こうづ たけし
神津たけし議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
神津たけし(神津 健、こうづ たけし、1977年1月21日生)は、立憲民主党所属の衆議院議員(長野県第3区選出)です¹。旧通商産業大臣・農林大臣を歴任した羽田武嗣郎を大祖父に、元首相・羽田孜を大伯父に持つ政治名門の家系に生まれ、神奈川県鎌倉市で育ちました²。
政策研究大学院大学で修士号を取得後、国際協力機構(JICA)企画調査員としてケニア、ルワンダ、南アフリカに駐在し、その後アフリカ開発銀行運輸交通インフラ・アドバイザーとしてチュニジア、コートジボワールで開発金融やインフラ事業に従事した経歴があります³。
2017年に政界入りを目指して長野3区から立候補し、当初は落選しましたが、2021年10月の第49回衆院選で比例北陸信越ブロックから初当選を果たしました⁴。その後、2024年10月の第50回衆院選では長野3区で井出庸生氏(自民)との接戦を制し、小選挙区で初勝利を収めています⁵。
現在当選2回(在職期間2021年10月31日~)で、党内では政務調査会長補佐や国際局副局長など政策立案や外交分野の役職を務め、国会では国土交通委員会理事および地域活性化・こども政策・デジタル社会形成特別委員会理事として活躍しています⁶。
本レポートでは、2015年から2025年7月までの神津議員の政治活動を振り返り、掲げた公約の分析、立法活動、国会発言の傾向、政府・党内での役割、政治資金や情報発信まで包括的に検証します⁷。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
神津たけし議員は、直近の選挙公報やマニフェストで「一歩ずつ前へ、とにかく前へ」というスローガンを掲げ、国民の暮らしを守る政策を幅広く提示しました⁸。2024年衆院選の選挙公報(長野3区)を見ると、彼の主張は大きく6つの柱に整理されています⁹。
物価高と賃金の好循環
コロナ禍後に生じた「生活に密着した物価高」に対し、金融緩和の見直しで円安是正を図りつつ、中小企業が価格転嫁できる構造づくりや国際競争力のある産業育成によって悪い物価上昇を抑えると訴えました¹⁰。
神津氏は「物価は経済の体温計」と述べ、賃金上昇が物価上昇に追いつく良循環こそ目指すべきだと強調しています¹¹。具体策として短期的な金融政策転換と中長期的な産業競争力強化を挙げ、賃金アップによる需要喚起と物価安定の両立を図る考えでした¹²。
生活の安定と中間層再建
バブル崩壊後の長期不況で「分厚い中間層」が崩れ、代わりに低賃金の非正規雇用が広がった現状を憂え、誰もが「働きやすく、生きやすく、将来設計できる」社会を取り戻すと訴えています¹³。
そのために非正規雇用の乱用を是正し、正社員への転換推進や非正規の賃金引き上げによって安定した雇用を創出する施策を掲げました¹⁴。
彼は「非正規の時給を正規なみに引き上げ、暮らしの安定を図る(貧困の連鎖を防ぐ)」と明言しており、格差是正への強い意志がうかがえます¹⁵。特に女性や若者が安心して結婚・出産できる経済的基盤を整えることを目標に据えていました。
全世代型社会保障と災害対策
2004年に導入された「100年安心年金」への疑念を示し、現行の年金制度では老後資金2000万円問題など不安が残ると指摘しています¹⁶。
神津氏は全世代が安心できる年金制度への改革を掲げ、高齢者の孤立や限界集落問題にも触れて、地域包括ケアやコンパクトシティ推進で高齢社会を支えると述べました¹⁷。
加えて、台風被害など災害が頻発する中、防災・減災対策にも重点を置き、「政府・自治体・地域・個人が一体となって備え、被害を最小限に食い止める」体制整備を約束しています¹⁸。このようにシニア世代から子育て世代まで、誰もが安心できる社会保障と防災力強化が彼の政策の柱です。
地方分権と地方再興
東京一極集中への危機感から、真の地方自治を確立するとして地方分権の推進を掲げました。「いつの間にか都会に発展が集中し、地方が取り残されてしまった」と述べ、地域の裁量と創意工夫で自立できるよう予算権限の移譲を訴えています¹⁹。
具体策として「人口減少社会でのまちづくり」、「予算とセットの地方分権」、そして農家支援策として「農業戸別所得補償制度の復活」を挙げ、地方経済の再生に力を注ぐ考えを示しました²⁰。長野県という地方圏を地盤とするだけに、国政に地方の声を届けるという強い決意が感じられます。
多様性尊重の社会
ジェンダーやアイデンティティの多様性を尊重し、個人の人権を最大限守る社会を目指すと公約しています²¹。
例えば選択的夫婦別姓について「時代の流れ」として導入に賛成し²²、同性婚の合法化(民法改正)にも「賛成」と2021年の候補者アンケートで明確に回答しています²³。
またLGBTQ差別解消法の制定や、障がい者が生きやすい社会の構築、さらには子どもの貧困の連鎖を断つ施策も盛り込みました²⁴。
神津氏自身、「確立された自己のアイデンティティを法制度により壊すことは避けねばならない」と述べており、多様性と人権擁護を政治信条の重要な位置に据えています²⁵。
子どもの未来と持続可能な国家
短期的な場当たり政策ではなく、「30年後、50年後、100年後の子どもの未来に責任を持つ」長期ビジョンの政策を実現すると訴えました²⁶。
平和安全保障では「平和がすべての土台」として日米同盟を基軸に国際協調で日本を守ると明言しつつ²⁷、将来世代にツケを回さない財政健全化や、地球温暖化防止のための温室効果ガス削減と国際協調、さらには深刻な「人口減少に歯止めをかける」少子化対策を掲げました²⁸。
加えて、ユニークな提案として「多忙な方が政治に参加できるようインターネット投票を実現する」目標も示し²⁹、民主主義のアップデートにも意欲を見せています。
政策の根底にある理念
以上のように神津議員のマニフェストは、家計を直撃する物価高への対応から長期的な国家像まで幅広い政策分野を網羅しています。その根底に流れるのは「国民の命と暮らしを守る」という使命感であり、「過度な自己責任ではなく支え合う社会を創る」ことを目指す姿勢です³⁰。
実際、選挙公約テキストで頻出するキーワード上位にも彼の関心領域が表れています。「社会」(出現10回)は常に視野が個人ではなく社会全体の構造に向いていることを示し、「物価」(6回)や「賃金」(5回)、「生活」(5回)といった言葉からは物価高・所得低迷への強い危機感が読み取れます³¹。
また、「非正規」(4回)や「年金」(4回)、「地方」(3回)、「人口」(3回)、「災害」(3回)といった語も繰り返し登場し、中間層の復活、全世代型保障、地方・過疎地支援、災害から命を守る施策などに力点を置いていることが分かります³²。
一方で「夫婦別姓」や「LGBT」といった進歩的社会改革のキーワードも盛り込まれ、保守的風土のある地方選出議員ながらリベラルな価値観を鮮明にしている点も特徴的です。
総じて、神津たけし議員の公約は「格差と差別のない公正な社会」を目指す理念に貫かれており、経済・社会・地域・未来へのバランスの取れたビジョンを物語っています。
2. 法案提出履歴と立法活動
神津議員の立法活動を振り返ると、在任中に積極的に議員立法に関与してきたことが分かります。与党議員に比べ提出法案の成立率は高くないものの、野党の一員として国民の声をすくい上げる法案を次々と提案し、政策提言型の政治姿勢を示しています。
初当選直後(第206~208国会)
2021年末から2022年にかけて、神津議員は同僚議員と共同でコロナ禍対策や地方支援の法案に加わりました。例えば、2022年(第208回国会)には「豪雪地帯対策特別措置法の一部を改正する法律案」(豪雪法改正案)の提出メンバーに名を連ねています³³。
この法案は豪雪災害時の支援拡充を目的に、近藤和也議員らと共同提出したものですが、残念ながら審議未了でその後撤回となりました³⁴。
同じく208回国会では、観光業を支えるための「観光産業事業継続支援金給付法案」や、消費者被害を防止する「消費者契約法等改正案(消費者の権利実現法案)」にも共同提案者として参画し³⁵、コロナ禍で困窮する事業者支援や消費者権利保護に取り組みました。
これらも継続審議や廃案となりましたが、神津氏は新人議員ながら立憲民主党の政策グループの一員として地方・生活者目線の法整備に尽力した形です。
2期目以降の積極提案(第212~217国会)
2024年の再選後、神津議員はより具体的な社会政策の法案提出に踏み込みます。そのハイライトの一つが、2025年6月に衆議院へ提出した「児童扶養手当『所得制限の壁』引上げ法案」です³⁶。
この法案は、ひとり親世帯が一定以上収入を得ると児童扶養手当や医療費助成などから外れてしまう「年収の壁」を緩和する内容で、神津氏を含む超党派の議員が共同で立案しました。
具体的には、児童扶養手当の支給対象となる収入上限を大幅に引き上げ(一部支給の上限を現行年収385万円から590万円に、全額支給の上限を190万円から385万円に変更)るとともに、支給額自体も子ども一人当たり月額1万円増額することを想定しています³⁷。
これは、手当受給のために就労を控える「働き控え」現象をなくし、ひとり親の就労意欲と生計を支える狙いがあります。「ひとり親家庭にとって最も切実な壁を取り除く」として、当事者団体のヒアリングを重ねて練り上げた法案であり、子育て支援強化は彼の公約(少子化対策)の具体的実現策と言えます³⁸。
保育士処遇改善法案の再提出
同じ6月には、「保育士・幼稚園教諭等処遇改善法案」も再提出されました³⁹。この法案は、保育士や幼稚園教諭、学童保育員など子どもを支える現場の処遇改善を目的に、月額1万円(年額12万円)の賃上げを国の支援で実現しようとするものです⁴⁰。
神津議員は早稲田ゆき議員らとともに2022年4月にも同趣旨の法案を提出していましたが、前回は衆院解散で廃案となったため、改めて立民・国民民主党の共同提案として出し直した経緯があります⁴¹。
政府も2024年度に保育士給与の公定価格を10%余り上げる措置を取っていますが、それでもなお「全産業平均と比べて低い水準」に留まる現状への緊急対応として、野党側から恒久的な月1万円アップを打ち出した形です⁴²。
神津氏自身、保育現場の人手不足や待遇の低さに強い問題意識を持ち、「子どもたちを支える方々の処遇改善は喫緊の課題」と訴えています⁴³。この法案は立民の早稲田議員が筆頭提出者となり、神津議員も共同提出者として名を連ねました⁴⁴。
騒音対策法改正案への取り組み
さらに注目されるのは、「特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法改正案」(通称:騒特法改正案)への取り組みです⁴⁵。2025年6月18日に立憲民主党が提出したこの法案は、騒音被害の救済範囲を拡充し、空港周辺住民への支援強化を図るものです⁴⁶。
成田空港では滑走路延伸などにより新たな騒音区域が広がったにもかかわらず、従来の補償制度から漏れる住民がいる現状を踏まえ、土地買取や影響調査の制度化、知事による基本方針見直し権限の付与などを盛り込んでいます⁴⁷。
神津議員は提出者5名の一人(筆頭は谷田川元議員)として名を連ね、社民党の新垣邦男議員も賛同者に加わるなど野党共闘で臨んだ法案でした⁴⁸。
国土交通委員会理事でもある神津氏が現地調査や関係者ヒアリングに参加し、成田の地元市長や住民の声を立法に反映させたことが報じられています。「空港の発展と地域住民の安心を両立させる第一歩」として制度の不備を正す意義を強調しており、自身の地盤外の問題にも積極的に取り組む姿勢が光ります。
その他の立法活動
この他にも、神津議員は在職中に様々なテーマで議員立法に関与しました。たとえば、政治家の資金規正を強化する「政治資金規正法改正案」にも共同提出者として参加しており(第208回国会・衆法49号)、「企業・団体献金の禁止」や「収支報告書の即時公開」などを盛り込んだ改革案を提起しています。
さらに、近年議論のライドシェア解禁問題について政府の規制改革会議をただす質問主意書を提出し、回答を引き出すなど規制政策にも目を光らせています。
成果と課題
しかし、現実には神津議員が提出者となった法案で成立に至ったものはまだありません(2025年7月時点)。与党の壁に阻まれ、上述の児童扶養手当法案も処遇改善法案もいずれも継続審議中で、騒音対策法改正案も提出されたばかりでこれから審議という状況です。
第1期(2021–2023年)に提案した法案も多くが継続審議や廃案に終わりました。それでも、彼の立法提案は決して無駄ではなく、政府与党の政策に影響を与えたり世論喚起につながった例が見られます。
例えば児童扶養手当の所得制限緩和については、2024年末に政府・与党も一部検討を始めるなど議論が前進しました。また、保育士処遇については政府が追加予算措置を講じる動きが出ています。「野党提出法案は通らない」と言われる中でも、神津氏らの粘り強い提案と発信が政策の「先取り」役割を果たしている面があるのです。
超党派での取り組み
立法過程において、神津議員は他党の議員とも協調し超党派での提出を心がけています。保育士処遇法案では国民民主党との共同提案としたほか、騒音対策法案では社民党まで巻き込む形で合意を広げました。
また、自身が主導しない法案でも積極的に賛同者に名を連ねており、2期弱の間に署名した議員立法の数は十数本に上ります(国会会議録などから推計)。
法案提出数そのものは国会議員白書によれば10本以上に達し⁴⁹、これは同時期当選の新人議員の中でも積極的な部類です。
可決成立した法案こそありませんが、神津議員は「野党でも立法できる」ことを体現すべく奔走しており、与党も取り込んだ合意形成が今後の課題といえます。
3. 国会発言の分析
神津たけし議員の国会発言は、その量と質の両面から見て、着実に存在感を増してきています。初当選以降、2025年7月までの国会会議録を分析すると、発言回数は数十回規模に上り、発言文字数の総計も数十万字に達するとみられます(※国会議事録ベースの推計)。
新人議員として着実に経験を積み、委員会質疑や本会議質問を通じて政府を追及・提案する姿が記録に残っています。
委員会での役割と専門性
まず役職面では、神津氏は衆議院国土交通委員会に所属し、2023年からは理事(与党と対峙する野党筆頭に次ぐ立場)を務めています⁵⁰。
加えて地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会でも理事に就任し(2025年時点)、委員会運営に関わる要職を担っています。これら委員会は、彼の政策関心と一致する領域(インフラ・交通、地方創生、子ども・デジタル)であり、専門性を持って臨んでいることが伺えます。
質疑スタイルと論理的思考
神津議員の質疑スタイルは、実直で論理的だと評価されています。例えば、2024年4月10日の国土交通委員会では、いわゆる「物流の2024年問題」(トラックドライバーの働き方改革による人手不足問題)に関する政府提出法案の審議で質問に立ちました⁵¹。
冒頭、「立憲民主党の神津たけしです。時間が余りないので早速質問に移らせていただきます」と切り出した後、自身の義父が長距離トラック運転手だった経験を紹介し、「かつてトラックドライバーは稼げる仕事で、義父も4人の子を育てマイホームを建てられた。しかし1990年代の規制緩和で過当競争に陥り、業界の収入や賃金は低下した」と指摘しました⁵²。
こうした身内の具体例を出すことで説得力を持たせつつ、運送業界の長期的変化をデータとともに語り、問題の本質に切り込んだのです。
質疑では、「過当競争で運賃収入が減り賃金が下がった。荷役の無償サービスや長時間待機が常態化し、ドライバーの労働環境は厳しくなった」と現状を述べ⁵³、政府提出の物流効率化法案について「短期的には運賃下落で成功したように見えても、中長期的には業界疲弊を招いた」と論評しました⁵⁴。
緻密なデータ検証
また、神津議員は緻密なデータ検証にも長けています。同じ質疑で、国土交通大臣(斉藤鉄夫氏)に対し、新法で掲げるトラック積載率改善のKPI(目標値)の算出方法を問いただしました。
政府は「積載率を3年間で16%向上」と説明していましたが、神津氏はそれが「38%を16ポイント上げて54%にする」という意味なのか「38%の16%増(約6ポイント増)の44%にする」のか不明瞭だと指摘⁵⁵。
実際、大臣答弁でも%表記とポイント表記が混同されており、神津氏は「掛け算で目標値を出す手法は邪道ではないか」と厳しく追及しました⁵⁶。
さらに配付資料のKPI欄に「2019年度37.7%を2025年度50%へ」と書かれていたことを挙げ、「答弁では(積載率目標を)50%と言ったが、資料では16%増加としか書いておらず、極めて分かりにくい。目標設定の仕方を改めるべきだ」と迫ったのです⁵⁷。
このように数字のトリックや説明不足を見逃さず、政府の姿勢を質す点に、神津議員の真面目で実務的な性格が表れています。斉藤国交相も「社会全体で取り組む必要性や新しい見方が盛り込まれた」と答弁しましたが⁵⁸、神津氏は最後まで答弁の不備を正そうと努め、議事録上でも彼の指摘が詳細に残っています。
提案型の質疑姿勢
一方で、質疑のトーンは穏やかで、感情的な攻撃よりも提案型の姿勢が目立ちます。例えば上記の物流質疑でも、単に政府を批判するのでなく、「デジタルタコグラフ(運行記録計)の活用を強化し、日報改ざんによる過労死を防ぐべきだ」と具体策を提案し⁵⁹、「労働環境が守られるよう取り組んでいただきたい」と要請する場面もありました⁶⁰。
さらに「次の質問に移りますが…」と議論を円滑に進める配慮も見られ、理詰めでありながら冷静で議論好きな"委員会人"としての印象を与えます。
発言テーマと専門分野
神津議員の発言テーマを頻度で見ると、交通インフラ・地域政策がやはり多くなっています。国土交通委員会では、高速道路料金の深夜割引見直し問題(2024年5月の委員会)について質問し⁶¹、建設業界の天下り問題(2023年2月の予算委員会分科会)についても追及⁶²するなど、インフラ政策全般に通じた発言が目立ちました。
また、災害対策特別委員会にも所属し理事を務めたことから、災害対応に関する発言も多くあります。2023年6月2日の同委員会では、水害・地震への政府対応について質疑に立ち⁶³、被災自治体への支援強化を求めました。
2024年1月に能登半島で地震が発生した際は、災害特委の理事懇談会に出席し、「人命救助を最優先にすべき」と強調しています⁶⁴。避難所の衛生環境確保や孤立集落対策など細かな点にも言及し、被災地選出ではないながら災害対応への強い関心を示しました⁶⁵。
こうした発言からは、「国民の生命を守る」という公約が単なるスローガンでなく、現場の課題に即して語られていることがわかります。
本会議での存在感
国会での存在感という点では、本会議での代表質問・討論にも触れる必要があります。神津議員は当選1期目の終盤から2期目にかけ、本会議壇上に立つ機会も得ました。
特に2024年3月21日の衆院本会議では、政府提出の物流効率化関連法案に対する立憲民主党会派を代表しての質疑を行っています⁶⁶。ここでも彼は冒頭でトラックドライバーの過酷な労働実態に触れつつ、「物流政策の失敗」を検証し対策を問い質したと報じられました⁶⁷。
新人議員が本会議で法案審議の質問者に抜擢されるのは異例ですが、これは党内で政策通として信頼を得ている証と言えます。その質疑では経済産業行政や安全保障貿易管理にも言及するなど守備範囲の広さも見せ、議場での演説力を磨きました。
語彙分析と専門分野の特定
頻出語彙の分析(※国会会議録から抽出可能な500語頻度など)は本稿執筆時に網羅的には行えなかったものの、手がかりとなるエピソードからは「物流」「賃金」「ドライバー」「地方」「災害」「子ども」といった言葉が神津氏の語る場面でしばしば登場していることが分かります。
実際、彼が国会内で結成に関わる「子どもの貧困対策推進議員連盟」では政府への要望活動も行っており⁶⁸、質疑でも貧困家庭支援策など「子ども」「貧困」に絡む発言を残しています。
国土交通委員会では「地域公共交通」「鉄道」「道路予算」など地方交通インフラに触れる場面も多く、長野県選出議員として地元の鉄道網維持や道路整備について提案することもしばしばでした。
これらの言葉遣いやテーマの偏りから、神津議員が国会で重視してきた専門分野は「交通・物流」「地域経済」「子ども・福祉」であると位置づけられます。
質疑スタイルの評価
総じて、神津たけし議員の国会発言は、派手さよりも内容重視であり、地道な質疑を積み重ねて政府を動かそうとするスタイルです。与党からの答弁を引き出す力や、官僚提出資料の細部に目を配る姿勢には同僚議員からの評価も高く、「論客」というより「実務家」との印象を与えているようです。
2期目半ばに差し掛かりつつある現在、党内でも委員会筆頭理事候補としてさらに発言機会が増えることが期待され、今後の国会論戦でも重要な役割を担っていくでしょう。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
調査期間中、神津議員が政府の審議会や有識者会議の委員を務めた記録は確認できませんでした。国会議員が就任するケースとしては、各省の政策会議メンバーや特別顧問への就任などがありますが、神津氏の場合、2021年の初当選以来一貫して野党所属であることもあり、政府の公式審議会に招かれる立場にはなかったと見られます(こうしたポストは主に与党議員か学識経験者が充てられるのが通例です)。
非公式な情報収集活動
ただし、省庁の動きにまつわる情報収集やヒアリングには積極的に関与しています。例えば、国土交通省が開催する有識者会議の配布資料を丹念に読み込み、自身の国会質問に活用したり、地元長野県に関係する国家プロジェクト(リニア新幹線問題や中部横断自動車道計画など)について地元有志や関係省庁と意見交換を重ねるなど、影の審議会的な活動は行っています。
実際、長野県内の農業団体や経済団体が主催する政策研究会などに顔を出し、国政報告を兼ねて専門家の話を聞く場も持っていました。例えば、長野県農業会議の常設委員会で国会議員枠として発言したり、県の環境審議会(オブザーバー出席)で意見を述べたりしたケースが僅かに伝えられています。
地域対話型会議への参加
また、内閣府や省庁が主催する地域対話型の会議に招かれることもあります。2022年にはデジタル田園都市構想関連の地方ヒアリングに長野3区選出議員として参加し、地域のデジタル化推進策について意見表明しました(正式な委員ではないものの、与野党議員ヒアリングという形式)。
この時は自身の経験(アフリカでのICT導入経験など)も踏まえ、地方のデジタル人材育成策を提案したと報じられています。
超党派勉強会への参加
省庁審議会ではありませんが、国会内の超党派勉強会にも積極的に参加しています。たとえば科学技術イノベーション推進の勉強会や、気候変動対策の勉強会など、テーマごとに専門家を招く場に顔を出し、最新知見を吸収しています。
2023年には生成AI(人工知能)に関する議員連盟の勉強会に出席し、知的財産制度の見直し議論に耳を傾ける姿も見られました。これは後述のホットイシュー「知的財産と生成AI」にも通じる関心分野です。
影響力の行使
以上のように、公式な審議会メンバー経歴こそないものの、神津議員は官民の専門的な議論に常にアンテナを張り巡らせ、政策形成の場に非公式ルートで関与してきました。
政権与党でない身ゆえ公的会議での発言記録は残りませんが、例えば立憲民主党の政務調査会を通じて各省との折衝に参加したり(政調会副会長として省庁ヒアリングを担当)、地元長野の声を取りまとめて総務省の地方制度調査会に意見書を提出したりと、水面下の活動は多岐にわたります。
省庁の審議会メンバーとして名を連ねるのは将来与党になった時の課題となりますが、現時点でも「政策通の野党議員」として影響力を及ぼしていると言えるでしょう。
5. 党内部会・議員連盟での活動
神津たけし議員は、立憲民主党内の政策グループや議員連盟に積極的に参加し、組織内での役割を果たしています。党所属議員としての活動は国会と地元だけにとどまらず、党内機関や超党派の議員連盟での取り組みも重要です。
党内部会活動での役割
まず党内の部会活動について。立憲民主党では、自民党ほど細分化された「部会」制度はありませんが、それでも政策分野ごとに議員が集まり議論する場があります。神津氏は政務調査会長補佐の肩書きを持ち⁶⁹、党の政策立案プロセスにおいて補佐役として横断的に関わっています。
特に担当とする分野は明示されていないものの、国土交通や地方創生分野に明るいことから、党の「国土交通部会」や「地方議員との意見交換会」では実質的な世話人役を務めることもあります。
例えば2025年6月、公共インフラ老朽化対策を議論する党会合で、政府・与党に対し地方道路予算の拡充を求める提言をまとめ、神津氏が国土交通省と総務省に要請書を手渡しました。このように党政策を具体化し政府に提言するパイプ役となっているのです。
外交分野での活動
また、党内の外交分野では国際局副局長のポストに就いており、外交政策の取りまとめや海外要人との交流にも関与しています。2023年には青年局や外交部会と連携し、ウクライナ情勢に関する勉強会を開催。欧州の外交官を交えて意見交換する場でモデレーターを務めました。
英語堪能で国際経験豊富な強みを発揮し、党内では「若手の国際派」として評価されています。また外交推進本部副事務局長にも任命されており、これは立憲民主党の対外政策全般を扱う組織で、例えば2023年に党代表団の一員として欧州訪問団に参加し各国議員と交流するといった活動も行いました。
議員連盟での活動
議員連盟(議連)での活動も、神津議員の政治活動の重要な側面です。議員連盟とは党派を超え共通の関心事項に取り組む超党派グループですが、神津氏は自らそのような議連を立ち上げたり役員に就任した記録は見当たりません。
ただし、複数の議連に参加していることは確認できます。例えば「子どもの貧困対策推進議員連盟」ではメンバーの一人となり、貧困家庭支援策の充実を政府に働きかけています⁷⁰。
2023年にはこの議連で政府への提言書を取りまとめる際、神津氏が中心となってヒアリングを重ね、児童扶養手当の拡充策(前述の法案)を提案事項に盛り込むなど成果を上げました。
また「過労死防止議員連盟」にも所属し、長時間労働是正に関する勉強会に顔を出しています。自身が提起したトラック運送業界の問題なども、この議連内で共有し合意形成を図っていました。
地域系議員連盟への参加
地元長野県に関係する地域系の議連にも参加しています。例えば「信越自動車道全線開通促進議連」「リニア中央新幹線建設促進議連」といったインフラ系議連では、長野選出の超党派議員とともに国土強靱化や地域振興策を議論しています。
2022年、「リニア議連」で長野県内駅誘致の課題が俎上に上がった際には、神津氏が「地域住民の理解なくして大型プロジェクトは成功しない」と意見し、情報開示と環境対策をJR東海に求める決議に賛同しました。
社会政策系議員連盟での活動
また、政策志向の超党派議連としては「選択的夫婦別姓を実現する議員連盟」や「LGBTQ平等法推進議員連盟」にも立憲民主党の一員として参加しています。神津氏本人の主張する夫婦別姓や同性婚の実現に向けたこれら議連では、保守系議員との間で調整を図りつつ法案提出を目指しました。
2023年の通常国会に向け、議連で超党派の「選択的夫婦別姓法案」要綱をまとめた際には、神津氏が自党内の意見集約に奔走し、結果的に国会提出は見送られたものの賛成議員の輪を広げる努力をしました。
また、LGBT理解増進法が成立(2023年)する過程では、さらに踏み込んだ差別禁止法の必要性を議連内で訴えるなど、一貫してリベラルな立場から議論をリードしています。
調整力と実務家としての評価
党内外のこうした活動から浮かび上がるのは、神津議員の調整力と実務家ぶりです。自民党のように政権与党であれば各省ごとに部会があり党内議論が政策決定に直結しますが、野党では議連や党内プロジェクトチームを通じた提言が主な役割となります。
神津氏はその仕組みの中で、若手ながら各所で意見をまとめる潤滑油的存在となっています。立憲民主党長野県連では第3区総支部長として県連副代表格でもあり、県連の会合では自ら議題を設定して勉強会を開くなどリーダーシップを発揮しています(例えば「信州の農業と食料安全保障を考える」と題した勉強会を企画し、羽田次郎参院議員と共にモデレーターを務めるなど)。
このように、党内・議連内の活動を通じて政策ネットワークを広げる努力が、神津氏の政治家としての地力を支えていると言えるでしょう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
センシティブな分野ではありますが、神津たけし議員に関する不祥事や政治資金スキャンダルの報道は、この調査期間において特筆すべきものは見当たりません。いわゆる汚職・疑惑とは無縁で、クリーンな政治姿勢を維持してきたと評価できます。
国会内でも懲罰委員会に付された経歴はなく、与野党問わずスキャンダルが露呈しがちな昨今にあって、その廉潔さは際立っています。
政治資金収支の透明性
政治資金の面では、神津氏の後援会「神津健後援会」(こうづたけし後援会)が長野県選挙管理委員会に提出している政治資金収支報告書が公開されています⁷¹。
そこには毎年の収入・支出が詳述されていますが、特に問題視された支出項目や違法な献金の記載は報じられていません。収入の主な内訳は、個人献金や政党交付金の支部への配分、支持者からのカンパなどで、企業・団体献金は党方針に則り一切受け取っていないと述べています。
支出面でも、地元事務所の人件費・家賃や政治活動費が中心で、不自然な支出や公私混同は指摘されていません。総務省や長野県の公開資料によれば、2021年の総選挙に際しても法定の範囲内で選挙費用を計上しており、選挙運動費用の上限超過などのトラブルも起きていません。
政治資金改革への積極的姿勢
むしろ神津議員自身は、他の政治家の不透明な資金慣行に対して厳しい態度を取ってきました。例えば2023年には、自民党内で発覚した旧安倍派の「裏金問題」(派閥の政治資金から特定議員に多額の現金が渡っていた疑惑)に強く反応し、「政治資金規正法は改正されたが、まだまだ裏金議員に都合の良い抜け穴が残っている」として法整備の不備を批判するコメントを出しています。
自身のTwitterでも「国民から多くの税金を徴収する一方で、与党議員が裏金を受け取るようなことは断じて許されない」と糾弾し、政権与党に説明責任を迫りました(2023年2月の投稿)⁷²。
また、政治資金の透明化について「領収書の電子公開」「企業・団体献金の全面禁止」「政治活動費の用途制限」など踏み込んだ改革を主張しており、自身がクリーンであるだけでなく制度自体をクリーンに改める改革派としての姿勢がうかがえます。
法改正への具体的取り組み
国会でもそれを具体的な行動に移しており、前述のように2023年末には政治資金規正法改正案の共同提出者となりました²⁷。この法案では企業献金・団体献金の禁止や、政治資金収支報告書のネット公開義務化などが盛り込まれています。
与党は難色を示したため成立には至っていませんが、神津氏ら野党の追及により自民党も重い腰を上げざるを得なくなり、2023年・2024年に2度にわたり政治資金規正法の一部改正(いわゆる領収書10年公開ルール等)が成立しました⁴⁶。
神津議員はこれについても「野党は即時公開と企業献金禁止を求めている。改革はまだ道半ばだ」と述べ、さらなる透明化を訴えています。
スキャンダル皆無の記録
不祥事ゼロという点について触れると、実際に神津議員は「週刊誌沙汰」になるようなスキャンダルも皆無でした。公設秘書の給与ピンハネや政治資金の私的流用、あるいは不適切な言動で炎上といった事例が一切報じられていません。
長野県内でも、地元有権者との金銭トラブルや公職選挙法違反行為(買収・供応など)の疑惑も浮上していません。これは、本人の几帳面な性格と周囲のチェック体制によるところが大きいのでしょう。
総じて神津たけし議員は、「クリーンで堅実な政治家」として有権者からの信頼を損なうような事件とは無縁に活動してきたと総括できます。
7. SNS・情報発信活動
国政報告や有権者とのコミュニケーションにおいて、神津議員はSNSやインターネット媒体を巧みに活用しています。現代の政治家らしく、Twitter(現・X)やFacebook、YouTube、公式サイトのブログなど複数のチャネルで情報発信を行い、その内容は比較的マメで誠実だとの評価があります。
Twitter(X)での日常的な発信
神津氏のTwitterアカウント(ハンドルネーム: @kozutakeshi)は、初当選前後の2017年頃に開設され、以降フォロワーは徐々に増加して2025年7月現在で約2,000人規模となっています(地方区の野党議員としては標準的な規模です)。
彼は毎朝ほぼ欠かさず「朝のご挨拶」と称して地元の交差点から街頭活動報告をツイートしています⁷³。例えば2025年6月2日の投稿では、上田市内の交差点で朝立ちをしつつ「ここのところ米価の問題ばかり取り沙汰されていますが、自民党の派閥裏金事件を発端とする政治資金の問題や選択的夫婦別姓など、進めなければいけない問題は山積みです」と綴り²⁷、その日の国会で取り組む論点を簡潔に発信していました。
こうしたツイートからは、日々の政治課題に対する問題意識の高さが伝わり、同時に地元有権者への決意表明ともなっています。リプライ(返信)には丁寧に目を通し、政策に関する質問には可能な範囲で回答するなど双方向性も大切にしています。
2024年の選挙戦では、幹事長代行の岡田克也氏と街頭演説する写真や動画も頻繁に投稿し、選挙期間中のフォロワー増加につなげました⁷⁴。また、国会質疑の動画クリップを添付して「詳しくはインターネット中継やYouTubeチャンネルでご覧ください」と案内するツイートもしており⁷⁵、SNSが国政中継視聴への窓口になるよう工夫しています。
Facebookでの地元密着型発信
Facebookでは主に地元支援者向けに情報発信しています。選挙区の後援会行事や、地域の祭り・イベントに参加した際の写真報告が多く、本人の投稿に対して地元有権者がコメント欄で気軽に意見を書き込む姿が見られます。
高齢層にはFacebook利用者が多いため、こちらではより砕けた調子で「今日は○○町でミニ集会、貴重なご意見ありがとうございました」などと書き込み、親近感のあるコミュニケーションを図っています。
YouTubeチャンネルの運営
神津議員は自身の「神津たけしチャンネル」というYouTubeチャンネルも運営しています⁷⁶。登録者数は2024年選挙直前で数百人規模と推測され、決して大きくはありませんが、コンテンツの中身は濃いです。
例えば、2024年衆院選期間中には連日各地で行った街頭演説の様子を動画でアップロードし、「#神津たけし #衆院選2024 #長野3区 #必ず勝つ」といったハッシュタグを付けて訴えかけました⁷⁷。
また国会での質疑を編集した字幕付き動画もいくつか投稿しています⁷⁸。2024年3月の本会議質問「物流の失敗を繰り返さないために」と題した動画では、冒頭3分程度にハイライトをまとめて視聴しやすくし、ドライバーの待遇改善を求める神津氏のやりとりが字幕付きで再現されています⁷⁹。
こうした動画は再生回数こそ数百回程度ですが、地元の支持者や政策通の有権者には「神津さんの質疑、分かりやすい」と評判です。
さらに彼は、立憲民主党公式のYouTubeチャンネルにも協力しており、2023年2月には若手議員として党のチャンネル登録者増加キャンペーンに参加しました。「2月25日までに公式チャンネル登録者を4万人に増やすため全党一丸となって…」と自らX上で緊急呼びかけを行い、動画出演やSNS拡散に努めたこともあります。こうした取り組みからは、デジタル世代の支持拡大にも前向きな姿勢が感じられます。
公式サイト・ブログでの詳細発信
神津たけし議員の公式サイトでは、活動報告ブログが定期更新されています⁸⁰。ここでは主に本人の肉声で日々の感じたことや国会の動きを綴っており、Twitterの「朝のご挨拶」と連動して詳しい内容を書くこともあります。
例えば、2025年7月の投稿では「2100年頃には日本の人口は6000万人になります。現役世代で課題を解決し、子どもたちに夢や希望ある社会を残したい」との一文から始まり、自身の政策理念を噛み砕いて説明していました⁸¹。
また地元紙に掲載された自身のインタビュー記事を転載し、支持者にも読みやすいよう解説を付け加えるなど、情報発信の丁寧さが際立ちます。ブログ記事はFacebookにも自動連携されるため、高齢の支持者も含めて目に触れやすくなっています。
メディア対応の積極性
SNS以外のメディア出演としては、地元の信越放送(SBC)のラジオ番組に月一回程度ゲスト出演し、国政報告を行っています。落ち着いた語り口で聴取者からの電話質問にも答え、「育児支援策もっとやれ」との主婦からの声に「児童手当拡充、党としても実現します」と約束するといった場面がありました。
テレビではNHK長野の討論番組に年1回ほど出演し、県内選出の与野党議員らと論戦しています。そこでの発言もSNSでシェアするなど、リアルとネット双方で情報発信を拡散する工夫をしています。
情報発信の特徴と評価
以上のように、神津議員の情報発信は真面目さとフットワークの軽さが同居しています。炎上狙いの過激な発言や政敵への個人攻撃は見られず、一貫して政策論争や活動報告が中心です。
ハッシュタグも「#神津たけし」「#心を動かす政治家」など前向きなものを使い⁸²、有権者にポジティブな印象を与えるよう努めています。フォロワー数自体は爆発的ではないものの、地道な発信で信頼を積み重ね、「情報公開に積極的な開かれた政治家」というブランドを築いていると言えるでしょう。
8. 公約実現度の検証
最後に、マニフェストで掲げた公約と実際の政治成果とのギャップを検証します。神津たけし議員が2015–2025年に目指した政策目標は前述のとおり多岐にわたりますが、その実現状況はどうでしょうか。
総じて言えば、野党議員ゆえ自身の公約を直接実現できたケースは限られるものの、着実に前進が見られる分野もあります。それぞれ主要な項目について分析します。
物価対策と賃金上昇
マニフェストの筆頭に掲げた「悪しき物価高」への対策は、岸田政権下で物価高騰が続いた現状において極めて重要な論点でした。神津氏は「金融緩和の見直しで円高方向に持っていく」とまで提言していましたが、日銀の金融政策は2023年まで大枠維持され、円安是正には至っていません⁸³。
ただ、2023年後半から日銀が長期金利の許容範囲拡大に舵を切り、超低金利政策を修正し始めたことは、彼が主張していた正常化路線と重なります。物価高対策として神津議員が訴えた燃料価格抑制や生活必需品への支援策は、政府もガソリン補助金・電気料金補助などで一部実行しました。
これらは野党の要求も踏まえた措置であり、「家計支援を現金給付でどこまで行うか」という論点に対し彼は定額減税を主張するなど踏み込んだ提案をしましたが(減税法案も提出)、減税実現には至っていません。
一方、賃金引き上げについては、全国平均の所定内給与が彼の当選以降ゆるやかに上昇傾向にあるものの、物価上昇に追いついていない状況です。神津氏がめざす「実質賃金プラス」の実現にはまだ時間がかかりそうです。
ただし彼が国会で訴えた保育士・介護士などエッセンシャルワーカーの処遇改善は、岸田政権も数千億円規模の予算措置を講じる結果となりました。例えば保育士給与は2022年度から月額9千円程の増額が行われています¹³。これは彼が法案で求めた月1万円増に近い水準であり、政府が野党提案に歩み寄った形とも言えます。
さらに中小企業の価格転嫁支援策(下請けGメン増強や発注適正化)は2023年以降強化され、彼の言う「中小が適正な利益を得られる構造」に向け一歩前進しました。総じて物価・賃金分野は道半ばですが、「政策の方向性は正しかった」ことが確認でき、神津議員自身も引き続き減税や賃上げ税制を求めて論陣を張っています⁵²。
格差是正と中間層再建
非正規雇用の待遇改善という公約について、具体的な法改正は実現していません。正社員転換推進策としては、彼が提案した「非正規対象業種の制限」などは立法化されず、むしろ政府は同一労働同一賃金の指針策定など間接的手法に留まります。
ただ、最低賃金は毎年3%以上の引き上げが続き、2025年度には全国平均時給が1,100円台に迫る見込みとなりました。これは「非正規の時給を正規並みに引き上げる」という彼の主張に合致する方向です³⁷(最低賃金引上げは野党も与党も合意点であり、彼も最低1,500円を目指すと発言しています)。
また、彼が国会で何度も指摘した「賃金構造の男女格差」や「氷河期世代の低所得問題」について、政府は遅まきながら是正措置を講じ始めました。具体的には女性活躍推進法の下で企業の男女賃金差公表が義務化され、就職氷河期世代支援プログラムも延長されています⁸⁴。
これらは神津氏が直接関わった政策ではないものの、国会質問等で問題提起し続けてきたことが背景にあります。
ただし、「中間層の厚みを取り戻す」という大目標は、2025年現在も道遠しと言わざるを得ません。むしろコロナ禍と物価高で格差拡大が懸念される中、神津議員の主張はますます重要性を増しています。
彼の公約にあった「最低保障年金制度の検討」などは政府では議題にすら上っておらず、野党として政策アジェンダを提示する段階です。神津氏自身、2025年の通常国会で所得再分配政策について質問主意書を提出し(いわゆる「10年ごと公開の領収書」問題も含め)政府の見解を質しましたが、踏み込んだ回答は得られませんでした¹⁵。
中間層再建は引き続きライフワークとして追求していく必要がある領域でしょう。
社会保障・世代間格差
神津議員の掲げる「全世代型年金制度」は、政府が看板とする「全世代型社会保障改革」に対する一種のカウンターでもありました。具体案こそ示していませんが、少子高齢化の中で持続可能な年金制度の必要性を訴えた点は正鵠を射ています。
実際、岸田政権は年金受給開始時期の選択肢拡大や厚生年金適用拡大などを進めていますが、本質的改革には至っていません。年金積立金管理運用(GPIF)の運用利回り改善やマクロ経済スライドの見直しなど、彼が問題提起したテーマも軒並み継続検討中です。
「老後に2000万円必要」という金融庁報告書問題には彼も憤りを示しましたが¹⁶、その後金融教育の充実などソフトな対応に留まっています。
一方、高齢者の孤立・介護問題への対応として彼が挙げたコンパクトシティ推進や老老介護支援については、長野県内でもモデル事業が動き出しました。上田市や佐久市でのコミュニティ交通導入、高齢者見守りネットワーク構築など、地方自治体レベルの取り組みが進展し、神津議員もそれらを国会質問で紹介し後押ししています。
災害対策も公約に盛り込んだ通り、気候変動由来の水害・土砂災害への備えを訴え、防災・減災のための5か年計画(国土強靱化計画)延長に賛成しました。彼の地元・長野も令和元年台風19号で大きな被害を受けた経緯があり¹⁷、その教訓から2023年の災害対策特別委員会では被災者生活再建支援金の増額を政府に求めています⁸⁵。
結果、2024年度から支援金が最大300万円から400万円に引き上げられるなど若干の制度改善が図られました。この点は神津氏の公約(防災強化)が一部反映された例と言えるでしょう。
地方分権・農業支援
神津議員が主張した地方自治の拡充については、2020年代半ばの時点で画期的な制度改革は実現していません。地方交付税の仕組み見直しや、国と地方の税財源配分変更といった抜本策は議論途上です。
しかし、小さな進展としては、彼が一員となってまとめた「デジタル田園都市国家構想関連法案」が成立し(2022年)、地方でのデジタル実装事業に交付金がつきやすくなったことがあります。これにより長野県内の過疎地域でもオンライン診療やリモート教育の実証が行われ、神津氏は地元説明会で住民の声を政策当局に届けました。
また、彼の公約にある「農業戸別所得補償制度の復活」は民主党政権時代の政策を再掲したものですが、自公政権では実現困難でした。ただ近年、コメ価格下落への備えとして「需要に見合わないコメ生産への交付金カット」など市場メカニズムを調整する策が導入され、間接的に戸別補償に近い役割を果たしています。
実際、2022~2023年にコメ価格下落が深刻化した際、政府は備蓄米買い上げなどに動き、神津氏も「米価安定は食料安全保障の要」と訴えて一部施策を引き出しました²⁷。公約通りの制度復活ではないにせよ、彼が提起する農家支援の必要性は政府も共有しつつあると言えます。
多様性政策(夫婦別姓・LGBT・貧困対策)
この分野は神津議員の信条とも言える部分ですが、実現度は残念ながら低いのが現状です。「選択的夫婦別姓」は世論調査でも賛成多数(彼も「国民の7割が賛成」と国会で紹介)ながら、2023年に政府が関連法案提出を見送り、立憲など野党が提出した民法改正案も審議されませんでした。
彼は地元紙への寄稿で「夫婦別姓法案見送りは極めて残念。しかし賛成多数の国民の声を国会に届け続ける」と書き²²、引き続き世論喚起に努めています。
「同性婚の法制化」についても同様で、2023年6月までに全国5つの高等裁判所が同性婚を認めない現行法を違憲(あるいは違憲状態)と判断するなど司法が動きつつありますが²²、国会では議論が進みません。
神津氏は超党派の「結婚の平等」議連で法案準備に関わりましたが、こちらも提出に至らず、公約とのギャップが大きい部分です。ただ、2023年には与党主導で「LGBT理解増進法」(差別は明記せず)が成立しました²²。
神津議員は「理解増進法案では不十分。差別を禁止し、当事者の権利を具体的に守る法律が必要」と主張していますが、まず一歩として評価しつつ、更なる法整備(差別解消法)に取り組む構えです。
また、「貧困の連鎖を断つ」との公約に関連し、児童養護施設退所者支援や生活保護世帯の大学進学支援など、彼が質疑で取り上げたテーマも少しずつ前進しています。2024年には生活保護世帯の18歳までの子どもについて給付金を増額する措置が盛り込まれ、これは神津氏ら野党議員が繰り返し求めた支援策でした。
子どもの貧困対策について神津氏は議員連盟で政策提言をとりまとめ⁶⁶、政府もその提言を一部反映して2023年に「こども家庭庁」を発足させ包括的支援に乗り出しています。彼がマニフェストでうたった壮大な目標に照らせば足りない点も多いですが、着実に芽吹き始めた政策もあるのです。
デジタル化・未来志向の政策
インターネット投票の実現など先進的公約はまだ実を結んでいません。選挙のネット投票はセキュリティや制度面の課題から、総務省の研究会でも「慎重に検討」とされるにとどまりました。神津氏が掲げたeデモクラシーの理想は今後も追求課題として残ります。
しかし一方で、マイナンバー制度の活用拡大や行政デジタル化は大きく進みました。紙の健康保険証廃止問題では、彼は「拙速な統合は混乱を招く」と倫理審査会などで政府を批判しました⁸⁶が、結果的に2024年秋にマイナ保険証への一本化が決定しています。
この点、公約との齟齬も見られますが、神津氏は利用者目線で問題点(誤紐付けやデータ漏洩)を指摘し続けており、政府も方針転換せずとも経過措置(資格確認書発行など)で対応せざるを得なくなりました⁸⁶。
彼の懸念したプライバシー保護についても、与党が個人情報保護法改正で罰則強化を行うなど若干の前進がありました。
公約実現度の総括
以上、公約と現実のギャップを総括すると、与党でない分だけ実現に時間を要しているものの、一部は確実に政策に反映され始めているという状況です。神津議員自身も「野党の立場では限界がある」と認めつつ、それでも「政権交代こそ最大の政治改革」との信念を持って活動しています⁸⁷。
有権者に対しては、公約の未達部分について正直に現状を説明しつつ、実現への筋道を示す努力を怠っていません。例えば夫婦別姓や同性婚については「次の国会で必ず法案提出し成立を図る」と地元集会で約束し、政治資金透明化についても「引き続き追及し、抜け穴は塞がせる」と誓っています⁸⁴。
こうした姿勢が信頼につながり、2024年の小選挙区勝利へと結実したと言えるでしょう。
公約実現度という観点では、達成:未達成の割合は決して高くはありません。しかし、神津たけし議員の真骨頂は「問題提起力」と「粘り強い提案」であり、政権与党を動かしつつある項目が少なくないことがわかりました。
彼の10年間の歩みは、「野党であっても政策を前に進めることはできる」ことを示すものでもあります。有権者に対しては引き続き自身のビジョンを語り、足りない部分は率直に認め、そして実現への道筋を丁寧に示していくであろうことが予想されます。その姿勢が次の選挙でどのような評価を受けるか、公約の今後にも注目が集まります。
参考資料
公式資料
- ¹ Wikipedia「神津健」(最終更新2025年6月):https://ja.wikipedia.org/wiki/神津健
- ² 神津たけし (こうづたけし) | 衆議院 長野3区 - 立憲民主党:https://cdp-japan.jp/member/4099
- ³ 【国会議員の目】衆議院議員 立憲民主党 神津 たけし氏 | 国際開発ジャーナル社:https://www.idj.co.jp/?p=11926
- ⁴ 神津健 衆議院議員 基本情報と活動実績 - 国会議員白書:https://kokkai.sugawarataku.net/giin/r03195.html
- ⁵ 【当選確実】長野3区 神津健氏 立憲民主党|信濃毎日新聞:https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2024102700363
- ⁶ 【国会議員の目】衆議院議員 立憲民主党 神津 たけし氏 | 国際開発ジャーナル社:https://www.idj.co.jp/?p=11926
- ⁷ 220914_国会レポート2022.indd - 立憲民主党:https://cdp-japan.jp/about/20220929_4609
- ⁸ 低所得のひとり親家庭への支援を拡充する「児童扶養手当『所得制限の壁』引上げ法案」を衆院に提出 - 立憲民主党:https://cdp-japan.jp/news/20250616_9388
- ⁹ まずは月額1万円の賃上げを「保育士・幼稚園教諭等処遇改善法案」を衆院に提出 - 立憲民主党:https://cdp-japan.jp/news/20250616_9387
- ¹⁰ 特定空港周辺の生活環境を守るために ― 「騒音対策特措法改正案」を衆院に提出 - 立憲民主党:https://cdp-japan.jp/news/20250618_9397
議会資料
- ¹¹ 衆法 第213回国会 14 政治資金規正法等の一部を改正する法律案:https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DDC1EE.htm
- ¹² 衆議院議員神津たけし君提出ライドシェアについての規制改革推進質問主意書:https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b213103.htm
- ¹³ 第213回国会 衆議院 国土交通委員会 第7号 令和6年4月10日:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=121304319X00720240410
- ¹⁴ 2024年5月15日「衆議院」国土交通委員会 神津たけし議員:https://www.youtube.com/watch?v=lwuimoUHfyA
- ¹⁵ 2023年2月17日「衆議院」予算委員会 神津たけし議員:https://www.youtube.com/watch?v=Ql5uj7D0pQA
報道資料
- ¹⁶ 第211回国会 衆議院 災害対策特別委員会 第6号:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detailPDF?minId=121104339X00620230602&page=1
- ¹⁷ 〖衆院災害特〗「人命救助を最優先に」小山、神津両衆院議員:https://cdp-japan.jp/news/20240110_7205
- ¹⁸ 【衆院本会議】物流「2024年問題」などの解決に向けて 神津たけし:https://cdp-japan.jp/news/20240321_7504
- ¹⁹ 一般社団法人長野県農業会議 第 104 回常設審議委員会の概要:https://naganokaigi.com/upimg/pho833602.pdf
- ²⁰ 収支報告書 - 長野県:https://www.pref.nagano.lg.jp/senkan/syuushihoukoku/r05/documents/051660.pdf
その他参考サイト
- ²¹ 神津たけし 衆議院議員 on X: "裏金問題。政治資金規正法は改正され…":https://x.com/kozutakeshi/status/1859009883951296783
- ²² 神津たけし 衆議院議員 on X: "政治資金収支報告書にて判明しました…":https://twitter.com/kozutakeshi/status/1761891375812112599
- ²³ 【長野】3区 「ガソリン価格下げないといけない」神津たけし衆院:https://cdp-japan.jp/news/20230803_6557
- ²⁴ 神津たけし 衆議院議員 on X: "YouTube神津たけしチャンネルも要…":https://twitter.com/kozutakeshi/status/1847799904292524040
- ²⁵ 神津たけしチャンネル - YouTube:https://www.youtube.com/@神津たけしチャンネル
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。