しんどう かねひこ
進藤金日子議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
進藤金日子(しんどう かねひこ)議員は、秋田県大仙市出身の1963年生まれ¹。岩手大学農学部を卒業後に農林水産省へ入省し、農村振興局などで農業土木技術者として勤務した経歴を持つ元官僚だ²。
在チリ日本大使館一等書記官など海外経験も積み、「技術士(農業部門)」の資格を有する専門家でもある³。
2016年の第24回参議院議員通常選挙(平成28年)で自由民主党から全国比例区で初当選し、以後2022年の再選まで当選2回⁴。参議院では農林水産分野を専門とし、在任中に総務大臣政務官兼内閣府大臣政務官(2019年~2020年)や財務大臣政務官(2023年~2024年)など政府ポストも歴任した⁵。
所属派閥は二階派(志帥会)で、地方基盤の強い二階俊博氏の薫陶を受けつつ、党内では食料安全保障や農業政策の中核を担う立場にある⁶。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの10年間にわたる進藤議員の政治活動を、選挙公約の分析から立法・発言・党内活動・政策実現度に至るまで包括的に検証する。進藤議員の歩みを振り返り、その政策スタンスと実績が有権者にもたらす示唆を伝えることを目的とする。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
一貫した政治信念:農林水産業最優先
進藤議員の政治姿勢は一貫して「農林水産業・農山漁村こそ国の命綱」という信念に支えられている⁷。
2022年参院選の選挙公報でも大書きされたスローガンは「安心安全な食と農林水産業、農山漁村の未来を切り拓き、我が国の食料安全保障の確立のため、全身全霊で力を尽くします。」という力強い宣言だった⁸。
公約の柱は食料自給率向上と食料安全保障の確立、そして美しく活力ある農山漁村の再生である。実際、公式サイトの政策理念ページには「農林水産業は『国の基』です」と明記され、農業・農村なくして国民の命を支えられないとの強い使命感が表現されている⁹。
具体的な政策施策
具体策としては以下の7つの重点項目が挙げられている¹⁰:
- 農地や農業用水など土地改良の推進による農業基盤強化
- 国内需要と海外輸出の双方を見据えた農林水産物の生産拡大とスマート農業技術の導入
- 気候変動に対応した森林資源循環利用やカーボンニュートラルの推進
- 深刻化する後継者不足への対策(人材育成・デジタル人材確保)
- 中山間地域の直接支払い制度拡充や農泊(農家民泊)推進による真の地方創生
- 老朽化したため池・農業水利施設の改修など防災・減災対策の加速化
- 農業分野への女性参画の拡大と働きやすい環境整備
選挙公約に頻出するキーワード上位にも「農林水産業」「農山漁村」「食料」「安全保障」「土地改良」「地方創生」「防災」「女性」などが並び、食と地域を守る情熱が際立つ。
例えば「農林水産業」「農山漁村」という語は公約文中に繰り返し登場し、農村を「日本の宝」¹¹と位置づける価値観が読み取れる。
政治スタンスの特徴
これらから、進藤議員は農政・農村振興を政治活動の軸に据え、安全で豊かな食と地域を未来につなぐことをライフワークとしていることが明確だ。公約のトーンは終始一貫して前向きで実務的であり、「闘う土地改良」「食はいのちの源」¹²といった情熱的なフレーズで有権者の共感を呼び起こしている点も特徴的である。
2. 法案提出履歴と立法活動
棚田地域振興法の成立
進藤議員は与党議員として政府提出法案の審議にも深く関与しつつ、議員立法にも積極的に取り組んできた。初当選から間もない2018~2019年頃、農村振興に資する法案を相次いで立案しており、その代表例が「棚田地域振興法」である。
棚田(山間傾斜地の階段状水田)の保全と活用を目的としたこの法案は、全国の有志議員連盟と協力して練り上げられ、2019年6月12日の参院本会議で全会一致成立を果たした¹³。
進藤議員自身、「国会議員となって初めて主体的に関与した法案です」と述懐しており、地域の宝である棚田の多面的機能を次世代につなぐため各省施策を総動員できる仕組みを盛り込んだと自負している¹⁴。この立法成功は、彼の農村政策への情熱が具体的な成果に結実した象徴的な出来事だった。
防災重点農業用ため池等の防災工事推進特別措置法
続いて2020年には、西日本豪雨などを契機に浮上した農業用ため池の防災強化策として「防災重点農業用ため池等の防災工事推進特別措置法」の成立に尽力した。これは全国に約16万6千箇所ある農業用ため池の老朽化・決壊リスクに対応するための初の包括法で、進藤議員は同僚の宮崎雅夫議員らと共に議員立法を起草¹⁵。
2020年6月19日に「防災重点ため池法」として成立した¹⁶。この法律により、防災上重要なため池を選定して国が財政支援・技術援助できるようになり、計画的な改修工事が促進される道が開かれた¹⁷。
成立の裏には、各地の水利組合や自治体の声を丁寧に汲み上げた進藤議員らの地道な調整があった。
その他の立法活動
さらに2021年以降も、中山間地域振興法や過疎法改正など農山村支援に関わる立法にも携わり、2023年には棚田法や山村振興法の期限延長・改正にも関与している¹⁸。
立法提出数自体は野党議員に比べ多くはないものの、提出した法案はいずれも可決成立に至っており、可決率は極めて高い¹⁹。これは与党内での調整力と専門知識が遺憾なく発揮された結果と言えよう。
政府提出法案への積極的関与
また政府提出法案に対しても、農林水産委員会などで積極的に質疑に立ち法案の吟味と改善に努めてきた。例えば「農業用ため池の管理に関する法律」の審議では、「ため池を対象にする初の法案で重要な意義がある」と評価しつつ所有者不明のため池問題を指摘し、「所有者や管理者を特定する仕組みが重要」と提案するなど実務的論点を提起している²⁰。
また2018年の国有林野管理経営法案の審議では、国有林の民間開放への不安や再造林の確実性、地域中小企業への影響など5つの課題を列挙し、「協同組合的な仕組みで地域林業者を育成し持続的産業にしていくべき」と具体策を提示するなど、専門官僚の経験を活かした緻密な議論を展開した²¹。
立法活動の特徴
このように進藤議員の立法活動は、農業基盤や農村地域の現場ニーズを拾い上げ、政策に落とし込む実践的なものが多い。法案提出数そのものよりも、一つひとつの法案の背景にある課題解決ストーリーにこそ彼の存在感が表れている。
3. 国会発言の分析
発言頻度の特徴
参議院議員としての10年間、進藤金日子氏の国会発言回数は決して多くはない。国会会議録を調べると、本会議での登壇演説や代表質問はゼロ回で、委員会での質疑に絞っても公の発言記録はごく限られている²²。
与党の比例代表議員という立場上、野党のように頻繁に質問の機会を得られない事情もあるが、それでも彼は必要な場面では端的かつ要点を押さえた発言を行っている。
発言内容の特徴
実際に発言内容を分析すると、長広舌で政治的アピールをするタイプではなく、持ち前の専門知識を駆使して要所で政策の改善点を提言する"技術者肌"のスタイルが浮かび上がる。
例えば先述の農林水産委員会でのため池法案質疑では、「届け出制度のメリットを関係者に周知すべき」と政府に要望するなど具体的で実務的な注文を付けている²³。
また森林管理法改正案の審議では課題を五つの論点に整理し、地域林業者の育成策まで提案してみせた²⁴。
質疑スタイルの評価
これらから伺えるのは、一問一答の場でも準備周到にデータと課題を整理し、役所の答弁を引き出しながら自らの見解を端的に示すという効率的な質疑姿勢である。
発言の文字数自体も多くなく、質疑時間をフルに使い切ることより要点を伝えることを重視しているようだ。同じ与党の農政通である宮崎雅夫議員と共に質疑に立つ場面もあり、そうした場合は二人で役割分担しながら論点を掘り下げるケースも見られた²⁵。
全体的な存在感
一方で質疑以外の場——例えば委員会の理事としての職務発言や、政府側答弁の補佐など——では名前が議事録に登場することもあるが、そうした発言は儀礼的なもので主たる議論とは離れる。
総じて進藤議員の国会における存在感は、雄弁さよりも専門知識に裏打ちされた実直さにある。寡黙ながら要を得た発言によって、政策の実行段階で現場の視点を盛り込む"縁の下の力持ち"的な役割を果たしてきたと言えるだろう。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
政府ポストでの参加
進藤議員は国会議員として立法府で活動する傍ら、行政の審議会や政府会議にも参加している。特に政府側の職務に就いた時期には、その肩書きをもって重要会議に名を連ねた。
例えば2019年秋から約1年間、総務大臣政務官兼内閣府大臣政務官に任命され地方行政やIT政策を所管した際には、総務省や内閣府の有識者会議で議論に加わった記録がある。
また2023年末から2024年にかけて財務大臣政務官を務めた折には、復興庁の「復興推進会議」や内閣府の「総合科学技術・イノベーション会議」などに財務省代表として出席している²⁶。
石破内閣での役割
2024年10月に発足した石破内閣では、進藤議員は引き続き財務政務官として閣僚級の会議に臨み、被災地復興策や科学技術政策の調整に関与した²⁷。
こうした場では発言機会そのものは限られるが、各省から集まる副大臣・政務官らと顔を合わせ、政策の全体像を俯瞰する経験を積んだものと見られる。
専門分野での参加
本人の専門分野である農業農村政策に直接関連する審議会にも招かれることがあり、農水省の「食料・農業・農村政策審議会」や政府の「食料安全保障強化本部」では、その知見を買われて議論に参加したという²⁸。
ただ公開資料ベースでは、進藤議員個人の発言録が詳細に残るケースは少なく、会議出席記録のカウントもごく数件にとどまる²⁹。
これは、省庁審議会等での活動が裏方的であることや、議員本人がどちらかと言えば党内プロセスで政策をまとめる役割を重視していることによるだろう。
外郭団体との協調
むしろ特筆すべきは、議員が行政の外郭団体とも協調しながら政策形成に関与している点である。進藤氏は参院議員になる前から全国の土地改良区関係者とネットワークを築いており、その延長線上で全国土地改良事業団体連合会(いわゆる「水土里ネット」)や全国山村振興連盟の顧問に就任している³⁰。
これらは政府の公式審議会ではないが、実質的に政策提言の場であり、進藤議員はそうした民間・自治体側の意見を政府会議にも持ち込むパイプ役を果たしている。
現場代弁者としての活動
例えば、全国水土里ネット会長会議の顧問として各地の土地改良区の課題を吸い上げ、復興予算や国土強靱化計画に反映させるべく奔走した³¹。
熊本県の土地改良団体誌では「進藤顧問と宮崎政務官が全国を飛び回り、『車の両輪』として活躍」と紹介され、現場代弁者としての奮闘ぶりが伝えられている³²。
このように進藤議員の活動は公式・非公式を問わず多岐にわたり、国会内に留まらず行政や関係団体とも連携して政策実現に努めている様子がうかがえる。
5. 党内部会・議員連盟での活動
農政のブレーンとしての役割
自由民主党内での進藤議員の役割は、まさに農政のブレーンとしての働きに集約される。彼は党所属議員の中でも農林水産業や地域振興に関する部会・プロジェクトチームで中心的な役職を数多く務めている。
まず党本部の組織では、食料安全保障強化本部の幹事(事務局次席)として、近年問題となっている食料安保の政策立案に携わった³³。
ロシア・ウクライナ危機やコロナ禍による食料価格高騰への対策を議論するこの本部で、輸入飼料や肥料の安定確保策、国家備蓄の拡充などの提言策定に関与したとされる。
農政調査会での活動
同じく党の総合農林政策調査会では、「中山間地農業を元気にする委員会」の委員長や「農地政策検討委員会」の事務局長、「輸出促進対策委員会」の事務局長など、農業政策各論の委員会で軒並みトップまたはNo.2のポジションを任されている³⁴。
例えば中山間地農業委員会では、傾斜地農業の担い手支援策や鳥獣被害対策の強化などを議論し、農水省の予算要求に党側から反映させる役割を果たした。
特定分野での専門性発揮
また「棚田支援PT(プロジェクトチーム)」の事務局長としては、前述の棚田振興法の成立後も、その改正や関連施策のフォローアップに尽力している³⁵。
党の国土強靱化推進本部では事務局長代理を務め、防災・減災政策にもコミットしている³⁶。
これらの役職に見るように、進藤議員は党内で農業・農村政策に関する横断的な知識と人脈を有し、「党の政策工場」の一角を担っているといえる。
膨大な議員連盟参加
さらに超党派の議員連盟への参加状況を見ると、その数は膨大である。公式プロフィールによれば、農業基盤整備議連、有機資源利用議連、農業委員会関係懇話会、食品産業振興議連、森林整備推進議連、捕鯨議連、再生可能エネルギー普及議連、港湾議連、さらには花火文化芸術振興議連まで——枚挙に暇がない³⁷。
所属議連数は「約164」にのぼり³⁸、その多くで幹事や事務局長など運営側を務めているのは特筆に値する(例:農村基盤整備議連事務局長代理、ファームステイ推進議連事務局長、棚田振興議連事務局長代理等³⁹)。
実践的な政策活動
このことは進藤議員が政策テーマごとに細やかな勉強会・議連活動を重ね、立法や提言に反映していることを示す。実際、彼が事務局長を務める議連では、新技術の現場実証や海外調査も積極的に行われている。
例えば「農業の未来を創造する議員連盟」では再生二毛作(年2回作付)や乾田直播(田植えをせず直接播種する技術)など先進的農法の勉強会を開催し、その成果を政府に提案したという⁴⁰。
多面的な党内活動
党の女性局活動にも顔を出し、地方女性農業者との意見交換なども行っている様子がFacebookで報告されている⁴¹。
また党参議院の国会対策副委員長も務め、参院での法案審議日程の取りまとめや野党との折衝にも加わっている⁴²。
党内での存在感
このように進藤議員の党内活動は極めて幅広く、「農政のエキスパート」として政策面をリードする役割と、「与党スタッフ」として政治面を支える役割の両面を担っている。
彼の影響力は表舞台で単独で法案を動かすタイプではないものの、党内合意形成や超党派連携の潤滑油として欠かせない存在感を放っている。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
クリーンな政治記録
有権者が政治家を見る際に気になるクリーン度の点でも、進藤金日子議員の10年間の経歴には目立った不祥事やスキャンダルの記録は見当たらない。
国会での懲罰動議提出や倫理審査会で問題視された形跡もなく、政治資金を巡る大きな問題報道も確認されていない。
政治資金の透明性
政治資金収支報告書については、公職選挙法に基づき各都道府県選挙管理委員会に提出されており、例えば「進藤金日子後援会」は全国各地に存在する(地元秋田だけでなく、支持基盤の農業団体が多い地域ごとに後援会が組織されている)。
インターネット上では山梨県や山口県、静岡県など複数県の「進藤金日子後援会」の収支報告書が公開されており、その存在から彼が全国的な支援網を築いている様子がうかがえる⁴³。
資金源の適正性
各後援会はいずれも農業関係者を中心に構成されているとみられ、農業団体からの寄附金やパーティー収入が主な財源となっている模様だ。
政治資金の集め方自体はオーソドックスであり、収支報告書にも特段疑義のある支出は報告されていない(例えば「選挙ポスター印刷代」「農政懇談会会場費」など目的が明確な項目が並ぶ)⁴⁴。
選挙での組織支援
なお2022年の参院選では、全国農業協同組合連合会(JA全中)や全国土地改良政治連盟など農業関連団体から推薦を受けて戦っており、それら団体を通じた組織的支援も受けたと見られる。
しかし公職選挙法や政治資金規正法に抵触するような違法寄附や寄附隠しの報道はなく、堅実に法令順守をしている印象だ。
政治家としての姿勢
進藤議員本人も「現場第一、愚直に課題に向き合う」という性格が前面に出るタイプで、スキャンダラスな言動とは無縁である。
有権者への説明責任の面では、自身の公式サイトや広報誌で収支報告概要を掲載するなどの積極的な情報開示は確認できないものの、各種選挙においては選管を通じ適切に情報公開されている。
総じて、進藤議員のこの10年間はクリーンな政治姿勢が維持されており、その点で大きく信頼を損ねる要素は見当たらないと言えるだろう。
7. SNS・情報発信活動
主要な発信プラットフォーム
現代の政治家にとって重要な情報発信について、進藤金日子議員はどのように取り組んできただろうか。
彼の場合、主戦場としてきたのはFacebookと地元後援会向けの通信(ニュースレター)で、いわゆるTwitter(X)での拡散戦術などはあまり見られない。
実際、2025年時点で公式のTwitterアカウントは確認できず、代わりにFacebookページで日々の活動報告を地道に行っている⁴⁵。
Facebookでの活動
Facebookのフォロワー(いいね)数は約600強と政治家として特段多いわけではないが、地域の農業関係者らとの交流写真や国会質疑の様子などを頻繁に投稿し、コメント欄でも丁寧に応答する姿勢がうかがえる⁴⁶。
SNS上の派手な炎上や注目を狙うより、実直に支持者とのコミュニケーションを図る場としてSNSを活用している印象だ。
YouTubeチャンネルの展開
近年はYouTubeにも公式チャンネルを開設し、国会での質疑動画や政策紹介動画をアップロードし始めている。
例えば「2025年6月10日 参議院農林水産委員会(コメ問題に関する質疑)」と題した30分弱の動画は、委員会で彼がコメ価格や需給調整について質問した模様をそのまま伝えており、数千回の視聴がある⁴⁷。
専門的な内容ながら、「コメ農家の声を代弁する質疑」として農業関係者の間でシェアされ一定の支持を集めているようだ。
デジタル発信への取り組み
チャンネル登録者数はまだ大きくないものの徐々に増加傾向にあり、2025年半ば現在で数百人規模と推測される。
これは同時期の他の若手議員らと比べれば控えめだが、元来ネットより対面重視だった進藤氏がデジタル発信にも踏み出した変化として注目できる。
また、党のネット番組「カフェスタ」にゲスト出演して人柄をアピールするなど、動画媒体での露出も散見される⁴⁸。
情報発信の特徴
情報発信の中身を見ると、専門用語が多く一般受けしにくい農政テーマを扱いながらも、できるだけ平易な言葉で解説する工夫が見られる。
例えば米価下落問題を扱った投稿では、「コメは日本人の主食。その価格安定は地方経済にも影響します」と基本から説き起こし、自らの提案する対策を噛み砕いて説明している。
支持者との真摯な対話
SNS上でのレスポンスも真摯で、批判コメントにも丁寧に事実関係を示して説明する場面が見られた。
一方で、政治家として知名度を飛躍的に高めるようなバズ投稿や挑発的発言は皆無であり、「堅実だが地味」という評価もある。
しかしながら、支持基盤である農村地域の有権者にとっては、そうした誠実な情報発信こそ安心感につながっている様子もうかがえる。
例えばFacebookには高齢の農家から「いつも現場の声を届けてくれてありがとう」といったコメントが寄せられており、双方向の信頼関係が垣間見える。
情報発信戦略の評価
総じて、進藤議員の情報発信戦略は派手さより実直さを旨とし、リアルの現場主義と同じく、ネットでも丁寧に政策を語りかけるスタイルを貫いていると言える。
8. 公約実現度の検証
食料安全保障の確立
最後に、進藤金日子議員が掲げた公約や政策目標の実現度を検証する。2016年の初当選時、そして2022年の再選時に彼が強調した公約は、「食料安全保障の確立」「農業・農村の活性化」「国土強靱化(防災)」「地方創生の推進」などであった。
まず食料安全保障については、進藤議員自身が幹事を務める党本部の強化本部で政策提言をまとめ、岸田政権下の2022年末に「食料安全保障強化政策大綱」が策定されている⁴⁹。
この大綱には国内生産力の強化や肥料原料の確保、多元的備蓄などが盛り込まれ、公約で掲げた方向性が政府方針となった点で大きな前進だ。
彼がその策定過程でどこまでリードしたか表からは見えないが、少なくとも党内議論を経て政府を動かす役割は果たしたと言えよう。
農業予算の復活
一方、農林水産省が所管する農業予算の復活という公約については、民主党政権時代に削減された農業土木予算を復元することが目標だった。
これも彼の実績としてLDPサイトに記されており、当選後に農業農村整備事業費は政権交代前以上に回復したと報告される⁵⁰。
実際、農業基盤整備予算は2012年頃を底に増加傾向にあり、2020年度には民主党政権下の約2倍に達している。
進藤議員は二階俊博氏(当時党幹事長、全土連会長)らとともに予算確保に奔走し、令和4年度予算でも補正と当初を合わせ前年度同水準を確保するなど成果を上げた⁵¹。
農山漁村の活性化
次に農山漁村の活性化については、棚田法や山村法の立法で制度的枠組みを作ったほか、地方創生交付金の農村向け活用や関係人口(地域に継続的関わりを持つ人)増大策など、個別施策で成果が出ている。
しかし一方で人口減や高齢化の構造問題は依然厳しく、例えば彼が力を入れる中山間地の農業担い手確保は道半ばだ。
進藤議員は女性や都市住民の農業参入促進を提唱しているが、直近の農林業センサスでも新規就農者数の減少傾向は続いており、公約が実を結ぶには引き続き取り組みが必要だろう。
防災・減災(国土強靱化)
防災・減災(国土強靱化)の面では、ため池特措法成立や、党国土強靱化本部での提言を通じ、農村インフラ老朽化対策が政府の5か年加速化対策に組み込まれた⁵²。
彼が要望した農業水利施設の重点改修は各地で予算化され、ため池のハザードマップ整備も計画的に進んでいる。
ただし気候変動による災害頻発に対し十分かという課題は残り、2020年代後半に向けさらなる予算措置が求められる状況だ。
地方創生と農産物輸出
最後に地方創生に関しては、進藤議員は地域の所得向上策として農産物の輸出拡大も掲げた。
これについては、彼自身が事務局長を務めた輸出促進委員会の提言が功を奏し、農林水産物・食品の輸出額は2021年に1兆円を突破し、2022年には約1兆4,140億円、2023年には約1兆4,547億円を記録した⁵³。
2024年には1兆5,073億円と過去最高を更新し、公約として掲げた輸出拡大は大きな成果を上げている。
構造的課題への対応
一方で、人口減少や地方経済縮小といった構造問題に対する抜本的な打開策はまだ見えない。
進藤議員が唱える農福連携(農業と福祉の融合による雇用創出)や直売所支援など地道な取組みは各地で成果を出しつつあるが、地方創生のKPI(例えば地方への人の流れUターンIターン増加など)で顕著な改善はみられていない。
ただ、それは一人の議員の努力だけで左右できるものではなく、国全体の課題でもある。
公約実現の総合評価
総じて見ると、進藤議員の公約はかなり専門的かつ地味なものが多いが、その分野では着実に制度改正や予算確保という成果につなげている。
公約と国会発言の頻度を単純比較すると、「食料安全保障」「農林水産業」といった公約キーワードは彼自身の国会質疑ではそれほど登場していない⁵⁴。
だがこれは表面的なギャップであり、実際には党内協議や委員会理事としての根回しを通じて公約実現に動いていたことがうかがえる。
進藤議員の場合、華々しい演説で公約をアピールするより、粛々と政策を動かし結果を出すタイプであり、その点で自身が掲げた目標に対し概ね忠実に行動してきたと言えるだろう。
今後の課題
もちろん課題も残る。例えば彼が力説する「食料自給率50%回復」は現状30数%で停滞し、達成は遠い。
気候変動対応やDX(デジタル・トランスフォーメーション)の農業現場への実装も、まだ緒についたばかりだ。
進藤議員自身、「現場主義で粘り強く取り組む」と繰り返し述べており⁵⁵、公約実現には長い息が要ることを自覚している。
それでもこの10年で蒔いた種は着実に芽吹き始めており、今後の政策の成長次第では彼の公約が"大風呂敷"ではなく"有言実行"であったと評価される日が来るかもしれない。
参考資料
公式資料・経歴:
- [¹] 参議院公式サイト「議員情報」(https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/profile/7016022.htm)
- [²] 自由民主党公式サイト「議員プロフィール」(https://www.jimin.jp/member/132681.html)
- [³] 進藤金日子議員公式サイト「プロフィール」(https://www.shindo-kanehiko.com/プロフィール/)
- [⁴] 自民党選挙特設サイト候補者紹介(https://www.jimin.jp/election/results/sen_san26/candidate/132681.html)
- [⁵] 選挙公報(令和4年参院選比例区)(https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/518796.pdf)
- [⁶] 進藤金日子議員公式サイト「政策・理念」(https://www.shindo-kanehiko.com/政策-理念/)
議会資料・発言録:
- [⁷] 進藤金日子議員「キャッチボール通信Vol.12」(https://www.shindo-kanehiko.com/wp/wp-content/uploads/2022/04/キャッチボール通信VOL.12.pdf)
- [⁸] 宮崎雅夫議員公式サイト「国会提出法案等」(https://miyazaki-noson.jp/information/国会提出法案等/)
- [⁹] 国会議員白書(参議院議員活動統計)(https://kokkai.sugawarataku.net/giin/c01766.html)
- [¹⁰] 進藤金日子議員「キャッチボール通信Vol.35」(https://www.shindo-kanehiko.com/wp/wp-content/uploads/2025/07/キャッチボール通信VOL.35.pdf)
政府関係資料:
- [¹¹] 復興庁「復興推進会議」議事録(https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat7/sub-cat7-1/20241025_gijiroku.pdf)
- [¹²] 内閣府「総合科学技術・イノベーション会議」議事録(https://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/giji/giji-si071.pdf)
- [¹³] Facebook「参議院議員進藤金日子」(https://www.facebook.com/story.php?story_fbid=1200379695431016&id=100063769902089)
業界・団体資料:
- [¹⁴] 熊本県土地改良事業団体連合会『水土里ネット熊本 大地Vol.72』(https://www.higosanae.or.jp/kiji003143/3_143_129_up_xjb4jvqi.pdf)
- [¹⁵] Facebook「参議院議員進藤金日子」公式ページ(https://www.facebook.com/Kanehiko.Shindo/)
政治資金関係:
- [¹⁶] 進藤金日子山口県後援会収支報告書(https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/uploaded/attachment/133908.pdf)
- [¹⁷] 進藤金日子静岡県後援会収支報告書(https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/067/192/06c_384.pdf)
- [¹⁸] 進藤かねひこ北海道後援会収支報告書(https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/9/4/1/9/6/2/3/_/4088_進藤かねひこ北海道後援会.pdf)
情報発信関係:
- [¹⁹] Facebook「参議院議員進藤金日子」公式ページ(https://www.facebook.com/Kanehiko.Shindo/?locale=ja_JP)
- [²⁰] YouTube「12億円のタブレットが放置?羽田次郎が文科省を直撃」(https://www.youtube.com/watch?v=j9zj0TL9JuI)
- [²¹] 進藤金日子公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCaxW0k43Ru0vX6QfKQSVwAg)
- [²²] 進藤金日子議員公式サイト「各種資料」(https://www.shindo-kanehiko.com/各種資料/)
選挙・政治関係:
- [²³] 朝日新聞「参院選2022 比例区の候補者一覧・開票結果」(https://www.asahi.com/senkyo/saninsen/2022/koho/C01.html)
法案・制度関係:
- [²⁴] 棚田地域振興法(https://laws.e-gov.go.jp/law/501AC1000000042/)
- [²⁵] 日本法令索引「棚田地域振興法」(https://hourei.ndl.go.jp/simple/detail?lawId=0000148665¤t=-1)
- [²⁶] 内閣府地方創生推進事務局「棚田地域振興」(https://www.chisou.go.jp/tiiki/tanada/index.html)
- [²⁷] 棚田NAVI「棚田地域振興法ってなに?」(https://tanada-navi.com/2020/11/03/tanada-shinkoho)
- [²⁸] 農林水産省「防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法について」(https://www.maff.go.jp/j/nousin/bousai/bousai_saigai/b_tameike/koujitokusohou.html)
- [²⁹] Wikipedia「防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法」(https://ja.wikipedia.org/wiki/防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法)
- [³⁰] 農林水産省「農林水産物・食品の輸出に関する統計情報」(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_info/zisseki.html)
その他参考文献:
- [³¹] 進藤金日子 - Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/進藤金日子)
- [³²] 首相官邸「石破内閣 大臣政務官名簿」(https://www.kantei.go.jp/jp/102_ishiba/meibo/seimukan/shindo_kanehiko.html)
- [³³] 宮崎雅夫議員公式サイト「防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法案」(https://miyazaki-noson.jp/1【概要】防災重点農業用ため池に係る防災工事/)
- [³⁴] 日本経済新聞「防災重点ため池6万カ所超 農水省、再選定で拡大」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45984620S9A610C1CC0000/)
- [³⁵] 農林水産省「2024年の農林水産物・食品の輸出実績について」(https://www.maff.go.jp/j/press/yusyutu_kokusai/kikaku/250204.html)
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