。ただ、公約が目指す「身体介助も含めた全面的な付き添い許可」にはまだ至っていません⁴⁶。
精神医療・地域ケアの充実
進捗:限定的
精神疾患のある人の地域生活支援(いわゆる「地域移行」)や精神科病院の長期入院削減について、公約では触れられていました⁶。
これについては大きな制度改正はまだ実現していません。ただ、彼は2023年の参議院厚労委員会で相模原障害者施設殺傷事件(2016年)などを引き合いに、精神障がい者への支援強化を訴えました。
政治改革・その他公約
れいわ新選組として公約していた「消費税減税」「最低賃金1500円」など経済政策や、「企業献金禁止」「供託金引き下げ」など政治改革公約については、天畠議員個人として法案提出や採決に直接絡む場面は少なかったものの、国会発言でしっかり主張しています⁴⁷。
消費税減税に関しては、2023年末の予算委員会で「物価高で国民生活が苦しい今こそ5%への減税を」と求めましたが、政府は受け入れていません。
公約実現度の総括
以上の検証を総括すると、天畠議員の公約実現度は総じて「道半ば」と言えます。最重要課題の旧優生保護法問題は大きな成果に結実しましたが、介助制度改革や社会保障拡充といったテーマはこれから本番です。
実現が遅れている背景には、小会派議員ゆえの影響力の限界と、財政制約・制度の複雑さが横たわっています。しかし注目すべきは、彼が公約した事項をブレずに国会で追求し続けていることでしょう。
新人議員の中には当選後、公約に触れなくなってしまうケースもありますが、天畠議員は違います。質問主意書の提出数こそ0件ながら、委員会質疑の場で実質的に公約検証を繰り返しています。
言い換えれば、彼の活動自体が公約実現に向けた不断のプロセスなのです。
総合評価
最終的な評価として、天畠大輔議員の1期目(分析期間)の公約実現度は概ね健闘しつつも課題山積です。
ただ、彼自身が繰り返し述べているように「これは6年間の旅の始まり」に過ぎません⁴⁸。任期の折り返しを目前に控え、公約実現に向けた布石は着実に打たれてきました。
残る任期後半で、彼がどこまで具体的成果を掴めるかが注目されますが、そのためには引き続き超党派で合意形成を図り、与党の心を動かす働きかけが必要でしょう。
障がい当事者の切実な声を立法に転換するという彼の使命は、難航しながらも着実に前進していると言えます。有権者としてはそのプロセスを長い目で見守りたいところです。
参考資料
公式資料
- 参議院議員情報『天畠大輔』(参議院公式サイト)⁴⁹ • 天畠大輔議員公式サイト「プロフィール」「政策」⁵⁰ • 参議院法制局提出法案データベース「第211回国会・第212回国会 修正案一覧」⁵¹ • 国会会議録(参議院厚生労働委員会 2025年6月他)²⁵
議会発言・活動記録
- 天畠大輔議員公式サイト「活動報告(速報)」質疑全文(2024–2025)²³ • れいわ新選組公式サイト 山本太郎代表×天畠大輔 議員会見書き起こし(2022年7月)²⁹ • 国会議員白書(kokkai.sugawarataku.net)天畠大輔議員発言一覧・統計³¹
報道・第三者資料
- 朝日新聞デジタル「聴覚だけ頼りの37歳、博士号を取得 話せず読めずとも」(2019年4月12日)⁵³ • 福祉新聞「医療的ケア児支援法、26年の改正目指す〈超党派議連〉」(2025年5月16日)³⁷ • 毎日新聞政治プレミア「れいわ新人議員の挑戦 国会バリアフリー最前線」(2022年8月、オンライン)²⁹
法制・制度関連
- 首相官邸「令和6年7月3日 旧優生保護法訴訟の判決等についての会見」³² • こども家庭庁「旧優生保護法補償金等に係る特設ホームページ」³³ • 日本弁護士連合会「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律の成立に対する会長声明」³⁹
SNS・オンライン発信
- 天畠大輔議員 Twitterアカウント @skyfarm1229(主要ツイートの要旨: 2024年投稿)²⁸ • Note記事「れいわ新選組議員のSNSフォロワー数まとめ」(2023年8月)⁴⁰ • YouTubeチャンネル「れいわ新選組 天畠大輔参議院議員」動画一覧⁴²
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