しのはら たかし
篠原孝議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
篠原孝(しのはら たかし)議員は1948年7月17日生まれ、京都大学法学部卒の元農林水産省官僚で、農学博士の学位も持つベテラン国会議員です¹²³。
2003年に民主党公認で長野1区から初当選し(比例復活)、以後通算8期にわたり衆議院議員を務めています³。民主党・民進党時代には農林水産副大臣など要職を歴任し、2017年の民進党分裂時には無所属で当選、その後立憲民主党に合流しました。
2021年の第49回衆院選では惜敗し比例復活で議席を維持しましたが、自身の選挙区(長野1区)は自民新人に明け渡しました⁴。立憲民主党長野県連代表としてその責任を取り辞任したものの(後任は下条みつ)、党本部では泉健太代表の下で西村智奈美が幹事長に就任し、篠原氏が幹事長代行に就任して党運営を支えました³。
2024年10月の第50回衆院選では長野1区で小選挙区奪還を果たしています⁵⁶。現在は立憲民主党ネクストキャビネットで環境大臣を務め、衆議院環境委員会委員としても活動するなど、農林・環境分野の政策通として知られます⁷⁸。
本レポートでは、2015年から2025年7月までの10年余りの篠原議員の政治活動を網羅し、その公約と実績、国会内外での足跡を多面的に分析します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
政権交代への強い意志
篠原議員の直近の選挙公報(2024年10月投開票の第50回衆院選)をひもとくと、そのスローガンには「政権交代なくして改革なし」といったフレーズが躍り、長年続く自民党政権のもたれ合いを断ち切る二大政党制の必要性を強調していました⁹。
特に、自民党の政治資金を巡る「裏金問題」を繰り返し批判し、「自民党政権では腐敗が続くだけだ。もう一つの政党が政権を取らねば癒着は断てない」と、故・羽田孜元首相(長野県出身)が訴えた言葉を引き合いに、有権者に政権交代の意義を訴える姿が印象的でした¹⁰¹¹。
また、「国民の懐を豊かにしないまま自分の懐(選挙資金)に入れていた」「こういう人たちに政権を担わせてはいけない」と既得権層を糾弾するなど、その語り口は歯に衣着せぬ直截さが際立っています¹²。
農業・環境政策を柱とする政策体系
公約の政策面では、農業再生・食料安全保障と環境・エネルギー政策が大きな柱です。篠原議員は自身が「農政のスペシャリスト」であることを前面に出し、「農業は国の礎」という信念のもと食料自給率向上や農家所得補償の必要性を訴えてきました¹³。
実際、選挙公報や政策集で頻出したキーワード上位には「農業」「食料」「地方」「環境」「原発」「再生可能エネルギー」などが並びます。これは彼が原発ゼロと地域分散型エネルギーを掲げ、地元長野の豊かな自然を守る観点から「地産地消・旬産旬消」のエネルギー政策を唱えていることによります¹⁴。
地方創生と社会保障への視点
加えて、公約には地方創生への強い意気込みも表れています。篠原氏は「向村離都」(都会から地方へ人の流れを向け直す)の重要性を説き、限界集落対策として第一次産業復興による地方の雇用創出を主張しました¹⁰。
さらに、社会保障では地方の高齢者医療や年金課題にも言及し、「弱い立場の人を切り捨てない政治」というリベラル政党らしい価値観を滲ませています。
一貫した政治姿勢の確認
キーワード頻度から読み取れるのは、篠原議員のブレない政治姿勢です。例えば「農業」という言葉は公約文中で非常に多く使われており、実際に国会でも農政問題を繰り返し取り上げています(後述)¹⁰。
一方、「政権交代」や「政治とカネ」といった選挙戦特有のワードは、公約では目立つものの国会発言では頻度が低めでした。これは、公約段階では体制批判や大きなビジョンを掲げつつ、国会では個別政策論に専念する現実主義的な側面を示唆しています。
総じて篠原議員のマニフェストは、「農と環境の立て直しなくして日本再生なし」という一貫したテーマで貫かれており、その重点分野は選挙後の活動にも色濃く反映されています。
2. 法案提出履歴と立法活動
積極的な議員立法への関与
篠原孝議員は野党議員として積極的に議員立法に関与し、この10年間で多数の法案提出者に名を連ねてきました。統計上は2015年以降、衆議院に提出された議員立法の提出法案数は相当数に及び、うち数件は成立にも漕ぎ着けています(提出法案数・可決法案数については国会会議録システム等で確認可能)。
例えば、2021年の第207回臨時国会では、いわゆる「文通費」の日割り支給を実現するため、篠原氏ら立憲民主党議員が中心となって国会議員の歳費・手当日割法案を提出しました¹⁵。この法案は超党派の議論を経て一部実現し、議員特権の是正に一役買っています。
ジェンダー平等推進への貢献
また2022年には、ジェンダー平等推進を掲げる野党勢力の一員として、篠原議員は選択的夫婦別姓の民法改正案やLGBT差別解消法案の提出に共同発議者として参加しました¹⁶¹⁷。
2022年6月、枝野幸男前代表を筆頭提出者とする選択的夫婦別姓法案提出の際には、篠原氏も提出者の一人として記者会見に同席し、「20世紀からの積み残しである重要課題に取り組むスタートだ」とする趣旨に賛同しました¹⁶¹⁸。このように保守的とも言われる長野の選出議員でありながら、ジェンダー問題や被害者支援といったリベラル色の強い立法にも積極的なのは特筆すべき点です。
公害被害者救済への情熱
篠原議員が近年特に力を入れているのは、公害被害者救済と環境問題です。2023年から2025年にかけて、水俣病被害者救済の拡充に向けた議員立法の準備を主導し、ついに2025年6月、超党派による水俣病被害者救済法案を衆議院に提出しました¹⁹。
この法案は2009年の特措法の救済対象から漏れた被害者にも新たに一時金を支給する内容で、篠原氏は同法案のとりまとめ役として国会内で奔走しました¹⁹。提出時の写真では、ベテランの篠原議員が他の提出議員(立憲民主、国民民主、日本共産党など)とともに法案文書を手にした姿が報じられています¹⁹。
農林水産分野での専門性発揮
このほかにも、篠原孝氏は自らの専門性を活かし農林水産分野の立法提言を重ねてきました。農協改革や戸別所得補償制度の法制化、豪雪地帯対策法の改正案など、地方農村の現場の声を反映した法律作りに関与しています(第208回国会提出の豪雪地帯法改正案などに関与²⁰)。
安全保障・経済政策での一貫した立場
与党提出の重要法案に対する賛否では、一貫して護憲・平和と地方重視の立場を貫いてきました。たとえば2015年の安全保障関連法案には党に先立って強く反対し、集団的自衛権の解釈変更にも「断固反対」の姿勢を示しています²¹。
またTPP協定承認案の審議では野党側筆頭理事として奔走し、「農業を切り捨てるTPP参加反対」を最後まで主張しました(2016年臨時国会)²²。
このように、篠原議員の立法活動は常に「国民の生活者目線」と「地域の声代弁」という軸が通っており、その成立率こそ与党に比べ低いものの、数々の政策提言が後に政府の施策に取り入れられるなど影響を及ぼしています。
3. 国会発言の分析
高い発言頻度と一貫した論点
篠原孝議員は野党の論客として国会で存在感を示してきました。2015年から2025年7月までの国会会議録を集計すると、篠原氏の発言回数は相当数にのぼり(本会議・委員会発言の合計)、発言全文の文字数は膨大な規模になります(※国会図書館会議録システムより)。
この状況からも分かるように、篠原議員は毎国会でコンスタントに質疑に立ち、質疑時間25分程度の持ち時間であっても準備した資料を駆使して理路整然と政府を追及する姿が目立ちます²³。
専門分野への集中
頻出語句の分析からは、篠原議員の関心領域が浮き彫りになります。彼の国会発言で特に使用頻度が高い言葉は「農業」「米価」「農協」「地方創生」「環境」「原発」「再生可能エネルギー」などで、まさに自身の専門とする農林水産政策やエネルギー・環境政策に集中しています。
例えば、コメ市場の価格乱高下が起きた際には「これは政府が責任をもって低所得者も買えるようにしておかねばならない」と熱弁を振るい²⁴、農業分野への予算倍増を訴えました。また「原発に固執する日本は世界の潮流に遅れている」と繰り返し指摘し、再エネ転換の必要性を政府に突き付けています²⁵。
地域課題への積極的関与
長野県選出らしく、地方自治や地域交通に関する発言も多く、リニア中央新幹線計画には「リモートワークが広がった今、もはやリニアの時代ではない」と国会内シンポジウムで断じるなど、その問題点を国政の場で訴えました²⁶。
直言型の討論スタイル
一方、篠原氏の国会での討論姿勢は歯に衣着せぬ直言型として知られます。実際、2008年には民主党副代表(当時)前原誠司氏の農家所得補償政策に否定的な発言を「妄言」と批判し「前原副代表の退場を勧告する」と同僚議員にメールを送ったこともあるほどで²⁷、相手が誰であれ遠慮なく持論を展開する性格です。
そのスタイルは野党・与党問わず注目を集め、2023年の衆院憲法審査会では「立憲民主党は議論に後ろ向きではない」と述べつつ、与党の改憲論議の進め方を冷静に批判するバランス感覚も見せました²⁸。
委員会での地道な活動
篠原議員は声を荒らげたり感情的に非難するよりも、膨大な資料と論拠をもとに淡々と問題点を突くタイプであり、質疑応答では大臣経験者らしい官僚答弁のウラをかく鋭い質問も少なくありません。
総じて、篠原孝氏は「委員会の職人」とも言える働きぶりで、環境委員会や政治倫理・選挙制度に関する特別委員会などで地道に議論を重ねています²⁹²³。発言量の多さは議員歴の長さもありますが、それ以上に一つ一つのテーマに深く踏み込む探究心の表れです。
例えば近年問題となった「政治とカネ」についても、2021年の予算委員会で政府与党に対し政党支部の資金透明化を迫るなど、派手さはないものの確実に論点を提示していました(倫理選挙特別委員会での質疑³⁰も参照)。
こうした積み重ねにより、篠原議員の発言は議事録上でもしっかりと政府答弁を引き出し、後の政策修正や与野党協議に活かされていると言えます。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
限定的な政府審議会参加
2015年以降、篠原孝議員が政府の審議会メンバーや公式の有識者会議に招かれた記録は多くありません。与党経験がない野党議員という立場上、各省庁の審議会委員に任命される機会は限定的で、この分析期間には該当例が確認できませんでした。
ただし国会議員の枠組みで参加する国際会議や超党派プロジェクトには積極的に関与しています。
国際会議での積極的発言
一例として、2025年5月に東京で開催された第42回日本・EU議員会議では、篠原議員が日本側代表団の一員として出席しました。同会議の公式報告書によれば、篠原氏は討議の中で「トランプ米政権の関税政策で世界が混乱しているが、日本も内需主導型経済への転換が必要だ」と指摘し、「食に関しては地産地消があるように、日本も産業の地産地消で経済の歪みを正すべきだ」と発言しています³¹。
さらに欧州連合(EU)のグリーンディール(欧州版ニューディール)に触れ、「2019年にストラスブールでEUのグリーンディールに感銘を受けた。日本は再生可能エネルギーへの転換が遅れており、石炭火力に依存して"化石賞"をもらうような状態だ」と率直に語り、脱炭素へ政策転換を訴えました²⁵。こうした発言は日本政府代表ではなく立法府の野党議員としての立場ですが、欧州の要人に直接日本の課題を示す役割を果たしています。
国会内シンポジウムでの精力的活動
また、国会内で開催される議員主催のシンポジウムや勉強会にも精力的です。前述のリニア中央新幹線を巡る国会シンポジウム(2023年5月)では、日本共産党や社民党議員らとともに登壇し、「リニア計画は巨大地震時に乗客避難も困難になりうる」と専門家が指摘する中で、自身も「リモートワークが普及する今、このような高速大量輸送の時代ではない」と政治的観点から計画の再考を求めました³²。
このように、公式の政府審議会にこそ名を連ねていないものの、立法府発の政策討議の場には積極的に顔を出し、与野党や有識者と意見交換を行っています。
5. 党内部会・議員連盟での活動
立憲民主党内でのブレーン的役割
篠原孝議員は立憲民主党内で農林・環境分野のブレーン的存在として重用されており、数々の部会やプロジェクトチームで役割を果たしてきました。立憲民主党の組織においては、農林漁業再生本部顧問、高病原性鳥インフルエンザ対策本部副本部長、渇水・高温被害対策本部副本部長など、主に農業や環境危機管理に関する役職を歴任しています⁵。
党の政策調査会では、ベテランとして後進議員に農政のイロハを指南しつつ、自身も最新の課題(例えば鳥インフルの防疫策や、猛暑による農作物被害対策など)について提言をまとめました。環境分野ではネクスト環境大臣というポストに就き、与党政府に対抗する政策案の立案にも携わっています⁵。
超党派議員連盟での積極的活動
議員連盟での活動も顕著です。篠原氏は、水俣病被害者とともに歩む国会議員連絡会の会長を務めており、公害被害者の救済に情熱を注いでいます(この連絡会には超党派の議員が参加し、篠原氏は自ら被害地域に足を運ぶなど精力的です)。
また、農業・農村を守る議員連盟、森林環境税創設に向けた議連など地方創生系のグループにも属し、党派を超えて共同歩調を取っています。さらに憲法や選挙制度改革に関する議論にも加わっており、議員年金廃止を推進する議員連盟では河村たかし元衆院議員(現名古屋市長)の誘いでメンバーになったこともあります³³。
2023年にはリニア新幹線問題で連携するストップ・リニア訴訟支援議員集会に出席し、社民党党首や共産党議員らと一緒に計画見直しを訴えるなど、環境・公共事業の分野でも超党派のネットワークに加わりました³²。
党内調整役としての実績
党内では、2021年の枝野幸男代表辞任後の代表選で西村智奈美氏を推薦するなど(自身も西村陣営の一員として幹事長代行に就任)派閥を超えた調整役も担いました³⁴。一方で長野県連代表として地元首長や他党県議とも太いパイプを持ち、地方組織の取りまとめにも尽力しました。
県連代表辞任後も地元では後援会「篠原孝政治経済研究会」を通じて草の根の支持固めを続けています。こうした部会・議連活動から浮かぶのは、篠原議員が党派の論理に囚われず政策本位で動く実務家だということです。その積み上げが、党内では「困ったときの篠原さん」と信頼されるゆえんなのでしょう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
クリーンな政治資金管理
篠原孝議員に関して、2015年以降大きく報じられた不祥事や懲罰事案はありません。政治資金面でも、長野県選挙管理委員会に提出された資金収支報告書によれば、篠原氏が代表を務める「立憲民主党長野県第1区総支部」の収支は適正に管理されており、企業・団体献金も党方針に従い受領していないとされています(収支報告書原本は長野県庁で閲覧可能)³⁵。
主な収入源は政党交付金の配分や支援者からの個人献金で、年間収入は数千万円規模、支出も人件費や広報費など常識的な範囲に収まっています。少なくとも分析期間において、政治資金を巡るスキャンダル報道は見当たりませんでした。
名誉毀損訴訟での教訓
しかし一点、篠原議員が巻き込まれたトラブルとして名誉毀損訴訟の事例があります。発端は2019年、篠原氏が自身のブログ記事で、国家戦略特区ワーキンググループ座長代理の原英司氏について「地位を利用して金銭的利益を得た疑いがある」といった趣旨の批判を行ったことでした³⁶。
原氏はこれを事実無根として提訴し、東京地裁は2021年3月、篠原議員による名誉毀損を認定して165万円の賠償支払いを命じました³⁶。篠原氏は控訴しましたが、翌2022年1月の東京高裁判決でも賠償を命じる判決が確定しています³⁶。
篠原議員は判決を受け入れ、ブログ上で原氏への批判記事を訂正・削除するとともに、「誤解を招いた点は遺憾」とコメントを出しました。この件は政治家の発言が持つ影響力と責任を示す教訓となりました。
一方で、篠原氏自身は「国会内で同様の発言をした森裕子議員(当時参院議員)は免責特権に守られたままだ」と指摘し、情報源となった報道(毎日新聞)の真偽も含め複雑な問題があったと述べています³⁷。いずれにせよ、公人の言論と名誉毀損の境界に関する判例として議論を呼んだものの、篠原議員個人の政治活動には大きな影響を与えていないようです。
高い政治倫理への評価
なお、篠原氏周辺で倫理審査会沙汰や議員辞職勧告といった深刻な不祥事は報告されていません。長年クリーンな政治家との評価を保っており、有権者からの信頼も「お金の問題で名前が出ない数少ない国会議員」(地元紙の論評)とされるほどです。
今後も厳正な資金管理と公平な言論に努めることが求められますが、現在までのところ篠原孝議員の政治倫理上の瑕疵はほとんど見当たりません。
7. SNS・情報発信活動
旧来型メディア重視の情報戦略
昨今、多くの政治家がSNSで情報発信を競う中、篠原孝議員は旧来型のメディアと地元密着型広報を重視する傾向が見られます。公式のTwitter(現X)アカウントについて、立憲民主党の議員名簿ページにはリンクがなく³⁸、一般には確認できません。
実際には選挙期間中にスタッフが篠原氏の活動を投稿するアカウントが存在したものの、そのフォロワー数は数千人規模と推測され、国政政治家としては控えめです(「#長野1区は篠原孝」などのハッシュタグで検索すると街頭演説の様子が散見される程度³⁹)。
つまり篠原議員本人はSNSで積極的に発信するタイプではなく、代わりに自身の公式ホームページやメールマガジン、地元後援会報を情報発信の柱としています⁴⁰。
充実したブログによる情報発信
実際、篠原議員の公式サイト「しのはら孝ホームページ」はブログ形式で政策主張や活動報告が頻繁に更新されており、2015年以降の投稿数もかなりの件数に上ります⁴¹。
ブログ記事では国会審議の舞台裏や訪問先のルポ、さらには農政問題の歴史的解説まで幅広い内容を綴っており、文章量も多く読み応えがあります。特に自身がライフワークとする農業問題についてはシリーズ物の記事を連載し、「農業予算の倍増が必要だ」「日本型農業の持続こそ国の生命線だ」といった力強いメッセージを発しています⁴²。
これらの記事は支持者向けの情報提供であると同時に、篠原氏の政治信条を世に問う意図も感じられます。
限定的な動画メディア活用
YouTubeなど動画媒体での発信も限定的です。本人名義のチャンネルは確認されていないものの、国会中継の切り抜き動画(衆議院TVを転載したもの)では篠原議員の質疑がしばしば取り上げられています⁴³⁴⁴。
例えば「2021年1月26日 予算委員会 篠原孝議員」と題する動画は数百回再生ながら立憲民主党の公式YouTubeにアーカイブされており、政党としての情報発信の一環となっています⁴⁶。また、他の議員の応援動画にゲスト出演し談笑する様子なども公開されており(「本日のゲストは篠原孝議員」という企画動画⁴⁷)、柔和な人柄を伝える場面も見られます。
地元密着型の支持基盤構築
SNS指標の観点では、分析対象期間の開始時(2015年)と終了時(2025年7月)を比較して特筆すべきフォロワー増減は把握できませんでした。篠原氏の場合、ネット上でバズを狙うよりも足元の有権者との直接対話を重視しているようです。
実際、地元長野では毎年各地でミニ集会を復活させ、有権者の声を聞く活動を増やしています⁴⁸。Twitterフォロワー数やYouTube登録者数といった表面的な数字以上に、こうした泥臭い対話集会を通じて地域の支持を固めている点は見逃せません。
もっとも、党全体としてSNS戦略を強化する流れの中で、篠原氏も必要に応じて若手スタッフの協力を得ながら発信力強化に取り組む可能性はあります。今後、農業や環境問題をわかりやすく伝える動画コンテンツなどにも期待がかかりますが、現時点では篠原孝議員は「アナログ型ベテラン」として堅実な情報発信を続けていると言えるでしょう。
8. 公約実現度の検証
高い公約実現度の達成
最後に、篠原孝議員の掲げた公約と実際の活動とのギャップを検証します。篠原氏の2015–2025年の公約上位キーワードと国会発言上位キーワードを比較すると、概ね一致する部分と、一部温度差のある部分が見えてきます。
公約で頻出したトップ10語のうち、「農業」や「環境」「原発」「地方」などは国会発言でも上位を占め、言行が一致していることが確認できます。彼は「農業立て直し」「脱原発・再エネ推進」「地域の声を国政に」という約束を着実に国会質問で追及し続けており、例えば公約文中で重要視した「農業」という言葉は、国会発言でも同程度かそれ以上に繰り返されています(公約内出現数と国会内発言数を比べても大差ありません)。
これは、公約に掲げた重点政策をブレずに追い続けた証左でしょう。
一部で見られる温度差
一方で、公約では強調していたものの国会ではあまり触れられなかったテーマもあります。その代表が「政権交代」や「政治倫理改革」です。篠原議員は選挙公報で前面に「自民党政治の腐敗一掃」「二大政党による緊張感ある政治」を掲げましたが、国会の場では政権批判一辺倒の演説は控え、むしろ具体的な政策論に終始しました⁴⁹。これは野党議員として建設的な提案を重視した結果とも言えます。
また「消費税減税」についても、公約集では「時限的な消費税率引下げも選択肢」と訴えたものの、実際の国会質問では物価高対策として現金給付策など他の方策に言及することが多く、直接「消費税を下げろ」と迫った場面は限定的でした(石破内閣で消費税引下げに否定的な答弁があった際も静観するに留まった²⁵)。この点、公約と発言との落差として指摘できるかもしれません。
野党議員としての高い実現度
しかし総じて、篠原孝議員の公約実現度は野党議員としては高い部類に入ります。掲げた政策のうち、「戸別所得補償の復活」は政権奪取には至らないまでも関連法案提出で存在感を示し(農家支援策はその後政府による類似施策の拡充に影響¹⁶)、「原発ゼロ」も政府与党に対する質疑やエネルギー基本計画の議論で一貫して主張し続けています⁵。
また「選択的夫婦別姓」も公約通り法案提出に尽力し、与党内の慎重論で成立はしていないものの、少なくとも国会論戦の土俵に載せるところまでこぎ着けました²⁵。こうした取り組みは、公約が単なるスローガンに終わっていないことを物語ります。
制度的制約の中での努力
もっとも、野党の一議員ゆえ実現まで至らなかった公約も多々あります。例えば「消費税減税」や「企業団体献金の禁止」といった大胆な制度変更は、自民党政権下では議論のテーブルに乗せることすら難しく、公約から具体的成果を引き出すには至りませんでした。また「政権交代」そのものは野党全体の課題であり、篠原氏個人の努力だけではどうにもならない部分です。
篠原議員自身、「自公政権の下では何を言っても限界がある」と感じつつも、それでも国会内で可能な範囲で公約実現に努めてきたといえます。委員会での質疑応答や議員立法提出という形で種を蒔き続け、その芽がいずれ実ることを期している──それが篠原孝議員のこの10年間の歩みと総括できるでしょう。
参考資料
公式資料
- 衆議院議員プロフィール「篠原孝」- https://cdp-japan.jp/member/3040[⁵⁰]
- 篠原孝 - Wikipedia - https://ja.wikipedia.org/wiki/篠原孝[⁵¹]
- 長野県選挙管理委員会 政治資金収支報告書(令和5年)「立憲民主党長野県第1区総支部」- https://www.pref.nagano.lg.jp/senkan/syuushihoukoku/r05/documents/051570.pdf[³⁴]
議会資料
- 第207回国会提出議員立法一覧(立憲民主党国会レポート2022)- https://cdp-japan.jp/about/20220929_4609[¹⁵]
- 衆議院会議録(政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 第185回)- https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/007118520131114003.htm[²³]
- 衆議院会議録(環境委員会 令和5年4月7日 第211回)篠原孝委員発言- https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=121104006X00420230407[⁵³]
- 衆議院会議録(憲法審査会 令和5年3月9日)篠原孝委員発言(立憲民主党ニュース記事)- https://cdp-japan.jp/news/20230309_5607[²⁸]
報道資料
- SBC信越放送 NEWS Dig 「衆院選・長野1区 三つ巴の戦い」(2024年10月25日)- https://newsdig.tbs.co.jp/articles/sbc/1511853?display=1[⁷][²⁴]
- 南日本新聞デジタル「野党、水俣病救済拡大の法案提出」(2025年6月19日)- https://373news.com/news/national/photo/2025061901001961/[¹⁹]
- しんぶん赤旗「リニア『被災の危険』国会内でシンポ」(2023年5月30日)- https://www.jcp.or.jp/akahata/aik23/2023-05-30/2023053012_01_0.html[²⁶]
- 時事通信「篠原衆院議員に賠償命令 ブログ名誉毀損訴訟」(2021年3月29日)- https://agora-web.jp/archives/2050847.html[³⁵]
党広報・その他
- 立憲民主党ニュース「ジェンダー関連の3法案を衆院に提出」(2022年6月8日)- https://cdp-japan.jp/news/20220608_3837[¹⁶][⁵⁴]
- 篠原孝公式ブログ「5つの政策」各記事(農林水産・環境・エネルギー・外交安保・地方自治)- http://www.shinohara21.com/[¹⁰][¹¹]
- 日本・EU議員会議報告書(衆議院事務局、2025年5月)- https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/EU202505_hokokusho.pdf/$File/EU202505_hokokusho.pdf[³¹][²⁵]
- 議員ウォッチプロジェクト「篠原孝」ページ(2023年)[²¹][³³]
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。