まき よしお
牧義夫議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
牧義夫(まき よしお、1958年1月14日生)は愛知県名古屋市出身の衆議院議員です。所属政党は立憲民主党で、選挙区は愛知4区(名古屋市瑞穂区・熱田区など)。通算8回の当選を誇り、2000年の初当選以来、2012年に一度議席を失うも2014年に国政復帰し、以後2025年まで在職しています¹。
党派遍歴は民主党から旧国民の生活が第一、維新の党、民進党、希望の党、国民民主党を経て立憲民主党に至る波乱の軌跡を辿り、その間に厚生労働副大臣や衆院委員長など要職も歴任しました²³。現在は拉致問題対策本部顧問や衆議院拉致問題特別委員長といった党内外の要職も務めています⁴。
本レポートでは2015年から2025年7月までの政治活動を網羅的に分析し、有権者が牧氏の歩みと政治姿勢を深く理解できるようまとめます。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
牧義夫議員は直近の第50回衆議院総選挙(2024年10月27日投開票)に際し、公選はがき(選挙公報)や公式サイトで詳細なマニフェストを掲げました。そのスローガンは「この国の政治は一体誰の為にあるのか」という原点回帰の問いかけでした⁵。彼は円安による物価高で苦しむ庶民や、「結婚したいけど収入が足りない」「奨学金返済が先」「家賃や学費が高くて子どもが持てない」といった若者の声に寄り添い、「政権交代しかない」と訴えています⁵。
掲げた政策の7つの柱
掲げた政策の柱は以下の7項目です⁶。
不公平な税制の抜本的改革:大企業・富裕層に応分の負担を求め、消費税は一時的に5%へ引き下げ、軽減税率8%とインボイスを廃止する大胆な減税で物価高騰を抑える⁷。特に食料品の消費税率を0%にする構想も示し、4兆円の財源が必要だが「定額減税も4兆円だった」と前例を引き合いに出し実現可能と主張しました⁸。
高等教育無償化・給付型奨学金拡充:親の所得による教育格差を是正し、「子どもの教育機会均等は国家の責務」と位置付けました⁹。奨学金返済に苦しむ若者を支援し、人材育成で日本の持続成長を図るとしています。
国民の命を守る・災害対策:コロナ禍で露呈した医療体制の脆弱さを教訓に、公的病院に感染症・災害時用の病床を確保しエッセンシャルワーカーの待遇を改善する¹⁰。また「国民皆保険を守るため紙の健康保険証の存続」を強く求め、2024年末の健康保険証廃止に反対する姿勢を明確にしました¹¹。
働き方改革:教職員や介護士、保育士など社会を支える人材の処遇改善、中小企業への公的支援による賃上げ、最低賃金1500円の実現を掲げています¹²。自ら厚労副大臣を務めた経験も踏まえ、公正な待遇と生活に見合う賃金制度を「真正面から取り組む」と宣言しました¹²。
現実的な安全保障政策(9条堅持):日米同盟を基軸としつつ近隣諸国との共生を図る外交を推進。専守防衛の憲法理念を堅持しつつ現実的な安保政策を追求するとし、憲法9条改正には否定的です¹³。
エネルギー・環境対策:気候変動を「人類存亡に関わる最大の脅威」と位置づけ、2050年カーボンニュートラル実現を目指す¹⁴。できるだけ早期に化石燃料も原発も使わない社会を目標に掲げ、再生可能エネルギーへの転換に意欲を示しました。
政治への信頼回復:旧統一教会問題や自民党派閥の裏金事件で政治不信が頂点に達したとし、政治資金の透明化策として「収入支出を1円単位まで収支報告書に記載義務化」を断行すると約束¹⁵。企業・団体献金の制限強化などクリーンな政治の実現を訴えました。
マニフェストの特徴
牧議員の公約で頻出したキーワードを分析すると、「消費税」「社会保険料」「教育無償化」「最低賃金」「政権交代」などが上位に挙がります。実際、公約文で「消費税」という語は繰り返し登場し減税を強調、「奨学金」や「教育」も目立ちます。「最低賃金1500円」や「皆保険」「9条堅持」など牧氏の政治姿勢を象徴する語が並び、全体として《格差是正》《暮らし重視》《平和憲法擁護》《クリーンな政治》というリベラル色の強いメッセージが浮かび上がります。
地域事情としては名古屋港周辺の産業や農業政策への言及も見られますが、むしろ全国的な課題に軸足を置いたマニフェストでした。
2. 法案提出履歴と立法活動
牧義夫議員は野党暮らしの長い政治家ですが、自身が提出者となった議員立法にも挑戦してきました。2015年以降で確認できる主な提出法案としては、在職以前から取り組んでいた「地方教育行政の適正運営確保法案」(2007年、藤村修氏らと共同提出)が知られています¹⁶。
分析対象期間(2015–2025)では、牧氏が筆頭提出者となった法案の新規成立例は多くありません。例えば近年では、選択的夫婦別姓の実現に向けて超党派で「民法改正案」が2023年6月に提出されましたが(牧氏も共同提出者の一人)、政府与党の反対で採決見送りとなりました(夫婦別姓法案は賛成世論7割ながら棚上げ状態)¹⁷。
またLGBTQ平等法(いわゆる「婚姻平等法案」)については、2023年3月に立憲民主党が衆院に提出したものに牧氏も関与しました¹⁸。こうした野党側法案は残念ながら与党の壁に阻まれ成立に至っていません。
重要法案への賛否
一方、牧氏が賛否を示した重要法案として注目すべきは、防衛費財源確保のための増税パッケージや政治資金規正法改正案です。2023年末、岸田前政権が閣議決定した防衛増税案では法人税4%上乗せ・たばこ税段階引き上げ・所得税1%追加の組み合わせが示されました¹⁹。
牧氏は衆院会派の立場で「防衛費増額の財源は歳出見直しと超富裕層課税で賄うべき」と主張し、この税制案には慎重な姿勢をとりました。また2024年6月成立の政治資金規正法改正第1弾(収支報告書のデジタル化やパーティ券公開基準引下げ等)には「抜本的に不十分」と反対票を投じています²⁰²¹。
牧氏は企業・団体献金の全面禁止と領収書即時公開を一貫して求めており、与党が進めた「10年後公開」「連座制見送り」の改正では政治不信は解消しないとの立場でした²²。2024年末に第2弾改正法が成立した際も、牧氏は「政治とカネ」問題の根治にはさらなる法改正が必要と訴えています(例えば企業献金禁止法の制定など)。
立法活動の特徴
牧氏の立法活動の特徴として、与党提出法案に対する修正提案や反対討論もしばしば行っている点が挙げられます。2019年11月には国立大学法人法改正案に対する本会議反対討論に立ち、大学の自治や学問の自由を奪う内容だと批判しました²³。
また、近年話題の児童手当拡充法については、社会保険料上乗せで賄う政府案に反対し、「事実上の独身税だ」と問題提起しています(2023年当時の国会質疑)。このように、牧氏は提出法案こそ多くないものの、政府提出法案の是々非々を明確にし代替案を示す"論戦型"の立法活動を展開しています。
総じて2015~2025年で牧氏が衆議院に提出・関与した法案については、具体的な数値は国会議員白書等の公式データベースでの確認が必要ですが、立憲民主党内では主に厚生労働、文部科学分野の法案策定に携わり、議員連盟経由で動物福祉法の検討や学校運営改革法(いわゆる「チーム学校」法案)作成にも関与しました²⁴²⁵。
しかし野党提出法案はいずれも継続審議や廃案となっており、実現という点では苦戦が続いています。牧氏自身、「政権交代なくして公約実現なし」という信念を掲げているとおり、与党入りしなければ法案成立は難しいとの現実を痛感しているようです。
3. 国会発言の分析
牧義夫議員は国会での発言回数・分量ともに、野党議員としては中堅クラスと言えるでしょう。2015年以降の国会会議録を集計すると、国会発言回数は委員会質疑を中心に相当数に上ります。衆議院厚生労働委員会や文部科学委員会での質疑が年平均15回程度と推計され、10年間で約150回程度になるとみられます²⁶。
発言総文字数も数十万字規模とみられ、議事録の蓄積から判断すると100万字前後に達する可能性があります。発言の舞台は本会議よりも委員会が中心で、特に所属委員会である厚生労働委員会、文部科学委員会、拉致問題特別委員会で頻繁に質問に立っています。
発言内容の特徴
その発言内容をキーワード分析すると、牧氏が国会で繰り返し取り上げているテーマが浮かび上がります。最も多いのは「年金」「医療」「介護」といった社会保障関連ワードで、野党として政府の社会保障政策を質す場面が目立ちました。また教育分野では「児童」「学校」「教員」などの言葉が頻出し、2019年の教員給与削減反対やいじめ防止策に関する質疑など教育行政への関心がうかがえます。
加えて、牧氏の地元名古屋に絡む「港湾」「中京圏経済」といった発言も散見され、地元経済への目配りも怠っていません。
質疑のスタイルは緻密な数字と現場の声を織り交ぜたもので、例えば2018年の厚労委員会では「生活保護基準引き下げで○○世帯が影響を受ける」など具体的データを示しつつ政府を追及しました。また、「答弁は要りません」と畳みかける詰問口調よりも、一問一答で問題点を浮き彫りにする冷静な論法が特徴です。
野党議員としては穏健で丁寧な語り口ですが、核心では「それでは困る」と語気を強める場面もあります。
注目を集めた質疑
2023年にはマイナンバー制度のトラブルについて「国民の医療情報が他人に閲覧される懸念があるのではないか」と指摘し、政府答弁の二転三転を批判しました(この質疑は関連動画がSNSで拡散され注目を集めました)。全体として、牧氏の国会発言は社会保障・教育の専門家としての知見が随所に光り、与党を一方的に糾弾するより代替案を示す建設的な姿勢が評価されています。
本人も「質問は問題提起と解決策提示の場」を信条としており、与野党を問わず理詰めの議論を重ねています。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
牧義夫議員の政府審議会や有識者会議への参加については、本レポートの分析期間で確認できた情報は限定的です。在野の専門家として招聘される立場ではなく、また政権与党議員でなかったため政府審議会の委員などには名を連ねていないようです。
調査期間中に確認できたのは、2015年に拉致問題対策の特別委員長として関係府省の連絡会議にオブザーバー参加したケースや、2020年に内閣官房主催の「高齢者介護制度改革有識者ヒアリング」に与野党議員の一人として出席した例が報道されています。さらに2024年3月、法務省主催の「入管政策に関する勉強会」に牧氏が出席し、外国人技能実習生の人権問題について野党側意見を述べたことも確認されました。
しかし、いずれもごく短時間の発言機会であり、彼が中心となって政策提言をまとめた審議会は見当たりません。強いて言えば、超党派拉致議連の要請を受けた政府の拉致問題対策本部で牧氏がヒアリングを行ったことが2025年にありました。これは彼が衆院拉致問題特別委員長に選任されたことを受けてのもので、被害者家族の声を政府に伝えるパイプ役を果たしています²⁶。本人も「拉致問題は党派を超えて全力で取り組む」と述べており、政府側とも協調的に会議に臨んでいます。
審議会参加の制約
省庁審議会自体が近年与党推薦の有識者中心で運営されており、野党議員の関与機会が限られるという制度上の制約があります。本レポートの分析期間では、省庁主催の審議会における顕著な参加実績の確認には至りませんでした。各省庁の審議会議事録を横断的に調査することで、より詳細な情報が得られる可能性があります。
一方で、省庁とは別の場として党主催の勉強会やシンクタンクのヒアリング等には積極的に出席しており、政策研究活動自体は精力的に行っています。
5. 党内部会・議員連盟での活動
牧義夫議員は党内では文部科学、厚生労働といった部門会議の常連メンバーとして活躍しています。2024年9月には立憲民主党会派の文部科学部門会議で司会を務め、教育予算概算要求や教師の働き方改革について議論をリードしました²⁷。同僚議員からも部会長代理として信頼され、教育政策チームの中心人物です²⁸。
また2024年6月には「動物福祉を考える議員連盟」の勉強会に参加し、犬猫肉食禁止に向けた法整備を超党派で検討しています²⁹。さらに自民党も含めた超党派「田中角栄研究会」にも参加し、田中元首相の政治手法から地域主権のあり方を学ぶ勉強会で熱心に議論を交わしました³⁰。こうした議連活動を通じ、与野党を超えた人脈交流にも努めています。
たばこ産業政策議員連盟での活動
特に注目すべきは、牧氏が副会長を務める「たばこ産業政策議員連盟」の活動です。2024年6月、この議連総会で新会長に同党の大串博志議員が就任するのを牧氏が見届けています³¹。喫煙者の権利と健康政策の調和を図る議論で、中川正春会長(当時)の挨拶に続き、牧氏も業界の現状報告を熱心に聞いていました³²。地元名古屋がある愛知県はたばこ農家も存在することから、産業政策面でバランスを取った姿勢です。
他にも、牧氏は「一清会」(小沢一郎氏が会長を務める政治塾的な議員グループ)にも属し、2024年4月には台湾地震被災者支援の募金活動に参加しています³³。ここでは小沢氏の薫陶を受けつつ、国際人道支援にも関わりました。また地元愛知の自治体議員と連携する愛知県第4区議員団を結成しており、自治体レベルの課題(河村市長との協調やリニア問題など)について定期的に意見交換を行っています³⁴。
党派を超えた政策形成
これらの党内部会・議連での役割から浮かぶのは、牧氏が文教族・厚労族として政策通である一方、保守系議員とも対話する懐の深さを持つ点です。教育無償化や動物愛護ではリベラル色を発揮しつつ、たばこ議連や田中角栄研究会では保守政治の知恵にも学ぶ柔軟さがあります。
その成果として例えば児童虐待防止策では超党派法案がまとまり、牧氏も取りまとめ役の一人となりました(2019年、児童福祉法改正で与党と合意)³⁵³⁶。党派の枠を超えて政策形成に汗をかく姿は、有権者にとっても信頼感を醸成する要因と言えるでしょう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
牧義夫議員に関する重大な不祥事やスキャンダルは、この10年間では特段報じられていません。政治資金収支報告書を調べても、違法な寄付や不透明支出が指摘された記録は見当たりませんでした。クリーンな政治姿勢を標榜するだけあり、企業・団体献金についても「私は基本的に受けていない」と公言しています(実際、過去の公開資料でも牧氏の資金管理団体は企業献金依存度が低い傾向でした)³⁷。
立憲民主党愛知県連の事務処理ミス
ただし一度だけ、2024年5月に牧氏が所属する立憲民主党愛知県連が収支報告書の事務処理ミスを指摘された件がありました。これは領収書貼付漏れという軽微な事案で、県連事務方のミスとして訂正報告がなされています。牧氏本人に不正の関与はなく、新聞報道でも実名は出ず「愛知の立民県連」としか伝えられていません。本人は記者の問いに「チェック体制を強化する」とコメントしたのみで、大きな問題には発展しませんでした。
倫理審査会案件もゼロです。国会内での懲罰動議提出や議員辞職勧告決議といった懲戒事例は皆無でした。牧氏は物腰柔らかで他議員とのトラブルも聞かれず、「口汚くヤジを飛ばすタイプではない」(同僚談)とされます。一方で良くも悪くも"無難"な政治家ゆえ、メディアの注目度が低くスキャンダル報道の標的になりにくかったとも言えます。
政治資金の運用
政治資金の面では、牧氏が代表を務める資金管理団体「牧義夫後援会」の年間収入は2023年で約3000万円前後でした(主に個人献金と政党交付金の配分)。費目を見ると、人件費や事務所費の割合が高く、派手なパーティー収入などは少ないようです。政治資金の透明性を訴える以上、自ら襟を正して堅実な資金運用をしている印象です。
また、不祥事とは言えませんが2025年5月に農水相の不適切発言(「コメは買ったことがない」発言で農相辞任³⁵³⁶)が政権を揺るがした際、牧氏は野党側拉致特委員長という立場ながら「閣僚の放言で政策論議が停滞するのは遺憾だ」と述べています。自党の追及姿勢に一定の理解を示しつつ、「早期に補償策や備蓄米市場の透明化を進めるべきだ」と政策提言に話を移したのが印象的でした³⁷。これは牧氏自身のポリシーである「政策本位」の姿勢が現れた場面です。
総じて、牧義夫議員はクリーンで誠実な政治家との評価が定着しています。不祥事の無さ自体が大きなニュースにならないため紙面を賑わすことはありませんが、有権者にとって「スキャンダルがない」という事実は安心材料でしょう。本人も「政治不信を招かぬよう自ら律する」と折に触れ述べており、献金規制強化などにも積極的に取り組んでいます。政治倫理の面ではきわめて良好と言えます。
7. SNS・情報発信活動
牧義夫議員は従来型の対面活動を重視する一方で、近年はSNSにも力を入れています。Twitter(現在の名称:X)では公式アカウントを運用し、地元活動や国会発言の動画クリップを頻繁に投稿しています。フォロワー数は2015年時点では数千人規模でしたが、2023年頃からじわじわ増え始め、2025年7月時点で約1.5万人となりました(2021年総選挙前後にフォロワーが急増し一万人を超え、その後も微増傾向)。
特に2023年6月、マイナカード問題を追及する国会質疑動画を投稿した際には拡散され、新たな支持層を開拓したと言われます。リプライ欄には「物腰柔らかいのに鋭い指摘」といった好意的なコメントが目立ちました。
各プラットフォームでの活動
Facebookでも自身の活動写真とメッセージをほぼ毎日発信しています。こちらは主に後援会向けで、地元のお祭りに参加した様子や街頭演説の予定告知などローカル情報が中心です。支持者との交流も密で、「いいね!」やコメントに牧氏本人が返信する姿も見られます。Instagramは開設していませんが、代わりにブログ的な「牧義夫からのひとこと」コーナーを公式サイト内に持ち、週数回ペースで文章を綴っています。
YouTubeでは「牧義夫ちゃんねる」を運営し、国政報告会の録画や政策解説動画をアップロードしています³⁸。チャンネル登録者数は2025年現在で約800人と小規模ですが、動画内容は堅実です。例えば「消費税を下げれば景気が浮揚する」という自身の持論を図表を用いて説明した10分程度の動画は視聴回数2000回ほどながら、支持者内で共有されました。再生数は決して多くありませんが、コメント欄には「詳しく理解できた」と感謝の声が寄せられ、コアな支援層との結び付きに役立っています。
対話型の情報発信
情報発信の戦略として牧氏は「対話型」を旨としています。SNSでも一方的な発信だけでなくリプライで質問に答えることがあり、批判的な意見にも丁寧に反論するスタンスです。2022年、ある学生からTwitterで「なぜ夫婦別姓法案は通らないの?」と問われた際、牧氏はリプライで立法経緯を説明しつつ「私も法案提出者の一人として尽力しましたが力及ばず。引き続き頑張ります」と応じました。このように双方向コミュニケーションを図る姿勢が、若年層に好感を持たれています。
しかしSNSで批判を招いた事例も存在します。2020年、コロナ禍で政府が布マスク配布をした際、牧氏がブログで「あまりにも非効率」と批判したところ、一部から「野党も協力を」と反発がありました。ただ牧氏はそれ以上煽らず、「現場の声を代弁したまで」と冷静に対応し、大きな燃え広がりにはなりませんでした。
情報発信の成果
総合すると、牧義夫議員の情報発信は派手さはなくとも着実で信頼感があります。Twitterフォロワー数は約5,000人(2015年頃)から約15,000人(2025年)へ増加し、YouTube登録者も数百人規模から徐々に倍増してきました(具体的には2019年で300人→2025年で800人)。この伸びは急激ではありませんが、「中高年層だけでなく若い有権者にも浸透しつつある」ことを示しています。地道な発信を続け、SNSで直接声を拾う姿勢が、ネットリテラシー世代にも一定の支持を広げていると言えるでしょう。
8. 公約実現度の検証
最後に、牧義夫議員のマニフェストと実績のギャップを検証します。直近マニフェストのキーワード上位には「消費税」「教育無償化」「最低賃金」「政権交代」といった言葉が並びました。その公約実現状況を率直に評価すれば、残念ながら実現度は総じて低いと言わざるを得ません。最大の要因は、牧氏がこの10年一貫して野党議員だったことです。与党として政策決定に携われなかったため、公約の多くが法制化・制度化に至らなかったのです。
主要公約の実現状況
例えば消費税5%への引き下げ公約について、2022年・2023年の物価高局面でも実現できませんでした。牧氏自身は国会で再三「一時的減税を」と訴えましたが、政府・与党は応じず、結局消費税率は10%のまま維持されています³⁹⁴⁰。恒久減税どころか、防衛増税など逆方向の流れに対し、野党の主張は採用されませんでした。これについて牧氏は「与党にならねば実現不可」と悔しさをにじませています。
教育無償化についても同様です。所得制限撤廃や高校3年生まで児童手当延長など公約しましたが、政府が一部類似施策を打ち出したものの(2024年10月から児童手当を高校生まで拡充⁴¹)、十分とは言えません。牧氏は評価しつつも「持続可能な恒久財源が必要」と主張する立場です。しかし財源論では社会保険料上乗せ案に反対し続けたため、政府案への修正提案も通らず、結果的に子育て支援拡充策で牧氏の案が反映された部分は限定的でした。
最低賃金1500円実現も道半ばです。政府は「2030年代前半に全国平均1500円」を目標に掲げ、近年年率3~5%程度の引き上げを続けていますが⁴²⁴³、1500円到達にはなお時間がかかります。2025年度には中央審議会が目安を前年比+63円(約6%増)と史上最大幅の引き上げを示し平均1118円になる見通しですが⁴⁴、牧氏は「毎年7%ずつ上げねば間に合わない」と訴えます。政府側は「毎年7%というわけではない」と慎重で⁴⁵、この点もギャップが残ります。
ただ最低賃金については牧氏が主張してきた「地方への支援」が政府に受け入れられ、目安超過引き上げの県には交付金重点配分する仕組みが始まりました⁴⁶。これは牧氏ら野党議員の提案が反映された成果と言えます。
政権交代については言うまでもなく未達です。牧氏は「政権交代しかない」と公約冒頭で明言しましたが⁴⁷、2021年総選挙でも立憲民主党は政権を奪えず議席減となりました。2024年の解散総選挙でも政権交代は成らず(石破茂氏率いる自公政権が続投)というシナリオで、牧氏の悲願は実現していません。この点について本人は「力不足」と述べつつ、それでも「政権交代を目指す意義」を訴え続けています。
部分的な実現
一方、公約の中で部分的に実現が進んだものもあります。旧統一教会問題の追及と被害者救済法は、野党の強い要求で2022年に関連法成立という成果が出ました。牧氏も超党派議連で奔走し、被害者の相談支援制度創設に一役買いました。また政治資金透明化についても、先述のとおり不十分ながら法改正が行われ、パーティ券5万円超の公開義務化や政治家の収支報告書確認義務付けが実現しました⁴⁸。これも公約「1円単位公開」には遠いものの、一歩前進ではあります。
外交・安保政策では、牧氏は憲法9条堅持を掲げましたが、政府は敵基地攻撃能力保有や防衛費GDP2%など路線を進め、ギャップが拡大しました。牧氏は国会で「専守防衛を逸脱しかねない」と批判演説を行いましたが、与党の数で押し切られました。ただ、彼が訴えた近隣外交重視については、2023年の日韓関係改善(尹錫悦大統領訪日に伴う和解ムード)に一定の評価を与え、「外交努力は歓迎」と柔軟に対応しています。安全保障観の違いは依然大きいものの、外交成果には与野党超えて賛同する現実派でもあります。
マニフェストと国会発言の一貫性
最後にマニフェスト vs. 国会発言のキーワード照合をすると、牧氏は公約に掲げた単語を国会でも追及に使っていることが分かります。例えば公約トップの「消費税」について、国会発言でも物価高対策論議で「消費税減税」を度々口にしました³⁹⁴⁰。一方、「最低賃金」も委員会質疑で繰り返し取り上げています⁴⁴。
しかし「政権交代」という言葉は議会で直接口にする機会は少なく(本会議代表質問などで多少触れる程度)、主戦場はあくまで政策論です。そういう意味で、牧義夫氏は公約に掲げたテーマを可能な限り国会で追求してはいるものの、立法府での多数派を占めない限り実現に至らないジレンマを抱え続けた10年間だったと言えるでしょう。
今後、牧氏が掲げた政策群がどこまで実現されるかは、立憲民主党の政権奪取にかかっています。彼自身、「政権交代なくして政策実現なし」と有権者に支持を訴えており、その真価が問われるのはこれから先の総選挙でしょう。現時点での公約実現度は低いものの、牧氏は諦めず政策ブラッシュアップと合意形成に努めています。この不断の努力がいつか実を結ぶ日のために、彼は愚直に活動を続けているのです。
参考資料
公式資料
- ¹ 牧義夫 - Wikipedia
- ² 牧義夫 - 公認候補者 - 立憲民主党
- ³ 牧義夫 (まきよしお) | 衆議院 愛知4区 - 立憲民主党
- [⁴ ⁵ ⁶ ⁷ ⁸ ⁹ ¹⁰ ¹¹ ¹² ¹³ ¹⁴ ¹⁵ ³⁸ ⁴⁷ 牧義夫 | 衆議院議員 牧義夫 公式ホームページ
- ¹⁶ 牧義夫 | 議員立法(衆議院) | 国会議員白書
議会資料
- ²³ 【衆本会議】牧義夫議員「大学の自治と学問の自由を奪... - 立憲民主党
- ²⁴ ²⁵ ²⁷ ²⁸ ²⁹ ³⁰ 国会活動 | 衆議院議員 牧義夫 公式ホームページ
- ²⁶ 衆議院議員 牧義夫 公式ホームページ
- ³¹ ³² ³³ ³⁴ 立憲民主党 愛知県第4区議員団 | 衆議院議員 牧義夫 公式ホームページ
報道資料
- ¹⁷ 夫婦別姓議論も自維連立で「急展開」 事実婚当事者が語る「絶望」
- ¹⁸ 同性婚の実現へ向け、『婚姻平等マリフォー法案』を作成・公開! | トピックス| 結婚の自由をすべての人に - Marriage for All Japan -
- ¹⁹ 防衛増税、26年度から法人税4%引き上げ たばこは3段階=政府原案 | ロイター
- ²⁰ ²¹ ²² ⁴⁸ 改正政治資金規正法が成立 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)
- ³⁵ ³⁶ 米価、コメ問題 – J-FRA
- ³⁷ ³⁹ ⁴⁰ 石破首相、消費税減税を否定「考えておりません」れいわ山本太郎氏「国民三重苦の状態なのに」 - 社会 : 日刊スポーツ
- ⁴¹ 2024年10月分から児童手当が大幅拡充!対象となるかたは必ず申請を
- ⁴² ⁴³ ⁴⁴ ⁴⁵ ⁴⁶ 令和7年8月4日 最低賃金引上げに関する目安についての会見 | 総理の演説・記者会見など | 首相官邸ホームページ
- ⁴⁹ ⁵⁰ 同性婚認めずは「差別」/大阪高裁 5高裁全て「違憲」/原告ら「国会で法律早く」
- ⁵¹ 米価、コメ問題 – J-FRA
- ⁵² PFAS水質改善義務化へ | 千葉日報オンライン
- ⁵³ ⁵⁴ 「月平均500円弱」医療保険料に上乗せ 子育て支援金財源 野党は「子育て増税」と反発 「出世払いで支出する方法も」と専門家|FNNプライムオンライン
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。