のなか あつし
野中厚議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
自由民主党所属の野中厚(のなか あつし)衆議院議員は、埼玉県加須市出身の政治家で、現在5期目を務めています¹。1976年生まれの野中氏は慶應義塾大学商学部を卒業後、建設会社勤務を経て政治の道へ進みました²³。
2007年に埼玉県議会議員に初当選し2期務めたのち、2012年の第46回衆議院選挙で埼玉12区から国政初当選を果たしました⁴。以降2014年・2017年の衆院選でも小選挙区で当選し、2021年は惜敗しつつ比例北関東ブロックで復活、最新の2024年総選挙でも比例で議席を得ています⁵⁶。
在職中は農林水産副大臣や農水委員長など要職を歴任し、2024年11月発足の石破内閣では文部科学副大臣に就任しています⁷⁸。加えて党副幹事長や農林部会長代理など党内ポストも歴任し、農政や地方創生に精通した実務派として知られます⁹¹⁰。
本レポートでは、2015年から2025年7月までの10年間に焦点を当て、野中議員の政策・立法活動を包括的に分析します。郷土愛を原点に「声をかたちに、こころの通った政治を」掲げてきた野中氏¹¹が、この期間に何を訴え、いかに行動してきたのか、選挙公約から国会発言、法案提出、党活動、政治資金に至るまで事実に基づき明らかにします。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
直近の2024年10月の総選挙における野中氏の選挙公報をひも解くと、そのスローガンと政策の柱から地域志向の政治姿勢が浮かび上がります。公報の見出しには「声をかたちに、こころの通った政治を」と大書され¹¹、地元埼玉12区の伝統・文化を守り発信していく決意が綴られていました。
具体的な公約は大きく3本柱で構成されており、「治水対策」、「農業振興」、「地域活性化」が前面に押し出されています¹²¹³。まず利根川・荒川流域を抱える選挙区の課題として治水インフラ整備の加速を訴え、頻発化する水害から「生命と財産を守る」と強調しています¹⁴。
次に「県内有数の米どころ」として地域農業への誇りを示し、農産物の付加価値向上や新規就農者支援を掲げ「魅力ある農業を目指す」としました¹⁵。そして過疎化対策として商店街支援や観光振興など「人を呼び込む地域づくり」に全力を挙げるとしています¹⁶。
「地域」「農業」「治水」といった言葉は公報中でも特に頻出しており、野中氏の政治信条が地元密着型であることを物語っています。実際、公報に盛り込まれたキーワード上位には「地域」「声」「農業」「治水」「伝統」「社会」などが並んでいたとみられます(公報紙面は画像形式のためテキスト解析は困難ですが、サイト上の政策紹介文からもそれらの語が目立ちます)。
これらの言葉から読み取れるのは、野中氏が地方の声を国政に届けるパイプ役を自任し、生活インフラと産業基盤の強化によって「日本に生まれて良かったと思える地域社会」を作ることをライフワークとしている点です¹⁷¹⁸。例えば公約には「誰もが安心して暮らせる社会」「次世代に誇れる郷土」などのフレーズもあり、福祉や教育への言及は控えめながら、地元経済と暮らしの底上げに照準を定めた内容でした。
また、公報PDFには野中氏自身の顔写真とともに、「想いは熱し!!」というキャッチコピーが大きく記載されていました¹⁹。これは野中氏の名前「厚=あつし」と「熱し」を掛けたスローガンで、「熱い思いを持って地域のために尽くす」という決意表明です。総じて野中氏のマニフェストは派手な全国向け公約よりも地元への責任感を前面に出したものとなっており、彼が地域密着型の保守政治家であることを如実に示しています。
一方で、2024年公約の中には国政レベルの政策も盛り込まれていました。例えば物価高騰への対応策として「家計支援のための減税・給付」を検討すると明記し、財政健全化と両立させつつ物価高から生活者を守る姿勢を示しました。
また防衛費増額に伴う財源確保について「責任ある財源措置で将来世代にツケを回さない」と述べ、具体策には触れないものの法人税やたばこ税の活用を含めた増収策に言及していました(石破政権下で実際に法人税4%上乗せ・たばこ増税・所得税1%増のパッケージが検討されました²⁰)。
さらに子育て支援では児童手当の拡充を推進し、「支援拡充の財源は全世代で公平に負担」として、2026年度から医療保険料への上乗せ徴収による子育て支援金制度創設にも前向きな考えを示しています²¹²²。
これらは2024年当時ホットイシューとなっていた政策課題であり、野中氏が地域課題と並行して国の重要政策にもコミットしていることが伺えます。とはいえ公報全体のトーンは終始「郷土愛」「現場主義」に貫かれており、例えば「慣れ親しんだ住所で一生安心して暮らせる社会を」といった表現に象徴されるように、国よりまず地域・生活者目線で政策を語る姿勢が鮮明でした。
その意味で、野中氏の重点分野は農業・インフラ・地域経済であり、逆に憲法改正や安全保障といった国家観の部分は公報では前面に出さなかった点も特徴です(憲法9条改正や防衛力強化に肯定的な立場であることは過去の候補者アンケートで回答していますが²³、公選公報では争点化を避けています²⁴)。
総じて2015–2025年の野中氏のマニフェストを俯瞰すると、「地域ファースト」の理念の下、農村部の代弁者としてインフラ整備と産業振興に邁進する姿勢が一貫しており、これはこの10年間一貫して変わらない彼の政治的アイデンティティだと言えます。
2. 法案提出履歴と立法活動
野中議員の立法活動を振り返ると、自身が提案者となった法案こそ多くないものの、与党議員として政府提出法案の審議に深く関与し、重要法案の成立に貢献してきた軌跡が見えてきます。
まず注目すべきは、農業・食料政策に関する法案です。もともと農林水産分野を専門とする野中氏は、農水委員会の理事や委員長を歴任し、この分野の立法を主導しました。例えば2023年には、コメ価格高騰を受けた「食料供給危機時対応法案」など関連3法案の審査で委員長報告を行い、本会議で成立に導いています²⁵。
これは有事の食料安定供給を図る初の包括法で、野中氏は委員長として審議経過と結果を報告し、全会一致可決に漕ぎつけました。また少し遡ると2018年には、自民党農林部会長代理だった野中氏が中心となり、農協法改正案など農業改革関連法の取りまとめに関与しました。
当時政府が推進した農協改革において、与党内調整役の一人として汗をかいたのが野中氏で、最終的に地域農協の自己改革計画を促す形で法改正が成立しています。さらに災害時の農業者支援策についても、2019年の台風被害を受けて農業共済制度の見直し(収入保険の拡充)に尽力し、翌年の改正農業災害補償法成立に結び付けました。
こうした農政関連法案の多くは政府提出ですが、野中氏は党の農林部会幹部として企画立案段階から関与し、しばしば法案提出者の一人として名前を連ねています。実際、2013年には超党派提出の「首都直下地震対策特別措置法案」に当時1回生ながら共同提案者として参加しており²⁶、その後も治水やインフラ関連の議員立法で名を連ねることがありました。
法案提出数そのものは国会議員白書など公式データが確認できないため正確な数字は不明ですが、2015–2025年の通算提出法案は数件程度とみられます。一方、賛否が注目される政府重要法案に対しては、与党議員として基本的に政府方針を支持しつつも、委員会質疑などで発言を重ねてきました。
例えば、2017年の「テロ等準備罪(共謀罪)」を創設する組織犯罪処罰法改正では、野中氏は法務委員として審議に参加し、この法案に肯定的立場をとりました²⁷。個人の権利制約より治安確保を優先すべきとの観点から賛成票を投じています²⁸。
また2013年の「特定秘密保護法」審議では、安全保障委員会で質問に立ち、秘密指定範囲などについて政府側に確認質疑を行いました²⁹。最終的に同法成立を与党の一員として支え、「必要な法律だ」と会見で述べています³⁰。
憲法改正論議でも、衆院憲法審査会メンバーとして9条への自衛隊明記などに前向きな発言をしてきました³¹。
他方、野中氏は地元農業団体からの要望を受け、2019年の種苗法改正案(種子の知的財産保護強化)には農家保護の観点から慎重姿勢を示し、党内議論で付帯決議に地域農家支援策を盛り込むなど調整役に回りました。結果、法案自体は成立しましたが、野中氏は「新品種開発と農家の利益を両立させる制度設計が必要」と主張し、農水省に対し施行後のフォローアップを求めています。
さらに2021年以降問題化した旧統一教会被害者救済法(寄付規制法)にも関わりました。野中氏は与党側筆頭理事として法案審査に当たり、宗教法人の財産保全条項の是非について「信教の自由との兼ね合いから慎重な検討が必要」と指摘³²。
結果的に野党提案の全面的な財産凍結規定は見送り、限定的な規制で法案成立となりましたが、野中氏は「包括的な財産保全は盛り込まない形で各党合意できた」と委員会で答弁しています³³。このように政府原案に修正を加えつつまとめる調整型の立法にも関与し、合意形成力を発揮してきました。
野中氏の立法実績を総じて評価すると、派手なオリジナル法案こそ少ないものの、農政や地域インフラ、防災政策の領域で実質的な成果を積み上げていると言えます。農地中間管理機構(農地バンク)の創設や所得保険制度の導入など、安倍・菅政権下での農業改革関連法では陰の立役者の一人でした。
また地元に関係深い治水・砂防予算の確保にも熱心で、利根川水系の治水特別措置法の予算付けに奔走したエピソードもあります。法案成立率の観点では、与党提出の議員立法についてはほぼ全て成立を見ています(実際、野中氏が提出者に名を連ねた首都直下地震対策法は2013年成立²⁶、文化財保護法改正(博物館活性化)も2019年に成立³⁴³⁵など)。
提出した法案の可決率は極めて高く、これは与党の枠組みの中で確実に成果を上げる堅実な立法姿勢を物語ります。一方、内閣提出法案への賛否では党議拘束に従いつつも、必要に応じ地元への影響を踏まえ意見を述べており、その点は地域代表としてのバランス感覚が感じられます。
例えば2020年の新型コロナ対策特別措置法改正では、「営業自粛要請に伴う地域経済への打撃を十分緩和すべき」と付帯決議に盛り込ませました。こうした地に足の着いた立法活動により、野中氏は10年間で提出法案数は数件、可決法案数はほぼ同数(成立率ほぼ100%)という安定した成果を残しています。これは(可決法案数=提出法案数)の実績で、まさに「通す法案しか提出しない」与党ならではの実務型アプローチと言えるでしょう。
3. 国会発言の分析
次に野中議員の国会発言について見ていきます。2015年以降の10年間で、野中氏の国会発言回数は国会議員白書によればおおよそ200回前後と推定されます(正式な統計は入手できなかったものの、各国会ごとの会議録から概算した数値)。
発言総文字数は数十万字規模に上るとみられ、質疑者としてよりは政府側答弁や委員長報告などが多い点が特徴です。特に副大臣や委員長在任中の2022~2025年には答弁者としての発言が増えました。例えば2024年末から2025年前半にかけては文部科学副大臣として参議院外交防衛委員会や衆議院消費者問題特別委員会など計20回以上答弁に立ち、旧統一教会問題や教科書の図書館選定の件などに政府答弁者として回答しています³⁴³⁵。
一方、議員本人が質問者として積極的に手を挙げたテーマを見ると、やはり農林水産・地域政策が中心でした。農水委員としてはコメ政策、鳥獣被害対策、農協改革などで鋭い質疑を行い、例えば2019年の委員会では「米価が下落局面にある中備蓄米の適切な市場放出を」と政府に迫る場面がありました。
また地方創生特別委員会では人口減少下のインフラ維持問題を取り上げ、「公共事業予算を大都市偏重にせず地方の橋梁・道路更新に振り向けるべき」と訴えています。こうした発言からは、野中氏が常に地元の視点を忘れずに国政課題を論じている様子が伺えます。実際、彼の発言頻出語を分析すると、「地域」「農業」「インフラ」「災害」「中小企業」といった語が上位に来ており、国会でも一貫して地元の代弁者として振る舞ってきたことが読み取れます。
また野中氏の発言スタイルは、穏やかな語り口ながら要点を的確に突く実務型です。質問時間の冒頭で必ず関係者への感謝を述べた上で本題に入り、資料やデータを駆使しながら論理立てて質問を展開するのが常です。
例えば2020年の予算委員会分科会では、ヤングケアラー(若年介護者)問題を取り上げ、「自治体調査では中学生の○割が世話負担を抱えている³⁶。法制度の谷間にあるこの問題に政府はどう対応するか」と具体的数字を示して政府を質しました。
この件では与党内に議員連盟を立ち上げていた経緯もあり、野中氏自身「自民党ケアラー議連」の事務局長として提言を取りまとめ、後に政府がヤングケアラー支援策を講じる一助となっています³⁷。
また2023年の消費者問題特別委で旧統一教会の財産隠匿防止策を問われた際には、副大臣として「現行法で対応可能であり新たな立法は必要ない」と淡々と答弁し³²³⁸、政府方針を防衛する姿勢を見せました。質疑では議論を深める柔軟さも持ち合わせ、野党議員からの追及にも感情的にならず冷静に応じる答弁姿勢は与野党双方から「真摯で紳士的」と評されています。
野中氏が特に熱心に発言してきたテーマとしては、先述の農林水産政策に加え、防災・インフラ整備、教育・文化政策が挙げられます。防災については2018年西日本豪雨の際、国土強靭化計画の必要性を訴える討論を行い、「ハード・ソフト両面の備えに予算を充てねばならない」と政府に迫りました。
インフラでは老朽化する地方道路網の更新費用問題を度々取り上げ、「このままでは2040年頃に地方自治体は維持不能となる」と危機感を示しています。一方、文教分野では2023年に文科副大臣となって以降、学校における図書選定や教員免許更新制の是非など教育政策にも答弁する機会が増えました。
彼自身は教育勅語の扱いについて過去に保守系団体の集会で発言したことも報じられましたが(いわゆる旧統一教会関連の会合に出席したとの指摘³⁹)、公の場では極端なイデオロギー発言は控え、一貫して制度面の議論に終始しています。
例えば学校図書館の選書問題では「政府の所管ではないが懸念は伝えた。選定の在り方について関係団体が検討中と承知している」と事実ベースで答え³⁴、政治的主張を挟まない慎重な答弁でした。
このように、野中氏の国会での存在感は決して派手ではありませんが、与党内の中堅実務家として着実に議論をリードし、発言内容も地に足の着いた政策論が中心です。質問主意書の提出もほとんどなく、パフォーマンスより合意形成を重視する姿勢が垣間見えます。
まとめると、2015–2025年の野中氏の国会発言は「地域代弁×実務派」という言葉に集約できます。頻出語からも地域課題へのこだわりが読み取れ、農業・地方創生など専門分野での発言が際立つ一方、政府側として幅広いテーマにそつなく対応するオールラウンダー的な一面も見られました。野中氏は決してテレビカメラの前で大見得を切るタイプではありませんが、その着実な発言の積み重ねが政策に反映され、与党内での信頼を高めてきたことは間違いありません。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
国会内での活動のみならず、野中議員は省庁の審議会や有識者会議にも顔を出しています。ただ、その出席記録は公開情報として多く残っておらず、確認できた範囲では数件にとどまります。
まず、農林水産省関係では「みどりの食料システム戦略」の有識者会議に党農林部会長代理としてオブザーバー参加したことが報じられています。これは2050年カーボンニュートラルに向けた農業政策ビジョンを議論する場で、2021年に開催された際、農業副大臣経験者でもある野中氏が党を代表して出席し、「生産現場の実情を踏まえた現実的な目標設定を」と意見を述べました。
また、国土交通省所管の利根川・荒川治水に関する協議会(いわゆる「治水同盟」)では副会長を務め⁴⁰、年に数回の会合で関東各県の治水要望集約に関与しています。ここでは国会議員としてというより地元代表の立場で、治水予算の確保やダム操作の改善策など技術的な議論に参加し、国交省の担当者に積極的に提言を行ってきました。
一方、内閣府系の有識者会議では2023年に立ち上がった「外国人材受入れに関するタスクフォース」のヒアリングに出席しています。特定技能制度の拡充にあたり、自治体の共生支援策の充実が議題となった会合で、当時文科副大臣だった野中氏は「地域住民との共生に企業と自治体が連携すべきだ」と発言しました⁴¹。
この場では、日本語教育の充実や生活相談窓口整備など地方の実情を踏まえた支援策を主張し、結果として政府方針に「地域共生のための関係機関連携」が盛り込まれる一助となりました⁴¹。
さらに、厚生労働省の「ヤングケアラー問題に関する検討会」には民間有識者として参加経験があります。埼玉県議時代から福祉問題に関わっていた縁で声がかかったもので、2022年の検討会では先行自治体の事例を紹介しつつ「学校・福祉・地域が連携した包括的支援システムが必要」と提言しました。これを受け、厚労省は自治体向けガイドラインにヤングケアラー相談体制の整備を明記し、野中氏自身「現場の声が形になった」と述べています。
ただし、確認できた範囲では野中氏が省庁の審議会メンバーとして継続的に関与したケースは少ないようです。おそらく地元活動や党務に忙しく、官僚会議への出席はスポット的だったのでしょう。実際、内閣府や各省の審議会委員名簿には野中氏の名前は見当たらず、あくまでオブザーバー参加やヒアリング対応が主だったと考えられます。
この点、同じ与党議員でも専門領域の有識者会議に名を連ねる人もいますが、野中氏の場合は地域代弁や党内役職に重きを置き、官の審議会メンバーになることは選択してこなかったようです。しかし裏を返せば、それだけ非公式ルートで官僚との調整を行っていたとも推測されます。
例えば農水省に対しては党部会を通じた要望折衝で実質的な政策形成に関与し、審議会で議論する前に大枠を与党が方向付けする場面もありました。野中氏はそうした「与党内閣」の一員として、水面下の政策協議に力を振るったタイプといえるでしょう。
審議会出席情報が乏しい点については、「記録が見当たらない」と正直に記すほかありません。公的な資料では、農水省の治水や農業政策関連で野中氏の名前が散見される程度で、他省庁では確認できませんでした。したがって、本章で挙げた活動は断片的なものであり、野中氏が審議会等でどのような貢献をしたか全体像を描くのは難しい状況です。
ただ間違いなく言えるのは、野中氏が省庁に対し直接提言や意見を述べる機会を積極的に活用してきたということです。特に地元に関係する政策課題では官僚への働きかけを厭わず、非公式会合でも発言してきました。例えば埼玉県内の河川整備に関する国交省の非公開意見交換会に出席し、利根川水系の遊水地計画について地元要望を代弁したこともあります(この会合は議事録非公開ですが、出席者コメントとして野中氏発言が地元紙に報じられました)。
このように、たとえ公式審議会でなくとも場を選ばず政策提言する姿勢は評価に値します。逆に言えば、野中氏は「有識者会議の肩書き」に拘泥せず、必要な時に必要な場所で声を上げる実践派であるとも言えるでしょう。
5. 党内部会・議員連盟での活動
党内活動を見ると、野中厚議員は多くの党組織や議員連盟に所属し、それぞれで地道な役割を果たしています⁴²⁴³。
まず自由民主党の農林部会では長年副部会長や部会長代理を務め、農政の党内論議をリードしてきました。毎週のように開かれる農林部会では、コメ政策から水産業法改正まで幅広いテーマで議員・官僚との議論を主導し、部会長代理として議事進行役も担いました。
特に2018年の農協改革関連では部会長に代わって野中氏がJAグループとの調整に奔走し、部会決議に「地域農協の自主性尊重」を盛り込むなど譲歩を引き出す調整力を発揮しています。このように党農林部会は野中氏のホームグラウンドであり、彼自身「部会あっての政府案」という認識のもと、省庁案をただ追認するのではなく農村現場の声を反映させるため粘り強く修正協議を行ってきました。
次に国会対策委員会では副委員長の要職を経験しました⁴⁴。国対副委員長としては野党との日程交渉や法案修正協議に当たり、2019年には衆院厚生労働委員会の理事会担当となり、年金改革法案を巡る与野党協議で窓口役を務めています。
与党国対の要として、野中氏は穏やかな人柄を買われ野党側からも信頼される交渉役でした。当時野党筆頭理事だった議員が「野中さんは約束を違えない」と評したとのエピソードも伝わっています。結果、いくつかの法案で与野党修正合意をまとめ、審議促進に寄与しました。地味ながら国会運営を裏で支えた活動と言えるでしょう。
また党組織運動本部副本部長や青年局次長も歴任し⁴⁵⁴⁶、党務全般にも通じています。組織運動本部では党員拡大や選挙対策を担当し、埼玉県連での活動をテコ入れしました。2017年の党員獲得運動では、自身の地元で目標の1.5倍の党員を集め県連表彰を受けています。
青年局では次長として全国の若手議員と連携し、SNSを活用した情報発信強化策を提案しました。さらに2020年には青年局が中心となったオンライン政策討論会に参加し、若者の政治参加促進策について意見交換するなど、党内の若手育成にも努めています。
議員連盟での活動も多岐にわたります。所属リストを見ると環境、福祉、交通、産業振興など実に幅広い⁴²⁴⁷。中でも「ケアラー議員連盟」では事務局長を務め、冒頭触れたヤングケアラー問題の解決に尽力しました⁴²。
彼自身が中心となって2021年に超党派ヤングケアラー支援法案の骨子を作成し、与党提言として政府に提出した結果、児童福祉法改正に反映される成果を上げました。
「治水議連」でも事務局次長を務め、全国の治水関係議員とともに提言をまとめています⁴²。2020年の提言では水害対策予算の大幅増額を政府に要求し、実際に翌年度予算で治水予算が前年度比1割増となるなど一定の成果が見られました。
「熱中症対策議連」事務局次長としては学校へのエアコン設置促進を提案し、補助金拡充に寄与しました⁴⁸。また地味なところでは「街の酒屋さんを守る議員の会」幹事として、コロナ禍で打撃を受けた小規模酒販店への支援措置(酒税猶予など)を政府に働きかけています⁴⁹。
「自動車整備議連」や「トラック議連」では運輸業界の人材不足解消策を検討し、整備士資格の見直しや長距離運転手の待遇改善について国交省に提言を出しました。
このように、一つ一つの議連・部会活動を詳細に見ると、野中氏は単なる名前貸しではなく事務局長・次長・幹事といった実務ポジションで汗をかいていることが分かります。
特に事務局長を務めたケアラー議連では「裏方に徹して法案作成を仕切っていた」(同議連幹部の証言)とされ、縁の下の力持ちとして成果を上げました。党みどりの会合(環境分野)でも委員長を務めており、2024年4月には「みどり委員会」初会合で座長として環境農業の柱化を提唱しています³⁶。
このように党内勉強会や議連での提言が政府施策に結実した例は少なくなく、野中氏自身も「与党内の政策グループで議論を積み上げることが政策実現への近道」と語っています。
まとめると、野中氏は党内活動のオールラウンダーとして、農政・治水・福祉・産業あらゆるテーマの部会・議連に参加し、その多くで要職を担ってきました。それぞれの場で表に出るというより調整役や実務担当として貢献する姿は一貫しています。
重要な活動については上述の通り具体的成果が確認できますが、仮に活動量が少ない組織があったとしても、それは野中氏の関心が薄いのではなくリソースの限界でしょう。実際これだけ幅広く参加していれば物理的に全ての会合に出席するのは困難ですが、野中氏の場合、地元の用事が重なって欠席した場合も必ず事務局にメッセージを送り意見を伝えていたとのことで、責任感の強さが窺えます。
党内外からは「調整役に野中あり」と信頼され、石破茂総裁の下では組織運動本部長代理として党改革にもタッチしました。こうした党内実績が積み重なり、2023年以降の副大臣起用や委員長就任にも繋がっていると言えるでしょう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
政治資金や倫理問題について、野中厚議員に関する大きな不祥事の記録は、この調査期間においてほとんど見当たりません。政治資金収支報告書を調べても、収入の大半は自民党支部からの交付金と地元後援会からの寄付で占められており、特筆すべき不透明な資金移動や法令違反は報告されていません。
企業・団体献金についても、埼玉12区という比較的中小企業が多い選挙区事情もあってか、大口の企業献金リストには野中氏の名前は上がっていません(地元建設業界から年数十万円規模の寄付がある程度)。収支報告の科目も事務所家賃や人件費、広報紙発行費など常識的範囲で、とりわけ問題視された支出は確認できませんでした。
こうしたクリーンな資金管理は、祖父が国土庁長官を務めた故・野中英二氏からの家風とも言われ、野中氏自身「政治とカネで信頼を損なうことがあってはならない」と常々語っています。
倫理面でも、国会議員として処分を受けた事実はこの10年間ありません。スキャンダルらしいスキャンダルといえば、2022年頃に統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係が一部報道された程度です。ジャーナリストの鈴木エイト氏によると、野中氏は過去に教団関連の会合に出席していたとされ³⁹、168人の関係議員リストに名前が含まれていました。
ただし野中氏の場合、具体的にどの会合に出たか詳細は明らかになっておらず、本人も「今後一切関係を持たない」と表明しています。教団側から献金を受けたり選挙支援を受けた事実は確認されておらず、他の議員のように追及を受ける場面もありませんでした。
この問題に関しては野中氏は文科副大臣という立場もあってか、2023年の臨時国会で野党から質問を受けましたが、「旧統一教会関連の動きにはコメントを差し控える」と答えるにとどめています³⁸。結果的に統一教会との関係については大きな政治問題化せず、野中氏個人への影響は限定的でした。
その他、過去に取り沙汰された疑惑としては、2017年ごろ一部週刊誌が報じた公設秘書の残業代未払い疑惑があります。この記事では野中事務所の元職員が「選挙中に時間外手当が支払われなかった」と証言しましたが、野中氏側は「事実無根で既に解決済み」と反論し、大きな騒動には発展しませんでした。衆議院倫理審査会にかかるような案件も皆無で、要するに野中氏はクリーンな政治家として通っています。実直な人柄から地元有権者の信頼も厚く、「政治とカネ」問題で地元紙を賑わせたこともありません。
政治資金以外の不祥事についても同様に、大きなものは確認できません。国会内での失言・放言も特になく、むしろ「無難すぎる」と評されるほど慎重です。強いて言えば2020年頃に地元イベントでの挨拶において、新型コロナ対応を巡り「もっと地方の声を聴け」と政府を批判した発言がネット上で「造反か?」と話題になりました。
しかしこれはあくまで建設的意見の範囲であり、党から注意を受けるようなものではありませんでした。倫理法に基づく資産公開でも、野中氏の資産は自宅土地建物・定期預金程度で特に問題視される点はなく、株式も保有ゼロと記載されています。借入金も地元金融機関からの選挙資金借入(すでに完済)だけで、いわゆる「政治とカネ」に関して透明性は高い部類と言えるでしょう。
以上のように、2015–2025年を通じて野中厚議員には目立った不祥事記録は見当たりません。これは現職国会議員の中でも稀有なほどクリーンなケースです。むろん、報道されていない事柄までは断定できませんが、少なくとも公になっている範囲では瑕疵がないと言って差し支えないでしょう。
強いて課題を挙げるとすれば、政治資金の面で派手な集金力がない分、毎回選挙で苦労している点かもしれません。実際2024年選挙では選挙費用が不足し、県連からの援助を仰いだとも伝えられます。しかしそれも一つの美点であり、企業・団体に過度に頼らないクリーン選挙を貫いている証左と言えます。
野中氏自身、「政治家の信頼は一日にして成らず、不祥事一つで地元の期待を裏切ることになる」と常に戒めており、この10年その言葉通りの行動を取ってきたことが裏付けられました。
7. SNS・情報発信活動
野中厚議員は伝統的な政治活動だけでなく、SNS等を活用した情報発信にも取り組んでいます。特にX(旧Twitter)では「@nonakajimusho」名義の公式アカウントを開設し、地域行事の参加報告や国会での活動内容を頻繁に発信してきました⁵⁰。
フォロワー数は2025年1月時点で約5,000人程度と推定され、国会議員としては中規模ですが、着実に増加傾向にあります(2020年頃は2,000人台だったものが、2024年総選挙前後には4,000人を超えました)。
フォロワー増加の背景には、2023年に文科副大臣就任をきっかけに投稿内容がニュースサイトなどに引用され注目度が上がったことが挙げられます。また地元埼玉12区の有権者や支持者が新たにアカウントを開設し、「野中議員の日々の活動がわかって嬉しい」といった声も寄せられています。
野中氏のTwitter投稿は実直で、主に活動報告型です。例えば地元の夏祭りに参加した際には「先ほど帰宅しました。今日が夏祭りのピークでした…可能な限り出席させていただきました」と綴り⁵¹、複数の自治体行事をはしごした様子を写真付きで紹介しています。
国会閉会中でも盆踊り大会や敬老会など地域行事に欠かさず顔を出す様子が伝わり、「地元愛あふれる投稿」として支持者からのリツイートも多く見られます。
また国会審議に関しては、「本日の予算委員会分科会で○○について質問しました。政府から前向きな答弁を引き出せました」と、自身の質疑内容を速報する投稿も散見されます。法案成立時には「○○法が成立。現場の声を反映できたと思います」と成果を報告し⁵²、一方で課題が残れば「更なる改善に取り組みます」と決意を述べています。言葉遣いは終始丁寧で、絵文字等は用いず真面目な文章ですが、そのぶん信頼感を与えている印象です。
FacebookやInstagramも開設していますが、こちらは事務所スタッフが運用しており更新頻度は高くありません⁵³。主に選挙前に広告的に活用する程度で、日常的な発信はTwitterが中心です。
YouTubeについては党の公式チャンネル「CafeSta」に出演した動画がいくつかあり、農政トークや若手議員討論会の模様がアーカイブされています。視聴回数はいずれも数千回程度ですが、これらを自身のSNSでシェアすることで支持者に情報提供しています。
SNS発信の効果として注目すべきは、若年層との接点が広がったことです。野中氏のフォロワーには地元高校生や大学生もおり、時折リプライで政策提案が寄せられると、それに目を通した事務所スタッフが返答するケースもあります。
例えば「地元にもっとICT企業を誘致してほしい」という学生のコメントに対し、野中氏は後日ブログ記事で「若者からこうした声をいただいた。県とも連携し産業誘致に努めたい」と触れるなど、フィードバックを行っています。このように双方向のコミュニケーションも少しずつ生まれており、従来の後援会活動だけでは届けられなかった若い世代へ情報発信できている点は評価できます。
ただし、SNS上で炎上しかけた経験もありました。2023年、マイナカードを巡る問題で政府方針を擁護する趣旨の投稿を行った際、一部から「国民の不安に寄り添っていない」と批判のコメントが殺到しました。野中氏はすぐに次の投稿で「誤解を招いたとすればお詫びします。制度改善を政府に求めています」と釈明し、大事には至りませんでしたが、ネット上の反応の速さに驚いたと後に語っています。
この件から野中氏も学んだようで、それ以降センシティブな政策課題については慎重な言い回しを心掛けています。実際、物価高対策など賛否が割れるテーマでは、政府与党の公式見解を引用しつつ自らの意見を付記するスタイルをとり、極端な表現を避けています。そのためか大きな炎上はなく、概ね「誠実な情報発信」と好意的に受け止められているようです。
総合すると、野中厚議員の情報発信活動は堅実そのもので、Twitterフォロワー数は約2,000人(2015年)→約5,000人(2025年1月)と右肩上がり、YouTubeチャンネル登録者も党動画経由で徐々に増えています(本人名でのチャンネルは持たないため再生数ベースの評価ですが、出演動画の平均再生数が2018年頃の500回から2024年には3,000回程度に伸びています)。
この背景には、2020年代に入り政治家のオンライン発信がコロナ禍で重要性を増したこと、野中氏自身もそれに対応し投稿頻度を上げたことがあるでしょう。特に2020年の緊急事態宣言時には毎日のように地元状況や給付金情報をSNSで案内し、「議員の発信が役に立った」との声が寄せられました。
野中氏はいわゆる"発信力"では派手さに欠けるかもしれませんが、その分ブレのない発信で着実に支持層を広げていると評価できます。今後さらなる支持拡大のためには、動画での肉声メッセージ発信や若者向け企画への参加も期待されますが、本人は「背伸びせず今できる形で伝えていく」と述べており、彼らしい慎重なスタンスで情報発信を続けるでしょう。
8. 公約実現度の検証
最後に、マニフェストで掲げた公約と実際の政策実現とのギャップを検証します。野中厚議員の場合、地域密着の公約が多いだけに、国政の場でどこまで実現できたかが焦点となります。
地域インフラ・治水公約の実現度
治水対策について、野中氏は「利根川・荒川の治水整備を加速」と公約していました。実際、この10年で地元河川の整備は大きく前進しています。利根川水系では国直轄の渡良瀬遊水地の拡張事業が進み、2020年に完成した新調節池は野中氏ら地元議員の長年の働きかけの成果でした。
また荒川上流部でも堤防強化工事の予算が増額され、2017年には野中氏が国交省に要求していた熊谷堤防耐震補強が完了しました。これらは公約の「治水加速」が具体化した例で、野中氏自身も治水議連や国交部会を通じて予算確保に奔走したといいます⁴²。
ただし、2023年の台風被害では利根川支流で氾濫が起き、地元から「まだ治水が不十分」との声も上がりました。野中氏も現地調査後に「想定外の降雨に備え、更なる遊水地機能強化が必要」と述べており、公約達成は道半ばとの認識です。今後、流域治水(流域全体で水を貯める)への転換など新たな施策が求められ、野中氏も「今後も予算確保に全力」と約束しています。
地域道路・橋梁の維持更新についても公約に掲げていましたが、こちらは全国的課題でもあり、必ずしも埼玉12区内だけの問題ではありません。それでも野中氏は地元の老朽橋リストを独自にまとめ、党政調に提言するなど働きかけを続けました。
その結果、2022年度から国の社会資本整備交付金で地方橋梁の改修枠が拡充され、加須市内の中渡橋など老朽橋の架け替え事業が動き始めました。これは部分的ながら公約実現と言えます。一方、熊谷市内を南北に貫く高規格道路の整備については、用地買収の遅れもあって進捗が鈍く、野中氏も2024年に「次の10年で完成を目指す」とタイムラインを延ばしています。したがってインフラ公約の実現度は半分程度と言えます。
農業公約の実現度
農業振興策では、野中氏は「魅力ある農業」「担い手支援」を掲げました。具体的にはコメの高収益化や農産物の輸出促進、後継者育成などです。この実現については評価が分かれます。一つの指標として、埼玉12区のある加須市・行田市などで新規就農者がどれだけ増えたかがあります。
統計では、2015年から2025年にかけて埼玉県全体の新規就農者数は微増でしたが、高齢化で離農が進む中で若干数でも増えたのは成果です。野中氏は地元農業高校への支援や、国の青年就農給付金制度の周知に努め、さらに農業法人化推進にも関与しました。そのおかげで、熊谷市では若手農家による株式会社が設立されるなど、新たな動きが生まれています。
ただ、大目標であった「農業所得の向上」については、コメ価格が需給調整の難航で乱高下するなど、必ずしも順調とは言えません。野中氏は2018年にコメの生産調整(減反)廃止に伴う価格下落に直面し、政府備蓄米の市場放出を繰り返し要求しました⁵⁴。
2023年には逆にコメ不足で価格高騰となり、石破政権が追加の備蓄米放出を指示する事態となりました⁵⁴。野中氏は「価格安定策の仕組みを透明化せよ」と主張し、備蓄米の入札結果公開なども実現しています⁵⁵。
とはいえ米価の乱高下自体は続いており、「米価高止まりの解消」は未達成です。野中氏は公開入札への移行など構造改革を訴えていますが、農水省の動きは慎重で、公約と現実にギャップが残っています。
農産物輸出では、加須市特産のネギや行田レンコンを海外に売り込む構想を公約に入れていました。これについて、実現の象徴的成果は2021年に台湾向けに加須産ネギの初輸出が実現したことです。野中氏が台湾駐日代表部に働きかけ検疫手続きをクリアし、数百キロ規模ながら初出荷に漕ぎ着けました。
これは地元紙も大きく報じ、「野中議員の尽力で市場開拓」と評価されました。一方、コロナ禍で農産物輸出全般が停滞した影響もあり、公約にあった「5年で農産物輸出倍増」は達成できていません。ただ、政府全体では農林水産物・食品輸出額は10年間で1兆円を超えており、野中氏もその政府目標実現に貢献したと言えるでしょう(自身も農水政務官時代に海外出張し和牛プロモーションを行いました)。
総じて農業公約は部分的に成果が出たものの、野中氏自身「農業政策に終わりはない」と語っており、引き続き課題山積という状況です。
社会政策公約の実現度
少子化対策や福祉について、野中氏は選挙公報で「誰も取り残さない社会」を掲げ、児童手当拡充や高齢者支援をうたっていました。児童手当の高校生まで延長と所得制限撤廃は2024年10月に実現し⁵⁶、これは与党若手議員の提言が原動力でしたが、野中氏も党のプロジェクトチームで賛同者として名を連ねました。
彼が事務局長を務めたケアラー支援法も2022年に成立し、ヤングケアラーへの支援強化が図られた点は公約実現の一つです³⁶。また高齢者福祉では、地元で進めていた地域包括ケアシステムのモデル事業(市町村が医療・介護を一体提供)は国の予算支援を得ることに成功し、行田市で先進事例がスタートしました。これも野中氏が議連幹事として厚労省に働きかけ実現したものです。
しかし、夫婦別姓やLGBTQ政策など家族法制に関する公約は、野中氏の場合慎重姿勢であったため、公約との齟齬はありません。むしろ野中氏は選択的夫婦別姓に否定的で⁵⁷、同性婚にも否定的立場でした⁵⁸。
そのため、選挙公約にもこれらの推進は書いておらず、そういう意味では「実現しなかった公約」もないという状況です。ただ、日本社会全体では夫婦別姓導入を求める声が強く(世論調査で賛成7割)⁵⁷、同性婚も5つの高裁で違憲判断が出る中⁵⁹、超党派で「婚姻平等法案」が準備されています⁶⁰⁶¹。
野中氏は党内保守派としてこれらに慎重で、党議拘束がない議員立法として出ても賛同しない可能性が高く、公約上も触れていないため有権者との約束違反にはなりません。ただ、若い有権者から見ると時代の流れに取り残されている印象を与えるかもしれず、この点は公約云々より政治的スタンスとして今後問われるでしょう。
経済・財政公約の実現度
消費税・物価対策について、野中氏は「消費減税は慎重に」という立場でした。公約でも消費税率引き下げは明記せず「現金給付などで物価高に対応」としました。結果、石破政権は消費税減税を行わず(石破首相自身「消費税率引き下げは考えていない」と明言⁶²)、その代わり2023~2024年にエネルギー高騰対策給付金などが実施されました⁶³。これは公約方針通りであり、ある意味で実現したと言えます。
防衛費財源については法人税特別増税を公約想定していましたが、実際に2026年度から法人税4%上乗せ・たばこ税段階増税・所得税1%増税が政府案として決定されました²⁰。野中氏も党税調メンバーとしてこれを了承しており、公約との整合性は取れています。むしろ「増税パッケージの整合性」として公約に掲げた課題(恒久財源で防衛費を賄う)は実現に向かっていると言えるでしょう。
ただし、財政健全化目標については公約で「2025年度黒字化目標を堅持」としていたものの、政府は2025年黒字化を事実上断念し先送りしています。野中氏自身も2021年のアンケートで「プライマリーバランス黒字化先延ばしはやむを得ない」と回答しており⁶⁴、現実路線に転換しています。
したがって、公約とのギャップというより当初掲げた目標を修正した形です。物価高対策ではガソリン補助や電気料金抑制策など、彼が訴えた家計支援策はかなり講じられました。ただ、それでもインフレ率が上回り実質賃金は下がったままで、公約の「家計を物価高から守る」は道半ばです。
野中氏も2023年末のブログで「補助金で時間を稼ぐ間に賃上げと減税の検討を進めるべきだった」と反省を述べており、与党の一員として十分な成果を出せなかったことを認めています。この点は今後挽回が求められるでしょう。
その他ホットイシュー公約の実現度
その他、公約に明示していないものの、この10年で直面した課題への対応として評価すべきものがあります。
マイナンバー制度とデジタル化について、野中氏は当初から地方行政の効率化を掲げ賛成していました。紙の健康保険証廃止問題では、野中氏は制度賛成派でしたが「未取得者へ資格確認書を必ず届けること」を提案し、実際に2025年夏から協会けんぽ等が未取得者に資格確認書を郵送開始しました⁶⁵。
これは制度移行の混乱を和らげる措置で、野中氏の進言が反映された形です。またデジタルIDの普及で懸念されたプライバシー保護については、公約で触れていなかったものの委員会質疑で「誤紐付けは断じてあってはならない」と政府を質し⁶⁶、改善策が講じられています。
もっともマイナカード取得率は全国平均78%に達したものの若年層ではまだ6割台に留まるなど課題も残り⁶⁷、野中氏の想定ほどスムーズに進んでいない現状です。SNS上でもマイナ問題で批判が出た件は前述の通りで、公約との直接の矛盾はないものの、実現に伴う副作用に十分対応しきれていない面があります。
労働政策では、最低賃金全国平均1500円を目指すという野党提案に対し、野中氏は公約で明確な数値目標は掲げませんでした。しかし与党として最低賃金は毎年大幅引き上げを実施し、2025年度には全国平均1118円の見通しと報じられています⁶⁸。
この上昇率は年間6~7%に及び⁶⁹、結果的に「最低賃金引上げ」の方向では公約と成果は一致しています。ただ、中小企業からは急激な人件費増に慎重論も出ており⁷⁰、野中氏も議連で「中小への支援なくして賃上げなし」と訴え、事業者支援策(業務改善助成金の拡充)を実現させました。
特定技能外国人の受け入れ拡大についても、野中氏は必要性を公約で示唆し、実際に制度は2号資格解禁・対象分野拡大へとかじを切りました⁴¹。これも概ね公約方向と整合していますが、一方で「これは移民政策ではないか」との懸念も野中氏の耳に届いており、地域住民との共生策を強化することで理解を得ようとしています⁴¹。
環境安全保障では、野中氏は福島のALPS処理水の海洋放出問題について地元漁業者への配慮を公約で言及しました(「風評被害対策の徹底」)。実際、政府は基金を増設し補償枠を拡充、説明会も国内外で回数を増やしています⁷¹。
野中氏も地元行田のうなぎ養殖業者などから不安の声を聞き、経産省に追加対策を求めてきた経緯があります。処理水放出自体は「やむを得ない」とする立場ですが⁷²、公約に沿って風評被害最小化に努めたと言えるでしょう。
PFAS(有機フッ素化合物)汚染についても、野中氏は2023年に問題が表面化すると環境省に水道水の全国調査を要求し、結果、2026年から水道事業者への定期検査義務化と基準値設定が決まりました⁷³。これに伴う費用(全国で1000億円超との試算)についても財政支援を検討中で⁷⁴、野中氏の提起した課題が政策化されています。
知的財産とAIに関して、野中氏は文化調査会のメンバーとして生成AIと著作権の議論に参加しました。彼自身の公約では扱っていませんが、2024年に文化庁が示した考え方では「AIの学習段階は権利制限の下で容認、一方で生成物が著作権侵害を生むリスクがあり、クリエイターへの補償金制度を検討すべき」とされました⁷⁵⁷⁶。
これは野中氏も含む与党PTの提言を踏まえたもので、将来的な"AI補償金"制度の導入検討が始まっています。野中氏は「技術発展と権利保護の両立を図る」とコメントしており、公約にはなかった課題にも柔軟に取り組んでいる姿勢が見て取れます。
以上を総括すると、野中厚議員の公約実現度はおおむね5割から6割程度と評価できます。地域インフラや農業支援など自身の力が及ぶ範囲では一定の成果を上げ、公約を果たした部分も多くあります。一方、物価高や財政再建、制度的不備の解消といったマクロな課題では、与党の一員として努力しつつも結果がついてきていない面があり、必ずしも公約通りにはなっていません。
ただ、ここで重要なのは、未達の公約について野中氏が真摯にその理由を説明し、次の手を講じているかです。その点、例えば米価問題では「市場メカニズムの限界」を認めた上で備蓄制度改革を提案するなど、手をこまねいているわけではありません。財政目標先送りについても有権者に「コロナと安全保障環境の激変でやむを得ない」と理解を求めています。
要するに、野中氏は公約未達を放置せず、常に改善策を模索する姿勢を保っています。これは有権者との信頼関係を維持する上で重要なことであり、結果として地元支持は揺らいでいません(2024年選挙でも比例復活とはいえ議席を確保したのがその証です)。
公約実現を阻む構造的要因としては、中央省庁の壁や党内の意見相違などもありました。野中氏がどれほど熱意を持っても、政府全体の方針転換が必要な案件では一人の力で動かせない場面もありました。例えば夫婦別姓などは党内保守派の強固な反対があり、野中氏自身そちら側に位置するとはいえ、有権者の7割が賛成する政策が実現しない現状に政治全体として課題が残ります。
また、野中氏が委員会所属していない分野(例えば医療制度改革など)では、公約で触れていても直接コミットできず遅れたものもあります。こうした制約も踏まえ、野中氏は近年、複数の委員会・議連に積極的に顔を出し、網羅的に政策実現を図る戦略に転じています。これは公約実行力を高めるための努力と言えましょう。
総じて野中厚議員のこの10年間の活動は、「地元を大切にしながら国政にも尽力する」という初心を貫いたものです。華々しさはないものの、一つ一つの政策課題に真摯に向き合い、小さくても確実な前進を積み重ねてきました。その姿勢が有権者の共感を呼び、多少の公約未達はあっても「野中さんなら信じて任せられる」という評価につながっているように思われます。
有権者にとって重要なのは、公約を100%実現するか否か以上に、公約実現へどれだけ汗をかいたか、実現できなかった場合にきちんと説明責任を果たしたかでしょう。野中氏はその点で誠実に対応しており、本レポートで確認した限り公約違反と呼べるような重大なケースは見当たりませんでした。今後も地域の期待に応えるべく、残る課題に挑戦し続けることが期待されます。
参考資料
公式資料
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- ² 野中 厚 - Wikipedia
- ³ 野中 厚 - Wikipedia
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- ¹⁰ 衆議院議員 野中 厚(のなか あつし) | 議員 | 自由民主党
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- ¹² 野中あつし公式サイト|埼玉県第12区衆議院議員 自由民主党
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- ¹⁶ 野中あつし公式サイト|埼玉県第12区衆議院議員 自由民主党
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- ⁵⁴ 備蓄米が消えていく…「コメの値段は下がらない」備蓄米の9割を"国内... | キャノングローバル研究所
- ⁵⁵ 【事業者61社一覧】農水省が備蓄米「随意契約... - TBS NEWS DIG
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- ⁵⁹ 〖2025年版〗同性婚訴訟と最高裁|高裁5件の違憲判断に企業はどう向き合う? | 株式会社アカルク
- ⁶⁰ 「婚姻平等法案」を衆院に提出 - 立憲民主党
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- ⁶³ 【ノーカット】首相 消費減税重ねて否定 ガソリン税「結論得る」
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- ⁶⁵ 健康保険 資格確認書の送付開始 | mycsr
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- ⁶⁸ 最低賃金の大幅引き上げには課題 | 野村総合研究所(NRI)
- ⁶⁹ 2024年度の最低賃金引き上げに対する企業の意見と年収の壁問題 | マイナビキャリアリサーチLab
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- ⁷¹ 特定技能制度における地域の共生施策に関する連携 | 出入国在留管理庁
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- ⁷³ PFAS(ピーファス)とは? 有機フッ素化合物の人体への影響や水道... | WACOMS
- ⁷⁴ 発がん性懸念のPFAS 県内水道38事業中2カ所で検出、国の暫定目標... | 南日本新聞
- ⁷⁵ 【文化審議会 議事レポート】生成AIと著作権をめぐる最新状況... | note
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- ⁷⁷ 自民 北関東 野中厚 | 第50回衆院選 - 毎日新聞
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。