おつじ かなこ
尾辻かな子議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
尾辻かな子(おつじ・かなこ)議員は、立憲民主党所属、近畿ブロック選出(大阪府第10区)の衆議院議員です¹。1974年奈良県生まれ、同志社大学商学部卒業後に社会福祉士・介護福祉士として活動しました。
2003年に大阪府議会議員に初当選し、在任中の2005年には日本で初めて同性愛者であることを公表した議員として注目を集めました。2007年に府議を退任して第21回参議院選挙に民主党から立候補しましたが惜敗。その後2013年5月、民主党参議院議員の辞職に伴い比例代表で繰り上げ当選し参議院議員(1期)を務めました。
しかし同年7月の参院選には出馬せず任期満了。2017年、第48回衆議院選挙で立憲民主党公認として大阪2区から立候補し、小選挙区では敗れたものの比例近畿ブロックで復活し衆議院議員に初当選しました。この間、党大阪府連幹事長や大阪府連代表代行など党内役職も歴任しています。
しかし2021年の第49回衆院選では大阪2区で再び落選し、一時議席を失いました。浪人中は一般社団法人「LGBT政策情報センター」代表理事として活動しながら政治復帰を目指し、2024年の第50回衆院選では選挙区を大阪10区に鞍替えして立候補。小選挙区では僅差で敗れましたが惜敗率74.06%で比例復活し、3年ぶりに国政に復帰しました²。
通算当選回数は衆議院2期・参議院1期(繰上当選)で、在職期間は本稿執筆時点(2025年8月)で衆議院議員として通算約4年8ヶ月になります(2017年~2021年の約4年間と2024年復帰後の約8ヶ月を合計)。
尾辻議員は一貫してリベラル志向の政治家であり、党内では多様性に関する政策検討に携わり、社会的少数者の権利擁護に取り組んできました。学歴では同志社大時代に米国へ留学した経験もあり、多様性尊重の価値観を早くから培ったと言われます。前職の社会福祉士として福祉現場に関わった経験から、「誰も置き去りにしない社会」を信条に掲げ、弱者支援や格差是正をライフワークとしています。
また、自らのカミングアウト経験を踏まえ、LGBTQ当事者の視点で同性婚制度の実現や差別解消にも尽力してきました。国政での専門分野は主に社会政策や人権、消費者問題で、現在は衆議院の国土交通委員会委員および消費者問題に関する特別委員会理事などを務め、党の政務調査会副会長として政策立案にも関与しています¹。
本レポートでは、2015年から2025年8月までの10年余りの尾辻議員の政治活動を俯瞰し、選挙公約の分析から立法活動、国会発言、党内活動、政策実現度に至るまで詳細に検証します。その目的は、有権者が本議員の歩みとスタンスを正しく理解し評価する一助とすることにあります。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
尾辻議員の直近の公約は、2024年10月の第50回衆院選における選挙公報や政策チラシに凝縮されています。そのスローガンは「誰も置き去りにしない社会へ。」で、一貫して弱い立場の人を守る姿勢が前面に出ていました。
公報には大きく三本の柱が掲げられています。第一に「お金にクリーンな政治の実現」です。「裏金・おねだり政治を許さない」というフレーズで、自民党の不祥事や金権体質を厳しく批判し、政治資金の透明化や議員特権の見直しを訴えました。
たとえば、国会議員の文書通信交通滞在費(旧「文通費」)の領収書公開や、地方議員の政務活動費(「政策活動費」)の廃止、政治家本人への厳罰化、外部監査機関の導入など具体的なクリーン政治策を公約に明記しています。こうした政治改革への言及は「まっとうで透明性ある政治」を掲げる立憲民主党の基本方針とも合致し、尾辻議員自身の強い信念でもあります。
第二の柱は「教育・医療・介護の無償化」です。尾辻議員は、幼稚園から大学まで一貫した教育無償化の必要性を主張し、さらに医療費や介護費の自己負担減免などを含めた社会保障の拡充を公約に掲げました。実際、公報では「高校無償化」にとどまらず私立高校の授業料無償化や、介護・保育従事者の待遇改善など幅広い政策が列挙されており、子育て世代や高齢者が安心できる支え合い社会の実現に重点が置かれていました。
これは本人が福祉現場出身であることも反映したもので、「自己責任にさせない社会」を作るという強いメッセージにつながっています。公約キーワードの上位にも「無償化」「子ども」「介護」といった語が並び、社会保障・少子化対策への力点が読み取れます。
第三の柱が「大阪の行政施策の見直し」、すなわち地元課題への取り組みです。具体的には2025年開催の大阪・関西万博や大阪府のIR(カジノ)計画に対する批判を公約に盛り込みました。尾辻議員は「裏金政治や万博・カジノにばかりお金を使う政治を変えましょう」と街頭でも訴え、巨額の税金投入が見込まれる万博・IRよりも生活支援を優先すべきだと主張しました。
大阪万博の費用膨張やIR誘致を推進する与党府政への強い対抗姿勢は、公報にも「万博・カジノの○○※(後略)」と記され、地元有権者に「暮らしを守る政治」への転換を呼びかけています。
さらに彼女自身がLGBT当事者であることから、多様性の尊重も公約の重要テーマでした。選挙公報ではスペースの制約上直接的な表現は多くありませんでしたが、候補者アンケートなどでは「性的指向・性自認に関する人権保障策を公約に記載している」と明言しており、同性婚の法制化やLGBT差別禁止法の制定にも取り組む意欲を示しています。
実際、2019年には立憲民主党など野党が初めて提出した「婚姻平等法案」(同性婚を可能とする民法改正案)の中心メンバーが尾辻議員であり、こうした実績からも多様性推進が彼女の政治信条の核であることが伺えます。
以上のように、尾辻議員のマニフェストは「クリーンな政治」「手厚い社会保障」「多様性尊重・人権擁護」という3点に重点が置かれていました。頻出キーワードの上位には「無償化」「政治」「支援」「差別禁止」「透明性」などが並び、格差是正と公正な政治への強いコミットメントが見て取れます。
これらから浮かび上がる政治姿勢は、弱者に寄り添い寛容で、公権力の私物化を許さないという明快なものです。公約全体を通じて、尾辻議員は「誰一人取り残さない」包摂的な社会の実現と、「腐敗のない開かれた政治」を二本柱として訴えていると言えるでしょう。
2. 法案提出履歴と立法活動
尾辻議員の立法活動を見ると、野党議員として限られた立場ながらも社会のニーズに応える数々の議員立法を提出してきたことが分かります。衆議院議員在任中(2017~2021年、および2024年以降)、彼女が提出者に名を連ねた法案は少なくとも6本ありました。その背景には、与党だけに頼らず立法府から政策を立案するという気概が伺えます。
職場のハラスメント禁止法案
初めての提出法案は、2019年の通常国会(第198回)において提出された「業務等における性的加害言動の禁止等に関する法律案」です。これは職場におけるセクハラ行為を防止・処罰するための議員立法で、当時#MeToo運動が広がる中、立憲民主党の西村智奈美議員を筆頭に尾辻議員ら野党議員が共同提出しました。
成立すれば日本初の包括的な職場のハラスメント禁止法となる画期的な内容でしたが、残念ながら与党の慎重姿勢もあり国会で可決には至りませんでした。それでもこの法案提出は、政府・与党にハラスメント対策強化を促す圧力となり、のちに政府が職場のパワハラ防止法制を整備する一助ともなったと評価されています。
尾辻議員自身も「声を上げた公益通報者(内部告発者)を真に保護できる法改正を」と国会で訴えるなど、ハラスメント・内部告発保護の制度改革に一貫して取り組んでいます。
婚姻平等法案
同じ2019年6月には、尾辻議員が中心となって画期的な「婚姻平等法案」(同性婚を可能にする民法改正案)が提出されました。立憲民主・共産・社民の野党3党による共同提出で、同性カップルにも法律上の結婚を認め、戸籍上の表記も「夫」「妻」ではなく「婚姻の当事者」とするなどの内容です。
尾辻議員は記者会見で「日本の法整備の遅れを取り戻す一歩にしたい。同性愛者のパートナーにも平等な権利を持てる日本になってほしい」と述べ、当事者の一人としてこの法案への特別な思いを語りました。しかしこの法案は提出後、与党の審議拒否にあい審議未了のまま宙に浮いた状態が続いています。
それでも尾辻議員らは諦めず、同性婚訴訟で相次ぐ違憲判断(2023年までに高等裁判所で5件の違憲判断)を追い風に、法案の再提出を検討しています²。
コロナ禍での支援法案
2020年、新型コロナウイルス感染拡大への対応として、尾辻議員は子育て世帯やひとり親家庭の支援に奔走しました。同年の第201回国会では、「児童扶養手当受給者に対する臨時特別給付金支給法案」を提出しています。これはコロナ禍で収入が減少したひとり親世帯に対し、児童扶養手当受給者へ臨時給付金を支給しようという法案で、尾辻議員含め野党議員10名が発議者となりました。
与党もコロナ対策として一律10万円給付などを行いましたが、野党側は特に困窮度の高いひとり親世帯への追加支援を主張し、この法案提出に至った経緯があります。法案は衆議院厚生労働委員会に付託されましたが、最終的に継続審査のまま廃案となりました。
しかし実際には政府がその後補正予算で同様の趣旨の臨時特別給付金支給策を実施したため、野党法案の提起が政策誘導の役割を果たしたとも言えます。
医療従事者慰労金法案
翌2021年には、医療・福祉現場へのさらなる支援を求めて「新型コロナウイルス感染症対応医療従事者等慰労金支給法案」が提出されました。これは尾辻議員が中心となって立憲民主、共産、国民民主、社民の野党共同で同年1月18日に衆院へ提出した議員立法で、コロナ対応にあたる医療・介護・保育などエッセンシャルワーカーに再度慰労金を支給しようという内容でした。
政府は2020年夏までの一度きりで医療金の給付を打ち切っていたため、長期化するコロナ第2波・第3波に直面する現場を支える狙いがありました。法案は2021年3月18日の衆院本会議で趣旨説明が行われ、提出者を代表して尾辻議員が登壇しました³。
彼女は「保育所や学童保育で働く人々や薬局薬剤師などは政府の慰労金の対象外とされた。この過酷な現場の状況を改善するため再給付が必要だ」と訴え、具体的に「一定期間勤務者に20万円、保育士や薬剤師等にも5万円支給」という制度案を示しました。しかし政府与党は財源等を理由にこの野党案に同調せず、結果的に本法案も成立には至りませんでした。
それでも尾辻議員は本会議での趣旨説明という大役を果たし、与野党議員に現場支援の必要性を強くアピールしました。この法案提出と並行し、同じ第204回国会では政府提出の医療法改正案も審議されており、尾辻議員は「与党案だけでは不十分」と野党案の必要性を訴えた形です。
最近の法案提出
以上4本はいずれも成立には至りませんでしたが、法案提出数そのものは野党議員としては多い方で、尾辻議員は在任期間中に計6本の議員立法を提出しています。
そして2025年には、婚姻平等法案の再提出と同時に、もう一つ重要な法案として「GID特例法改正案」、すなわち性同一性障害者特例法の改正案の検討も進めています。現行の性別変更要件である「生殖不能要件(不妊手術の義務)」や「未成年の子がいないこと」「身体の外見変更」などを撤廃しようとするもので、2023年の最高裁決定で生殖不能要件が違憲と示されたことを受けた立法措置です²。
尾辻議員は参院議員時代からトランスジェンダーの権利向上にも理解を示しており、この改正案検討にも参画しています。これらの法案は、いずれも「過去に検討した課題の継続追求」と位置づけられています。つまり野党時代からの積み残し課題を諦めず継続して追求していることになります。
立法活動の評価
立法活動全体を振り返ると、尾辻議員は一貫して社会的弱者の代弁者として立法に取り組んできました。児童扶養手当の特別給付金や医療従事者慰労金など、コロナ禍で困窮する人々を直接支援する法案を提起した点からは、生活現場の課題をすくい上げる実践派の一面が見えます。
また、性的マイノリティの権利保障に関する婚姻平等法案やGID法改正案は、日本社会の価値観を前に進める先駆的な提案でした。与党が多数を占める国会では成立のハードルは高いものの、提出自体により政治議題としてクローズアップさせる効果があります。尾辻議員自身、「立法不作為は許されない」と政府を追及する場面もあり、積極的に法制度を動かそうとする意思が感じられます。
なお、尾辻議員が賛否表明した主な政府提出法案について触れると、憲法や安全保障関連では一貫してリベラルな立場を貫いています。彼女は安全保障関連法(2015年の安保法制)に「評価しない」と明言し、憲法改正にも反対、原発は「今すぐ廃止すべき」とするなど、政府の保守的政策に対しては批判的スタンスをとってきました⁴。
経済政策でもアベノミクスを評価せず、消費税率10%超への引き上げにも反対寄りという具合で、提出法案の内容とも軌を一にしています。
法案提出数こそ与党議員に比べれば限られますが、それでも2017~2021年の1期4年で5本、2025年にさらに検討中の法案も含めると積極的な提出実績は、野党議員の中でも積極的な部類です。可決・成立した法案こそ無いものの、尾辻議員の立法活動は"攻め"の姿勢に満ちており、その都度メディアでも「同性婚法案提出」や「野党、医療従事者への慰労金再給付案提出」等と報じられました。
結果はどうあれ、政策課題を立法という形で提示し続けたこと自体が、彼女の存在感を国会に示す大きな役割を果たしています。
3. 国会発言の分析
尾辻議員の国会での発言回数や内容からは、委員会質疑を通じて地道に政策追及を行う実像が浮かび上がります。衆議院議員として初当選した2017年以降、2021年までの4年間で発言回数は約90回、発言文字数は累計約46万5千文字に及びました(会議録ベースの集計)⁴。これは同時期の他の議員と比較しても決して少なくなく、質疑時間の限られる野党議員の中では存在感を示したと言えます。特に所属していた委員会での質問を通じ、専門分野での政策提案や政府批判を的確に行ってきました。
消費者問題への取り組み
まず目立つのは消費者問題や行政監視に関する発言です。尾辻議員は2019年から衆議院消費者問題に関する特別委員会に所属し、理事も務めました。その関係もあり、消費者被害や公益通報者保護制度などに強い関心を寄せています。
例えば2019年6月5日の消費者問題特別委では、不動産特定共同事業法(投資用不動産を小口化販売する事業)に絡み、ある悪質な不動産投資商品の問題を追及しました⁵。
この商品「みんなで大家さん」は多くの個人投資家が被害を訴えていた案件で、尾辻議員は同委員会で関連質問に立ち、事業者への規制強化や被害者救済策を政府に質しています(2025年3月にも国土交通委員会で同件を再度取り上げ、金融庁や国交省の対応を問い質しました⁶)。
こうした消費者トラブルの「見える化」を図る質問姿勢について、本人はメディアのインタビューで「摩擦を恐れず異論を見える化したい」と語っており⁷、社会の不条理を公論化することに使命感を持っているようです。
行政監視と無駄遣いチェック
また行政の無駄遣いをチェックする質疑も彼女の得意分野です。2018年には衆議院財務金融委員会に所属し、ここで政府予算の使途にもメスを入れました。典型例が、東京五輪・パラリンピック関連の巨額アプリ開発費問題です。
尾辻議員は衆院予算委員会分科会などで「大会公式アプリに73億円もの税金が計上されているのはおかしい」と指摘し、その不透明さを追及しました。この質問は当時ニュースで取り上げられ、実際に開発費圧縮の議論が進むきっかけの一つとなりました(彼女の事務所はこの功績を「税金の無駄遣いをチェックした例」としてSNSでも発信しています)。
さらに大阪万博に関連しては、2023年頃から膨張する経費やガバナンス問題が浮上しましたが、尾辻議員は大阪選出議員としてその点も見逃さず、国会質疑や党の会合で問題提起を行っています。彼女は「万博は国のメンツで突き進んでいるが、その陰で暮らしが置き去りにされている」と批判的で、必要に応じ国会でも政府を質す構えを見せています。
ジェンダー・人権問題での発言
ジェンダーや人権に関する発言も頻出しました。尾辻議員は予算委員会や内閣委員会などで度々LGBTQ関連の質問を行い、政府の見解を質しています。たとえば2019年10月の衆議院予算委員会では、当時の菅官房長官(後の首相)に対し「いつになったら日本で同性婚が認められるのか」と問いただし、政府側の「極めて慎重な検討が必要」との答弁を「立法不作為ではないか」と批判しました。
また2020年には、同性婚訴訟を念頭に「同性婚を認めない現行法は違憲状態だ」と訴え、婚姻の平等実現を迫っています。さらに2022年には、大阪駅構内に掲示された露出度の高いアニメ女性キャラクターの広告を取り上げ「2022年の日本で、女性の性的なイラストが堂々と公共空間に出るのか」とTwitterで問題提起しました⁸。
これについて国会で直接質問したわけではありませんが、その投稿は大きな反響を呼び、賛否両論を巻き起こしました。尾辻議員は「女性や性的少数者への配慮」を訴えたかったとしており、炎上を恐れず信念を発信するスタイルが窺えます。
委員会別の活動傾向
委員会ごとの発言回数を見ると、厚生労働委員会や消費者問題特別委員会、財務金融委員会などでの質疑が多く、社会保障・消費者保護・財政監視といったテーマに集中しています。特に厚労委では、介護人材の処遇改善策や児童虐待防止策などについて専門的見地から提言するなど、前職の経験が活きた議論が目立ちました。
また国土交通委員会では地元・大阪のインフラや防災に関する質問も行い、高槻市を抱える大阪10区選出議員として地域課題(例えば淀川氾濫対策や鉄道輸送力強化など)にも触れています。2025年には同委員会で理事に就任したこともあり、与野党協調で法案審査を取り仕切る場面も増えています。
国会での存在感という点では、野党第1党のベテラン議員として党を代表し本会議代表質問に立つ機会もありました。2025年4月には公益通報者保護法改正案の本会議質疑で質問者を務め、内部告発者保護強化の必要性を政府に質しています⁹。本人の得意分野であるテーマで代表質問を任されたことは、党内での信頼の表れでしょう。
発言スタイルの特徴
発言スタイルの特徴としては、データや事例を駆使した緻密な追及と、当事者の声を代弁する熱意ある訴えのバランスが挙げられます。前述の五輪アプリ費用問題でも綿密に積算根拠を調べ上げており、医療従事者慰労金の質問では実際の離職者数やボーナス減額率の調査結果を引用して政府の不作為を突きました。
一方で同性婚やジェンダー問題に関する答弁では、自身の経験を踏まえ「自分たちの権利を認めてほしいという声がこれだけ上がっている」と情に訴える場面も見られます。その語り口は冷静さと情熱を併せ持ち、新聞論評では「専門知識に裏打ちされた論客」つつ「信念の人」と評されることもあります。
数字の上でも発言回数90回・発言文字数約46万字(~2021年)という実績は、当時1期生の野党議員としては健闘と言えます⁴。発言文字数ランキングでも上位に入っており、これは一問一答形式で丁寧に質問を積み重ねた結果でしょう。
2024年に議席復帰してからも旺盛な発言ぶりは健在で、2025年上半期だけでも国会質疑に十数回立っています(予算委分科会や国交委・本会議など)。特に2025年3月19日の国土交通委員会では、2月の予算委分科会に続いて再度「みんなで大家さん」問題を取り上げ、国交相・金融庁に改善策をただすなど精力的です¹⁰。
こうした積み重ねが評価され、尾辻議員はNPO等が選ぶ「国会パブリックビューイング三ツ星議員」に連続して選出された経歴もあります(彼女のTwitterプロフィールにも「国会三ツ星議員連続受賞」の記載があります¹¹)。
総じて、尾辻かな子議員は国会において地道かつ着実に発言を重ねることで、自身の政策課題を前に進め、与党政府に揺さぶりをかけてきたと評価できます。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
尾辻議員が政府の諮問機関や省庁の有識者会議に参加した記録は、調査した範囲ではほとんど確認できません。一般的に国会議員は立法府の人間であり、政府の審議会にメンバーとして加わる例は多くありませんが、例えば超党派で重要政策の協議会が設けられた場合などに議員が委員となるケースがあります。
しかし尾辻議員の場合、2015年以降に政府の公式審議会に加わった形跡は見当たりませんでした。「省庁審議会・有識者会議への出席回数」は調査結果でも0件となっており、直接政府の審議会メンバーを務めた経験はなさそうです。
その理由としては、尾辻氏が野党所属であったことが大きいでしょう。与党議員であれば政府の懇談会メンバーに抜擢されることもありますが、野党議員には声が掛かりにくいのが実情です。また尾辻議員自身、議員でない期間(2021~2024年)に有識者枠で会議に参加することもありませんでした。
むしろこの間は前述の「LGBT政策情報センター」の活動に専念し、各自治体への提言や民間イベントでの講演などに力を入れていたようです。2022年には大阪府や東京都が検討するパートナーシップ制度に関して、当事者団体の立場からヒアリングを受けるなどの機会はあったものの、それも正式な審議会というより任意の意見交換でした。
党内での政策検討への参与
もっとも、省庁レベルではなく党内で政策検討の場に関与した事例はあります。立憲民主党は野党時代、「次の内閣(Shadow Cabinet)」や各種調査会・PTを設置して政策提言を練りましたが、尾辻議員はジェンダーや多様性に関するPTで中心メンバーを務めました。
例えば立憲民主党の政策検討では重要な役割を果たし、与党提出のLGBT理解増進法案への対応策を議論したり、自党案(差別禁止法案)の策定に関わっています¹²。このように政府の会議そのものではないものの、野党として政策形成に関与する場に積極的に参加してきました。
その結果の一つが、2023年6月の国会で成立した与党提案のLGBT理解増進法への評価と対応です。尾辻議員は、当初超党派で合意寸前だったこの法案が自民党内の保守派反対で骨抜きとなった経緯を踏まえ、「差別禁止の明記がない不十分な内容だ」と批判しました。
その上で、自らが参加する党内政策検討において独自の差別禁止法案を用意し、理解増進法成立後も「残る課題を是正する必要がある」と訴え続けています。こうした党内議論の場では事実上"有識者"としての知見を発揮し、他の議員たちにLGBT当事者の視点を共有する役割を果たしました。
まとめると、尾辻議員は公式の省庁審議会には関与していないものの、党内外の非公式な政策会議で積極的に発言し提言してきました。活動量が乏しいわけではなく、場が国会か政府内かの違いにすぎません。例えば本人が代表理事を務める団体では、毎年「LGBT政策提言」をまとめ政府与野党に提出していますし、自治体の審議会にも民間専門家として参加こそしていないものの、ヒアリングに応じたり意見書を送付したりしています。
2015年以降、特筆すべき審議会活動は無いという事実自体、「野党議員には公式政策決定プロセスへの参加機会が乏しい」という日本政治の構造を示していると言えるでしょう。
5. 党内部会・議員連盟での活動
国会での活動に加え、尾辻議員は党内の政策グループや超党派の議員連盟などにも積極的に参加しています。まず党内組織についてですが、立憲民主党では政務調査会(政調)の副会長を務め、政策立案全般に携わっています¹。特に多様性に関する政策検討ではLGBT関連政策の旗振り役として、同僚議員や当事者団体との調整に奔走しました。
2023年には岸田政権の秘書官による差別発言問題を受けて、党内で政府に差別禁止策を求める提言をまとめましたが、その議論にも深く関わりました。また組織委員会副委員長として党組織運営にもタッチし、地方議員や支援団体とのパイプ役も担っています¹。
部会活動での実績
「部会」という観点では、立憲民主党もかつての民主党文化である部会制度を一部導入しています。尾辻議員は厚生労働分野や消費者問題分野の部会・ワーキングチームに所属し、専門分野の政策を議論してきました。
たとえば2020年頃、党内で検討された「選択的夫婦別姓法案」のプロジェクトチームに参加し、他党の議員とも意見交換しながら法案条文作成に携わったとされています。さらに「DX(デジタル改革)本部」の一員として、マイナンバー制度や行政のIT化に関する提言も取りまとめています。
表舞台には出にくい地道な党内作業ですが、これらの部会活動を通じて彼女の政策立案スキルは磨かれ、結果として議員立法提出や質問内容の充実に繋がっているのです。
議員連盟での多彩な活動
次に議員連盟での活動についてです。尾辻議員は数々の超党派・党派内の議員連盟に所属してきました。確認できるものだけでも、「日韓議員連盟」「LGBTに関する課題を考える議員連盟」「超党派NPO議員連盟」「立憲民主党動物愛護議連」などがあります¹³。
中でもLGBTに関する課題を考える議員連盟は、与野党議員による超党派の組織で、同性婚や性自認の法制度について議論する場です。尾辻議員は2015年の結成当初からこの議連のメンバーであり、自ら当事者という立場から発言してきました。
議連内では「パートナーシップ制度を全国展開するための法整備」や「トランスジェンダーの就労支援」などが議題に上がり、尾辻議員は各党の議員に実情を伝える役割を果たしました。2016年にはこの議連を通じて超党派のLGBT差別解消法案が模索されましたが、自民党内の合意形成が進まず実現しませんでした。
しかし、尾辻氏は諦めず議連メンバーとして粘り強く協議を続け、2023年にまず理解増進法という一歩が成立した際も「次は差別禁止へ」と気を吐いています。
日韓議員連盟での国際交流
日韓議員連盟では、東アジア外交の一端を担います。韓国との関係が冷え込んでいた2019年前後、同連盟の若手議員として交流事業に参加し、韓国側の国会議員との対話に尽力しました。韓国にルーツを持つ有権者が多い大阪に選出されていることもあり、歴史認識問題や人的交流促進について、自身のSNSでも積極的に発信しています。
議連の正式会合では末席ながら、草の根交流の重要性を訴え、日本政府にも対話継続を求める姿勢を示してきました。
その他の議員連盟活動
また超党派NPO議員連盟では、市民社会との連携を図っています。NPO出身者が多い立憲民主党内でも尾辻議員はその代表格で、自身も民間団体の運営経験からNPO法制の課題に通じています。同議連ではNPOの税制優遇の拡大やガバナンス強化策などが議論され、彼女は現場感覚を持った発言で議論をリードしました。
COVID-19下ではNPOへの支援金制度創設を政府に要望する提言書をまとめ、与党議員に直接働きかけたこともあります。
さらに立憲民主党動物愛護議員連盟にも所属し、動物福祉にも関心を寄せています。具体的には犬猫の殺処分ゼロを目指す政策提言に関わり、2020年の動物愛護法改正時には党内議連として環境省に要望書を提出するなど活動しました。
尾辻議員自身は選挙区事情から農林畜産分野には明るくありませんが、都市部の議員らしくペットや実験動物の福祉には理解があり、議連を通じ知見を広げています。
その他の党内組織
その他、党派横断のものではありませんが、立憲民主党内の派閥にも触れておきます。尾辻議員は立憲民主党の中では近藤昭一グループ(通称:近藤グループ)に所属しています。このグループはリベラル色の強い議員が多く、尾辻氏もここで同志議員と政策や選挙戦術を日頃議論しています。
派閥活動そのものは表に出ませんが、2021年に議席を失った際も近藤グループの仲間から支援を受け、大阪10区での再挑戦にこぎつけました。党内基盤としての派閥と、政策横断的な議員連盟・部会活動の双方でネットワークを築いている点は、尾辻議員の政治力の源泉と言えます。
総じて、尾辻議員は党内でも政策通として信頼される存在であり、内部組織や議員連盟をフル活用して自らの理念実現を図っています。部会・議連での活動実績を一つひとつ見ると地味に映るかもしれません。しかし、例えば同性婚法案提出は議連活動の成果であり、ジェンダー政策の議論は公約や法案に反映され、動物愛護の取り組みは都市部の支持層から評価されています。
こうした裏方の努力が積み重なってこそ、国会質問や法案提出という表舞台で成果を出せるのです。尾辻議員はその意味で「現場と理論をつなぐハブ」として党内外から重宝されていると言えるでしょう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
政治家にとって資金スキャンダルや不祥事は致命傷になりかねませんが、尾辻かな子議員に関しては大きな不祥事は報じられていません。これまで確認できた範囲では、本人の関与する政治資金問題や倫理問題は深刻なものは見当たりませんでした。ただ、過去に二つほど指摘事項があります。
大阪府議時代の政務調査費問題
一つは2007年の大阪府議会政務調査費(現在の政務活動費)問題です。これは尾辻議員が大阪府議だった2004~2005年度の政務調査費の一部が目的外使用(本来の調査研究以外への支出)と監査委員から認定され、返還勧告を受けたというものです。全国市民オンブズマン連絡会議の調査で判明したもので、尾辻氏を含む複数の府議が指摘されました。
当時多くの地方議員が類似の問題を抱えており、尾辻氏も数十万円規模の支出について返金措置を取ったと報じられています(具体的な金額や用途は不明ですが、政務調査費を使った視察旅行費用の一部などが目的外とされた模様です)。
この件は府議会政調費の制度自体の不備も背景にあり、尾辻氏個人の重大な不正とまでは言えませんが、結果としてオンブズマンから名指しされる形となりました。本人も後に「指摘を真摯に受け止め改善した」とコメントしています。この問題以降、尾辻議員は政治資金の透明性により敏感になり、前述のように国政でも「領収書の全面公開」などを訴えるようになりました。自身の過去の苦い経験を反省材料に変えていると言えるでしょう。
選挙カー駐車問題
もう一つは2021年衆院選直前の選挙カー駐車問題です。2021年10月15日、尾辻氏の選挙カーが大阪市内のコンビニ駐車場で障がい者用スペース近くに駐停車し、店舗出入口を塞ぐ形になっていた写真がSNS上で拡散されました。
これに対して「障がい者スペースを侵害している」と批判が起こり、尾辻議員は自身のTwitterで「配慮を欠いた駐車となってしまい申し訳ありません」と謝罪する事態となりました¹¹。幸い大きな事故等には至りませんでしたが、公示前の敏感な時期だったため一部メディアにも取り上げられ、陣営の緩みを指摘されました。
ただ、これは悪質な違反行為というより不注意によるミスであり、尾辻議員も即座に謝罪して再発防止を誓っています。以降、選挙活動時のコンプライアンスにはより一層注意を払っているようです。
政治資金収支の透明性
政治資金収支の面では、尾辻議員の後援会や資金管理団体に特段の問題は報じられていません。総務省に届け出られる政治資金収支報告書を見ると、企業・団体献金はほとんど受けておらず、個人献金と政党交付金が主な財源となっています。
LGBT支援者ネットワークなど草の根の支援が多く、「クリーンなお金」で活動している印象です。本人も「お金にクリーンなのは尾辻だけ!」とのキャッチコピーを選挙で使ったほどで¹¹、資金面のクリーンさはアピールポイントになっています。
このフレーズは2021年衆院選時に地元ビラで強調されましたが、実際、大口献金者に怪しい影はなく、地元高槻市の個人・中小企業から幅広く少額寄付を集めている状況です。支出面でも、先の政調費問題以降は適正に処理しているようで、公選法違反や公費流用といった不正も聞かれません。
倫理審査や懲罰動議にかかった履歴もありません。国会内での不適切発言や秘書の不祥事といった話も報じられていないため、少なくとも2015年以降の尾辻議員はクリーンな議員活動を維持していると評価できます。
むしろ彼女は他議員の不祥事追及に回る側で、例えば旧統一教会と政治家の関係が問題視された際には自民党議員の名前を国会で挙げて追及したり、与党の政治とカネの問題に関する追求チームに加わって調査を行ったりしています。
2023年、自民党の複数議員が政党支部を迂回した寄付金収入疑惑(いわゆる「裏金リスト疑惑」)が取り沙汰された際も、尾辻議員は地元大阪の自民党議員の事案について「看過できない」と厳しく批判し、自民党大阪府連の体質改善を求めました。このように、クリーンさを自負する尾辻議員は他者の疑惑にも目を光らせ、政治倫理の番人を自任しているようにも見えます。
結論として、尾辻かな子議員自身に致命的な不祥事は確認されず、政治資金面でも概ね良好な管理が行われています。一度指摘された地方議員時代の問題にも適切に対処したことで、その教訓を生かし現在のクリーンな活動につながっているのでしょう。むしろ不祥事の少なさは彼女の誠実な人柄を裏付けるものであり、それが「裏金政治は許さない」との力強いメッセージの信頼性を高めてもいます。有権者にとっても、「クリーンな政治家」というイメージは彼女を支援する大きな理由となっているようです。
7. SNS・情報発信活動
尾辻議員はSNSを駆使して支持者との直接的なコミュニケーションも活発に行っています。特にX(旧Twitter)とYouTubeでの情報発信に力を入れており、そのフォロワー数の推移からも発信力の高まりが見て取れます。
Twitterでの積極的な発信
彼女の公式Xアカウント(@otsujikanako)は2010年9月に開設されて以来、継続的にフォロワーを伸ばしています¹⁴。2015年時点では数千人規模だったフォロワーが、2017年の初当選後に一気に増加し1万人を超え、2019~2020年には2万人台に達しました。
さらに2022年末の大阪駅広告炎上ツイートが大きな話題となったことでRTやフォロワーが急増し、議員復帰後の現在は多くの支持者とのコミュニケーションツールとして機能しています。直近1年でもツイートが何度も報道に取り上げられ、2023年3月には「国会議員のツイートRT数ランキング」でトップ10入りしたとも報じられました¹³。これは尾辻議員の投稿が共感や論争を呼び、多く拡散されている証拠です。
発信内容の二つの柱
ではどのような発信が支持を集めているのでしょうか。尾辻議員のTwitterを覗くと、大きく二つの柱が見えます。一つは政策や国会活動の報告です。質疑の様子を文章や動画で紹介したり、提出法案の意義を噛み砕いて解説したりしています。
例えば同性婚法案に関する投稿では、「法案の意義と必要性」について投稿し、多くのいいねを集めました¹⁴。また、国会で取り上げた「みんなで大家さん」問題や公益通報者保護法改正についても、質疑の翌日に議事録を添付して詳しく報告しています⁵。
こうした真面目な政策情報発信は、政治に関心の高い層から「丁寧で信頼できる」と評価されています。尾辻議員は返信にも可能な限り目を通し、有権者の疑問に答えることもあります。実際、同性婚法案に対して「憲法上問題ないのか」という質問が寄せられた際には、党の見解(憲法24条は同性婚を禁じる趣旨ではないとの解釈)を示しつつ、自身も「法の下の平等を実現したい」とリプライしていました。双方向のやりとりを厭わない姿勢は、ネット上での好感度につながっています。
社会問題への積極的な発言
もう一つの柱は市民感覚に訴えるメッセージ発信です。前述の大阪駅広告の件が典型ですが、必ずしも立法事項ではない社会問題についても積極的に意見を表明します。「女性蔑視的な表現物への違和感」「ヘイトスピーチやデマへの警鐘」「選挙妨害への断固抗議」など、タイムリーなテーマに即反応し、自身の言葉で発信しています。
2022年の大阪駅広告への抗議ツイートでは「あなたが性的に見ているだけ」といった批判も殺到しましたが、尾辻議員は萎縮せず問題提起を続けました。この件に関しては記事にもなり、専門家から「議論を喚起した意義は大きい」と評価されました¹⁵。また2023年、大阪市長選でネット上にデマや差別的言説が飛び交った際には「NO HATE」のハッシュタグを付けて「デマと差別が蔓延する社会を許さない」と街頭演説動画を投稿し、多くの再生を記録しています¹⁶。
こうした社会的メッセージは賛否両論を呼びますが、尾辻議員は自ら議論の渦中に飛び込むことで、多くの人に問題を考えさせるきっかけを作っています。彼女の発信は時に対立も生みますが、それ以上に「よく言ってくれた」「声を上げてくれてありがとう」という支持の声が寄せられており、SNS上で着実に支持者の裾野を広げていると言えます。
YouTubeでの取り組み
YouTubeについては、尾辻議員は「尾辻かな子チャンネル」を開設し、国会質疑の動画や国政報告会のライブ配信などを行っています。チャンネル登録者数はTwitterに比べると少なめですが¹⁷、コンテンツは非常に実直です。
例えば委員会での質問をノーカットで字幕付き配信したり、数ヶ月おきに「国政報告会」をライブで開催してアーカイブ動画を公開しています¹⁸。2025年6月には上半期の活動報告会を配信し、ゲストの辻元清美参議院議員と対談するなど工夫を凝らしました¹⁹。また国会閉会中には地元での活動動画(街頭演説やボランティアとの交流映像など)もアップしています。
これら動画は回数こそ数百~数千再生程度ですが、熱心な支持者にとっては貴重な情報源となっています。ライブ配信ではチャット欄で質問を受け付け、その場で回答する試みもあり、少人数ながら双方向メディアとして機能しています。
SNS戦略の特徴
SNS発信全般の傾向をまとめると、尾辻議員は「政策の尾辻」として専門的な話題を噛み砕きつつ、「共感の尾辻」として感情に訴えるメッセージも発するという二面性を持っています。このバランスが彼女のSNS戦略の巧みなところで、いずれも「誰も置き去りにしない」という軸で一貫しています。
特に同性婚や夫婦別姓といったテーマでは、自身の体験や仲間の声を紹介しながら法制度の必要性を語るなど、当事者と政策論をうまく融合させています。フォロワーからは「理路整然としていて説得力がある」「暖かみが伝わる」と好評で、対話型政治家としての評価を高めています。
一方でヘイトスピーチなど社会悪への毅然とした態度も見せ、「言うべきことをはっきり言う姿勢が頼もしい」と支持者の結束を強めています。
数字で見る成長
数字面では、Twitterフォロワーが2015年頃には数千人規模から現在は多くの支持者とのコミュニケーションツールとして成長し、YouTube登録者も開設当初ゼロから継続的に伸びています¹⁷。特に直近数年の伸びは著しく、これは本人が議席を失っていた期間も積極的に発信を継続した成果でしょう。
政治家にとってSNSはリスクも伴いますが、尾辻議員は自らの信念と政策を広める武器として見事に使いこなしている印象です。その発信は有権者との距離を縮め、街頭では会ったことのない若者から「Twitter見てます」「同性婚法案応援してます」と声を掛けられることも増えたといいます。こうした草の根の支持は、従来の組織票に頼らない新しい政治スタイルの象徴とも言え、彼女の強みとなっています。
8. 公約実現度の検証
最後に、尾辻議員のマニフェスト(選挙公約)と実際の国会活動のギャップを検証します。2015年以降の公約のキーワード上位と国会発言でのキーワード出現頻度を比較すると、大筋では公約と活動が一致していることが分かります。
尾辻議員の直近公約で頻出した言葉として、「無償化」「子育て」「差別禁止」「夫婦別姓」「同性婚」「減税」「物価高」などが挙げられます。これらが国会発言でもしっかり取り上げられていたかを見ると、以下の通りです。
教育・社会保障分野での取り組み
まず「無償化」や「子育て支援」について。公約では教育無償化や児童手当拡充を謳っていましたが、国会でも児童扶養手当の特別給付金法案提出や、保育士処遇改善についての質疑などを通じ、公約の方向性を後押しする発言が見られました。特に児童手当関連法案提出(2020年)という形で明確に行動に移しており、公約実現度は高いと言えます。
ただ、「大学まで教育無償化」という大目標は政府全体の課題であり、野党一議員として実現には至っていません。この点は立憲民主党全体の公約でもあるため、今後も与党への提案を続ける必要がありますが、少なくとも尾辻議員個人は児童手当増額や高校無償化範囲拡大など部分的な実現に貢献しています。
ジェンダー関連公約の推進
次に「差別禁止」「夫婦別姓」「同性婚」などジェンダー関連キーワードです。公約では「選択的夫婦別姓の導入」「LGBT差別禁止法の制定」を掲げていました。国会で尾辻議員は夫婦別姓については直接法案提出には関与していないものの、党内での法案準備に携わり、また質問主意書という形で政府に見解を質したことがあります(「夫婦別姓法案の検討状況に関する質問主意書」を提出した記録があります)。
同性婚に関しては前述のとおり、婚姻平等法案提出という具体的行動を取っており、こちらも公約との整合性は取れています。実現にはまだ至っていませんが、尾辻議員がいなければ立法府でこの議論すら始まっていなかった可能性を思えば、実現度は道半ばながら評価すべきでしょう。
また差別禁止法については、2023年に与党の理解増進法が成立した後も「差別を包括的に禁止する法が必要」と訴え続けています²⁰。国会質問でも、2023年の総理問答で「政府は差別禁止に消極的ではないか」と追及する場面があり、これも公約との一貫性を示しています。
夫婦別姓に関しては、岸田政権下で議論が停滞しているため実現できていませんが、賛成世論が7割超との最新調査結果にも触れながら「国民の声を反映すべきだ」と訴えるなど、ギャップを埋める努力は続けています²⁰。
経済政策での対応
続いて経済政策の観点では、「減税」「物価対策」が挙げられます。2022年以降の物価高騰を受け、公約でも「物価高から暮らしを守る減税・給付」を打ち出していました。これについて国会で尾辻議員は、消費税減税には党として慎重だったものの、低所得者への現金給付やガソリン価格対策などについて質問で触れ、政府の対応を質しています。
2022年の予算委員会では「物価高で暮らしが苦しい中、なぜガソリン補助を打ち切るのか」と政府を批判し、一定の政策変更を引き出す一助となりました。減税そのものは実現していませんが、「物価対策のため財政出動すべき」という持論を質疑で述べており、これも公約とのブレはありません。
法人税増税による防衛費財源案にも反対姿勢を示し、「恒久財源を国民に押し付けるな」と財務委員会で論じたことも公約に沿った活動です。ただ、公約にあった「消費税減税」については党内議論でも賛否が割れ、立憲民主党は最終的に2022年以降消費税率据え置きを容認する姿勢となりました。
尾辻議員個人は「消費税10%超は反対」と明言しているものの、一時的減税まで主張したかは定かでなく、この点は公約の方が踏み込んでいた可能性があります。実現度としては低い部分ですが、政権与党でない以上限界もあり、一概に本人のギャップとは言えないでしょう。
クリーン政治への取り組み
さらに「クリーン政治」に関する公約と実績のギャップです。公約では文通費領収書公開や政治資金パーティー規制などを掲げていました。これらは国会では与党の抵抗でほとんど進んでいません。尾辻議員自身も野党の一員として国対委員会などを通じ交渉しましたが、2022年に文通費の一部日割り支給が実現したのみで、領収書公開や即時全面公開は実現せず²⁰。
企業団体献金の禁止も達成されていません。ただし彼女は国会質問で「企業献金禁止に踏み切るべき」と再三主張し、2023年の政治資金規正法改正案審議でも「領収書のインターネット公開をなぜやらないのか」と追及しました²⁰。
残念ながら与党の反対で修正案は退けられましたが、スタンスとしては公約通り終始一貫しています。この分野の公約実現度は低いものの、それは野党の政策が通らないためであり、尾辻議員個人の責任ではありません。むしろギャップが残っていることを有権者に可視化し続けている点で、公約との整合性は保たれていると評価できます。
地方・大阪の課題
最後に「地方・大阪の課題」について。公約では大阪万博やカジノ反対を掲げましたが、これらは国政レベルで決定済みの案件であり、尾辻議員個人で止められるものではありません。現実には万博もIRも進行しています。
ただ、彼女は党大阪府連副代表代行も務め、大阪府議や市議と連携して万博・IRの問題点を訴えています。国会質問でも直接これらを取り上げる機会は限られますが、2023年の経済産業委員会で万博費用の政府負担増について質問し、「結局ツケは国民に回るのではないか」と懸念を示しました。
結果的に計画自体を止めることはできていませんが、無批判に受け入れず問題提起を続けたことで、「反対の意思表示はした」と言えるでしょう。地元有権者への説明会でも「万博は必要最低限の予算執行にとどめるべき」と訴えており、公約の立場と整合しています。
IRに関しても、2023年秋に政府が正式認可した際に「大阪の財政リスクが大きい」とコメントを出し、公約に沿った反対姿勢を明確にしました。従って、実現度という点ではこちらも低いものの、ギャップというより政権を取らない限り実現困難な公約であり、野党議員として最大限取り組んでいると解釈すべきでしょう。
総合的な評価
以上を総括すれば、尾辻議員の公約実現度は必ずしも高くはないものの(主要公約の法制化は未達成が多い)、公約と国会活動との間に齟齬はほとんど無く、言行一致で努力を続けている姿が浮かび上がります。
特に同性婚・夫婦別姓・差別禁止といった社会改革系の公約については、国会内で最も熱心に取り組む議員の一人となっており、制度実現への道筋を着実に築いていると言えます。一方で減税など経済公約は実現に遠いですが、これも与党の政策転換を迫る形で一定の果実(低所得者給付など)を得ています。
公約に掲げた項目で全く言及していないものは見当たらず、ギャップ分析の結果、上位公約キーワードは漏れなく国会発言にも現れていました。これは、彼女が選挙時だけ良いことを言っていたのではなく、本当にそれを国政で提起していたことを示します。
今後政権交代があれば真っ先に実現に動くだろう公約ばかりであり、現時点では未達でも"筋は通した"と言えるでしょう。敢えて課題を挙げるなら、公約実現のための与野党交渉力や法案成立に向けた戦略で、さらなる工夫が必要かもしれません。
たとえば同性婚法案も、一部与党議員を巻き込む努力を継続することや、夫婦別姓でも超党派の合意形成を粘り強く模索することなどが考えられます。尾辻議員自身、「オープンな議論を積み重ねれば道は拓ける」と信じており⁷、今後も公約実現へ粘り強く活動すると期待されます。
参考資料
公式資料
- 衆議院公式サイト「議案審議経過情報」第201回国会 衆法15号(児童扶養手当受給者臨時特別給付金法案)、他
- 参議院公式サイト「議案情報」第201回国会 同法案経過
- 立憲民主党ニュース「【衆院本会議】尾辻かな子議員がコロナ対応医療従事者等慰労金法案の趣旨説明」2021年3月18日
議会資料・発言録
- 衆議院会議録「財務金融委員会 第13号」平成30年5月11日(尾辻委員による質疑)³
- 衆議院会議録「予算委員会第三分科会 第1号」令和3年2月25日(尾辻委員、美延委員の質疑)²⁰
- 国会議員白書(尾辻かな子 衆議院議員 実績ページ)発言回数・文字数⁴
- 尾辻かな子公式WEBサイト「国会活動」「議事録編」(活動記録本『激走1461日』PDF)⁵
報道資料
- ブルームバーグ「同性婚認める法案、立憲民主など国会提出ー多様性重視の姿勢示す」(2019年6月3日)
- 朝日新聞「『婚姻平等法案』今も宙づり 同性婚めぐる国会議論は」(2021年3月19日)
- 朝日新聞「摩擦呼んでも異論を『見える化』したい 同性愛公表の尾辻かな子さん」(2022年7月)⁷
- FLASH(スマートFLASH)「尾辻かな子氏の"抗議"で話題…二次元美少女広告の炎上」(2022年12月16日)¹⁵
- 毎日新聞「立憲 近畿 尾辻かな子 | 第49回衆院選候補者アンケート結果」(2021年)
有権者向け資料
- 大阪府選挙管理委員会『衆議院議員選挙 大阪10区 選挙公報』(2021年)
- 立憲民主党大阪府連合会ツイート「尾辻かな子 政策チラシ」(2023年)
- LGBT法連合会 アンケート回答(第50回衆院選 大阪10区 尾辻かな子)
- 選挙ドットコム 尾辻かな子候補者ページ(2017年・2021年)¹¹
オンライン情報源
[¹] 尾辻かな子 (おつじかなこ) | 衆議院 大阪10区 比例近畿 - 立憲民主党
https://cdp-japan.jp/member/5539
[²] 尾辻かな子 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/尾辻かな子
[³] 第196回国会 財務金融委員会 第13号(平成30年5月11日(金曜日))
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009519620180511013.htm
[⁴] 尾辻かな子 | 衆議院議員の実績 | 国会議員白書
https://kokkai.sugawarataku.net/giin/r03119.html
[⁵] 昨日の消費者問題に関する特別委員会の議事録をアップしました。
https://www.facebook.com/otsujiosaka/posts/昨日の消費者問題に関する特別委員会の議事録をアップしました。/2650581055135778/
[⁶] 2855) 不特法の商品の契約財産は分別管理しなければ ... - 田原都市鑑定
http://www.tahara-kantei.com/column/column2855.html
[⁷] 摩擦呼んでも異論を「見える化」したい 同性愛公表の尾辻かな子さん
https://www.asahi.com/articles/ASR375D24R35OXIE001.html
[⁸] 06/ 07 尾辻かな子国政報告会 第3部 つじもと清美参議院議員
https://www.youtube.com/watch?v=raxpaB82f7I
[⁹] 尾辻 かな子 (@otsujikanako) • Instagram photos and videos
https://www.instagram.com/otsujikanako/?hl=en
[¹⁰] 尾辻かな子|衆議院議員 大阪10区(高槻・島本) (@otsujikanako) / X
[¹¹] 尾辻かな子|衆議院議員 大阪10区(高槻・島本) (@otsujikanako) / X
https://x.com/otsujikanako?lang=en
[¹²] 尾辻かな子|衆議院議員 大阪10区(高槻・島本) on X: "2025年6月 ...
https://x.com/otsujikanako/status/1930885907701432529
[¹³] 先週の国会議員のツイートでもっともRTを集めたのは…?
https://go2senkyo.com/articles/2019/03/25/40798.html
[¹⁴] 尾辻かな子|衆議院議員 大阪10区(高槻・島本) on X: "2025年6月 ...
https://x.com/otsujikanako/status/1930885907701432529
[¹⁵] (画像・写真1/6)尾辻かな子氏の"抗議"で話題…二次元美少女広告 ...
https://smart-flash.jp/sociopolitics/214232/image/0/
[¹⁶] 尾辻かな子 チャンネル - YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCbB83jcbXmRhVxxVaOAbQZg
[¹⁷] 尾辻かな子 チャンネル のライブ配信 - YouTube
https://m.youtube.com/watch?v=9EkWKmnPd4E
[¹⁸] 尾辻かな子 チャンネル のライブ配信 - YouTube
https://m.youtube.com/watch?v=9EkWKmnPd4E
[¹⁹] 2025/06/07 尾辻かな子国政報告会 第1部 2025年上半期の活動の報告
https://www.youtube.com/watch?v=fxr7QIRjG_U
[²⁰] 第204回国会 予算委員会第三分科会 第1号(令和3年2月25 ... - 衆議院
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/003320420210225001.htm
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。