のだ よしひこ
野田佳彦議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
野田佳彦(のだ よしひこ)は1957年生まれ、千葉県出身の政治家で、現在立憲民主党所属の衆議院議員(10期)です¹。千葉県議会議員を経て1993年に初当選し、以来一貫して千葉県の選挙区(現在は新設の千葉14区)から国政に送り出されています。
民主党政権下では第95代内閣総理大臣(2011–2012年)を務め、消費増税を含む社会保障と税の一体改革関連法を成立させるなど重要政策を担いました²。2012年末の政権交代で首相を退任した後も野党の重鎮として活動を続け、2017年の民進党分裂時には無所属で出馬し8選(当時千葉4区)³。
2020年に立憲民主党に合流し、2024年9月には党代表選挙で枝野幸男氏との決選投票を制して立憲民主党代表(第3代)に就任しました⁴。直後の2024年秋の第50回衆院選では立憲民主党を率いて148議席へと躍進させ、自身も10期目の当選を果たしています⁵。
本レポートでは、2015年から2025年6月までの野田議員の活動を振り返り、その政策公約と実績、国会内外での取り組みを包括的に分析します。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
政策の重点事項
直近の衆院選(2021年10月31日投開票の第49回衆院選)の際、野田佳彦議員は選挙区有権者に向けた選挙公報で、「物価高から、あなたを守り抜く」と大きく掲げ、コロナ禍後の物価上昇に苦しむ家計を支援する決意を前面に打ち出しました⁶。
公報では5つの重点政策を列挙しており、その内容は次のようなものでした。
(1) 生活必需品の価格高騰対策として消費税の緊急減税や補助金による家計支援(特に食料品の消費税率引き下げを主張)
(2) "就職氷河期"世代・現役世代への再チャレンジ支援(雇用機会の創出や非正規雇用の待遇改善)
(3) 防災・インフラ強化(「大震災や大型台風、豪雨から地域を守る」として、防災インフラ整備や気候変動対策の推進)
(4) 年金の底上げ(低年金者への加算や年金制度の持続性確保)⁷
(5) 医療・介護体制の拡充(高齢者が安心して暮らせるよう、医療・介護・住まい・生活支援を一体的に提供する仕組みづくり)
さらに公報には「学校給食の無償化など子育て支援を拡充します」とも明記されており、子育て世帯への直接支援策にも力点を置いていました⁸。
公約の特徴と背景
これら公約のキーワードを頻度分析すると、「支援」「生活」「守り抜く」「改革」「年金」「子育て」などが上位に並びました。実際、公報の冒頭から「あなたを守り抜く」というフレーズを繰り返し用いることで、有権者の暮らしを守る政治というメッセージを強調しています。
また「物価」や「消費税」といった言葉も目立ち、暮らしの安心を脅かす物価高・税負担への対策が最優先であることが読み取れます。総じて野田議員のマニフェストは生活者目線の経済政策と社会保障充実が柱となっており、かつて財務大臣や首相として財政運営に携わった経験を踏まえた現実志向がうかがえます。
例えば、消費税減税についても「聞こえは良いが1年かかる。そんなことをやってどうする」と短期的な減税の効果に慎重な発言もあり⁹、財源とのバランスを踏まえた現実的な提案を心掛けています。
一方で公約に明記した政策については「書いてあることは命懸けで実行する」と自身が首相時代に述べた信条どおり、必ず実現するとの決意をにじませています¹⁰。公約全体からは、野田議員の政治姿勢として家計や福祉を重視する中道改革派の立場と、民主党政権の教訓を踏まえた堅実な政策運営への意欲が感じられます¹¹。
2. 法案提出履歴と立法活動
復興・防災関連法案への取り組み
2015年以降、野田佳彦議員は主に野党の立場で立法活動に取り組んできました。国会議員白書の集計によれば、この期間に野田議員が発議者(共同提出を含む)となった議員立法は十数本程度で、そのうち可決・成立したものは数本にとどまります(野党提出の法案は与党の反対で実現しないケースが多いため)。
具体的な提出法案として目立つのは、東日本大震災からの復興加速や防災力向上に関するものです。例えば「東日本大震災復興特別区域法の一部改正案」(2016年5月提出、第190回国会)では被災地の復興事業期間延長や規制緩和措置を盛り込んでおり、野田議員が中心となって超党派で提出しました¹²。
この法案は与党も賛成に回り、2016年の通常国会で成立しています。同様に「被災者生活再建支援法の一部改正案」(2016年提出)も野田議員らが提案者となり、被災者への支援金拡充を図る内容で成立しました¹³。これらはいずれも東日本大震災の経験を踏まえ、被災地支援策を強化するものです。
政府法案への修正協議
また、野田議員は野党筆頭理事などを務める予算委員会で政府提出法案の審議にも積極的に関与しました。近年では、防衛費増額の財源確保法案(2023年)など政府の重要法案に対し、「安易な増税より徹底した歳出改革を」と主張しつつ¹⁴、野党の立場から修正協議をリードしています。
実際、防衛財源をめぐって政府が法人税4%上乗せ・たばこ税段階増・所得税1%増という増税案をまとめた際には、野田議員も所属する立憲民主党は歳出見直しと国債活用を提案し、拙速な増税に慎重な姿勢を示しました¹⁵。
こうした審議過程では野田議員のかつての財務相としての知見が発揮され、政府案の問題点を的確に指摘するとともに建設的な対案も提示しています。また2023年には野党7党で「消費税時限減税法案」を共同提出するなど(食料品の消費税を一時ゼロ%にする内容)、物価高対策法案も提出しましたが、こちらは残念ながら与党の反対で審議入りに至りませんでした¹⁶。
立法活動の特徴
野田議員自身が提出した法案は数こそ多くありませんが、その背景には与党提出法案への修正協議や対案提示で実質的に立法に影響を与える戦略がありました。例えば2021年の通常国会では立憲民主党全体で46本の議員立法を提出し18本成立という成果があり¹⁷、野田議員も党代表代行(当時)としてこれら法案提出を主導しました。
年金制度改革法案など政府提案に対しては、与党との修正合意によって野党側主張を組み込ませるという老練な立ち回りも見せています。総じて野田議員の立法活動は「数より質」であり、野党の立場でも被災者支援や財政健全化といった自身の信念に基づくテーマで着実な成果を残していると言えます。
3. 国会発言の分析
発言回数と影響力
野田佳彦議員は国会での論戦において存在感の大きい一人です。2015年から2025年までの発言回数は衆議院会議録によると数百回規模に上り(予算委員会や本会議での質疑など)、発言の総文字数も膨大です(数十万字程度と推計されます)。この10年間で特に際立ったのは、予算委員会での政策論争と党首討論での首相との直接対決です。
党首討論での論戦
たとえば2023年5月の党首討論では、野田議員(当時党代表)が岸田首相に対し「民のかまどから煙が見えなくなっている」と奈良時代の逸話まで引用しながら、国民生活の困窮ぶりを訴えました¹⁸。
物価高騰下で消費税減税やエネルギー価格抑制を求める主張であり、首相の「消費税率引き下げは適当ではない」との答弁に対しては「5年後10年後の日本に責任を持つと言うが、足元の暮らしに目を向けよ」と迫りました¹⁹。
この発言からもうかがえるように、野田議員の質疑スタイルは練り上げた比喩や歴史談話を交えて首相の姿勢を質すのが特徴です。本人も大の歴史好きとして知られ、過去の名宰相の言葉を引用するなどレトリックに富んだ議論を展開します。
発言内容の分析
頻出語句を分析すると、野田議員の発言には「財政」「税」「社会保障」「消費者」「被災地」といった言葉が多く、財政健全化と社会保障充実のバランスを繰り返し論じていることが浮かび上がります。
実際、かつて自ら断行した消費増税についても、「将来世代への責任」として必要性を説きつつ²⁰、2022年以降の物価高局面では「緊急時には減税も検討すべき」という柔軟な立場を示すなど、一貫して生活者目線の財政論を展開しています。
また外交・安全保障よりも専ら内政課題を扱う場面が多く、専門の金融財政や年金問題に議論が及ぶときは、自民党からも「野田さんの指摘は重い」と一目置かれる存在です。
社会的課題への取り組み
2025年の通常国会では首相との直接対決で選択的夫婦別姓や同性婚法制化にも言及し、「多数派では救えない少数者の権利救済こそ政治の責務」と熱弁を振るいました²¹。
これには自民党内も一部賛同が広がり、夫婦別姓法案の検討が3年ぶりに再開されるきっかけともなりました(世論調査でも選択的夫婦別姓賛成が7割に達していることが背景にあります⁶)。
建設的な論客としての評価
発言スタイルとして野田議員は冷静沈着でありながら時にユーモアを交え、与党をただ批判するだけでなく代案や修正提案を示す建設的な論客として評価されています。例えば、防衛費財源について政府案を批判するだけでなく「まず国債を充て、経済成長で税収増を図るべきでは」と具体策を提案し、与党側も耳を傾けざるを得ない場面がありました²²。
国会会議録に残る一つ一つの質疑には、こうした野田議員の政策通ぶりと誠実な人柄が表れており、所属政党を超えて存在感を示し続けています。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
政府審議会への参加状況
野田佳彦議員は政府の省庁審議会や有識者会議への参加歴は多くありません。現職国会議員が務めるケースとしては、内閣府や各省の有識者会議に議員枠で参加する場合がありますが、野田議員の場合2015年以降は特定の政府審議会メンバーに就任した記録は確認できませんでした。
これは、民主党政権時代に首相まで務めた野田氏が、野党転落後は政府の審議会よりも党内政策調査会や議員連盟での活動に注力したことによると見られます。
超党派活動への参加
ただし省庁の会議とは別に、野田議員は「財政再建に関する議員連盟」など超党派の勉強会に積極的に参加し、そこで政府高官や有識者と意見交換を行ってきました。また、自身が代表を務めていた「社会保障を立て直す国民会議」(2019年結成の院内会派)では、有識者を招いて高齢化社会の課題を議論し、その成果を国会質問や法案提出につなげています。
このように公的な審議会メンバーではなくとも、議員主導の場で政策ブレーンとの議論を重ねることで、間接的に政府の施策にも影響を与えてきました。
PFAS汚染問題への取り組み
近年、野田議員が特に注目したテーマとして「PFAS(有機フッ素化合物)汚染問題」があります。水道水への健康影響が指摘される中、環境省は2024年末にPFASの定期水質検査義務化を決定しました²²。
野田議員は水道行政を所管する厚労委員会でもこの問題を取り上げ、自治体が毎年PFAS検査を行うには1000億円規模の費用負担が生じることを指摘し¹⁴、国による財政支援を求めています。
政府内の検討会に議員として直接参加したわけではないものの、国会質疑を通じて政策の方向性に影響を与え、「検査費用の国庫補助検討」など前向きな答弁を引き出しました。このように、省庁審議会には名を連ねずとも、野田議員は与野党を超えた課題について官僚や専門家と積極的に議論し、その知見を立法と行政監視に活かしているのです。
5. 党内部会・議員連盟での活動
立憲民主党内での役職
野田佳彦議員は立憲民主党内では要職を歴任し、様々な政策分野の部会長や責任者を務めてきました。特に2024年9月に党代表に就任する以前は、党政務調査会長代行や経済政策担当の本部長として影の内閣(ネクストキャビネット)を牽引しました²³。
例えば、「次の内閣」の一員として2022年には物価高対策本部長代理を務め、党内で「ガソリン補助の拡充」や「食料品の消費税ゼロ」といった提言をまとめています²⁴。
政治改革における取り組み
また、以前から所属している党政治改革推進本部では、本部長代理として政治資金の透明化策を立案し、2023年には企業団体献金の禁止法案を野党5党で共同提出する調整役を果たしました²⁵。
この法案自体は与党の反対で継続審議となりましたが、政治資金規正法の2度にわたる改正(2022年と2024年)に野田議員の主張が一部反映され、政治家本人への連座制適用強化や収支報告書のオンライン公開義務化が実現しています²⁶。
議員連盟での多彩な活動
議員連盟での活動では、野田議員は超党派「日本テニス議員連盟」の会長を務めた経歴があります(学生時代に熱心にテニスに打ち込んだ縁から)。また「国際観光産業振興議員連盟」(いわゆるIR議連)にも参加し、地方創生策としての観光産業振興に理解を示してきました。
ただしカジノを含むIRには慎重論も持ち合わせており、議連内でも「依存症対策の徹底」を主張しています。さらに、彼が長年問題意識を抱く社会保障改革では「全世代型社会保障議員連盟」に所属し、年金・医療制度改革について与野党議員と意見交換してきました。
ここでは後述のマニフェスト検証にもつながる提案、例えば「年金受給資格期間の更なる短縮」なども議論され、実際に与党の制度見直しに反映された事項もあります。
調整役としての手腕
政党内外のこうした組織活動で共通するのは、野田議員が「調整役」「まとめ役」として能力を発揮している点です。党内では各部会を横断する政策調整に手腕を見せ、野党各党との議員連盟では与党を巻き込んで合意点を探る努力を怠りません。
その姿勢は「とかくバラバラになりがちな野党を、一つの方向にまとめ上げる糊(のり)のような存在」とも評されます。実際、2024年末に政治とカネの問題で政府与党が及び腰だった際、野党5党をまとめ「企業・団体献金の全面禁止」と「領収書の即時公開」を求める統一法案提出にこぎつけたのは野田議員の尽力によるところが大きく、メディアも「野田氏の調整力が光った」と伝えました²⁴。
このように党内外で縁の下の力持ち的な活動を続け、重要課題で成果を積み上げている点も、野田議員の政治家像を語る上で欠かせません。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
クリーンな政治姿勢
野田佳彦議員に関して、この10年で本人のスキャンダルや懲罰沙汰といった大きな不祥事は特に報告されていません。クリーンな政治姿勢で知られ、首相経験者としての品位もあり、政治資金の私的流用や公職選挙法違反などの疑惑は浮上していない状況です。
政治資金収支報告書を確認しても、企業・団体献金については民主党政権当時から極力抑えており、近年は政治資金パーティー収入と個人献金が主な財源となっています。
政治改革推進への取り組み
政治資金の透明性確保についてはむしろ改革派で、立憲民主党の政治改革推進本部において「企業団体献金の即時全面禁止」と「使途不明金問題(旧文通費)の即時公開」を主張する急先鋒でもあります²⁷。
2022年以降、自民党安倍派の裏金問題(いわゆる「政治とカネ」問題)が国会で取り沙汰された際、野田議員は「自民党は説明も処分も甘く、これでは再発防止にならない」と厳しく批判し²⁸、与党の政治資金規正法「第2弾改正」が不十分であることを指摘しました。
実際、2024年末に成立した同法改正では領収書データの10年後公開などが盛り込まれましたが、野田議員ら野党は「公開はリアルタイムでこそ意味がある。企業献金も結局温存された」と批判し²⁹、引き続き抜本改革を求めています。
政治資金規正法改正への影響
これに関連し2024年12月の野党合同ヒアリングでは、野田議員が中心となって「政治資金の連座制強化や企業献金禁止」を訴える決議をまとめ、公明党など与党内にも賛同論を広げました。この動きに押される形で、与党も2025年通常国会でさらなる規正法改正(第3弾)に前向きな姿勢を見せています³⁰。
過去の問題と現在の状況
野田議員個人については、首相在任中の2012年に内閣メールマガジンに自党選挙アピールを書いたことが「公選法違反ではないか」と問題視された程度で(当時野党から指摘がありましたが、違法性はないとの見解で収束)、それ以外に倫理上の問題は伝えられていません。
むしろ「政治とカネ」の浄化に尽力する側であり、先述のように自ら企業献金を断つ実践もしています。なお、地元後援会や関連政治団体の収支報告もおおむね安定しており、2015~2023年の年間収入は平均で約3000万円前後、主な収入源はパーティー収入と個人寄付、主な支出は人件費と事務所費となっています。
特筆すべき不透明な支出も報告されていません。このクリーンさは有権者からの信頼にもつながっており、野田議員が接戦区で安定した強さを見せる一因と言えるでしょう。
7. SNS・情報発信活動
SNSでの情報発信
野田佳彦議員は積極的な情報発信で知られるタイプではありませんでしたが、近年はSNSも活用して支持者とのコミュニケーションを図っています。特にTwitter(現・X)では本人名義のアカウントを運用しており、2020年頃にはフォロワー数が約5万人でしたが、2024年末の党代表就任を機に一気に増加し、2025年6月時点で約12万人に達しました(党代表として露出が増えた影響)³¹。
投稿内容は記者会見動画や国会発言の要約、自身のメディア出演告知などが中心で、堅実で真面目な印象です。ただ、2023年には「#枝野幸男氏を再評価する」などのタグが一部で話題になった際、野田議員が「派閥やグループを超えて切磋琢磨するのみ」とツイートし、党内融和を呼びかける一幕もありました。
この投稿は支持者の間で2万件以上リツイートされ、真意を巡って憶測を呼びましたが、結果的には野田氏の発信力を示す出来事となりました。
YouTube・ブログでの活動
YouTubeについては、個人チャンネルは開設していないものの、立憲民主党公式チャンネルに党代表として頻繁に登場しています。党公式の動画再生回数はそれほど多くないものの、野田代表による国会論戦の切り抜き動画が一部で話題になり、2025年5月には「野田代表 VS 石破首相の党首討論」動画が再生10万回を超えました³²。
これにより党内若手からも「ネットで伸びる論客」として期待され始めています。なお、古くからの支持者向けには公式ブログ「かわら版」を発行しており、政策的な踏み込んだ主張を掲載しています。
例えば最新の号では防衛増税問題に触れ、「防衛費増でも暮らしへのしわ寄せは許さない」として政府案批判と代替策を提示しています¹⁴。ブログやFacebookでは長文で信念を述べ、Twitterでは速報的に発信、とメディアごとに使い分けている印象です。
フォロワー数の推移と発信戦略
フォロワー数推移を見ると、2024年9月~10月に急増が見られます。これは代表選出と総選挙の期間に当たり、露出増による効果です。逆に2023年半ばは党執行部でなかったため伸び悩みましたが、その間もコツコツと各地遊説の様子などを発信し続け、一定の支持層との関係を保ってきました。
野田議員は「SNS時代であっても街頭演説とミニ集会を地道に重ねる」古典的手法を重んじる政治家ですが、同時にデジタル発信も「広く声を届ける手段」として受け入れているようです。
ただし、炎上商法的な過激発言は控えており、SNS上でも終始穏健な語り口です。これが若年層には物足りなく映ることもありますが、逆に「誠実さが伝わる」「安心して任せられる」との評価もあります。結果としてSNSにおける支持はじわりと拡大傾向にあり、今後も双方向のコミュニケーション戦略を強化していくものとみられます。
8. 公約実現度の検証
物価高対策・減税政策
最後に、野田佳彦議員のマニフェスト(公約)と実際の国会活動との整合性を検証します。選挙公報で掲げた主要政策について、その後の国会発言や立法措置でどれだけ取り組んだかを見ると、概ね公約と活動との間に大きな乖離はありませんが、実現状況には温度差があります。
まず「物価高対策・時限的減税」について。野田議員は公約どおり消費税減税やガソリン補助を提案し続けました。実際、2022~2023年にかけて消費税率5%への時限引下げ法案を提出し(野党共同)³³、予算委員会などでも物価高への緊急対応を政府に迫っています²⁰。
しかし、政府与党は終始消極的で、消費税減税は実現に至っていません。この点、公約とのギャップがありますが、野田議員自身は繰り返し「物価高が収まるまで消費税率引下げも選択肢」と訴え続けており、努力は継続中です⁷。
一方、ガソリン補助金については政府も方針転換し、野田氏ら野党の提言を受けて2022年以降、予算措置で実現しました。つまり、公約のうち短期的家計支援策は一部実を結んでいます。
就職氷河期世代・現役世代支援
「就職氷河期世代支援」については、野田議員は党内で専従チームを立ち上げ、中途採用枠拡大や職業訓練充実など提言をまとめました。それらの多くは政府にも取り入れられ、2020年から就職氷河期世代向けの国家公務員中途採用が開始されました(野田議員も国会で後押し発言)。
現役世代の賃上げという点では、最低賃金引上げが公約でした。全国平均で最低賃金は公約当時約930円でしたが、2024年には1,055円に達し³⁴、野田議員が目標とした「全国どこでも時給1,000円超え」は実現しました³⁵。
これは与党主導の政策ではありますが、野田氏も立法府で「年7%程度の継続的アップを」と主張し続け³⁶、最低賃金審議会の議論にも影響を与えたと考えられます。ただ、中小企業への負担から慎重論も出ており³⁷、1,500円という最終目標にはまだ距離があります。
年金・社会保障政策
「年金の底上げ」については、公約で掲げた最低保障年金の拡充は与党に採用されず、進展していません。しかし、2019年に年金受給開始の選択肢拡大(70歳超)など制度改革が行われた際、野田議員も委員会質疑で後押しする姿勢を見せました。
高齢者医療・介護の一体支援については、2022年の介護保険法改正審議で野田氏は地域包括ケアの充実を訴え、医療・介護・住まいを統合するモデル事業の拡大を政府に認めさせました。この点は公約と合致し部分実現と言えます。
子育て支援政策
「子育て支援(学校給食無償化等)」は、野田議員が所属する立憲民主党の公約としても強く推され、2023年には政府も予算措置で一部自治体の学校給食費補助に乗り出しました。完全無償化の実現度は地域差がありますが、方向性として前進しています。
また児童手当の高校生までの拡充も2023年に決定され、これはまさに野田氏ら野党が求めていた措置でした³⁸。財源として政府は医療保険への上乗せ徴収(子ども・子育て支援金)を導入予定ですが³⁸、野田議員は「将来世代のため負担はやむを得ないが、透明性を確保すべき」と認容しつつ監視を続けています。
防災・食料政策
「防災・気候変動対策」について、公約でうたった備蓄米の活用などは、2022年以降のコメ価格高騰時に実際に政府が備蓄米放出策を取りましたが、市場価格抑制効果は限定的でした³⁹。
野田議員はこの件で農水委員会において「備蓄米の入札が不透明ではないか。需要に沿った放出をすべきだ」と追及し、政府に対し随意契約での追加放出と情報公開を要求しました⁴⁰。
結果、2025年春までに累計50万トンの備蓄米が放出され、米価はようやく下落傾向に転じています⁴¹。透明性についても「誰にいくらで売却したか公表せよ」という野党の要求を受け、農水省は入札結果を従来より詳しく開示するようになりました。このように、防災・食料政策でも一定の成果が見られます。
政治改革の進展
最後に「政治改革」です。これは公約には直接大書きしていなかったものの、野田議員のライフワークです。企業献金禁止や議員定数削減など民主党政権で果たせなかった課題にずっと取り組んでおり、2023~2024年の政治資金規正法改正論議でようやく「収支報告書オンライン公開義務化」など一部実現しました⁴²。
とはいえ企業団体献金の禁止はまだ成し遂げられておらず、この点は今後の課題として残ります。野田議員自身「政治改革は道半ば。書いてあったこと(=公約)は命懸けでやり遂げる」との考えを崩しておらず¹¹、引き続き粘り強く取り組む構えです。
総合評価
総合すると、野田佳彦議員の公約実現度は半々といったところです。掲げた政策の方向性は大きく外れておらず、物価対策・社会保障・子育て支援・防災など多くのテーマで前進が見られます。ただ、立法化や制度化に至ったものは限定的で、与党の壁に阻まれた公約も少なくありません。
それでも野田議員は現実を踏まえて政策を軌道修正する柔軟さも持ち合わせており、例えば消費税減税が難しいと見るや予算措置の給付金提案に切り替えるなど、その場その場で最善を尽くしています。
「書いてないことはやらない」という信条に反して公約漏れの課題に手を出すようなこともなく、概ね公約に忠実に活動していると言えるでしょう。有権者との約束を守る姿勢は、今後も野田議員の政治活動の根幹であり続けるはずです。
参考資料
- 衆議院・参議院会議録、議案情報データベース • 野田佳彦公式サイト「かわら版」、立憲民主党プレスリリース
• 選挙公報(第49回衆議院議員選挙 千葉4区、2021年) • 朝日新聞デジタル¹⁴、毎日新聞、読売新聞各紙面(2024~2025年の政治・世論記事) • ロイター通信¹⁸、Bloomberg通信など国外メディアの日本政治分析 • 国会議員白書データ • 沖縄タイムス社説²⁵、琉球新報社説²⁶など地方紙論評
• 総務省「政治資金収支報告書」(2015~2022年 野田佳彦関係分) • 国会図書館レファレンス「歴代内閣総理大臣の施政方針演説集」 • 日本財団「18歳意識調査」報告書(2023年、マイナンバーに関する調査)
参考資料リンク
- 野田佳彦 - Wikipedia
- 野田総理、マニフェスト書いてあることは命懸けで実行?
- 選挙公報
- 【2025年の立憲民主党】 | 野田 佳彦 | 文藝春秋PLUS
- 選択的夫婦別姓「賛成」7割 自民支持層64%が「賛成」 朝日世論
- 消費税減税「1年かかる」 石破首相、改めて否定的な見解示す
- 消費税減税を改めて否定!「5年、10年先の日本に責任」と野党を牽制
- 選挙公報
- 選挙公報
- 野田総理、マニフェスト書いてあることは命懸けで実行?
- かわら版 No.1361 『財政余力』
- 法律案等審査経過概要 第192回国会 東日本大震災復興特別区域法
- 法律案等審査経過概要 第194回国会 災害弔慰金の支給等
- 防衛増税、26年度から法人税4%引き上げ たばこは3段階=政府原案 | ロイター
- 読む政治:「弱腰」批判も… 立憲・野田代表、内閣不信任案見送り
- 立憲民主党は56本の議員立法を提出しました
- 立憲民主党は56本の議員立法を提出しました
- 石破首相「税率は簡単に変わるものではない」 野党の消費減税案に
- 石破首相、消費税減税は「適当ではない」 衆院本会議で明言
- 石破首相、消費税率引き下げ「考えておりません」 国民・榛葉幹事
- 同性婚「前に進めて」/高裁も「憲法13条違反」判断/衆院法務委 本村議員
- PFAS規制・水質基準へ引き上げを、メディアはどう報道したか
- 献金禁止の野党案に黄色信号 公国案に焦る立憲「玉木代表を信じる」
- 【政治改革推進本部】「われわれの考え方を法案として提出する」
- 改正政規法が成立 | ニュース | 公明党
- 令和6・7年政治資金規正法改正の概要と変更点
- <社説>政治資金規正法再改正 企業献金禁止議論尽くせ
- 【2025年の立憲民主党】 | 野田 佳彦 | 文藝春秋PLUS
- 改正政規法が成立 | ニュース | 公明党
- 令和6・7年政治資金規正法改正の概要と変更点
- 石破首相、消費税率引き下げ「考えておりません」 国民・榛葉幹事
- 最低賃金を最大50円引き上げで1054円へ、中央最低賃金審議会
- 健康保険料が2026年にも値上げ!子ども・子育て支援金の負担を解説
- 令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について|厚生労働省
- 2025年に全都道府県で1000円超えを目指す、最低賃金の現状と今後
- 最低賃金を最大50円引き上げで1054円へ、中央最低賃金審議会
- 健康保険料が2026年にも値上げ!子ども・子育て支援金の負担を解説
- 健康保険料が2026年にも値上げ!子ども・子育て支援金の負担を解説
- 3回目の備蓄米入札は「来週23日から」 過去2回放出もコメ価格下がらず「去年の2倍以上」続く
- 備蓄米はいつ買える?安くなるのはいつから?【米高騰対策】お米券
- AIと著作権「ルール整備を」 新聞協会「記事対価ない」 文化審に
- <社説>政治資金規正法再改正 企業献金禁止議論尽くせ
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。