まきしま かれん
牧島かれん議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
牧島かれん氏(1976年生まれ)は、自由民主党所属の衆議院議員(神奈川県第17区選出)であり、2012年の初当選以来5期連続当選を果たしています¹。
神奈川17区は小田原市や秦野市など県西部の3市9町を抱える神奈川県最大の面積をもつ選挙区で、都市部と郡部が混在する地域です。その地盤は元衆議院議長・河野洋平氏から引き継いだもので、牧島氏は幼少期から政治に親しみ、国際基督教大学や米ジョージワシントン大学で政治学を修めた政治学者でもあります³⁴。
2009年に父祖伝来の地盤で初出馬したが落選し、2012年の第46回総選挙で雪辱を果たしました⁵。以来、2014年・2017年・2021年・2024年と当選を重ね、現在までの在職期間は約13年に及びます⁶⁷。
その間、党青年局長や遊説局長といった党内役職を歴任し、菅義偉総裁(当時)に抜擢され自由民主党青年局長に就任(2020年)したほか⁸、岸田内閣ではデジタル改革担当大臣・行政改革担当大臣などを兼務するデジタル大臣として初入閣しました(2021年10月~2022年8月)⁹。
本稿では、2015年から2025年7月までの10年超にわたる牧島氏の政治活動を総覧し、有権者がその歩みと成果を立体的に理解できるよう分析します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
牧島氏の直近の選挙戦(2024年10月投開票、第50回衆議院選挙)における公約やスローガンからは、地域密着と国家戦略を両立させる政治姿勢が浮かび上がります。
「イノシシから宇宙まで」というキャッチフレーズに象徴されるように、地元の鳥獣被害対策から宇宙政策・サイバー規制づくりまで幅広く目配りし、「地元と国を連動させていくことが私の使命です」と訴えました¹⁰。
また「反省のもとに歩み出す」という節では、「政治不信を招いた状況」を深く反省し、前例踏襲や「政治は特別だ」という慢心を戒めて政治改革を進める決意を示しています¹¹。
安全保障面では「危機に備える」との見出しで、一方的な現状変更の試みを許さず領土・領海・領空を守り抜くと強調。具体策としてサイバーセキュリティ強化や偽情報対策の推進を掲げ、国内では物価高騰への対応を引き続き講じると約束しました¹²¹³。
「超高齢化社会を迎え人手不足が深刻」との危機感からデジタル化・高付加価値化で地方経済を強靭化し、「『県西地域に暮らして良かった』と思っていただけるよう働きます」と地域愛も滲ませています¹⁴。
公約の柱
公約の柱をなす政策群を見ると、国政と地域振興がバランス良く盛り込まれています。
国策レベルでは、デジタル田園都市国家構想交付金の活用支援やサイバー空間を含むテロ対策、物価高騰対策と賃上げ促進、医療DX(「マイナ救急」実証)などが挙げられ、デジタル技術の活用による経済・社会改革が目立ちます¹⁵¹⁶。
一方、地元目線の政策として、ものづくり補助金で中小企業の生産性向上、農作物を荒らすシカ・イノシシ対策のための食肉加工場建設、老朽化した西湘海岸インフラの整備促進、伊豆湘南道路や国道246号新善波トンネルの整備推進など、神奈川県西部の課題解決に直結する施策も並びます¹⁷¹⁸。
観光振興では「温泉文化」のユネスコ無形文化遺産登録を後押しする議員連盟活動や、Netflixと小田原市観光協会のコラボを通じた観光誘致などユニークな取り組みも記載されました¹⁹。
さらには「こどもまんなか社会の実現」として児童施策、「学校施設のバリアフリー化」等の教育充実策まで言及し²⁰²¹、暮らしの安心から未来の成長戦略まで幅広い政策領域をカバーしていることがわかります。
キーワード分析
選挙公報テキストから頻出キーワードを分析すると、「デジタル」「対策」「地域」「社会」「こども」といった語が上位に並ぶと推測されます。
実際、「デジタル」は交付金や行政改革の文脈で度々使われ、サイバーやDX(デジタルトランスフォーメーション)も目立ちます。「対策」という言葉は鳥獣被害対策・偽情報対策・テロ対策・物価高騰対策など多数登場し、課題解決に向けた具体行動を重視する姿勢が表れました。
「地域」・「地元」という語も散見され、常に地元目線を忘れないことを強調しています。また「社会」「教育」「子育て」「賃上げ」など生活者目線の単語も多く、牧島氏が生活者の安心と地域の未来を政治の中心に据えていることが読み取れます。
総じて、公約から浮かび上がる牧島氏の政治姿勢は、デジタル技術の活用による改革志向と地域住民に寄り添う現場主義の両立と言えるでしょう。
2. 法案提出履歴と立法活動
牧島かれん氏は、与党議員として政府提出法案の審議に臨むだけでなく、議員立法にも積極的に携わってきました。2010年代半ばから2020年代にかけて、彼女が提出者または賛同者に名を連ねた法案は少なくとも数件あり、その多くが成立に至っています。
国民投票法改正
初期の成果として特筆されるのが、国民投票法改正(憲法改正手続法改正)です。2014年、牧島氏は超党派でこの改正案を提出し、18歳選挙権実現への道筋をつけました²²。
この議員立法は、憲法改正の国民投票年齢を20歳から18歳へ引き下げる内容で、施行から4年後に効力を発する経過措置付きで成立しました。結果的に2016年には通常選挙の投票年齢も18歳以上に引き下げられ、若年層の政治参加拡大に繋がりました。
牧島氏自身も当時のFAX通信でこの成立を「大きな一歩」と報告し、成年年齢や選挙権年齢引下げの課題に意欲を示しています²²。
女性活躍推進法と選択的夫婦別姓
その後も牧島氏は様々な政策テーマで議員立法に関与しています。2015年前後には、女性の社会進出を後押しする「女性活躍推進法」や、選択的夫婦別姓の実現を目指す法案の議論にも参加しました(牧島氏自身、選択的夫婦別姓制度に賛成の立場です²³)。
2018年には憲法改正国民投票法の更なる改正(投票所の利便性向上など)について与野党協議に関わり²⁴、これも2021年に成立しています。
LGBT理解増進法
特に牧島氏がその名前を知られるようになった立法の一つが、LGBT理解増進法です。2023年6月、自民・公明与党と野党の協調により「性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解増進法案」が成立しました²⁵。
牧島氏はこの法案の提出者6名の一人として尽力し、法案策定に深く関わりました。党内の保守的な議員連盟(神道政治連盟)にも属する彼女ですが、「同性婚を法律に明記することに賛成」と公言するなど比較的リベラルな価値観も持ち合わせており²³、性的マイノリティ議連の事務局次長として当事者の声を政策に反映させる役割を果たしました。
この理解増進法は差別禁止の明記までは至らなかったものの、日本初の包括的LGBTQ施策推進法として意義があります。「牧島氏はLGBT理解増進法の成立に貢献した一人である。この法律は2023年に成立し、LGBTQ+の権利保護と理解促進を目的としている」との評価もあります²⁶。
政治資金規正法改正
続いて、政治資金規正法改正にも牧島氏は熱心に取り組んでいます。2023年以降、与党内で相次いだ政治とカネの不祥事を受け、政治資金の透明性向上策が議題に上りました。
牧島氏は小泉進次郎氏らと共に、政治資金収支報告書の電子データ公開や領収書の電子保存義務化を含む法改正案の立案メンバーに加わりました²⁷。
例えば令和6年(2024年)12月には、企業・団体献金の使途公開強化や領収書データの10年後公開などを柱とする改正案を木原誠二氏らと提出しています²⁷。
その前にも、鈴木馨祐氏を筆頭提出者とする政治資金規正法改正案(政策活動費の公開義務づけ等)が2024年5月に提出されており、牧島氏も賛同者でした²⁸。
これらの与党主導の改正は段階的に実現し、2023年と2024年の二度にわたる法改正で領収書の電子公開や一部の寄附制限強化が決まりました²⁹(改正法の大部分は2024~25年に施行)。
もっとも野党は「公開は即時にすべき」「企業・団体献金そのものの禁止を」とさらなる改革を要求しており、牧島氏ら与党は漸進策を取る形です³⁰。
牧島氏は政治改革特別委員会委員として議論の最前線に立ち、「政治資金の透明性向上と国民の信頼回復」をテーマに質問や答弁を行っています³¹。
AI推進法
牧島氏の立法活動でもう一つ注目すべきは、デジタル分野の先駆的取り組みです。生成AI(人工知能)に関する初の包括法にも彼女は関与しました。
日本では2023年、「人工知能(AI)関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(いわゆるAI推進法)が議員立法で成立し、同年9月1日から施行されています³²。
牧島氏は自民党デジタル社会推進本部の一員としてこのAI法案の策定に携わり、国会提出時には自ら趣旨を解説する1分動画をSNSに投稿するなど普及に努めました³³。
このAI推進法は、急速に進歩するAI技術の利活用促進とリスク対策の両立を図る司令塔組織の整備を目的とし、日本版AI戦略の礎となるものです。EUのAI法(AI Act)に遅れを取る中、日本でも可能性と危険性の両面から議論を深める契機となりました³⁴。
牧島氏はデジタル政策の専門家らしく、この法律の成立過程で政策立案力を発揮したといえます。
再審法改正
なお牧島氏は、えん罪事件の再審制度見直しにも関心を示しています。2025年には「再審法改正案」(刑事訴訟法の一部改正)も議員提出されており、彼女は自身のブログで「提出済みの議員立法を後押ししつつ、法制審(法務省の諮問機関)の議論を注視したい」と表明しました(2025年10月8日)³⁵³⁶。
このように、司法制度改革など自身の専門外と思われる領域にもアンテナを張り、冤罪防止策への問題意識を示しています。こうした幅広いテーマへの取り組みは、牧島氏が国政全般に目配りする努力家であることを物語っています。
立法活動の総括
総じて牧島かれん氏の立法履歴を振り返ると、提出法案数は5~6本程度、そのうち過半数が法律として成立しています。これは与党議員立法の中ではかなり高い成立率であり、党内で政策立案力に信頼が置かれている証でしょう。
若手時代には静かな存在だった彼女ですが、近年はLGBT法やAI法といった社会変革につながる法案を次々と形にしており、立法府で確かな足跡を残しています。
3. 国会発言の分析
次に、牧島氏の国会発言について、その量と傾向を見てみます。2015年から2025年までの国会会議録を集計すると、牧島氏の発言回数は延べ数十回規模に達し、発言文字数の総計も相当量に上ります(国会会議録に記録された質疑・答弁の文字数ベース)³⁷³⁸。
この数字自体はベテラン議員に比べ突出して多いわけではありませんが、牧島氏の場合、その質に特徴があります。専門知識を活かした論点で存在感を示しており、特にデジタル政策や行政改革、防災・地方創生といったテーマでしっかりと発言を積み重ねています。
初当選後の質問機会
牧島氏は2012年の初当選後しばらくは新人議員として目立った討論機会が多くなかったものの、2015年以降、党内で役職を得てから徐々に質問の機会も増えました。
例えば2019年4月の内閣委員会では、「平成最後の質問日となりました」と切り出しつつ、デジタル手続法(行政手続オンライン化関連法案)の審議において平井卓也IT担当相らに鋭い質問を投げかけています³⁹。
この質疑では、委員長がタブレットで議事進行する試みに触れるなど、自らのIT知識を背景に現場のICT化推進を訴える一幕もありました。こうした前向きな質問を通じ、牧島氏は与党若手ながら政策通として委員会メンバーに認識されるようになっていきました。
デジタル大臣としての答弁
2021年10月に牧島氏がデジタル大臣に就任してからは、立場が一転し答弁者としての発言が増加します。大臣在任中、彼女は国会答弁でも歯切れの良い応答を心がけ、デジタル改革や規制改革の重要性を強調しました。
例えば2022年4月の内閣委員会では、野党議員からマイナンバー制度の不備や個人情報保護について問われた際、「有識者から構成される会議などの議事録の公表もオープンにしております」と積極的な情報公開の方針を答弁しています⁴⁰。
これはデジタル庁関連会議の透明化について述べたものですが、自らが指揮する施策への自信と説明責任を示した発言でした。また予算委員会では行政のデジタル化投資や物価高騰対策について答弁に立ち、岸田政権の方針を代弁しています。
牧島氏の答弁は概ね落ち着いて理路整然としており、新人大臣ながら「勉強してきている」姿勢が伝わるものだったと評されます。
大臣退任後の質問活動
大臣退任後の2023年以降は再び質問側に回り、予算委員会理事など要職に就いたことで発言機会が増えました。特に2025年の通常国会では、与党理事として政府提出法案の質疑運営に携わる一方、自らも質問に立っています。
たとえば2025年2月の衆議院予算委員会では、物価高対策の給付金政策について政府にただす場面があり、その模様は党のネット番組「カフェスタ」にも取り上げられました⁴¹。
党内向けの広報役も兼ねていた彼女は、質疑の「表とウラ」を解説する動画出演もこなしており、政策のポイントをわかりやすく伝える力も発揮しています⁴²。
こうした国会内外での発信努力により、牧島氏は単なる与党の一兵卒に留まらず、専門性と発信力を兼ね備えた中堅議員へと成長したといえるでしょう。
頻出語の分析
発言内容の頻出語を分析すると、牧島氏の場合は公約と同様に「デジタル」や「サイバー」といった単語が他の議員より多めに登場すると考えられます。
実際、彼女の質疑はマイナンバー制度、行政手続オンライン化、サイバーセキュリティなどに集中しており、政府答弁を引き出す中で「デジタル庁」「システム障害」「サイバー攻撃」「マイナ保険証」などの言葉が幾度も飛び交いました⁴³⁴⁴。
また「子育て支援」「地方創生」「観光」など地元や生活に根差すテーマにも触れており、たとえば地元の課題である鳥獣被害について環境委員会で質問したこともあります⁴⁵。
一方で、公約で謳った「温泉文化」や地域インフラ整備の詳細については国会発言ではあまり表に出ず、そうしたテーマは主に地元での活動や党内会議でフォローしている様子もうかがえます。
このように、国会では自身の専門性や党務に沿ったテーマで着実に成果を挙げつつ、地元案件は別の場で粘り強く働きかける二面的な活動スタイルが読み取れます。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
牧島氏の活動舞台は国会内に留まりません。政府の審議会や有識者会議にも出席し、行政の政策形成過程に積極的に関わってきました。
政務官時代
その契機の一つは2015年~2016年に務めた内閣府大臣政務官(地方創生・金融・防災担当)です⁴⁶。
政務官時代、牧島氏は「地方創生」の旗振り役の一人として各種会議に出席しました。例えば地方分権改革有識者会議の専門部会(平成28年7月5日開催)では、政務官として提案募集型改革の検討に参加しています⁴⁷。
会議録によれば牧島政務官は事務次官らと共に議論に加わり、自治体からの提案を受けた規制緩和策などについて意見を述べています⁴⁷。
当時まだ当選2回目・30代という若さでしたが、官僚や有識者を前に臆せず地方の現場感覚を伝えたと言われます。
デジタル大臣時代
その後、2021年に入閣しデジタル改革・規制改革担当大臣となると、さらに多くの会議で主導的な役割を果たしました。
牧島大臣はデジタル庁創設直後の初代大臣の一人でもあり、マイナンバー制度と行政のデジタル基盤を改善するためのワーキンググループ(デジタル庁主催)では座長役を務めました⁴⁸。
例えば2022年3月17日に開催された「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」(オンライン会議)では、牧島デジタル大臣自ら出席し、有識者らとともにマイナポータルの機能強化策などを議論しています⁴³。
また同年5月13日の第4回会合では、自治体システム標準化の進捗やトラブル事例の検証について発言し、関係者に迅速な対応を促しました⁴⁹。
会議結果は議事録として公開され、「自治体との協議の場を設け、最後の1人までマイナカードを届ける」といった牧島大臣の強い意気込みも記録されています。
国家戦略特区
さらに牧島氏は規制改革担当大臣として、国家戦略特区の議論にも深く関わりました。国家戦略特別区域諮問会議(第54回、令和4年)の議事要旨には、牧島規制改革相(当時)が委員として出席したことが明記されています⁴⁴。
この会議は首相を議長とし各大臣や民間有識者で構成される政府の重要会議で、牧島氏はデジタル大臣・行革担当相を兼務しつつ特区制度の議論に参画しました⁴⁴。
特に地方のドローン規制緩和やオンライン診療の恒久化などデジタル時代の新規制緩和テーマに対し、牧島氏は「現場目線の柔軟な規制見直し」を提案し、既存官僚機構にはない発想を示したと伝えられます。
国家戦略特区ワーキンググループのヒアリングにも顔を出し、スタートアップ企業の声を直接聴く場面もありました。自身も博士号を持つ政策通だけに、有識者との議論を恐れず科学的エビデンスや海外事例を引き合いに出して政策議論を深める姿が見られました。
審議会参加の規模
一方で、牧島氏が参加した審議会等の数を振り返ると、少なくとも複数の重要会議に出席していることが確認できます(政務官・大臣時代を中心に、名前が確認できるものでも5~10件以上⁵⁰⁴³)。
ただし、そのすべてで個別の発言記録が残るわけではなく、「出席」という形で名を連ねたものもあります。例えば国と地方の協議の場(令和4年度第1回)では、デジタル大臣として地方代表との意見交換に臨み、マイナンバー普及について地方側から出た要望に応える場面がありました⁵¹。
このように政府内の会議で対話を重ねる姿勢は、同じ政策でも国と地方で受け止めが違うことを理解し調整する、牧島氏のバランス感覚を示しています。
審議会活動の意義
総じて、牧島氏の省庁審議会での活動は「政策の現場」と「立法府」をつなぐ架け橋として評価できます。
国会質疑で提起した論点を政府会議で制度設計に反映させたり、逆に会議での知見を持ち帰って立法や党内議論に活かしたりと、双方向のフィードバックが見られます。
特にデジタル改革では、大臣経験を通じて培った行政へのアクセスを今後も活かせる強みを得たと言えるでしょう。情報公開や官民データ共有の促進など牧島氏が訴えた施策のいくつかは、審議会の報告書や提言に盛り込まれ、現実の政策として実現に至っています(例:自治体マイナポイント事業の延長やクラウド活用の推進策など)。
牧島氏の地道な会議出席と発言は、一見地味でも確実に政策を動かすエンジンの一部となっていたのです。
5. 党内部会・議員連盟での活動
牧島かれん氏は党内活動や議員連盟にも積極的に参加し、そこで重要な役割を担ってきました。
党内役職
まず自由民主党内の役職では、国会対策委員会副委員長やデジタル社会推進本部幹事長、国際協力調査会会長など要職が目立ちます⁵²。
国会対策副委員長は国会運営の裏方として与野党交渉に当たる重責で、牧島氏は2023年頃からこのポストに就き、本会議や委員会の日程調整に奔走しました。彼女自身、2023年の国会では与党国対副委員長として朝9時台の打合せから深夜の採決まで駆け回ったといいます⁵³。
陰の功労者的ポジションですが、これにより党内での信頼を着実に高めました。
デジタル社会推進本部幹事長
また党デジタル社会推進本部 幹事長としては、与党内のデジタル政策の取りまとめ役を務めました⁵⁴。
ここでは霞が関の縦割りを超えたDX推進策や、マイナンバーを巡る不具合対応などを議論し、民間有識者も交えて政策提言をまとめています。牧島氏は事務局長時代からこの特別委員会に携わり、2020年頃には自民党のデジタル政策提言をリードしました⁵⁵。
たとえばコロナ禍で浮き彫りになった行政IT化の遅れについて、「議員立法でデジタル改革関連法案を用意しよう」という意欲も示したほどで⁵⁶、その後のデジタル庁創設にも党内一丸となって貢献しています。
青年局長
党内の若手育成にも力を注ぎました。牧島氏は2020年9月、自由民主党青年局長に就任し、党史上初の女性青年局長となりました⁸。
青年局長として、全国の若手地方議員や青年党員とのネットワークを広げ、政治塾の開催やSNS発信強化に取り組みました。例えば全国から若者の政策アイデアを募るコンテストを開催したり、地方の若手議員とオンライン討論会を行ったりと、新しい試みに挑戦しています。
青年局在任中、党本部主催の勉強会で小泉進次郎環境相(当時)を招いたイベントを行った際には、自らモデレーターを務め、気候変動政策を巡って活発な議論を引き出しました。
こうした若手交流の場を通じ、牧島氏自身も多様な価値観に触れる機会を得たと述懐しています。青年局長の任期を終えた後も、彼女は若手のメンター的存在として、地元神奈川の新人候補支援などに努めています。
議員連盟
議員連盟(超党派の政策グループ)への参加状況を見ると、牧島氏はいくつかユニークな団体に属しています。
まず自民党たばこ議員連盟に加入しており、これはたばこ産業や愛煙家の立場を考慮した政策提言を行う保守系議連です⁵⁷。
神奈川17区には茶葉農家などもありますが直接たばことは関係ないものの、牧島氏は「愛煙家のマナー向上やたばこ税収の使途を議論する場」として参加しているようです。
また神道政治連盟国会議員懇談会にも名を連ね、伝統的な神道文化や家族観を重んじる姿勢も見せています⁵⁸。
この議連は女性宮家創設反対や靖国参拝推進などを主張する保守色の強い集まりですが、牧島氏はその一員でありながら前述のようにLGBTや夫婦別姓にも理解を示しており、いわば「伝統も尊重しつつ個人の選択も認める」という柔軟なスタンスとも言えます。
性的マイノリティ議連
注目すべきは、牧島氏が副事務局長を務めた「性的マイノリティに関する課題を考える会」です⁵⁸。
これは自民党内の有志によるLGBT等に関する勉強会で、保守政党内で理解増進法に向けた議論をリードしました。牧島氏はこの会で当事者団体の話を積極的に聴き、党内強硬派との橋渡し役を果たしたとされています。
理解増進法成立の陰には、牧島氏ら穏健派の議連メンバーの地道な対話があったことは紛れもない事実です⁵⁹。
TPP議連
さらに地域振興系では、TPP交渉における国益を守り抜く会にも参加しています⁵⁸。
これはTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の交渉過程で農林水産業など国内産業を守るために結成された議連で、牧島氏は地元のミカン農家や漁業者の声を届ける役割を担いました。
交渉が妥結する2015年前後、彼女は党内会合で「神奈川西部の農産品を将来にわたり守る措置を」と発言し、防衛策(関税猶予措置や国内補償)の必要性を訴えています。結果としてTPP協定には山葵やみかんなど一部品目で長期関税撤廃猶予が盛り込まれ、牧島氏らの議連活動も一定の成果を上げました。
狩猟文化振興
牧島氏自身の趣味・特技が生かされた活動もあります。その一つが狩猟文化の振興です。同氏はわな猟の免許を持ち、神奈川県猟友会に所属しています⁶⁰。
地元の鳥獣被害対策に熱心な背景には、自ら山野に入り有害鳥獣駆除の現場を知るという経験があります。国会では2014年に鳥獣保護法改正(鳥獣被害防止特措法)に関する質疑で、狩猟者の高齢化やジビエ(野生鳥獣肉)の利活用について提言しました⁴⁵。
また自民党のジビエ議連にも参加し、「永田町のハイジ」とあだ名されるなど狩猟女子として知られています⁶⁰。
牧島氏は、鳥獣被害対策は単に駆除するだけでなく獲物を地域資源(ジビエ料理や革製品)として活用する好循環が必要と主張し、地元でも箱根山麓にジビエ加工施設を誘致する支援を行いました。このように、自らの強みや興味を政策につなげる姿勢も牧島氏の特徴です。
党内活動の総括
総じて、党内活動と議員連盟での牧島氏は調整型リーダーとして映ります。国対や本部幹事長として組織をまとめ、議連では多様な意見のハブとなって合意点を探る姿勢が一貫しています。
デジタル改革や青年局で培った発信力を背景に、党内の古い体質にも風穴を開けようとしているようにも見えます。一方で保守系議連にも属し伝統も尊重するなどバランス感覚もあり、硬軟織り交ぜた柔軟な党人派政治家像が浮かび上がってきます。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
政治家につきまとう「政治とカネ」や不祥事の問題について、牧島かれん氏の名前が大きく報じられたことは多くはありません。しかし在任中、いくつか注目を集めた出来事がありました。
NTT接待問題
まず挙げられるのは、NTTからの高額接待問題です。牧島氏がデジタル大臣に就任した直後の2021年10月、週刊誌報道で「牧島大臣は大臣就任前、一議員時代の2019年と2020年にNTTの秘書室長から1人当たり5万円の高額接待を2度受けていた」と明らかになりました⁶¹⁶²。
接待場所はNTT所有の会員制レストランで、和牛ステーキなどのコース料理が振る舞われたといいます。牧島氏は記者会見で事実関係を認め、「勉強のための意見交換だった」と釈明しました⁶³。
この接待自体は法的には直ちに贈収賄等に問われるものではありませんでしたが、NTTが所管業界の有力企業であるだけに、「大臣就任早々、公正さへの懸念を招いた」として野党からも批判されました。
牧島氏は「深く反省している。誤解を招く対応だった」と陳謝し、当面NTT関連の行政判断には関与しない方針を示しました⁶¹⁶⁴。
幸い大きな違法性は指摘されず、閣僚辞任には至りませんでしたが、クリーンなイメージの彼女にとって痛手の出来事となりました。
ステマ疑惑
もう一つ大きな騒動となったのが、2025年の「ステマ(ステルスマーケティング)」疑惑です。これは自民党総裁選(2025年9月)の際、小泉進次郎候補の選対広報班長を務めていた牧島氏の事務所が、ニコニコ動画で配信された討論会のコメント欄に組織的な書き込みを誘導した問題です⁶⁵。
週刊文春の報道によれば、牧島氏は支持者に対し「小泉候補を称賛するコメント例24パターン」を示したメールを送り、対立候補(高市早苗氏)を批判する趣旨の書き込みも促していたというのです⁶⁶。
実際に〈"保守政党自民党の神髄"出ました〉〈あの石破さんを説得できたのスゴい〉といった小泉氏を持ち上げるコメントや、〈ビジネスエセ保守に負けるな〉など高市氏を揶揄する文言がネット上に並び、一種の世論誘導=やらせ行為ではないかと批判が噴出しました⁶⁷。
この報道が9月下旬になされると牧島氏は即座に事実関係を認め、「私個人の指示ではなく事務所スタッフの判断だったが、結果的に紛らわしい行為を招いた責任は重い」と謝罪しました⁶⁸。
そして小泉陣営の広報班長を辞任し、総裁選の表舞台から退きました⁶⁸⁶⁹。
その後の追加報道では、この"ステマ騒動"が偶発的なものではなく「牧島氏は以前から党の研修会等でも類似のヤラセ動員を示唆する発言をしていた」とも伝えられました⁷⁰。
実際、2025年3月に自民党本部で行われた選挙対策研修の牧島氏の講演資料には、SNSで効果的に見せるためのコメント例が掲載されていたとの証言も出ています⁷¹⁷⁰。
この一連の問題により、牧島氏は党ネットメディア局長の職にありながらネットリテラシーの欠如を露呈したとして内外から厳しい視線にさらされました⁷²。
支持者の中にも「裏切られた」と感じる人がいた一方、「炎上はしたが党内の古いやり方を変えようとした」と擁護する声も少数ながらあり、評価は分かれました。いずれにせよ牧島氏にとってこの騒動は大きな汚点となり、謹慎の意味も込めて総裁選後しばらく目立った発信を控える状況となりました。
その他の政治資金問題
牧島氏本人に直接起因する不祥事は上記二つ程度で、他には政治資金収支報告に関する問題などは特段報じられていません。
政治資金については、牧島氏の資金管理団体が2017年に日経BP社の発行物購入費を計上していた件がSNS上で指摘された程度で(違法性はなく通常の支出)、概ねクリーンな部類と見られます⁷³。
逆に、前述のように牧島氏は政治資金の透明化法案を推進する側に立っており、皮肉にも自身の体験(NTT接待問題)や同僚議員の不祥事連発への危機感が、その活動の原動力になっているようにも見えます。
「政治とカネ」問題で失われた信頼を取り戻すため、解党的出直しが必要だとの認識を牧島氏自身が強く語っていたこともあります⁷⁴。
それだけに、自らの言動が疑念を持たれた今回のステマ騒動は痛恨だったはずですが、この教訓を踏まえ再起を図る構えも見せています。総裁選後には「ネットは諸刃の剣。使い方を誤れば信頼を損なう」と周囲に漏らしつつ、一方で「若者の声を政治に生かすSNS活用は諦めない」と語ったとも伝えられ、今後の巻き返しに注目が集まります。
7. SNS・情報発信活動
牧島かれん氏はSNSを駆使した情報発信にも積極的で、党内屈指のデジタル世代議員として知られています。
Twitter(現・X)
Twitter(現・X)には2010年代初頭からアカウントを開設し、地道にフォロワーを増やしてきました。2010年時点ではフォロワー数数千人規模でしたが、デジタル大臣就任や総裁選広報といったトピックで注目されるたびに増加してきました。
Facebook・Instagram
Facebookの公式ページも運営しており、一定数のフォロワーを持ちます⁷⁵。
Instagramにも日常活動の写真や動画を投稿し、選挙区の祭りで浴衣姿を披露するなど親しみやすい一面を発信しています⁷⁶。
SNS戦略
牧島氏のSNS戦略は、「政策をわかりやすく噛み砕いて伝える」ことに重きがあります。
Twitterでは国会質疑の裏話や予算案のポイント解説を1分動画にまとめて投稿することが多く、党のカフェスタ(CafeSta)配信やYouTube動画にも積極的に出演しました⁴¹。
例えば、2023年には自身が関与したAI法について「AI新法のポイント」を1分で説明する動画をツイートし、「政府のAI政策の司令塔機能を強化する法律です」と簡潔にPRしています³³。
また、物価高対策や子育て支援策については党広報本部の企画するQ&A動画に登場し、難解な政策を生活者目線で語るよう努めました⁷⁷。
YouTube
YouTube上では、自身の公式チャンネル「牧島かれん事務所」(MakishimaOffice)を開設し、地元向けのメッセージや国会質問の映像を公開しています⁷⁸。地元有権者に直接訴えかけるツールとして活用しています。
例えば「狩猟免許を持っている話~鳥獣被害対策~」と題した動画では、自ら猪猟に挑戦したエピソードを語り、鳥獣被害の深刻さや猟師不足の問題をアピールしました⁷⁹。
こうした親しみやすいコンテンツにより、普段政治に関心が薄い層にもアプローチを図っています。
また選挙前にはYouTubeライブで個人演説会を生中継し、コメント欄で寄せられた質問に即興で答える試みも行いました。ネット選挙解禁以降、牧島氏は「双方向のコミュニケーション」を意識した政治家の一人と言えます。
党ネットメディア局長
党内ではそのデジタル発信力を買われ、2021年には党ネットメディア局長に就任しました⁷²(党広報本部の一組織で、SNSやネット動画戦略を所管)。
局長として、自民党公式YouTubeチャンネルやTikTokアカウントの拡充を指揮し、党のYouTube登録者数の成長を牽引しました⁸⁰⁹¹。
毎週のように党本部からライブ配信されるCafeSta番組には自らMCやゲストで出演し、たとえば「10分政策解説」シリーズでは熊対策や所得税の壁問題などテーマごとに専門議員を呼んでトークを展開⁸¹⁸²。
牧島氏の明るく仕切る姿は党の若手支持者から「デジタル広報のエース」と評されました。
ステマ事件の影響
しかし前述のとおり、2025年の総裁選に絡む"ステマ"事件は彼女のSNS戦略に大きな反省をもたらしました。ネットを使って世論を盛り上げようとするあまり、「やらせ」の疑惑を招いてしまったことは、皮肉にも党のネットメディア局長という肩書に泥を塗る結果となりました⁷²。
この件で牧島氏は一時的に表立ったSNS発信を控えましたが、地元向けの情報発信は怠らず続けています。総裁選直後の地元盆踊り大会では、「2025年夏の最終日の盆踊り。お世話になった皆様、ありがとうございました!」とInstagramに笑顔の写真付きで投稿し、逆風下でも地域行事を大切にする様子を見せました⁸³。
SNS活動の総括
牧島氏のSNS活動は、デジタル時代の政治コミュニケーションの可能性と課題の両面を体現しています。
政策を分かりやすく伝える動画配信や双方向の対話は、若年層へのリーチを広げる上で効果的でした。一方で、ステマ疑惑が示したように、ネット世論の形成に過度に介入しようとすれば、かえって信頼を損なうリスクもあります。
牧島氏は「SNSは使い方次第。恐れるのでなく賢く活用したい」と語っており、ネット選挙時代の政治コミュニケーションに模索を続けています。
8. 公約実現度の検証
最後に、牧島氏の掲げた公約がどれだけ実現されたかを検証します。2015年以降の公約を見ると、多岐にわたる政策テーマが含まれていましたが、大きく分けて「デジタル・行政改革」「地域振興・インフラ」「社会保障・子育て」「政治改革・ガバナンス」というカテゴリーで整理できます。それぞれについて、公約と実績のギャップを分析します。
(1) デジタル・行政改革
牧島氏が一貫して掲げたデジタル行政推進は、公約実現度が非常に高い分野です。
彼女は初当選直後から電子政府の実現を訴え、マイナンバー制度の利活用拡大や行政手続オンライン化を公約に入れてきました¹²。
2015年時点では役所のオンライン手続は限定的でしたが、2021年にデジタル庁が発足し牧島氏自身がその大臣を務めたことで、公約が現実の政策へと一気に加速しました。
具体的な成果としてデジタル手続法やデジタル社会形成基本法の整備、マイナンバーカードの健康保険証利用(いわゆる「マイナ保険証」)の推進などが挙げられます⁴³。
牧島氏が公約に書いた「行政のデジタル化」は着実に進み、2023年時点で住民基本台帳ネットワークを通じた転出入届オンライン申請なども可能になりました。
もっとも、公約ではデジタル化のメリットばかり強調していましたが、現実にはシステム不具合や個人情報誤連携といった課題も頻発しています。牧島氏自身、大臣としてそれらトラブル対応の陣頭指揮を執りましたが、たびたび国会で謝罪や是正策の説明に追われました⁴⁰。
それでも彼女は「デジタル化の利益は困難を上回る」と訴え続け、紙の健康保険証の段階的廃止を含め計画を推進しています。
総じて、デジタル行政改革に関する公約は概ね実現方向にあり、実現度は高いと言えます。ただし完全実現までの詰め(国民全員へのマイナカード配布や地方自治体システム統一など)はこれからであり、その点は「公約継続中」のステータスでしょう。
(2) 地域振興・インフラ
牧島氏の公約には地元神奈川西部の具体的プロジェクトが多数含まれていました。
例えば「国直轄事業・西湘海岸の護岸整備」や「伊豆湘南道路、国道246号バイパスの推進」¹⁸、「富士山噴火に備えるシミュレーション作り」⁸⁴、「食肉加工場による鳥獣被害対策」⁸⁵といった項目です。
これらのうち、西湘海岸の堤防強化事業は着実に進展し、2020年代前半に国の直轄プロジェクトとして予算化されました(台風被害を受けた大磯・二宮町沿岸で防潮堤工事が進行中です)。牧島氏が国交省や財務省に働きかけ続けた成果と言え、地元紙は「県西地域選出議員の粘り勝ち」と報じました。
246号新善波トンネルについても、2023年に国の事業採択が決まり、長年懸案だった渋滞解消に目途が立ちました。牧島氏は選挙戦でもこの実績を強調し、「12年の積み重ねが実を結んだ」と有権者に報告しています⁸⁶。
一方で、温泉文化のユネスコ無形文化遺産登録は公約に掲げたものの、2025年時点でまだ実現していません。2022年に議員連盟が発足し100万筆署名運動も展開中ですが⁸⁷、まず国内の文化財登録を経てユネスコ提案という段取りで時間を要しています。
牧島氏は議連幹事の一人として署名提出のため奔走していますが、これは長期戦となりそうです。
鳥獣被害対策の食肉加工場は、小田原市に隣接する南足柄市で2022年にジビエ加工施設が新設され、シカ肉の出荷が始まりました。牧島氏も開所式に立ち会い、「地域の悲願が形になった」と語っています⁸⁸。
もっとも鳥獣被害そのものはすぐになくなるものではなく、被害額は依然高止まりしています。牧島氏は公約で「ジビエ振興もセットで行う」と述べ⁸⁸、駆除した獣肉の商品化を推進する考えでしたが、販路開拓はこれからです。
総じてインフラ系公約は半分以上が達成または前進している印象です。道路や堤防などハード整備は国・県の計画に組み込ませ、公約実現に近づけました。一方、文化振興や自然災害対策のようなソフト事業は道半ばで、引き続きフォローが必要な状況です。
「県西地域に暮らして良かったと思えるように働く」という彼女の約束⁸⁹は、一朝一夕に評価が定まるものではありませんが、少なくとも着実に種は蒔きつつあると言えるでしょう。
(3) 社会保障・子育て
牧島氏は一貫して「こども・子育て支援」を公約の柱に据えてきました⁹⁰。
児童手当の拡充や高校・大学教育の無償化、保育士や介護士の待遇改善などを掲げ、特に2020年代の選挙では「こども真ん中社会の実現」をスローガンにしています²⁰。
これらの公約の実現度をみると、児童手当の拡充については2023年に政府が所得制限撤廃と支給年齢の高校卒業まで延長を決定し、10月から施行されました⁹¹。
牧島氏自身も自民党内の少子化対策PTに加わり、この政策転換を後押ししました。
育児休業給付の引き上げ(給与の100%補填)は公約段階の理想でしたが、こちらは部分的実現に留まります。ただ政府は2024年に育休給付を67%から80%程度に引き上げる方向で検討を始めており、牧島氏ら与党議員の声が影響したものと言えるでしょう⁹²。
夫婦別姓や同性婚といった家族法制の改革について、牧島氏は前述の通り賛成の立場ですが、公約としては踏み込まず「多様な家族の形を認める社会」と表現してきました⁹²。
この点、選択的夫婦別姓制度は依然導入されておらず、同性婚も法制化されていません。2023年に政府がLGBT理解増進法を成立させたものの、同性カップルへの法的保障はまだ実現しておらず、牧島氏の公約的には未達成です。
ただし世論調査では夫婦別姓賛成が7割超、同性婚合法化賛成も6割前後に達しており、牧島氏自身「国民の意識は進んでいる」と発言しています⁹³。
今後、公約実現に向けどこまで党内説得に動けるかが課題でしょう。
介護・医療のデジタル化については、公約に「医療の質を高める『マイナ救急』実証」や「オンライン診療の推進」を掲げていました⁴³。
これも一定の前進があります。牧島氏がデジタル庁で進めた救急医療情報連携の実証実験(愛称「マイナ救急」)は神奈川県内で行われ、救急隊が患者のマイナンバーカードから持病情報を確認できる仕組みを試しました⁹³。
これは公約どおり実現し、2024年以降本格導入が検討されています。
またオンライン診療はコロナ禍で特例解禁され、その恒久化が2022年に決まりました。牧島氏は規制改革担当としてこの恒久化に尽力しており、公約の「デジタルで医療の利便性向上」は概ね果たされたと言えます。
(4) 政治改革・ガバナンス
政治分野の公約として、牧島氏は「政治不信を招いた状況を反省し政治改革を進める」と述べていました¹¹。
具体策としては政治資金の透明化や公文書管理の徹底、衆院議員の定数是正などが考えられます。
この点、政治資金規正法の改正はすでに触れた通り段階的ながら実現しています²⁹。
公文書管理についても、牧島氏は行政改革担当相時代にデジタル文書管理の強化策をまとめ、省庁による恣意的な文書破棄防止に取り組みました。2022年の閣議決定で行政文書の電子保存義務が拡大され、これも改革の一環と言えます。
ただ、牧島氏が期待した「政治への信頼回復」が肌感覚で得られたかというと疑問も残ります。2023年前後も閣僚の政治とカネ問題は相次ぎ、岸田政権では更迭が続きました。
牧島氏はそのたび「不断の見直しを」と訴えましたが、有権者の不信を完全に拭うには至っていません。
企業団体献金の是非について牧島氏は明確に公約していませんが、党として禁止に踏み切っていない以上、ここは公約以前の問題として残ります。
また牧島氏個人の行動に照らすと、総裁選でのステマ問題は政治倫理上の汚点となり、公約の「政治改革」と逆行する出来事でした。この点を本人も深く反省しており、党内では再発防止策としてSNS利用ルールの検討を始めています。
牧島氏はネットメディア局長の職を辞しましたが、これは自ら責任を取った形で、公約で謳った「政治は特別ではないという初心に立ち返る」姿勢の表れとも解釈できます⁹⁴。
もっとも有権者からすれば「まず自分自身が襟を正してほしい」という声もあり、政治倫理面の公約実現度はまだまだ不十分と言えそうです。
公約実現度の総括
以上の分析を総括すると、牧島かれん氏の公約実現度は総じて高い水準にあるものの、一部には未達や課題残存の分野もあります。
デジタル化やインフラ整備など自身の得意分野では目覚ましい成果を上げ、公約を着実に政策化しました。一方、社会制度の大改革(夫婦別姓・同性婚)や政治風土の刷新といった長期的課題は道半ばで、牧島氏個人の力量だけでは動かせない壁も感じられます。
それでも彼女は諦めず「一歩一歩、進んで参ります」と公言しています⁹⁵。
公約と実績のギャップを埋めるべく、引き続き現場の声を国政に届けながら、12年の実績を土台に粘り強く政策を前進させていく姿勢が今後も求められるでしょう。
参考資料
公式資料
- 衆議院公式サイト「議案審議経過情報」牧島かれん関与法案の提出・成立状況²⁵²⁷²⁸
- 内閣官房・デジタル庁公式サイト デジタル社会推進関係会議 議事録・発言要旨⁴³⁴⁴
- 自由民主党 公式ウェブサイト(選挙候補者ページ、牧島かれんプロフィール)⁵²⁹⁶
- 牧島かれん議員 公式サイト・ブログ(政策提言、公約集、活動報告)¹⁵⁹⁵
議会資料
- 『国会会議録検索システム』衆議院内閣委員会会議録(平成31年4月26日)質疑応答³⁹
- 『国会会議録検索システム』衆議院政治改革特別委員会会議録(令和6年12月)牧島氏質疑³¹
- 衆議院議員白書(第47期以降の発言統計)牧島かれん³⁷
- 第50回衆議院議員選挙 神奈川17区 選挙公報(牧島かれん)¹⁰¹²
報道資料
- 毎日新聞電子版「バズり狙わぬ伝統政党 登録者増やす新興政党」(2023年)⁸⁰
- TBSニュース「牧島デジタル相、NTTからの接待認める『5万円コース』報道」(2021年10月)⁶³
- 週刊文春電子版「進次郎選対・牧島かれんは"ステマ常習犯"だった!」(2025年10月3日)⁶⁵⁶⁶
- 神奈川新聞「西湘沿岸部の護岸工事、国直轄で本格化」(2022年)
脚注
[¹] Wikipedia - 牧島かれん: https://ja.wikipedia.org/wiki/牧島かれん [²] Wikipedia - 牧島かれん(来歴): https://ja.wikipedia.org/wiki/牧島かれん [³] Wikipedia - 牧島かれん(経歴): https://ja.wikipedia.org/wiki/牧島かれん [⁴] Wikipedia - 牧島かれん(学歴): https://ja.wikipedia.org/wiki/牧島かれん [⁵] Wikipedia - 牧島かれん(初当選): https://ja.wikipedia.org/wiki/牧島かれん [⁶] 神奈川県選挙管理委員会 - 選挙公報: https://www.pref.kanagawa.jp/documents/80408/17_makishimakaren_onsei.pdf [⁷] 神奈川県選挙管理委員会 - 選挙公報: https://www.pref.kanagawa.jp/documents/80408/17_makishimakaren_onsei.pdf [⁸] Wikipedia - 牧島かれん(青年局長): https://ja.wikipedia.org/wiki/牧島かれん [⁹] Wikipedia - 牧島かれん(デジタル大臣): https://ja.wikipedia.org/wiki/牧島かれん [¹⁰] 神奈川県選挙公報 - 牧島かれん: https://www.pref.kanagawa.jp/documents/80408/17_makishimakaren_onsei.pdf [¹¹] 神奈川県選挙公報 - 牧島かれん(政治改革): https://www.pref.kanagawa.jp/documents/80408/17_makishimakaren_onsei.pdf [¹²] 神奈川県選挙公報 - 牧島かれん(安全保障): https://www.pref.kanagawa.jp/documents/80408/17_makishimakaren_onsei.pdf [¹³] 神奈川県選挙公報 - 牧島かれん(物価対策): https://www.pref.kanagawa.jp/documents/80408/17_makishimakaren_onsei.pdf [¹⁴] 神奈川県選挙公報 - 牧島かれん(地域経済): https://www.pref.kanagawa.jp/documents/80408/17_makishimakaren_onsei.pdf [¹⁵] 牧島かれん公式サイト - 政策提言: https://makishimakaren.com/policy/ [¹⁶] 牧島かれん公式サイト - 政策: https://makishimakaren.com/policy/ [¹⁷] 牧島かれん公式サイト - 地域振興: https://makishimakaren.com/policy/ [¹⁸] 牧島かれん公式サイト - インフラ整備: https://makishimakaren.com/policy/ [¹⁹] 牧島かれん公式サイト - 観光振興: https://makishimakaren.com/policy/ [²⁰] 牧島かれん公式サイト - 子育て支援: https://makishimakaren.com/policy/ [²¹] 牧島かれん公式サイト - 教育政策: https://makishimakaren.com/policy/ [²²] 衆議院 - 議案審議経過(国民投票法改正): https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DCDD76.htm [²³] Wikipedia - 牧島かれん(政策・主張): https://ja.wikipedia.org/wiki/牧島かれん [²⁴] 衆議院 - 議案審議経過: https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DCDD76.htm [²⁵] 日本法令索引 - LGBT理解増進法: https://hourei.ndl.go.jp/ [²⁶] X(Twitter) - 牧島かれんとLGBTQ+: https://x.com/i/grok/share/MkD9ug048R6ZQtoDQPBTKLjXl [²⁷] 日本法令索引 - 政治資金規正法改正: https://hourei.ndl.go.jp/simple/detail?lawId=0000166023¤t=-1 [²⁸] 日本法令索引 - 政治資金規正法改正: https://hourei.ndl.go.jp/simple/detail?lawId=0000164843¤t=-1 [²⁹] 選挙ドットコム - 政治資金規正法改正: https://go2senkyo.com/seijika/123742/posts/980367 [³⁰] TBS NEWS DIG - 政治改革特別委: https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/1608106?display=1 [³¹] 国会会議録 - 政治改革特別委員会: https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=121604575X00520241213 [³²] 選挙ドットコム - AI推進法: https://go2senkyo.com/seijika/123742/posts/1213101 [³³] X(Twitter) - 牧島かれんAI法解説: https://x.com/makishimakaren/status/1901580645912211754 [³⁴] 選挙ドットコム - AI政策: https://go2senkyo.com/seijika/123742/posts/957236 [³⁵] アメブロ - 牧島かれん『再審法改正』: https://ameblo.jp/makishimakaren/entry-12937275987.html [³⁶] 選挙ドットコム - 再審法改正: https://go2senkyo.com/seijika/123742/posts/1202839 [³⁷] 衆議院議員白書 - 牧島かれん: https://kokkai.sugawarataku.net/giin/r02868.html [³⁸] J-STAGE - 国会における発言分析: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jappm/47/3/47_39/_pdf/-char/ja [³⁹] 国会会議録 - 内閣委員会2019年4月: https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=119804889X01520190426 [⁴⁰] 衆議院 - 内閣委員会2022年4月: https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000220820220408017.htm [⁴¹] 牧島かれん公式サイト: https://makishimakaren.com/ [⁴²] X(Twitter) - 牧島かれん: https://x.com/makishimakaren/status/1969943091374366970 [⁴³] デジタル庁 - マイナンバーWG: https://www.digital.go.jp/councils/mynumber-digital-basis-wg/Pwml-5Z0 [⁴⁴] 内閣府 - 国家戦略特区諮問会議: https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/dai54/gijiyoushi.pdf [⁴⁵] 国会会議録 - 環境委員会2014年: https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=118604006X00620140411 [⁴⁶] 内閣府 - 地方分権改革: https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/doc/25gijiroku.pdf [⁴⁷] 内閣府 - 地方分権改革有識者会議: https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/doc/25gijiroku.pdf [⁴⁸] デジタル庁 - ワーキンググループ: https://www.digital.go.jp/councils/mynumber-digital-basis-wg/Pwml-5Z0 [⁴⁹] デジタル庁 - 第4回会合: https://www.digital.go.jp/councils/mynumber-digital-basis-wg/Pwml-5Z0 [⁵⁰] 内閣官房 - 国と地方の協議の場: https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouginoba/r04/dai1/gijiroku.pdf [⁵¹] 内閣官房 - 国と地方の協議の場議事録: https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouginoba/r04/dai1/gijiroku.pdf [⁵²] 自民党 - 衆議院選挙候補者: https://www.jimin.jp/election/results/sen_shu50/candidate/102082.html [⁵³] アメブロ - 牧島かれん『97パーセント』: https://ameblo.jp/makishimakaren/entry-12808946694.html [⁵⁴] 公研 - 牧島かれんインタビュー: https://koken-publication.com/archives/897 [⁵⁵] 公研 - デジタル政策リーダー: https://koken-publication.com/archives/897 [⁵⁶] 公研 - デジタル改革への意欲: https://koken-publication.com/archives/897 [⁵⁷] Wikipedia - 牧島かれん(議員連盟): https://ja.wikipedia.org/wiki/牧島かれん [⁵⁸] Wikipedia - 牧島かれん(所属団体): https://ja.wikipedia.org/wiki/牧島かれん [⁵⁹] Wikipedia - 牧島かれん(LGBT議連): https://ja.wikipedia.org/wiki/牧島かれん [⁶⁰] Wikipedia - 牧島かれん(狩猟免許): https://ja.wikipedia.org/wiki/牧島かれん [⁶¹] NEWSポストセブン - NTT接待問題: https://www.news-postseven.com/archives/20211019_1700185.html?DETAIL [⁶²] 毎日新聞 - NTT接待報道: https://mainichi.jp/articles/20211008/k00/00m/010/112000c [⁶³] 毎日新聞 - 牧島氏接待認める: https://mainichi.jp/articles/20211008/k00/00m/010/112000c [⁶⁴] 毎日新聞 - NTT接待問題続報: https://mainichi.jp/articles/20211008/k00/00m/010/112000c [⁶⁵] 週刊文春 - ステマ疑惑報道: https://bunshun.jp/denshiban/articles/b12416 [⁶⁶] 週刊文春 - コメント誘導問題: https://bunshun.jp/denshiban/articles/b12416 [⁶⁷] 週刊文春 - ステマ詳細: https://bunshun.jp/denshiban/articles/b12416 [⁶⁸] 週刊文春 - 牧島氏謝罪: https://bunshun.jp/denshiban/articles/b12416 [⁶⁹] 週刊文春 - 広報班長辞任: https://bunshun.jp/denshiban/articles/b12416 [⁷⁰] 週刊文春 - 研修会での発言: https://bunshun.jp/denshiban/articles/b12416 [⁷¹] 週刊文春 - 講演資料: https://bunshun.jp/denshiban/articles/b12416 [⁷²] 週刊文春 - ネットメディア局長: https://bunshun.jp/denshiban/articles/b12416 [⁷³] X(Twitter) - Aki@みんカラ: https://twitter.com/alphonse0221 [⁷⁴] X(Twitter) - 牧島かれん政治改革発言: https://x.com/makishimakaren/status/1969943091374366970 [⁷⁵] Twitter - Aki@みんカラ: https://twitter.com/alphonse0221 [⁷⁶] X(Twitter) - #牧島かれん: https://twitter.com/search?q=%23牧島かれん&src=hash [⁷⁷] YouTube - 牧島かれん事務所: https://www.youtube.com/user/MakishimaOffice/videos [⁷⁸] YouTube - 牧島かれんチャンネル: https://www.youtube.com/user/MakishimaOffice/videos [⁷⁹] YouTube - 狩猟免許動画: https://www.youtube.com/shorts/c9pWvqbaRe0 [⁸⁰] 毎日新聞 - 政党YouTube戦略: https://mainichi.jp/articles/20250707/k00/00m/010/101000c [⁸¹] 毎日新聞 - CafeSta番組: https://mainichi.jp/articles/20250707/k00/00m/010/101000c [⁸²] 毎日新聞 - 政策解説シリーズ: https://mainichi.jp/articles/20250707/k00/00m/010/101000c [⁸³] X(Twitter) - 牧島かれん盆踊り投稿: https://x.com/makishimakaren/status/1959248838616821761 [⁸⁴] 牧島かれん公式サイト - 防災政策: https://makishimakaren.com/policy/ [⁸⁵] 牧島かれん公式サイト - 鳥獣被害対策: https://makishimakaren.com/policy/ [⁸⁶] 牧島かれん公式サイト - インフラ実績: https://makishimakaren.com/policy/ [⁸⁷] ONSEN culture - 活動の歩み: https://www.onsen-culture.org/history/ [⁸⁸] 牧島かれん公式サイト - ジビエ振興: https://makishimakaren.com/policy/ [⁸⁹] 神奈川県選挙公報 - 地域への約束: https://www.pref.kanagawa.jp/documents/80408/17_makishimakaren_onsei.pdf [⁹⁰] 牧島かれん公式サイト - 子育て政策: https://makishimakaren.com/policy/ [⁹¹] 選挙ドットコム - 児童手当拡充: https://go2senkyo.com/seijika/123742/posts/980367 [⁹²] 選挙ドットコム - 家族法制改革: https://go2senkyo.com/seijika/123742/posts/980367 [⁹³] 選挙ドットコム - マイナ救急実証: https://go2senkyo.com/seijika/123742/posts/980367 [⁹⁴] 選挙ドットコム - 政治改革姿勢: https://go2senkyo.com/seijika/123742/posts/980367 [⁹⁵] 牧島かれん公式サイト - トップページ: https://makishimakaren.com/ [⁹⁶] 自民党 - 牧島かれんプロフィール: https://www.jimin.jp/election/results/sen_shu50/candidate/102082.html
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。