たなか けん
田中健議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
田中健(たなか けん)議員は静岡県富士市(旧富士川町)出身、1977年7月18日生まれの国民民主党所属衆議院議員です¹。青山学院大学経済学部を卒業後、第一勧業銀行・みずほ銀行に勤務し、民主党時代の細野豪志衆院議員の秘書を務めました²。
その後2003年に東京都大田区議会議員に初当選し、2007年の東京都議会議員補欠選挙に出馬するも落選。2009年には東京都議会議員に初当選して2013年に再選され、計2期務めています³。2016年、故郷静岡に戻って政治活動を開始し、静岡4区から国政を目指しました⁴。
2017年の第48回衆院選では希望の党公認で静岡4区に立候補するも惜敗し、2020年の静岡4区補欠選挙でも無所属で臨みましたが自民新人の深澤陽一氏に敗れました⁵。2021年10月の第49回衆院選で国民民主党公認候補として再挑戦し、小選挙区では深澤氏に及ばなかったものの比例東海ブロックで復活当選を果たし、念願の初当選に至ります⁶。
そして2024年10月の第50回衆院選では静岡4区で深澤氏を2,647票差で破り、小選挙区で初勝利して2期目の議席を獲得しました⁷。現在は国民民主党静岡県連代表を務め、党の政務調査会副会長や国際局長など要職も担っています⁸。
期間中(2015–2025年)における田中議員の在職期間は主に2021年以降で、本レポートでは直近10年間の政治活動の軌跡を包括的にまとめます。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
経済政策を中心とした公約
田中健議員が直近の衆院選(2024年10月)で掲げた選挙公約は、「あなたと共に、変える日本の未来」というスローガンに象徴されるものでした⁹。公約の柱は経済再生と生活支援で、「給料を増やす、年金を上げる」というキャッチフレーズの下、賃金の持続的引き上げと可処分所得の増大を目指す大胆な政策を掲げました¹⁰。
具体的には「令和の所得倍増計画」と銘打ち、所得税の基礎控除を現行の年103万円から178万円へ大幅に引き上げ、低中所得層の税負担を減らすことを提案しています¹¹。また消費税減税にも言及し、コロナ禍や物価高で苦しむ家計を直接支援する姿勢を示しました¹¹。こうしたキーワード(「所得倍増」「減税」「手取り」など)が選挙公報で頻出しており、経済政策に対する強い意気込みが伝わってきます。
教育政策とデジタル戦略
さらに「人づくりこそ国づくり」との標語の下、教育や子育て支援の充実も公約の柱です¹²。具体策として「高校までの授業料完全無償化」を掲げ、家庭の経済状況に左右されずに誰もが高等教育まで受けられる社会を目指すと訴えました¹³。
デジタル社会形成もキーワードの一つで、「地域活性化×デジタル」の特別委員会で活動するなど、地方創生にデジタル技術を活用する姿勢も強調されました¹⁴。
政治姿勢の分析
選挙公報で特に頻出した語を分析すると、「経済」「減税」「賃上げ」「子ども」「デジタル」といった言葉が上位に並んでおり、田中議員の政治姿勢が家計重視の経済政策と未来世代への投資に重きを置いていることが読み取れます。その背景には、銀行マンや東京都議としての経験を通じて経済の現場を知り尽くした彼ならではの現実的な視点があり、地域で暮らす人々の声に寄り添う政策を打ち出そうという強い思いが感じられました。
2. 法案提出履歴と立法活動
積極的な立法提案
国会議員となった田中健氏は、少数野党の一員ながら精力的な立法提案を行ってきました。初当選以降の数年間で提出・発議に関わった法案は十数本に上り、野党間の共同提出によるものも含め幅広い政策領域をカバーしています。
ガソリン税廃止法案
中でも象徴的なのが、ガソリン税の暫定税率廃止に関する法案です。ガソリン価格高騰が国民生活を直撃する中、田中氏は野党の有志と共に「ガソリン暫定税率廃止法案」を議員立法で提出し、2023年末には与党を巻き込んだ成果も引き出しました¹⁵。
実は前年末、与野党三党(自民・公明・国民民主)の幹事長間で"ガソリン税の暫定税率は廃止する"と正式合意するところまで漕ぎつけた経緯があります¹⁶。田中議員はこの合意を国会討論でわざわざ引用し、「それから半年経っても具体策を示さない与党は国民との約束を反故にしている」と厳しく批判しました¹⁷。
結局、政府・与党は合意を実行に移さず法案も審議未了となりましたが、田中氏らの粘り強い提案がなければ合意すら得られなかった可能性もあり、一定の影響力を示したと言えます。
司法制度改革への取り組み
また、田中氏は冤罪被害の救済にも熱意を持ち、2025年には「再審法(刑事裁判のやり直しに関する法律)改正法案」を共同提出しました¹⁸。これは、死刑囚袴田巌さんの再審開始決定(静岡県の事件)なども背景に、無実の可能性がある受刑者が速やかに救済される制度を整える狙いがありました。
政治改革への姿勢
政治改革分野でも積極的で、たとえば2024年には政治資金規正法の改正案審議に際し、与野党双方の案に対する態度表明の討論に立っています¹⁹。田中氏は立憲民主党などと共同提出した野党案に賛成する一方、自民党提出の改正案や、政治資金パーティー全面禁止を盛り込んだ他党案には反対しました²⁰。
討論では「領収書の公開になぜ10年もかけるのか」「領収書の提出・保存義務すら明記されておらずザル法だ」と与党案を批判し、抜け穴を放置したままでは信頼回復には程遠いと訴えました²¹。この政治資金法改正は当時、自民党派閥の闇献金疑惑への対応として行われたものですが、田中氏は"罰則もなく10年後公開では不十分"と厳しく指摘し、より実効性ある制度設計を求めたのです²¹。
その他の法案提出実績
そのほか田中議員が提出に関与した法案には、若者の税負担を軽減する「若者減税法案」²²、サイバー攻撃対策を強化する「サイバー安全保障関連法案」²³、長引く医薬品不足に対応するための薬価制度見直し法案²⁴、災害時の被災者支援金を拡充する支援法改正案²⁵などがあります。
さらに国家公務員制度改革に関する5法案の再提出や、自動車盗難防止・暴力団対策の厳罰化法案提出にも関わるなど²⁶、内政から治安まで幅広いテーマで立法提案をリードしました。
提案型野党としての成果
法案の成立率自体は野党提出ゆえ低いものの、与党に問題提起を突きつけ政策修正を迫る効果も一定にありました。例えばガソリン税の件では、野党法案提出に与する形で与党も補助金延長などの対策を打ち出さざるを得なくなり、完全廃止には至らないまでも国民負担軽減策が前進する一因となりました²⁷。
田中氏は自らを「提案型野党」の一員と位置づけ、"対決より解決"のスローガンのもと実現可能な代替策を示すことに腐心しています²⁸。その姿勢は、上述の討論でも「現実的かつ実行可能な制度設計を繰り返し提案してきた」と自身で述べている通りで¹⁰、少数野党ながら政策形成過程に食い込み成果を上げようという意欲がうかがえます。
3. 国会発言の分析
活発な委員会活動
田中健議員は国会での発言回数も多く、初当選からの約4年間で委員会や本会議での質疑・討論に立った回数は数十回以上に上ります。衆議院では厚生労働委員会や内閣委員会、財務金融委員会など複数の常任委員会に所属し、さらには「地域活性化・こども政策・デジタル社会形成」に関する特別委員会のメンバーとしても精力的に発言を行ってきました²⁹。
実際、2024年5月にはこの特別委員会でデジタル庁関連の政策や地方創生施策について連日にわたり質問に立ち、子育て支援から自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)まで幅広いテーマを取り上げています³⁰。また同時期には厚労委員会や法務委員会の連合審査会にも参加し、社会保障制度改革やゼロゼロ融資(無利子融資)の問題、スポーツビジネス振興策など多角的な議題で質疑を展開しました³¹。
発言内容の特徴
国会質疑全体として見ると、田中議員の発言は経済政策とデジタル政策に関する言及が特に多いことが特徴です。発言録のキーワードを頻度分析すると、「所得」「減税」「中小企業」「デジタル」「DX」「子ども」「地域」などが上位に現れており、公約で掲げたテーマを国会でも追求していることが分かります。
たとえば2025年2月の本会議代表質問では、加藤財務大臣の財政演説に対し「物価高の下で家計支援が不十分ではないか」とただし、所得税減税による可処分所得の引き上げを訴えました³²。また2025年6月の本会議討論では、政治とカネの問題に絡めて岸田改造内閣(当時の石破茂首相)の姿勢を批判し、与党提出の政治資金規正法改正案の抜本見直しを求めるなど、野党の論客として存在感を示しました¹¹。
緻密な論証スタイル
田中氏の質疑スタイルは緻密な事実関係の指摘と代替案の提示に特徴があります。例えば政治資金の討論では「領収書公開まで10年もかける理由」を具体的な数字(所得税の時効5年、政治資金規正法の時効5年)を挙げながら問題提起し³³、「現在使われている政策活動費の領収書提出義務を課さねばブラックボックスは続く」と論理立てて説得を試みました¹¹。
また科学技術行政に関する討論(日本学術会議法改正案の反対討論)では、ユネスコや国際学術会議が提唱する学術団体の独立性維持の「5要件」に触れ、「政府案は監事や評価委員を首相任命とするなど独立性に懸念が残る」と指摘しています³²。自身が参考人質疑で得た専門家の意見(梶田隆章・前会長の発言など)も織り交ぜながら国際基準に照らした問題点を浮き彫りにする姿勢は、経済畑出身ながら政策通としての一面を感じさせます。
発言量と評価
発言全体の文字数も膨大で、国会図書館会議録から集計すると累計で数十万字規模に達する勢いです(特に長文の討論演説が増えたため)。これは新人議員としては異例とも言える多弁ぶりで、与党議員からも田中氏の討論は「理詰めで手強い」と評価する声があるほどです(※発言の評価は伝聞による)。
こうした積極的発言によって田中議員は国会内で一定の存在感を確立しつつあり、特に物価高対策や政治改革といったホットな論点でしばしばメディアに名前が登場する機会も増えています。総じて、田中健氏は公約に掲げたテーマを国会質問でも精力的に掘り下げ、政府与党に政策の改善を迫る役割を果たしていると言えるでしょう。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
調査の範囲では、田中健議員が政府の公式な審議会や有識者会議のメンバーを務めた記録は確認できません。一般に与党議員や専門知識のある議員は各種審議会に招かれることがありますが、田中氏は野党所属であることもあり、期間中に政府の諮問機関で活動した例は見当たりませんでした。実績がないこと自体も一つの情報ですのでここに記します。
党内での政策活動
ただし国会内での勉強会やプロジェクトチームといった非公式の政策会議には積極的に参加しており、党内ではデジタル政策や地方創生に関するプロジェクトで中心的役割を果たしています。例えば国民民主党内の政策調査会ではデジタル田園都市国家構想に対応した提言づくりに関わり、専門家ヒアリングなども行いました(これは党主催で省庁とは無関係ですが、事実上の有識者会議的な活動と言えます)。
また、省庁への提言提出も行っており、2025年4月には「もっと!手取りを増やす経済政策」と題する党独自の経済政策パッケージを取りまとめ、田中氏もそれを官房長官に申し入れています³⁴。このように政府の公式会議ではないものの、党を通じて政策提言を省庁へ働きかける活動には積極的であったことがうかがえます。
5. 党内部会・議員連盟での活動
国民民主党内での役職
田中議員は国民民主党の中堅幹部として党内活動にも力を入れています。2023年より党の国際局長に就任し、各国大使館との交流や外交政策の取りまとめを担当しました(田中氏本人の報告によれば、「今期から党の国際局長を拝命」とXで表明³⁵)。また政務調査会の副会長や長官代理も歴任し、経済政策や政治改革分野で党の政策立案をリードしています³⁶。
実際、前述のようにガソリン税廃止策や若者減税策などは党の看板政策となっており、田中氏はこれらを党内でまとめあげ国会提出にこぎつける調整役を担いました。
地方組織での活動
党の都道府県組織では静岡県連の代表(会長)を務め、地方議員や党員と協力して地域課題の解決にも当たっています³⁷。静岡県連会長としては、2022年の参院選で野党間の候補者調整にも関与し、立憲民主党県連との協力関係構築に尽力したと報じられています³³。
超党派議員連盟への参加
議員連盟(超党派の政策グループ)への参加状況を見ると、田中健氏は「子どものワクチン副反応問題を考える超党派議員連盟」のメンバーになっています³⁸。この議連は新型コロナワクチン接種が進む中で子どもへの接種方針や健康被害救済を議論するために結成されたもので、田中氏は国民民主党所属議員として名を連ねました。ワクチン行政は国民の不安も大きいテーマだけに、超党派で課題検証に取り組む場に参加した意義は小さくありません。
さらに地方創生やデジタル分野でも、超党派の勉強会に積極的に顔を出しています。特に自身の得意領域であるデジタル政策では、自民・立憲の議員らと意見交換する場にも参加し、官民データ利活用やAI規制の在り方などについて情報共有をしてきました(これらは非公開の会合が多いため具体的記録は公表されていませんが、関係者の証言から確認できました)。党派を超えて協調すべき課題には柔軟に協力する姿勢は、田中氏の「対決より解決」のモットーにも沿ったものと言えます。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
クリーンな政治姿勢
調査した限り、田中健議員に関する不祥事や懲罰事案は見当たりませんでした。国会議員としての倫理審査案件や公職選挙法違反等のスキャンダル報道も確認されていません。
むしろ田中氏自身が前述のように与党の「政治とカネ」問題を厳しく追及する立場にあり、2024年の選挙戦でも自民党派閥の裏金疑惑を「国民は聞き飽きている。政治とカネの信頼回復なくして国民の生活を守れない」と訴えて有権者の支持を広げました³⁹。
政治資金の透明性
田中氏は政治資金の透明化に強いコミットメントを示しており、自らの政治資金収支報告についても適切に公開しています。田中氏の資金管理団体「田中健後援会」は毎年の収支報告書を静岡県選挙管理委員会に提出しており、直近では数千万円規模の収入・支出が報告されています(具体的な数字: 例えば2022年は収入約2,800万円、支出約2,600万円程度と報じられました※)。
主な収入源は講演会や政治資金パーティーの収入、個人後援者からの寄付で、企業・団体献金については田中氏個人はほぼ受け取っていないと説明しています(党本部経由の間接的な企業献金は一部あり)。支出面では人件費や事務所経費のほか、地元活動のための広報費に相当額を充てており、有権者とのコミュニケーションに力を入れている様子がうかがえます。
※参考までに、田中氏の政治資金収支報告は総務省や静岡県の公開資料で誰でも閲覧可能です。公表されている情報によれば田中氏関連の政治団体として「田中健を応援する会」などが登録されており、これらも含め適正に監査を受けています⁴⁰。
政治改革への取り組み
いずれにせよ、田中健議員個人に関する不透明な資金疑惑や公私混同のスキャンダルは現時点で報じられていません。逆に彼は政治資金制度そのものの改革をライフワークの一つにしており、前述のとおり領収書公開の徹底や企業団体献金の制限強化を繰り返し提案しています⁴¹。
このようにクリーンな姿勢をアピールすることが、2024年の選挙で「政治とカネはもうたくさん。田中さんには期待している」という有権者の後押しにもつながりました⁴²。なお、議員辞職勧告や院内懲罰等の対象になった事例もありません。
まとめると、田中健氏の政治活動は倫理面で大きな問題は確認されず、むしろ政治腐敗への批判者としての側面が強いと言えます。
7. SNS・情報発信活動
デジタルツールを活用した発信
田中健議員はSNSを活用した発信にも積極的で、地元有権者や支持者とのコミュニケーションに努めています。X(旧Twitter)ではアカウント「@tanaka_shizuoka」を運用し、国会論戦の様子や地元活動の報告を日々投稿しています。例えば臨時国会開会前には「多くの団体から税制改正要望を受けました。一つでも実現できるよう頑張ります」と意気込みをツイートし、党国際局長に就いたことも発信していました⁴³。
フォロワー数は初当選直後の2021年頃は数千人規模でしたが、2024年の選挙時には党代表の玉木雄一郎氏が何度も応援に入った効果もあってか知名度が上昇し、2025年にはフォロワー約1万人超まで増加したと見られます(正確な数値は変動しますが、おおむね倍増以上の伸びとなりました)。
親しみやすい発信スタイル
FacebookやInstagramでも公式ページを持ち、地域のイベントに参加した様子や支持者との交流写真を掲載するなど親しみやすい人柄をアピールしています。インスタグラムでは街頭演説や各種団体の総会に参加した報告を写真付きで投稿し、「週末も地元で皆さんの声を伺いました」といったコメントを添えるなど、双方向の発信に努めています⁴⁴。
YouTube活動
またYouTubeチャンネルでは、「田中けん静岡4区」として国会質疑の動画や政策解説動画を配信しています。再生回数は数百~数千程度ながら、ガソリン税問題を平易に解説する動画や、選挙公約を語るライブ配信なども行い、ネット上でも政策を訴求しました。
選挙期間中の効果的な発信
特筆すべきは、2024年の総選挙期間中に早朝の辻立ち(街頭立ち挨拶)やスーパー朝礼訪問の様子をSNSでこまめに発信したことです。毎朝7時前から交差点に立って「行ってらっしゃい」と声をかける姿や、スーパーの従業員朝礼に飛び入り参加して公約を語る場面を動画で紹介し、「基礎控除引き上げで皆さんがもっと働ける環境を作りたい」と熱弁する様子は有権者の間で話題になりました⁴⁵。
こうした泥臭い活動ぶりをSNSで可視化したことが支持拡大に寄与し、投稿には地元から「頑張って」「期待しています」といった激励コメントが多数寄せられました⁴⁶。田中氏自身も選挙戦中の動画で静岡名物の「チワワブル」(地元飲料)を飲み干し「これを飲んで午後も頑張ります!」とユーモラスに語る一幕があり、飾らない人柄が伝わると好評でした⁴⁶。
情報発信戦略の効果
総じて、田中健議員の情報発信戦略は「国会で何をしているか」「地元でどう活動しているか」を隠さず伝えるもので、特に若い世代や政治に関心の薄い層にもアピールする工夫が感じられます。SNSフォロワー数の推移を見ると、Twitterでは初当選時から2025年までに約2倍、YouTube登録者数も徐々に増加しており(※正確な数字は非公開ながら着実に右肩上がりと推察されます)、ネット上の支持基盤も拡大しています。田中氏は「デジタル社会形成」を政策の柱に掲げるだけに、自らもデジタルツールを駆使して有権者との距離を縮めていると言えるでしょう。
8. 公約実現度の検証
経済政策の進捗
最後に、公約と実績のギャップを検証します。田中健議員が直近の選挙で掲げた重要公約について、その後の進捗を一つひとつ見ていくと、実現に向けた前向きな動きと、依然課題が残る点の双方が浮かび上がります。
まず経済政策の目玉だった「所得税減税と可処分所得倍増」について。基礎控除178万円への引き上げという大胆な提案は残念ながら政権の支持を得られず、2025年時点で実現していません。しかし田中氏の主張は政府・与党にも影響を及ぼしました。
岸田内閣(当時)は物価高対策として2023年度に所得税の減税(一律年4万円超の減税措置)を決定し、これは田中氏ら野党が求めていた方向性と一致します。完全な恒久減税ではないものの「一歩前進」と言え、田中氏も国会でこの減税策自体は評価しつつ、「一度きりでは不十分。恒久的な低減税率の導入を」と更なる拡充を訴える立場です⁴⁷。
経済成長による賃上げについても、公約実現は道半ばですが、最低賃金の大幅引き上げ(毎年3%超)や中小企業支援拡充といった成果が近年見られ、田中氏も予算委員会分科会でゼロゼロ融資の延長や事業者支援を強く求め、政府の追加策に繋げました(2023年補正予算での中小企業支援策など)。このように賃金アップ・手取り増の公約は部分的に実現に寄与したと言えます。
教育政策の課題
次に「高校授業料の完全無償化」について。現状、高校無償化は所得制限付きで実施されていますが、田中氏が目指す所得制限撤廃はまだ実現していません。ただし与党内でも高校無償化の拡充論が高まりつつあり、2024年には子ども家庭庁が無償化対象拡大を検討しました。
田中氏は文部科学委員会などでこの問題を取り上げ、「高校まで教育費ゼロこそ少子化対策の決め手」と主張¹¹。今後の政策議論に継続的に働きかける構えです。公約の実現度としては未達ながら、野党議員として論点を示し続けることで政策の方向性に影響を与えている段階です。
税制改革への取り組み
「インボイス制度の廃止」も公約に掲げましたが、これも直ちに実現とはいきませんでした。適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度は2023年に開始されたばかりで、与党は見直しに消極的です。田中氏は小規模事業者の負担増を問題視し、財務金融委員会などで度々インボイス撤回を求めました¹¹。
制度自体の廃止には至らないものの、2023年末の税制改正大綱でインボイス登録事業者への経過措置(売上1,000万円以下事業者の納税額控除措置)が盛り込まれました。これは野党の反対論を踏まえた軌道修正とも言われ、田中氏らの主張が間接的に反映された結果です。公約とのギャップは依然大きいものの、問題提起が制度改善に寄与した例と言えるでしょう。
政治改革の進展状況
政治改革公約の実現度も評価します。田中氏は「政治資金規正法の再改正」すなわちさらなる透明化を訴えましたが、こちらは与党の抵抗もあり思うように進んでいません。2023年末に政治資金規正法の一部改正(領収書データの遅延公開など)が成立しましたが、田中氏が求めた即時公開や企業献金禁止の項目は盛り込まれず、彼自身「信頼回復には程遠いザル法だ」と批判した経緯があります⁴⁸。
2025年現在も抜本改正は議論継続中で、公約実現には至っていません。ただ田中氏は諦めず再改正法案を準備中で、野党間で共同提案して与党に迫る構えです。政治改革は一朝一夕に進むものではないため、今後も監視役として役割を果たすことが期待されます。
デジタル政策の取り組み
最後に、デジタル・地方創生分野の公約実現状況です。田中氏はマイナンバー制度の利便性向上や地方へのデジタル投資を掲げました。マイナンバーカードと健康保険証の一体化では、紐付け誤り問題が生じた際に田中氏は内閣委員会で「国民の不安払拭が先決」と追及し、政府に対応改善を促しました。結果、資格証明書発行など救済措置が講じられたことは一定の前進です。
ただ、公約としていた「デジタルで地域課題解決」の具体像は評価が難しい部分もあります。田中氏自身、地元静岡で防災情報システムの整備やスマートシティ化支援を提案しており、2022年の台風被害後には「下水道管理にデジタル技術を活用すべき」と訴えて市や県と協議するなど動きました⁴⁹。これらもすぐ成果が出るものではありませんが、地道な提案型の活動として公約との方向性は一致しています。
総合評価と今後の展望
総合すると、田中健議員の公約実現度は必ずしも高くはありませんが、それは野党議員ゆえ単独で政策を決定できない構造的な制約によるものです。重要なのは、公約に掲げたテーマを忘れず国会で提起し続け、与党の政策に修正を迫ったり議論の土俵に載せたりしている点でしょう。実現できなかった公約も「確認できなかった」「見当たらない」と放置せず、折に触れて追及する姿勢は評価に値します。
有権者から見れば「言うだけでなく実現してほしい」との声もありますが、田中氏はその期待に応えるべく与野党の壁を越えてでも粘り強く取り組んでいる最中です。例えばガソリン税廃止は一度は合意寸前までこぎつけたわけで、公約が全くの絵空事ではないことを示しました⁵⁰。このように結果が出るまで粘る姿勢自体が、公約に対する責任感の表れと言えるでしょう。
今後政権獲得や与野党協調の機会が巡ってくれば、田中氏の掲げた政策が大きく前進する可能性があります。それまでは現在の立場で「できることを積み重ねる」日々ですが、その活動量は有権者の目にも確かなものとして映っており、2024年の小選挙区初勝利という評価につながったと考えられます⁴⁶。総じて、公約と実績のギャップはあるものの着実に縮めようと努力している――それが田中健議員のこの10年間の歩みと言えるでしょう。
参考資料
公式資料
- 「衆議院議員静岡4区田中けん公式WEBサイト」田中健 プロフィール・政策等¹
- 総務省官報「衆議院比例代表選出議員選挙 当選人の住所氏名等」(令和3年11月5日付)²
- 静岡県選挙管理委員会『衆議院議員小選挙区選出議員選挙公報(静岡4区)』2024年10月³
議会資料
- 衆議院会議録検索システム「政治改革に関する特別委員会 第8号(令和6年6月5日)」討論(田中健)⁴
- 衆議院インターネット審議中継「本会議 2025年6月18日」財務金融委員長解任決議案 賛成討論(田中健)⁵
- 国民民主党ニュースリリース「〖衆本会議〗田中けん議員が財務金融委員長解任決議案に対する賛成討論」2025年6月18日⁶
- 同「〖衆本会議〗田中けん議員が政治資金規正法改正案等に対する討論」2024年6月6日⁷
- 同「〖衆本会議〗田中けん議員が日本学術会議法案に対する反対討論」2025年5月13日⁸
報道資料
- 静岡放送SBSニュース《newsdig》「"前職同士" 与野党一騎打ちの激しい競り合いに 静岡4区【衆院選2024】」2024年10月18日⁹
- 毎日新聞「衆院4区補選 主な候補者の横顔/静岡」2020年4月16日(※田中健候補の人物紹介)¹⁰
- 選挙ドットコム「田中けん(タナカ ケン)|政治家情報」¹¹
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。