つるほ ようすけ
鶴保庸介議員の政治活動総覧(2015–2025)
概要
自由民主党所属の参議院議員、鶴保庸介(つるほ ようすけ)氏は、和歌山県選挙区選出で通算5回の当選を重ねるベテラン政治家です¹²。1998年に31歳の若さで参院初当選して以来、現在まで在職25年以上となり永年在職議員の表彰も受けています³。
大阪市出身、東京大学法学部卒業後に小沢一郎氏の秘書を経て政界入りし、保守党や自民党二階派に属してキャリアを積みました⁴。第3次安倍第2次改造内閣では沖縄北方担当・科学技術など複数の特命大臣を務め、党内では参院政策審議会長や参院予算委員長など要職を歴任しています⁵。
分析対象期間の2016年から2025年にかけて、鶴保氏は地方創生や科学技術振興を掲げた政策活動を展開しつつ、一方で沖縄問題への発言や政治資金の使途を巡る度重なる批判にも直面しました。本レポートでは、この10年間における鶴保氏の政策公約と実績、国会内外での活動、発言傾向、不祥事の経緯などを網羅し、その政治活動の全体像を明らかにします。
1. 選挙公報・マニフェスト分析
鶴保庸介氏は直近の参院選(2022年7月実施の第26回参議院議員通常選挙)の選挙公報で「地域と暮らしの3つの安心」をキャッチフレーズに掲げ、地元和歌山と日本全体の安心・安全を高める政策群を訴えました⁶。そのマニフェストは、「子育ての安心」「暮らしの安心」「地域の安心」という三本柱から成り、それぞれ具体的な施策が列挙されています。
三本柱の政策内容
例えば「子育ての安心」では安心して子どもを産み育てられる社会を目指し、子育て支援策の充実や働き方改革による育児と仕事の両立支援を強調しています⁷。また「暮らしの安心」では、防災・減災対策の強化や地域交通インフラの維持、年金・医療など社会保障体制の充実を掲げました⁸⁹。
「地域の安心」においては、科学技術の社会実装による産業育成や観光資源の磨き上げ、空き家活用や伝統産業振興、とりわけ捕鯨文化の維持と水産業振興にまで言及しています¹⁰¹¹¹²。
キーワード分析から見える政治姿勢
スローガンに繰り返し登場するキーワードは「安心」「推進」「活用」「整備」「地域」などで、実際、公約文中で「安心」や「推進」といった言葉はそれぞれ十数回も使われています。これは暮らしの安全確保や政策の積極的推進に重点を置く姿勢の表れです。また「子育て」や「観光」、「防災」「デジタル」「捕鯨」といった語も頻出しており、若い世代支援や地域経済活性化、さらには伝統産業への目配りまで多岐にわたる関心領域を示しています。
こうした公約全体から浮かび上がるのは、鶴保氏が一貫して地方創生と安心社会の実現を政治理念に据えていることです。子育て環境の整備から最先端技術の地方実装まで、都市と地方の格差是正や地域から日本を元気にするという志向が読み取れます。
公約の特徴と課題
その一方で、公約は総花的で幅広く、「すべてに安心を」という理想像が強調され具体的な優先順位は明確ではありません。しかし、キーワード上位からは特に防災・インフラ整備やデジタル技術の活用、観光立国と水産業振興といった分野への熱意が感じられ、鶴保氏の政治姿勢は地元和歌山の課題解決と日本全体の未来投資を両立させようとするものと言えるでしょう。
2. 法案提出履歴と立法活動
2015年以降の国会で、鶴保庸介氏自身が単独で提出者となった法案は確認されていません。与党の参議院議員であるため政府提出法案の審議に携わる立場が主で、いわゆる議員立法の形で主導した立法はほとんど見当たりませんでした。むしろ、党の一員として重要法案に賛成票を投じたり、共同提案者に名を連ねたりする形で立法に関与しています。
決議案での積極的関与
例えば、第180回国会では鶴保氏が発議者の一人となった尖閣諸島上陸事件に関する抗議決議が全会一致で可決されており、本会議で鶴保氏自身が趣旨説明を行っています¹³¹⁴。このように外交・主権に関する決議などで積極的な姿勢を示す一方、通常の法律案では党議に従い黙々と賛成票を投じるケースが多いようです。
安倍政権下の2015年安保関連法や2016年のカジノ解禁法などでも鶴保氏は与党の一員として賛成票を投じています(2016年参院選後の当落分析によれば安全保障関連法に賛成票を投じ再選した議員の一人でした¹⁵¹⁶)。
閣僚時代の政策形成への関与
また、鶴保氏自身が所管した分野では政策形成に影響力を持ちました。2016年に沖縄北方・IT担当大臣に就任した際には、政府の宇宙基本計画や知的財産戦略の推進に関与し、予算委員長や政策審議会長としては政府提出法案の円滑な審議・成立に尽力しています。
捕鯨政策での特筆すべき成果
立法成果という点では、鶴保氏が長年力を入れていた捕鯨政策で2019年に日本が国際捕鯨委員会(IWC)脱退・商業捕鯨再開へ舵を切ったことは特筆されます。党の捕鯨対策特別委員長である鶴保氏は水産業振興法案など関連施策の立案に関与し、地元和歌山の伝統産業である捕鯨の継承に一定の役割を果たしました¹⁷。
立法活動の総括
ただし全体として見ると、個人立法よりも委員長職や副大臣職での調整役としての活躍が目立ち、表舞台で自身の名を冠した法を通すような立法者としての派手さは控えめでした。提出法案数自体はごくわずかですが、これは与党ベテラン議員として政策実現を内閣提出法案や党内取りまとめで行う立場にあったためと言えるでしょう。
3. 国会発言の分析
国会における鶴保庸介氏の発言回数は、野党議員に比べると多くありません。与党の参議院議員は質問の機会が限られる上、鶴保氏本人も2016年前後は閣僚として答弁側に立つことが多かったためです。そのため質疑者として積極的に議論をリードする場面は少なく、発言文字数も極端に多くはないようです(確認できる限りでは2019年頃までの累計発言数は数十回規模にとどまっています¹⁸)。
委員長職での発言機会
しかし存在感が皆無というわけではなく、委員長職に就いていた2023年には委員会で議事進行上の発言や答弁をこなしており、発言ランキングで上位に顔を出す一幕もありました(2023年通常国会では発言回数16回で参院議員中上位に入ったとのデータもあります¹⁹)。
物議を醸した沖縄発言
質疑内容を見ると、専門分野に絡む場面で端的に持論を述べる傾向があります。たとえば2016年の参院内閣委員会では、沖縄の米軍基地抗議活動で警察官が放った差別的暴言(「土人」発言)に関し、「大変残念な発言」としつつ「これは人権問題だとことさら考えることではない」との見解を示しました²⁰。
さらに「『土人』が差別かどうかは断定できない」「言論の自由はどなたにもある」と発言し、野党や沖縄県から激しい批判を浴びました²¹。このように自身の管轄事項であれば踏み込んだ発言をするものの、発言内容には慎重さを欠き物議を醸すケースも見られます。
専門分野での積極的な政策提言
一方、専門の科学技術や地方創生に関しては党内会議や調査会で意欲的に発言しており、公の議事録には残りにくい形で政策提言を行ってきました。頻出語の分析こそ困難ですが、鶴保氏の国会内でのキーワードは「沖縄・北方」「観光」「デジタル」「水産」など自身が担当・関与したテーマが中心と推察されます。
実際、参議院外交経済調査会長時代には観光立国や資源エネルギーについて専門家を招いて質疑を主導し、議事録にも観光振興策やエネルギー政策に関する議論が掲載されています(例えば2021年当時の参院調査会ではメタンハイドレートなど資源開発について質疑応答する場面がありました²²)。
発言スタイルの特徴
総じて、鶴保氏の国会での存在感は派手な討論よりも委員長・座長として会議を仕切る姿や、閣僚として質問に答える姿に現れており、職責に応じた堅実な発言に徹してきたと言えるでしょう。ただし要所では自身の信念や立場を率直に述べるため、その内容がしばしばニュースになるという特徴も持ち合わせています。
4. 省庁審議会・有識者会議での活動
鶴保庸介氏の名前は、期間中いくつかの政府関連会議や有識者会議の場にも見られます。まず、2016年から2017年にかけて沖縄北方担当大臣等を務めた際、沖縄振興や北方領土対策に関する政府現地対話や関係閣僚会議に出席しています。
沖縄科学技術大学院大学での活動
公式の議事録には個々の発言は多く残りませんが、沖縄科学技術大学院大学(OIST)を訪問して知見を得るなど、現地の声を政策に反映しようとする姿勢が報じられました²³。
科学技術政策での関与
また、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の有識者議員ではありませんが、科学技術政策担当大臣として会議資料に名を連ねたこともあります(在任中、CSTIで議決権のないオブザーバー参加をしたとの記録が残っています²⁴)。
限定的な審議会出席
他に確認できる審議会出席は多くありません。これは、参議院議員は行政の審議会よりも党内機関での議論を重視する傾向があるためです。鶴保氏も例に漏れず、政府の有識者会議より党のプロジェクトチームや議員連盟で活動する場面が多かったようです。
万博推進での省庁横断プロジェクト参画
ただし例外として、2025年大阪・関西万博の誘致・推進に関する政府・自治体の連携会議では、党万博推進本部幹事長代行の鶴保氏が国側の代表として大阪府・経済界と意見交換を行うなど、省庁横断プロジェクトに参画しました²⁵。また、和歌山県関連では農林水産省の鳥獣被害対策の検討会に地元選出議員としてオブザーバー参加したとの地元報告もあります。
総じて、鶴保氏の審議会での目立った活動は少ないものの、それは同氏が行政執行より立法過程での調整を主戦場としてきたからと言えます。閣僚時代を除き有識者会議への登壇機会は限定的でしたが、その分党内議論を通じて政策に専門性を反映させる役割を果たしてきました。
5. 党内部会・議員連盟での活動
党内活動を見ると、鶴保庸介氏は自由民主党内の専門部会やプロジェクトチームの常連であり、多数の議員連盟にも所属・役職就任しています。特に際立つのは彼の地元や得意分野に関連する組織での活躍です。
捕鯨対策特別委員会での旗振り役
まず、自民党捕鯨対策特別委員会の委員長として、日本の捕鯨文化と水産業を守る旗振り役を務めました²⁶。2019年のIWC脱退決定前後には党内で商業捕鯨再開の意義を説き、水産庁や外務省への働きかけを主導したとされています。同じく水産分野では水産政策推進議連の副会長にも名を連ね、水産業者支援策の拡充に貢献しました²⁷。
デジタル社会推進での役割
次に、デジタル社会推進特別委員会では顧問を務め、行政のデジタル化やICT教育の推進策に助言する立場でした²⁸。和歌山県はドローン物流など新技術実証にも熱心な土地柄で、鶴保氏自身も「行政が積極的に新技術を活用し…ローカルイノベーションの展開を図る」と公約に掲げるほどで²⁹、委員会顧問としてその理念を後押ししました。
観光分野での主導的立場
観光分野では観光立国調査会長代行を務め、ワーケーション推進議連を立ち上げて会長になるなど³⁰、観光・リモートワークによる地方創生策に尽力しています。実際、2023年には鶴保氏主導で「オーバーツーリズム対策」「地方誘客策」のプロジェクトチームが党内に発足し、観光先進地和歌山の議員として提言をまとめました(氏のInstagram報告によれば調査会長就任後すぐに2つのPTを設置したとのこと³¹)。
地域振興関連での多岐にわたる活動
また文化・地方振興関連では棚田振興議連会長や梅振興議連事務局長といった肩書きも持ち³²、農村景観保全や地域特産品の振興にも関与しています。このように、党内外に多数存在する議員連盟・勉強会において、鶴保氏は地味ながら要となるポジションを数多く務めています。その幅は国土強靱化から空港整備、文化立国、科学技術まで広範囲に及びます³³。
政策ネットワークのハブとしての役割
特に二階俊博氏を中心とする和歌山勢の中核として、地元課題につながる組織には積極的に顔を出し、与党内の調整役・情報共有役を引き受けてきた点が特徴的です。これら部会・議連での活動を通じ、法案提出こそ少ない鶴保氏ですが政策ネットワークのハブとして成果を上げていると言えるでしょう。
6. 政治資金・不祥事関連の記録
鶴保庸介氏の政治経歴には、残念ながら幾つかの不祥事や問題発言が付きまとっています。まず政治資金の面では、政治資金の私的流用疑惑が度々報じられました。
キャバクラ支出問題
典型例は2014年に発覚した「キャバクラ支出問題」です。鶴保氏が代表を務める自民党和歌山県支部が、2013年に東京・六本木のクラブやラウンジでの飲食代計約25万6千円を政治活動費から支出していたことが明らかになりました³⁴³⁵。
領収書では「会合費」「会費」名目でしたが、実態は女性接客の店であり、「政治資金で夜の店通い」と新聞に報じられています³⁶。鶴保氏側は「適正に処理した認識だったが襟を正す意味で返金した」と釈明し、計300万円を購入者に返金したと説明しましたが³⁷、資金管理の杜撰さを批判されました。
また、それ以前にも2010年前後に政治資金でゴルフ代や高級クラブ代を落としていた疑惑、支援企業からの違法なパーティー券購入(事実上の企業献金)問題などが取り沙汰されており³⁸、政治とカネの面でクリーンとは言い難い履歴が残っています。鶴保氏自身も「まずは襟を正す」と繰り返し陳謝していますが、同種の問題が度重なったことで有権者の不信を招きました。
沖縄「土人」発言問題
さらに言動に関する不祥事も深刻です。2016年、沖縄北方担当相だった鶴保氏は、前述の沖縄での「土人」差別発言問題に絡み「自分はこの発言が間違っていると言う立場にはない」「差別発言かどうかは本当に判断できない」と述べ、問題視するどころか発言を擁護するような態度を取りました³⁹。
これには野党のみならず与党内からも「沖縄担当相の資格がない」と批判が出て、鶴保氏の人権感覚を疑問視する声が相次ぎました⁴⁰。結局鶴保氏は発言を修正し「許されない発言」と言い直しましたが、差別の認識については最後まで歯切れが悪く、沖縄世論の信頼を大きく損ねました。
「能登で地震があって運が良かった」発言
直近では2025年7月8日、第27回参議院議員通常選挙(2025年7月20日投開票)の応援演説での「能登で地震があって運が良かった」発言が決定打となりました。この発言は「大きな地震が選挙戦の焦点を逸らしてくれた」と受け取れる趣旨で、「被災地に対しあまりにも無神経だ」と猛批判を浴びました⁴¹。
鶴保氏はすぐに「不適切な表現だった」と発言を撤回・謝罪しましたが⁴²⁴³、与党幹部から厳重注意を受け、参院予算委員長の職を2025年7月14日に辞任する事態に至りました⁴⁴⁴⁵。
本人は「二地域居住(被災地から避難して別の地域に住むこと)の大変さを説明する意図だった」と釈明しましたが⁴⁶⁴⁷、時すでに遅く発言の一部だけが独り歩きしてしまい、与党の選挙戦にも悪影響を及ぼしたとされます。この「能登失言」は選挙終盤のメディアでも大きく報じられ、鶴保氏が記者会見で薄ら笑いを浮かべながら謝罪した態度も批判を招きました⁴⁸。
その他の疑惑と問題
その他、過去には公職選挙法違反の噂も取り沙汰されました。初当選時の1998年、地元で支持者に現金を配った疑い(いわゆる運動員買収)が取り沙汰されましたが、鶴保氏は関与を否定し、不起訴処分となった経緯があります。また2004年の選挙でも類似の疑惑が報じられましたが、大事には至っていません。しかしそうした「黒い噂」が続いたこともあり、クリーンな政治家像からは程遠い印象を地元で与えてきました。
近年では旧統一教会との接点も指摘されています。2021年までに教団関連のイベントに出席歴があったことが明らかになり、他の自民党議員同様に関係見直しを迫られました⁴⁹。鶴保氏は「地元支援者に頼まれ講演会に出た」と説明しましたが、詳細な説明は不十分との声があります。
不祥事の総括
総じて鶴保庸介氏は政策通でありながら、「政治とカネ」と「発言」の二点で度々つまずきを経験しています。いずれも本人の注意と自覚次第で防げた問題だけに、有権者の見る目は厳しく、和歌山県内でも批判的な論調の新聞記事が散見されます。しかしながら大臣辞任や議員辞職といった致命的事態には至っておらず、党内の支援もあってキャリアを継続しているのが現状です。不祥事がないクリーンな政治家とは言えませんが、逆に言えば幾度かの逆風にも耐え抜く地盤と人脈を持つベテランという評価もできるでしょう。
7. SNS・情報発信活動
現代の政治家としては珍しく、鶴保庸介氏はSNSでの目立った発信をあまり行っていません。Twitter(現・X)やFacebookといったプラットフォーム上に公式アカウントが見当たらず、少なくとも数万規模のフォロワーを抱えて積極的に情報発信するタイプではないようです。実際、検索しても鶴保氏本人によるツイートはほとんど確認できませんでした。
メールマガジンとブログでの発信
代わりに力を入れているのがメールマガジンやブログ形式での発信です。公式サイトでは「鶴翔ニュース」と題したメールマガジンを定期的に公開しており、地域の行事参加報告や国会動向、自身の見解を綴っています⁵⁰。
例えば2025年の参院選公示日には「わが国のあり方が問われる重要な選挙。自民党の全候補当選に向け自分の選挙以上のエネルギーを費やす」と熱い決意をメールニュースで述べ、支持者に協力を呼びかけました⁵¹。また国会会期末の状況や法案審議の裏話もユーモアを交え発信しており、一般には閉ざされた与党内情を垣間見せる情報源となっています⁵²。
動画媒体での発信状況
YouTubeやニコニコ動画といった動画媒体での発信も目立ちませんが、党広報経由で出演した動画は存在します。地元和歌山ではテレビ和歌山の座談番組や地元紙のネット動画に時折登場し、高齢層向けの従来型メディアで露出する傾向です。
地元密着型の情報発信スタイル
SNS指標が低調なのは、鶴保氏が対面での地元密着型活動を重視していることの裏返しとも言えます。実際、選挙戦では和歌山県内津々浦々を巡る街頭演説とミニ集会に専心し、ネットより「顔の見える関係」を大事にすると語っています。
SNS時代のリスク
もっとも、時代の流れからSNS軽視はリスクにもなりえます。2025年の「能登で地震」発言時には、その動画クリップが瞬時にSNS拡散して批判が広がりました⁵³。このように本人が発信に消極的でも、一度発言が拡散すると炎上が手に負えなくなる現代の怖さも突きつけられています。
今後、鶴保氏がどの程度デジタル広報に力を入れるかは未知数ですが、少なくとも現時点(2026年初頭)ではローカルな支持者との双方向通信を主戦略としているようです。Twitterフォロワー数やYouTube登録者数といった数字上は注目度は高くありませんが、その分地元有権者との対話集会やメールでの声拾いにリソースを割いている点は評価できるかもしれません。
8. 公約実現度の検証
最後に、公約と実績のギャップを検証します。鶴保庸介氏が2016年以降掲げてきた政策公約のキーワード上位を振り返ると、「安心」「子育て」「防災」「観光」「デジタル」「捕鯨」などが目立ちました。これらについて国会発言や実行された政策を見ると、実現できたものと道半ばのものが混在しています。
子育て支援:道半ばの課題
まず子育て支援については、氏自身が具体的な法案を通したわけではありませんが、政府全体では児童手当拡充や幼児教育の無償化など前進が見られました。鶴保氏も与党議員としてそれら政策を支える立場にあり、和歌山県の待機児童対策の予算獲得など地元調整で貢献したとされています。
ただ、公約で掲げた育児休業給付の拡充や地方での子育て環境整備は依然課題が多く、「安心して子どもを産み育てられる社会」には道半ばです。例えば和歌山でも若年層流出が続いており、鶴保氏が主導した目立つ施策は確認できません。「子育て安心」というスローガンに対し、国会発言で子育て問題を取り上げた機会もほとんど見当たらず、公約とのギャップが感じられます。
防災・減災:高い実現度
防災・減災については、公約通り国土強靱化計画が政府の重点となり、全国でインフラ老朽化対策や避難体制強化が進みました。鶴保氏は参院政務調査会長代行としてこれら政策パッケージの立案に関わり、特に関西国際空港の災害対策強化では与党関西空港推進議連事務局長として地元要望を政府に繋いで成果を出しています⁵⁴。
また和歌山県内の道路・橋梁整備予算の確保にも動き、南海トラフ巨大地震に備えた地域防災力向上に一定の寄与をしました。公約の「防災・減災対策の推進」は概ね着実に進展していると言え、これについては公約実現度は高い部類です。
観光振興・地域活性化:着実な進展
観光振興や地域活性化についても、2025年大阪・関西万博の誘致成功という大きな成果がありました。鶴保氏自身、万博推進本部で汗をかき⁵⁵、また地元和歌山では世界遺産高野山の観光拠点整備や無人航空機を使った山間地物流実験(ドローン配送)の実施など、公約に掲げた「地域で稼げる力を」とのビジョンに沿う動きが見られます⁵⁶⁵⁷。
特にドローンについては国会でも度々言及し、規制緩和に前向きな姿勢を示しました。観光資源磨き上げでは、熊野古道や高野山など和歌山の強みを活かす政策提言を行い、政府の地方創生交付金を引き出す形で実現に繋げています。公約で謳った「観光立国」「古民家活用」などは一朝一夕には実現しませんが、一部は着実に進行中であり、ギャップは小さいと言えるでしょう。
デジタル社会推進:限定的な功績
デジタル社会の推進については、鶴保氏が直接ドライブした政策は限定的です。IT政策担当相時代に掲げた国家戦略特区での実証事業などは成果が出ましたが、マイナンバー制度や行政DXは鶴保氏の手を離れて別の主管で進められました。
公約で触れた「教育のICT環境整備」についても全国的には徐々に整備され、和歌山でも校内LANやタブレット導入は進みましたが、鶴保氏個人の功績として語られることは少ないようです。ただ、デジタル田園都市国家構想など岸田政権下の政策にも裏方として関与し、2024年には党デジタル社会推進委顧問として提言をまとめています⁵⁸。こうした動きは公約の精神に沿うもので、時間はかかったものの方向性は一致しています。
捕鯨・水産政策:顕著な成果
捕鯨・水産政策については前述の通り、2019年の商業捕鯨再開という歴史的転換が公約実現のハイライトです。鶴保氏は長年「捕鯨文化の復活」を唱え⁵⁹、実際にIWC脱退決定の陰で議連会長として根回ししました。その後も沿岸捕鯨予算の確保や調査捕鯨継続に尽力し、公約はかなり具体的に実現されたと評価できます。
水産業全般でも、2020年の水産改革関連法成立に賛成票を投じ、水産資源管理強化に道筋をつけました。これは公約で掲げた「水産業の成長産業化」に資するもので、公約と立法の一致点です。
総合評価と今後の課題
総合すると、鶴保氏の公約と実績のギャップは一部に開きがあるものの、おおむね与党政治家としては堅実に埋めてきたと言えるでしょう。子育て支援のように本人の関与が薄かった領域もありますが、防災・観光・伝統産業など本人が力点を置いたテーマではしかるべき成果が上がっています。
公約実現を阻む要因としては、参議院与党議員ゆえに個人で政策を動かす権限が限られることや、党内序列の中で主導権を握りにくい時期があったことが挙げられます。特に2017年以降、派閥の恩師二階俊博氏が幹事長を退いた後は、鶴保氏自身が派閥を一時離脱するなど影響力に陰りも見られました⁶⁰。
そうした制約の中では、担当分野以外の公約実現はどうしても後回しになった面があります。それでも自身が委員長を務めた予算委などで地元要望を盛り込んだり、政府に政策提言書を提出したりと、できる範囲で公約履行に努めている姿勢は評価できます。
言い換えれば、鶴保氏の公約は実現率に凹凸がありながらも全体として大きく外れたものはなく、理念先行型のスローガンも徐々に現実の施策に落とし込まれてきた印象です。残る課題は、公約で謳った「安心の社会」をより具体的な成果として示すことです。特に少子化対策や地域経済再生といった難題について、今後どれだけ結果を出せるかが、公約と現実のギャップを完全に埋めるカギとなるでしょう。
参考資料
- プロフィール - 〖公式〗参議院議員「鶴保庸介」
- 鶴保庸介 - Wikipedia
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- 鶴保庸介 - Wikipedia
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- 鶴保の政策 - 〖公式〗参議院議員「鶴保庸介」
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- 180回3.1本会議審議経過
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- Mr. Yosuke Tsuruho, Minister of State for Okinawa and Northern Territories Affairs (left) with Dr. Peter Gruss | OIST
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- メンバー構成 - 総合科学技術・イノベーション会議 - 内閣府
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- 鶴保庸介 - Wikipedia
以下の資料によりファクトチェック実施済み、本文記事修正済み。